「インフルエンザで病院に行かない」とどんなリスクがあるかご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/10/23


監修医師:
居倉 宏樹(医師)
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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
目次 -INDEX-
インフルエンザの症状と合併症、後遺症
インフルエンザの症状を教えてください
インフルエンザの典型的な症状は、 38〜39度あるいはそれ以上の高熱、強い全身のだるさ、頭痛、筋肉や関節の痛みなどです。これに加えて、鼻汁、のどの痛み(咽頭痛)、咳などの呼吸器症状が同時、もしくは少し遅れて現れることがあります。風邪と比べると症状が急に出現し、全身の倦怠感が強い点が特徴です。
年齢や体力によって症状の出方には差があり、乳幼児では高熱とともに嘔吐や下痢を伴うことがあります。また、高齢の方では高熱にはならないものの、食欲低下や意識の変化といった症状がみられることもあります。
参照:『インフルエンザ施設内感染予防の手引き』(厚生労働省)
インフルエンザの合併症にはどのようなものがありますか?
インフルエンザの合併症には、肺炎、気管支炎、中耳炎、脳症などがあります。特に肺炎や脳症は命に関わることもあります。高齢の方、乳幼児、妊婦さん、慢性疾患を抱える方は重症化しやすい傾向です。
さらに、インフルエンザによって持病が悪化する場合もあります。例えば、心臓疾患を持つ方では心不全の増悪、喘息を持つ方では発作の頻発などがみられ、既往症と重なって危険性が高まります。
インフルエンザの後遺症を教えてください
インフルエンザを発症しても1週間程度で快方に向かいますが、一部ではまれながら後遺症が残ることがあります。代表的なものには、インフルエンザ脳症をきっかけに起こる神経学的な障害、重度の肺炎による肺機能の低下、心筋炎による心機能が挙げられます。
インフルエンザ脳症を発症した場合には、その後にてんかんや認知機能の低下といった神経学的な障害が残ることがあり、肺炎を合併すると呼吸機能の低下が長く続くことがあります。また、心筋炎を発症した場合には心臓の機能が落ちてしまい、長期的に息切れや疲れやすさが続くこともあります。
これらの長期的な障害は頻度としてはまれですが、発生すると生活へ大きな影響を与える可能性があります。また、流行期にはインフルエンザ脳症の報告が増加する傾向も指摘されています。
参照:『インフルエンザ施設内感染予防の手引き』(厚生労働省)
インフルエンザで病院に行かないとどうなるのか
インフルエンザで病院に行かないことにはどのようなリスクがありますか?
インフルエンザは数日で熱が下がり、病院を受診せずとも自宅での療養で自然に軽快することも多いです。一方で重症化する可能性もあり、特に肺炎や脳炎などの合併症は初期の段階では見分けがつきにくく、症状が急速に悪化することがあります。重症化する可能性が高い方が自己判断で受診を避けることは危険なため、病院を受診しましょう。また、病院に行かずにいることでインフルエンザとは知らず、他人に感染を広げてしまうようなことはあってはいけません。
抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に使用することで効果が高いとされているため、受診が遅れると治療の効果が得られない可能性があります。適切なタイミングでの受診が必要です。
参照:『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)
インフルエンザで病院に行く必要がないのはどのようなケースですか?
健康な成人で、症状が軽く、水分摂取や食事がとれている場合は、必ずしも病院に行く必要はありません。安静にしていれば自然に快方に向かうことがあります。休養と水分補給を心がけることで、数日〜1週間程度で治癒するのが一般的です。
ただし、症状が改善しない、悪化しているといった場合には自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
インフルエンザで病院に行った方がよいケース
インフルエンザの疑いがある場合に必ず受診した方がよいのはどのような人ですか?
インフルエンザが疑われるときに受診をした方がよいのは、重症化の可能性が高い方です。65歳以上の方、糖尿病や心臓病、呼吸器疾患、腎疾患などの基礎疾患を持っている方、妊婦さんや乳幼児は免疫機能が低く、病気にかかりやすい状態にあるため、一見軽い症状にみえても急激に病状が悪化することがあります。
また、過去にインフルエンザ脳症や重度の合併症を経験したことがある方も注意しましょう。それ以外にも、家庭での対応に不安がある場合は、早めに医師に相談することで、適切な対応を受けられます。
どのような症状がみられたら受診すべきですか?
健康な成人であっても、次のような症状がある場合は医療機関を受診しましょう。
- 38度以上の発熱が数日間続いている
- 咳が強く呼吸が苦しい
- 意識がもうろうとしている
- けいれんを起こした
- 胸の痛みがある
インフルエンザで病院に行った場合に実施される検査と治療
インフルエンザで受診をするとどのような検査が行われますか?
医療機関では、まず問診と診察によって症状の経過や体調の変化を確認します。そのうえでインフルエンザの可能性を疑った場合には、迅速診断キットによる検査が行われるのが一般的です。
迅速診断キットは鼻や喉の粘膜から綿棒で検体を採取し、15分程度でインフルエンザ陽性かの結果がわかるのが特徴です。
ただし、この検査は発症後24時間程度で検査精度が高くなるといわれており、発症から間もない場合はウイルス量が少ないため、実際には感染しているのに陰性と出る偽陰性になる可能性があります。そのため、症状や流行状況を踏まえた総合的な判断が必要です。
重症化や合併症が疑われる場合など、より正確な診断が求められるときにはPCR検査が行われることもあります。
参照:『新型インフルエンザ 診療ガイドライン(第1版)』(一般社団法人日本感染症学会)
インフルエンザが確定した場合の治療法を教えてください
インフルエンザの治療の基本は、安静と水分補給、十分な休養です。無理に登校や出勤すると症状が長引き、周囲に感染を広げてしまうおそれがあります。
そのうえで、発症から48時間以内であれば抗インフルエンザ薬が処方されることがあります。抗インフルエンザ薬には 飲み薬、吸入薬、点滴薬(注射薬)の3種類があり、どのタイプを使うかは年齢や症状、基礎疾患の有無、妊娠中などによって医師が判断します。
これらの薬は症状を軽くしたり、発熱の期間を短くしたり、合併症にかかる可能性を下げる効果が期待できます。ただし、薬を使ってもすぐに治るわけではなく、数日は熱や倦怠感が続くことがあります。
参照:『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)
編集部まとめ
インフルエンザは急な高熱や全身のだるさを特徴とし、肺炎や脳症などの合併症を起こすこともある感染症です。多くは1週間程度で治癒しますが、まれに倦怠感や関節痛が長く残るなど後遺症につながる場合もあります。
健康な成人で症状が軽いときは自宅で治癒することもありますが、基礎疾患を持つ方や高齢の方、乳幼児、妊婦さんなどは重症化する可能性が高いため早めに医療機関を受診しましょう。医療機関では迅速診断キットや必要に応じてPCR検査が行われ、抗インフルエンザ薬による治療が行われます。
インフルエンザは身近な感染症ですが、軽視すると命に関わることがあります。自己判断せず、体調の変化に応じて適切に受診し、安静や水分補給を心がけましょう。
参考文献




