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「インフルエンザ」は1日で熱が下がるの?下がった後の注意点も解説!【医師監修】

 公開日:2025/10/26
「インフルエンザ」は1日で熱が下がるの?下がった後の注意点も解説!【医師監修】

インフルエンザというと高熱が数日続くというイメージを持っているかもしれません。実際に多くは38度以上の発熱が数日間みられますが、場合によって、発症からわずか1日で熱が下がることもあります。こうしたときに「もう治ったのでは?」「登校や出社をしても問題ない」と考える方も少なくありません。

しかし、熱が早く下がったからといって治癒したわけではありません。身体内にはまだウイルスが残っているため周囲に感染させる可能性が続いているだけでなく、体力や免疫も回復していません。そのため、無理をすると再度の発熱や、肺炎などの合併症を引き起こすこともあります。

この記事では、インフルエンザでなぜ発熱が起こるのか、1日で下がる場合がある理由、解熱後に気をつけるべき注意点などを解説します。

居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

インフルエンザと発熱の関係

インフルエンザと発熱の関係

なぜインフルエンザになると熱が出るのですか?

インフルエンザウイルスが身体のなかに入ると、免疫は異物が侵入したと判断し、ウイルスを排除しようと働き始めます。このときに白血球などの免疫細胞が活性化され、サイトカインという物質が放出されます。サイトカインには体温を上げる作用があり、これによって発熱が起こります。

体温が上がることでウイルスの増殖が抑えられ、免疫細胞の働きが強まる効果が期待できるため、発熱は身体がウイルスと戦っている証拠といえます。

インフルエンザに感染すると必ず熱が出ますか?

インフルエンザウイルスに感染し、発症すると多くの場合に38〜39度、あるいはそれ以上の高熱がみられますが、すべての方が高熱を出すわけではありません。特に高齢の方、免疫力が低下している方、ワクチン接種を受けている方などでは、発熱が軽度である場合や、まったく熱が出ないこともあります。

そのため、熱が出ていないからといってインフルエンザを否定することはできず、それ以外の症状や検査結果などを総合的に判断して診断されます。

参照:『インフルエンザ施設内感染予防の手引き』(厚生労働省)

インフルエンザでも1日で熱が下がることがある理由を教えてください

インフルエンザの経過は個人差が大きく、1日で熱が下がることもあります。これは、もともとの免疫反応や体質、感染したウイルスの量、治療薬の使用状況などが関係しています。

特に抗インフルエンザ薬を服用すると、身体内でのウイルス増殖が早い段階で抑えられ、発熱が短期間で改善することがあります。また健康な若い方では免疫反応が迅速かつ効率的に働くため、1日程度で熱が下がることもあります。

1日で熱が下がる場合と高熱が出る場合では何が違うのですか?

1日程度の短期間で熱が下がる場合と、高熱が数日続く場合では、背景にある免疫状態や健康状態に違いがあります。健康な若い方は免疫が活発に働きやすく、ウイルスの増殖を早期に抑える力が強いため、熱が早く下がる傾向があります。

一方、高齢の方や持病を持つ方では免疫反応が鈍く、ウイルスの排除に時間がかかるため、熱が長引くことがあります。また、サイトカインの過剰な分泌によって免疫が過剰反応し、高熱が続く場合もあります。

インフルエンザで1日が熱が下がった後の注意点

インフルエンザで1日が熱が下がった後の注意点

インフルエンザでも1日で熱が下がれば登校や出社は問題ありませんか?

熱が1日で下がったとしても、すぐに学校や職場へ戻ってはいけません。身体内にはまだインフルエンザウイルスが残っている可能性があり、周囲の方に感染させる可能性があるためです。

インフルエンザは、発症の前日〜発症後7日程度にわたってウイルスを排出するとされており、この期間は他者への感染を防ぐためにも外出や集団生活を控えることが望まれます。

学校保健安全法では『発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児の場合は3日)を経過するまで出席停止』と定められています。これは、症状が軽快しても感染力が残っている可能性を考慮した措置です。会社員に対しても同様の配慮が求められ、職場復帰するタイミングは医師の指示や体調の回復状況を踏まえて判断しましょう。

参照:『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)

1日で熱が下がった後、再度発熱することはありますか?

インフルエンザでは、一度熱が下がった後でも再び発熱することがあります。これは、身体内の免疫反応がまだ安定していない場合や、ウイルス感染に続いて細菌による二次感染(肺炎や気管支炎など)を起こした場合などでみられます。

特に、咳が悪化する、息苦しさが続く、強い倦怠感がみられるような場合は、症状が進行している可能性があるため、速やかに医療機関を受診することが推奨されます。

インフルエンザで1日で熱が下がった場合の注意点を教えてください

熱が1日で下がったからといって、すぐに回復したと判断するのは危険です。身体内にはまだウイルスが残っている可能性があり、免疫機能も完全には回復していないため、数日は安静に過ごしましょう。水分や栄養をしっかり摂り、身体を温めて休養することで、免疫の働きを支え、体調の改善を促進できます。

また、周囲への感染を防ぐためにも、外出は控え、マスクの着用や手洗い、アルコール消毒などの基本的な感染対策を継続しましょう。
熱が下がっても咳や倦怠感が強く残っている場合は、医療機関に相談しましょう。基礎疾患のある方や高齢の方は、合併症を起こす可能性が高いため、早めの対応が重症化の予防につながります。

インフルエンザ治療薬により1日で熱が下がったときの注意点

インフルエンザ治療薬により1日で熱が下がったときの注意点

インフルエンザの治療薬を飲むとすぐに熱が下がる理由を教えてください

インフルエンザの治療薬の一つである抗インフルエンザ薬には、ウイルスが身体内で増えるのを抑える働きがあります。その結果、免疫機能が活発に働き、発熱が早く改善することがあります。

特に発症から48時間以内に抗インフルエンザ薬を開始すると、発熱や症状の期間を平均1日ほど短縮し重症化を防ぐなどの効果が期待され、1日で熱が下がる場合もあります。ただし、熱が下がったからといってウイルスが完全に消えて非感染化した訳ではないことは覚えておきましょう。

参照:『令和6年度インフルエンザQ&A』(厚生労働省)

治療薬によって1日で熱が下がったら普段通りの生活に戻ってもよいですか?

治療薬によって熱が早く下がった場合でも、すぐに通常の生活に戻ることは避けるべきです。身体にまだインフルエンザウイルスが残っており、ほかの方に感染させる可能性があります。学校保健安全法で定められた休養期間はしっかり休む必要があります。また、1日で解熱したからといって抗インフルエンザ薬の服用を途中でやめることはせずに、すべて飲み切りましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ
インフルエンザは多くの場合に38度以上の高熱を伴いますが、場合によっては1日で熱が下がることもあります。これは免疫反応の速さや体質、ウイルス量、そして治療薬の効果などが影響しています。

しかし、熱が早く下がったからといって病気が完全に治ったわけではなく、身体内にはまだウイルスが残っており、周囲へ感染させる可能性もあります。

解熱後すぐに登校や出社をすると、体調を悪化させるだけでなく、感染を広げる可能性があります。学校保健安全法では『発症から5日、かつ解熱から2日(幼児は3日)』を経過するまで出席停止と定められており、会社員も同様に医師の指示を踏まえた慎重な判断が求められます。

また、解熱後に再び発熱する、咳が悪化する、倦怠感が強くなるといった場合は、肺炎などの合併症が隠れている可能性もあるため、早めに受診することが推奨されます。

インフルエンザは熱が下がっても治癒しているとは限りませんので、解熱後こそ慎重に過ごすことが体調を整える近道です。

この記事の監修医師