「逆流性食道炎の治療薬」はどんな種類がある?効果や副作用となる症状も解説!

胸のあたりがしくしく痛む、酸っぱいものがこみ上げてくる、そんな症状はありませんか?
それは逆流性食道炎かもしれません。日常のちょっとした不調として見過ごされがちですが、放っておくと生活の質を大きく下げてしまうこともあります。
この記事では、逆流性食道炎の原因や症状に加えて、治療に使われる薬の種類とその効果・副作用、さらに薬以外の対処法をわかりやすく解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
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脳神経内科
眼科(角膜外来)
目次 -INDEX-
逆流性食道炎の基礎知識

逆流性食道炎はどのような病気ですか?
代表的な症状には、胸のあたりが焼けるように熱く感じる(胸やけ)や酸っぱいものが喉まで上がってくる(呑酸)などがあり、こうした不快な症状が続くと、日常生活の質が下がってしまいます。
進行すると、吐血や食道の狭まり(狭窄)といった合併症を起こすこともあるため、放置せずに治療が必要です。
逆流性食道炎の主な症状を教えてください
- 胸やけ
みぞおちから胸の中央にかけて、焼けるような熱さや不快感を覚える状態です。 - 呑酸(どんさん)
酸っぱい液体や苦味のある胃液が喉やお口まで上がってくる感じです。
このほかにも、以下のような症状が出ることがあります。
- 胸の痛み
- 咳や喘息のような発作
- のどの違和感、声がれ、耳の痛み、つかえ感
- 歯が酸で溶ける(酸蝕症)
- 睡眠障害(夜間に症状が強くなることも)
なぜ逆流性食道炎になるのですか?
胃と食道の境目がうまく閉まらない
食道と胃の間には逆流を防ぐ筋肉がありますが、これが緩むと胃の内容物が逆流しやすくなります。
この状態になりやすい要因
- 食道裂孔ヘルニア
- 妊娠や肥満
- 背中が曲がる(骨粗鬆症など)
- 前かがみの姿勢・夜間に寝る姿勢
- 一部の薬(高血圧の薬、亜硝酸薬など)
- 胃の手術後
- 強皮症などの病気
胃酸が多く分泌される
胃酸が多くなると、逆流したときに食道へのダメージが強くなります。
この状態になりやすい例
- ピロリ菌の除菌治療後
- ホルモンの病気で胃酸が増える場合
食道の自浄作用が低下する
本来、食道には胃酸を押し戻したり洗い流したりする働きがありますが、それがうまく機能しないと炎症が起こりやすくなります。
影響する要因
- 加齢
- 強皮症、シェーグレン症候群、糖尿病などの病気
- 一部の糖尿病の薬
逆流性食道炎の治療法と用いられる薬について

逆流性食道炎の治療法を教えてください
治療はまず、薬による内科的治療が基本です。加えて、生活習慣を見直すこともとても重要です。
例えば、次のような対策が効果的です。
- 禁煙(タバコは胃酸の分泌を促進するため)
- 適正な体重の維持・特にお腹周りの減量(腹圧が高いと逆流しやすくなる)
- 食後すぐに横にならない(最低でも2~3時間は間を空ける)
- 夜遅い時間の食事や、脂っこい食事・アルコールの摂取を控える
- 就寝時は上半身を少し高くして寝る(逆流を物理的に防ぐ効果があります)
これらの工夫は、薬物療法と並行して行うことで相乗的な効果が期待できます。
なお、薬で十分な改善が得られない場合や、症状が重く再発を繰り返すようなケースでは、手術療法が検討されることもあります。ですが、ほとんどの患者さんは薬物療法と生活習慣の改善で治療が可能です。
逆流性食道炎はどのような薬で治療しますか?
- プロトンポンプ阻害薬(PPI)
- カリウムイオン競合型胃酸抑制薬(P-CAB)
- H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)
薬の種類別に効果を教えてください
よく使用されている薬のひとつで、胃の壁にあるプロトンポンプと呼ばれる酵素の働きをブロックすることで、胃酸の分泌を強力に抑える作用があります。
通常は1日1回の服用で十分とされており、継続的な使用によって症状の軽減が期待できます。ただし、効果が出るまでに数日かかることがあるため、焦らず服薬を続けることが大切です。
代表的な薬
- オメプラゾール(オメプラール®)
- ランソプラゾール(タケプロン®)
- ラベプラゾール(パリエット®)
- エソメプラゾール(ネキシウム®)など
カリウムイオン競合型胃酸抑制薬(P-CAB)
近年登場した新しいタイプの薬で、PPIと同様に胃酸を抑える作用がありますが、即効性が高く、より強力に作用するのが特徴です。服用後数時間で効果があらわれるため、急性期や症状の強い方に適しています。
代表的な薬
- ボノプラザン(タケキャブ®)
H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)
こちらは少し前の世代の薬ですが、今でも軽度の逆流性食道炎や一時的な症状に対して用いられることがあります。PPIやP-CABに比べて作用は穏やかですが、副作用が少なく、安全性が高いのが利点です。
代表的な薬
- ファモチジン(ガスター®)
- ラフチジン(プロテカジン®)
- ニザチジン(アシノン®)など
逆流性食道炎の薬にはどのような副作用がありますか?
- 血液の成分が減る(白血球や血小板の減少)
- 肝機能の数値が上がる(AST、ALTなど)
- かゆみや皮膚のトラブルが出ることもあります
気になる症状が出た場合は、すぐに医師に相談してください。
服薬治療以外に自分でできることと生活上の注意点

逆流性食道炎を改善するために自分でできることを教えてください
- 禁煙
たばこは胃と食道の境目の筋肉をゆるめてしまいます。 - 体重を減らす
特にお腹周りの圧力が高いと胃酸が逆流しやすくなります。 - 寝方に工夫を
寝るときは、枕を高くしたり上半身を少し起こした姿勢をとったりすると、胃酸が逆流しにくくなります。 - 寝る前の食事に注意
アルコールや脂っこい食べ物は、夜遅くに摂らないようにしましょう。
日常のちょっとした工夫が、症状の軽減につながります。
逆流性食道炎と診断されたらどのようなことに気を付けるとよいですか?
例えば、胃酸によって粘膜が傷ついて出血したり、長期間の炎症で細胞が変化したりすると食道がんのリスクが高まることもあります。
だからこそ、診断されたら「そのうちよくなるだろう」と我慢せずに、しっかりと治療を続けて、症状がきちんと落ち着くまでケアすることがとても大切です。
編集部まとめ

今回は、逆流性食道炎の原因や主な症状に加えて、治療に使われる薬の種類とその効果・副作用、さらには薬以外の対処法についてもご紹介しました。
胸のあたりがムカムカする、酸っぱいものがこみ上げてくるといった症状が続く場合は、無理に我慢せず、早めに医療機関を受診することが大切です。
早期に対処することで、つらい症状をやわらげるだけでなく、将来的な合併症も予防できます。
ご自身の身体のサインに耳を傾け、適切な治療を受けることが、健康への第一歩です。




