「糖尿病の治療法」はご存知ですか?発症したら気を付けることも解説!【医師監修】

糖尿病は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの作用不足によって慢性の高血糖が続く代謝疾患群と定義され、放置すると合併症を引き起こし、生活の質の低下や寿命の短縮につながる可能性があります。そのため、適切な診断と継続的な治療が重要です。

監修医師:
上田 莉子(医師)
目次 -INDEX-
糖尿病における治療の位置付け

糖尿病は病院で治療すれば完治しますか?
糖尿病治療の目的を教えてください
- 血糖値、血圧、脂質代謝を良好な状態にコントロールする
- 適正体重を維持し、禁煙を遵守する
- 糖尿病に特有な細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)や、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患(大血管合併症)の発症・進展を阻止する
血糖コントロールの具体的な目標値は、合併症予防の観点からHbA1c 7.0%未満、空腹時血糖130mg/dL未満、食後2時間血糖180mg/dL未満が掲げられることが多いです。しかし、低血糖のリスク、糖尿病の罹病期間、平均余命、血管合併症の進展などを考慮し、個々の患者さんに合わせて目標を設定することが重要とされています。特に高齢の方や治療による有害事象が有益性を上回る場合は、HbA1c 8.0%程度という緩やかな目標が設定されることもあります。
糖尿病を治療しないとどうなりますか?
糖尿病の治療法

病院では初期の糖尿病に対してどのような治療を行いますか?
2~3ヶ月間、十分な食事・運動療法を行っても目標とする血糖コントロールが得られない場合、薬物療法の開始が検討されます。
糖尿病の薬物治療が内服薬で始められるか、早期からインスリンの注射製剤を用いることになるかは、高血糖の程度や尿検査の結果により決定されます。
著明な高血糖や、尿検査でケトーシスという異常を伴う場合は、生活習慣の改善を待たずにインスリン療法の早期導入が検討されることもあります。
薬物療法を開始する際は、急激な血糖降下を避けるため、単剤から開始し、緩やかな血糖改善を目指すのが一般的です。
進行した糖尿病の治療法を教えてください
糖尿病合併症はどのように治療しますか?
ここで注意したいのが、血糖値のみを治療することでは、糖尿病合併症の予防は不完全です。高血圧や脂質異常症、喫煙習慣でも、血管は傷ついてしまうからです。このため、糖尿病合併症の治療は、血糖・血圧・脂質代謝の管理を中心に行われます。
糖尿病になったら気を付けること

糖尿病になったら食事はどうすればよいですか?
適正なエネルギー量を、栄養バランスを整えて規則正しく摂取することが推奨されます。
栄養素の摂取比率は全体のエネルギー摂取量のうち、50〜60%を炭水化物で摂取し、タンパク質を20%以下、残りを脂質とするのが目安です。個々の食習慣を尊重し、柔軟に対応することが必要です。
食事以外に気を付けるべき生活習慣を教えてください
適切な運動習慣の維持により、インスリン抵抗性の改善、エネルギー消費量の増加による血糖コントロールの改善、高血圧症・脂質異常症・内臓脂肪型肥満などの心血管病リスク因子の是正を目指します。
安全上の注意としては運動療法を始める前には、未治療の糖尿病網膜症、虚血性心疾患、末梢動脈疾患などがないか事前評価が重要です。これらの疾患がある場合は、治療して安定した後に運動療法が許可されます。
糖尿病と診断されたらお酒やタバコは止めた方がよいですか?
アルコール摂取については、大量飲酒例がビグアナイド薬(メトホルミン)の禁忌に該当し、メトホルミンを飲んでいる方が大量飲酒を続けると、乳酸アシドーシスという重篤な副作用のリスクがあるため、細心の注意を払う必要があります。アルコールを完全に止めるべきとはされていませんが、一般的に糖尿病患者さんにおいては、節度ある飲酒が求められます。特にメトホルミンを服用している場合は、飲酒量について医師に相談し、指示に従うことが重要です。
編集部まとめ

糖尿病はインスリンの作用不足に基づく慢性の高血糖を主徴とする代謝疾患群です。現在の医学では完治は難しいものの、適切な治療によってQOLを維持し、合併症を予防・管理することで、糖尿病ではない方と変わらない寿命を確保することを目指します。
治療の基盤は、年齢や病態に合わせた食事療法と運動療法による生活習慣の改善です。それでも血糖コントロールが不十分な場合には、個々の病態や合併症、生活スタイルに合わせた薬物療法が選択されます。
また、食事や運動は薬物療法との関連性を考慮し、偏った食事や自己判断による極端な制限、特定の薬剤服用中の過度な運動は低血糖を招くおそれがあるため、主治医に相談しながら進めましょう。
参考文献
- 日本糖尿病学会(編・著):糖尿病治療ガイド 2024,文光堂,2024
- 一般社団法人日本糖尿病学会『健康食スタートブック』




