目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「糖尿病」を発症したらどんな「運動療法」が効果的?【医師監修】

「糖尿病」を発症したらどんな「運動療法」が効果的?【医師監修】

 公開日:2025/09/16
「糖尿病」を発症したらどんな「運動療法」が効果的?【医師監修】
糖尿病は、血糖値が慢性的に高くなる病気で、放置すると血管や神経、腎臓、目などに合併症を引き起こすリスクが高くなります。治療には食事療法運動療法薬物療法の3つが基本とされており、このうち運動療法は、自分自身で取り組むことができる大切な方法です。

運動には、血糖値を下げる、インスリンの効きをよくする、体重のコントロールに役立つといった効果があります。さらに、ストレス解消や気分転換、体力の維持・向上にもつながるため、生活の質を高めるうえでも重要です。

とはいえ、糖尿病の患者さんのなかには、「どのような運動をすればよいかわからない」「身体に負担がかかるのではないか」と不安を感じる方も少なくありません。この記事では、糖尿病に効果のある運動の内容や注意点、運動を継続するためのポイントまでを、具体的にわかりやすく解説します。
林 良典

監修医師
林 良典(医師)

プロフィールをもっと見る
名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

糖尿病の運動療法の効果

糖尿病の運動療法の効果

糖尿病の主な治療法を教えてください

糖尿病の治療は、食事、運動、薬の3本柱で成り立っています。

食事療法では、糖質や脂質、たんぱく質のバランスを考えた食事内容が重視され、過剰な摂取や偏った栄養の改善を図ります。

薬物療法では、血糖値を下げる内服薬やインスリン注射が使われます。

そして運動療法は、エネルギーの消費を促すだけでなく、血糖のコントロールを根本から改善する力があります。日常生活のなかに取り入れることで、病気の進行を抑える効果が期待されます。

糖尿病治療のなかで運動療法はどのような位置付けですか?

運動療法は、糖尿病の基本的な治療のひとつです。特に2型糖尿病では、運動不足や肥満が発症や悪化の要因となるため、運動の継続が治療の中心になります。

運動は血糖値を一時的に下げるだけでなく、代謝のバランスを整えて、血糖が安定しやすい身体の状態をつくります。毎日の生活に取り入れることで、食事療法や薬の効果も出やすくなります。

さらに、運動は自分で続けられる治療手段でもあります。生活リズムが整い、自己管理の意識も高まることで、治療への前向きな気持ちにもつながります。

糖尿病に対して運動がもたらす効果を教えてください

運動には、血糖値の改善をはじめとした多面的な効果があります。まず、運動中に筋肉がブドウ糖を取り込んで使用することで、血糖値が下がりやすくなります。さらに、筋肉量が増えることで基礎代謝が高まり、日常的にエネルギーを消費しやすい体質へと変わっていきます。

継続的な運動は、内臓脂肪を減らし、インスリンの効き目を妨げる要因を取り除くため、インスリン抵抗性の改善にも効果的です。その結果、血糖コントロールが安定しやすくなります。

また、運動は血圧や中性脂肪、HDLコレステロールなど、動脈硬化に関わる指標にもよい影響を与えます。

糖尿病によい運動の種類と注意点

糖尿病によい運動の種類と注意点

糖尿病の患者さんはどのような運動をすればよいですか?

糖尿病に適しているのは、有酸素運動と軽い筋力トレーニングの組み合わせです。有酸素運動にはウォーキングや自転車、水泳などがあり、息が軽く上がる程度の運動が理想的です。

体力や年齢、合併症の有無によって適した運動は異なります。まずは医師や専門家に相談したうえで、自分に合った強度と頻度の運動を始めましょう。

糖尿病の患者さんに向かない運動の種類を教えてください

急に強い負荷がかかる運動や、長時間無理をして行う運動は注意が必要です。特に糖尿病の合併症として網膜症や神経障害、心疾患がある方は、ジャンプを多用する運動や重量を扱うトレーニングは避けましょう。

また、運動中の低血糖にも注意が必要です。血糖降下薬やインスリンを使用している方は、運動前の血糖値の確認が大切です。体調や血糖値の変動を見ながら、運動の安全性に配慮して行いましょう。

運動するときはどのようなことに気を付ければよいですか?

まずは、運動前後の血糖値を確認する習慣をつけましょう。血糖値が低すぎるときは運動を避け、必要に応じて補食をとってから始めます。特にインスリン使用中の方は、食後1〜2時間後の運動が安全性が高いとされています。

水分補給も忘れずに行い、脱水による血糖の変動を防ぎます。天候の影響を受けにくい室内運動や、転倒リスクの少ない環境で行うこともポイントです。体調が優れないときや、運動中に異変を感じた場合は無理をせず中止してください。

具体的な運動の方法と運動を継続するためのポイント

具体的な運動の方法と運動を継続するためのポイント

運動が苦手な人でも無理なく続けられる運動を教えてください

運動が苦手な方には、ながら運動日常生活のなかでできる運動がおすすめです。例えば、掃除や洗濯など家事の動きを意識するだけでもエネルギー消費につながります。散歩や買い物時に1駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うといった工夫も有効です。

座ったまま行える足踏み運動やストレッチ、テレビを見ながらの体操なども続けやすい方法です。まずは続けられることが第一歩です。

推奨される1週間の運動メニューを教えてください

糖尿病の管理には、中等度の有酸素運動を週に合計150分以上行うことがすすめられています。この150分は、1回30分を週5回に分けてもよいですし、1回15分を1日2回にしてもかまいません。連続で休む日が2日以上にならないよう、複数日に分けて行うのが効果的です。

1週間のメニュー例(30分×週5日)

  • ウォーキング(やや速めのペース)30分 朝夕の散歩や、買い物ついでの歩行でも効果があります。
  • 自転車こぎ30分 屋外でも室内のエアロバイクでもよいです。
  • ラジオ体操+足踏み運動を組み合わせて30分 テレビや音楽を流しながら行うと続けやすくなります。
  • 階段昇降や家事(掃除・洗濯など)を多めに行う 息が少し上がる程度の動きが目安です。
  • 雨の日は室内でステップ運動や動画に合わせた体操30分 YouTubeやアプリを使った運動もおすすめです。

運動は必ずしも一度に30分行う必要はなく、10分×3回、15分×2回に分けても効果があります。これらを無理なく組み合わせて、1週間で合計150分の運動を目指しましょう。継続することが血糖管理の安定につながります。

これまで運動習慣がなかった人でも継続する方法はありますか?

運動を習慣化するためには、最初から完璧を目指さず、始めるハードルを下げることが大切です。5分だけ歩く、エレベーターではなく階段を1階分だけ使うといった、小さな目標から始めましょう。こうした行動の積み重ねが、自信や達成感につながり、自然と習慣に変わっていきます。

毎日続けるためには、日常生活に無理なく組み込む工夫も有効です。例えば、買い物や通勤のときに少し遠回りする、テレビを見ながらストレッチをするなど、ついで運動ながら運動を取り入れると、継続の負担が軽減されます。

運動記録を手帳やスマートフォンのアプリでつけると、努力の成果が目に見えて、継続のモチベーションにもなります。歩数計アプリで日々の歩数を確認したり、週単位の目標を立てて達成度をチェックしたりするのもおすすめです。

編集部まとめ

編集部まとめ

糖尿病において運動は、治療の柱のひとつとして重要です。血糖値の改善に加え、インスリンの効きの向上、体重の適正化、生活習慣病全般の予防にもつながります。無理なく始められる運動を選び、自分のペースで続けることが大切です。体調や合併症に応じて、医師と相談しながら進めましょう。

この記事の監修医師