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「糖尿病の壊疽(皮膚障害)」になるとどんな症状が現れる?壊疽の初期症状も解説!

 公開日:2025/10/12
「糖尿病の壊疽(皮膚障害)」になるとどんな症状が現れる?壊疽の初期症状も解説!

糖尿病の壊疽について聞いたことはありますか?糖尿病は身近でよく聞く疾患ですが、合併症や症状、治療を知らない方も多いでしょう。特に糖尿病性壊疽は罹患すると残りどのくらい生きられるか(生命予後)、また、どのくらい元のように動けるようになるか、生活できるようになるか(機能予後)の両面で重要な病態です。糖尿病性壊疽をよく知り、防ぎましょう。

上田 莉子

監修医師
上田 莉子(医師)

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関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

糖尿病による壊疽の基礎知識

糖尿病による壊疽の基礎知識

糖尿病の壊疽とは何ですか?

糖尿病性潰瘍・壊疽ガイドラインによれば、糖尿病の壊疽とは、糖尿病患者さんにおこる糖尿病性皮膚障害のひとつです。ゆっくりと進行したり、長い時間かけたりして形成された、黒く死んでしまった病変のことを壊疽といいます。 糖尿病の影響で以下のような問題が起きるために発症します。

  • 神経がうまく働かず、痛みやケガに気付きにくくなる(神経障害
  • 血の流れが悪くなって、治りが悪くなる(末梢動脈の病気

壊疽となってしまうと、もとに戻ることはありません。

糖尿病になると壊疽が起こる理由を教えてください

糖尿病の方では、けがやキズができたときに正常の治癒機構がスムーズに働かず、治りにくいことがあります。なぜなら、糖尿病は神経障害、末梢血管障害や局所の高血糖状態、さらには患者さんの活動性低下など、傷が治る過程を阻害する因子により治癒機転が阻害されるためです。

通常傷ができると、炎症、細胞が増える、傷あとを修復、の3つの段階を経て自然に治ります。しかし、糖尿病ではこの一連の流れが通常どおり進まず、次のような現象が起こります。

  • 高血糖のために免疫細胞や皮膚の修復に関わる細胞の働きが低下する
  • 血流が悪くなり、必要な栄養や酸素が届きにくくなる
  • 酸素不足が起きると、逆にコラーゲンを壊す酵素(MMP-1など)が増え、治癒を阻害する

糖尿病は神経障害を引き起こす疾患です。しびれや感覚が鈍くなることがあり、さまざまな弊害をおこします。靴ずれや小さなキズに気付きにくく、悪化しがちです。また、痛みを感じにくくなるため傷を放置してしまうこともあります。

血糖が高いと免疫機能が落ち、細菌に感染しやすくなります。感染のため炎症がひどくなり、さらに治癒しにくくなり、また感染を起こす悪循環に陥ることも多いです。

糖尿病による壊疽の初期症状と危険性

糖尿病による壊疽の初期症状と危険性

壊疽には前兆や初期症状はありますか?

糖尿病性壊疽の初期症状は、目立たず気付きにくいのが特徴です。壊疽となる前に、神経障害に気付き、足のケアを予防的に行うことが重要です。神経障害があり、足の裏や指先の感覚が鈍くなると、傷や感染に気がつきにくくなります。血流の低下により足先の色が白っぽくなったり、うっ血や虚血により紫や黒っぽくなったりという変化も起こります。足の冷感や脈が触れにくい症状も末梢血流障害の兆候としてあらわれます。

実際に、小さな傷ができたとき、さらに注意が必要です。靴ずれ、爪の食い込み、虫刺され、水ぶくれや皮膚の乾燥、ひび割れなどが起こっていないか、足を毎日よく観察することが重要です。

壊疽の初期症状を放置するとどうなりますか?

壊疽の初期症状を放置すると、感染を併発してさらに治癒が難しくなります。潰瘍が進むと、もとに戻れない非可逆的変化がおこります。

感染が皮下組織や骨に広がると、蜂窩織炎や骨髄炎となり、歩けなくなることもあります。強い抗菌薬や入院治療が必要になることもあります。しかし、血流が悪いために局所に抗菌薬が届きにくく、感染制御不能になることも多いです。さらに時間が経過すると命を守るために足指、足首、下腿などを切断せざるをえなくなる場合があります。このような場合、日常生活に大きな影響を及ぼし、介護が必要になることもあります。

糖尿病によって足の切断を余儀なくされる方の割合を教えてください

海外では、糖尿病の足潰瘍の有病率は1.5~10%、 足切断率は年間0.3~0.6%と報告があります。日本では、糖尿病足潰瘍の年間発症率が0.3%、 切断率は0.05%程度と海外の10分の1とする報告が多いです。

糖尿病による壊疽の治療方法と効果

糖尿病による壊疽の治療方法と効果

初期段階の壊疽はどのように治療しますか?

自分の足の状態を知ることは、糖尿病による足のトラブルを防ぐためにとても大切です。皮膚の様子や血の巡り、しびれ、足の形などに日頃から気をつけて、必要なときは医師の診察を受けましょう。 まず始める治療として大切なのが、フットケアです。

足の裏にできた傷は、歩くたびに体重がかかって悪化しやすいです。そのため、特別な靴やギプス(オフローディング)を使って、傷にかかる圧をできるだけ減圧します。専門の靴や装具を使用するようにしましょう。

傷をやさしく洗って、乾いた清潔なガーゼなどで保護します。消毒液の使いすぎは皮膚を傷めるので、医師の指示に従いましょう。湿った環境の方が傷が早く治るため、保湿ガーゼや創傷被覆材を使うことがあります。

加えて血糖管理を強化します。さらに、糖尿病性壊疽の成因に基づき治療を行います。まず、血行障害があるかどうかを評価します。血行障害がない場合は神経障害と感染を伴うことが多いため、抗菌薬の治療と死んだ組織を取り除く治療を行います。

傷の表面に黒くなった皮膚や膿があると、治りが悪くなります。医師が必要に応じて、壊死した組織をとりのぞきます(=デブリードマン)。

傷が赤く腫れたり、熱をもっていたり、膿が出る場合は感染徴候です。抗生物質の飲み薬や点滴で治療を行います。

血行障害がある場合は、できるだけ早く血行再建術を行います。

進行した壊疽の治療法を教えてください

壊死が深部に及ぶ場合、より侵襲的な治療が必要になります。

  • 血行再建術 具体的には、血管を広げるカテーテル治療(バルーンやステントなど)、閉塞したり狭窄したりした血管を迂回するようにほかの血管から血流が流れるようにするバイパス手術などです。足先に血液が流れるようにします。
  • 局所創傷管理 広範な壊死部を外科的に除去し、感染源を取り除いたうえで陰圧閉鎖療法やbFGF製剤などを用いて肉芽形成を促します。
  • 集学的医療 内科形成外科、フットケア外来、看護師などと連携し、全身管理と創傷処置を統合した治療が必要です。
  • 特殊療法 無菌ウジ虫による生物学的デブリードマン(MDT)などの高度療法も選択肢となります。

早期の血行再建や適切な創傷ケアにより、壊疽の範囲を小さくし、切断を防げる可能性が高まります。

広範な壊死や感染制御困難の末期壊疽の場合、血流が保たれていない組織を切り離す治療が必要になります。命を守るため、感染制御が不可能なケースでは足指単位から下腿切断まで、検討されます。足を切断した場合、着衣、移動、入浴、トイレの使用などの日常生活のADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)が低下する可能性があり、切断後の断端ケアやリハビリテーション、義足装着などを含む生活支援が重要です。切断は最終手段ですが、命を救うために選択されることがある重大な介入です。

治療を行えば足は元どおりになりますか?

糖尿病性壊疽は再発の多い疾患です。また、糖尿病は病歴が長くなると足の変形を伴うこともあり、管理がより難しくなります。加えて原疾患による神経障害、血行障害は進行性であり、壊疽を起こしやすい患者さんはリスクが上がりやすいです。 したがって、早期に治療する、あるいは予防が重要な疾患です。

壊疽の治療を行った後のリハビリテーションについて教えてください

糖尿病性壊疽の治療後のリハビリテーションは、再発予防、歩行機能の回復、生活の質の維持を目的に多職種で行われます。 再発予防のためのケアとして、フットケアと足の圧分散が重要です。 足底の圧力が集中しないよう、装具(インソール、靴)や特注靴、歩行補助具を使用します。 また、歩行機能の回復のため、筋力のリハビリテーションを合わせて行います。下肢筋力トレーニングで活動制限後の筋力低下を防ぐことが重要です。また、治療後に傷や装具のために歩行訓練が必要になる場合があります。傷や装具に合わせた負荷の調整が必要となるため、義肢装具士、理学療法士と連携して行います

編集部まとめ

編集部まとめ

糖尿病で発症する壊疽の初期症状や予防、治療法を解説しました。糖尿病は全身に影響を及ぼす疾患であり、特に壊疽は集学的治療が必要な疾患です。生命予後も悪いため、予防と早期発見、早期治療が重要になります。糖尿病と診断された場合、フットケアを定期的に正しく行い、壊疽を未然に防ぎましょう。

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