「動脈硬化を予防」するには食事でどんなことに気を付けた方がいいの?【医師監修】
公開日:2025/09/20

動脈硬化は、血管が硬く狭くなる状態です。進展すると血流の悪化や血管の破裂が起こり、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気の原因になります。加齢とともに誰にでも起こりうる変化ですが、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙などの生活習慣が重なることで、進行のスピードが早まることもあります。一方で、生活習慣を見直すことにより、予防や進行の遅延が可能となります。 本記事では、動脈硬化によって起こりうる疾患や、日々の暮らしのなかでできる予防のポイントを解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
プロフィールをもっと見る
名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
動脈硬化の原因と生じる可能性がある疾患
動脈硬化とはどのような状態ですか?
動脈硬化とは、動脈の血管の壁が硬くなったり、血管の中が狭くなったりする状態です。加齢により誰にでも起こる変化でもあり、血管の老化ともいわれています。動脈はもともと弾力性に富んでいます。弾力性があることで、心臓からの血液の拍出に耐えることができ、全身の臓器へと安定して血液を送ることができます。
しかし、動脈硬化が進むと、血管が衝撃を吸収できず血管壁に傷がついたり、十分な血液を臓器に送れなくなったりします。それによって血圧異常や循環障害が起こることが、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントの原因となります。
動脈硬化の原因を教えてください
血管の老化ともいわれる動脈硬化ですが、加齢だけが原因ではありません。動脈硬化には主に3つのタイプが存在します。粥状動脈硬化、細動脈硬化、メンケベルグ型中膜硬化です。それぞれの現在考えられている原因は以下のとおりです。
粥状動脈硬化(アテローム性動脈硬化)
身体のなかの太い動脈である大動脈や頸動脈などに起こりやすい動脈硬化です。
血管壁に、マクロファージやカルシウム、脂質などで構成されるお粥状の組織(アテローム)が沈着することが原因と考えられています。アテロームが増殖し隆起するとプラークと呼ばれます。アテロームの形成には悪玉コレステロールが関与すると考えられており、生活習慣病である高脂血症が動脈硬化の重要な原因の一つとされています。
細動脈硬化
腎臓や脳にある細い動脈に起こりやすい動脈硬化です。
粥状動脈硬化と異なり、血管内にプラークは蓄積しません。血管の平滑筋が増殖し動脈の壁が厚くなることで血管の中が狭くなります。代表的な原因は生活習慣病である糖尿病です。糖尿病の合併症として重要な、網膜症、腎症、神経障害の発症に関与しています。
メンケベルグ型中膜硬化
動脈を構成する中膜の石灰化が原因です。一般的に血管の中は狭くならないとされていますが、血管が硬くなり弾力性が低下する原因になります。高血圧やストレス、喫煙が原因になると考えられています。
動脈硬化によってどのような病気のリスクが高まりますか?
動脈硬化によってリスクが高くなる病気は多岐にわたります。代表的なものを以下に挙げます。
冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)
心臓は冠動脈と呼ばれる、心臓の周りを走行する細い血管により血液が供給されています。この冠動脈に動脈硬化が起こると、血管の中が狭くなったり血液の流れが悪くなったりします。それにより心臓に十分な血液が送られず、狭心症や心筋梗塞が引き起こされます。
脳血管疾患(脳出血、脳梗塞)
脳の血管の動脈硬化が原因になります。血管が狭くなり血液を送ることができなくなると脳梗塞が、血管が硬く脆くなり血管が破裂すると脳出血が引き起こされます。
末梢動脈疾患
手足の血管の動脈硬化によって、血管の中が狭くなったり、詰まったりして血流が悪くなることが原因です。初期は無症状ですが、進行すると、歩行時に痛みがあり歩けなくなる間欠性跛行や、痺れが出現する病気です。
大動脈瘤
原因は完全には解明されていませんが、大動脈の血管に動脈硬化が起こり、脆くなった部分が膨らむことが原因の一つと考えられています。
このように動脈硬化は、ときに死に至る重篤な疾患の原因となります。
動脈硬化の予防法
動脈硬化は予防できますか?
はい。動脈硬化は血管の老化ともいわれるように、完全には防ぐことはできません。しかし、適切な生活習慣を維持することで、一定の進行を予防することは可能です。
コレステロールや中性脂肪が高い場合の食事はどうすればよいですか?
食事の内容や摂取カロリーはコレステロールや中性脂肪と関係があります。総摂取カロリーが高い食事や脂質量が多い食事はコレステロールを上昇させます。コレステロールを多く含む食べ物としては、卵類や内臓類、魚卵や脂質の多い肉があげられます。一方で、コレステロールを低下させる食べ物もあります。水溶性食物繊維を多く含む食べ物です。具体的には、納豆やきな粉などの豆類、イモ類、根菜類などです。
中性脂肪は、総摂取カロリーが高い食事や、糖分、炭水化物が多い食事が原因とされています。間食やジュースなど、ついつい頻繁に摂取してしまっていないか見直してみましょう。
血糖値が高いときに食事で気を付けるポイントを教えてください
血糖値が高いときに大切なことは、今以上に血糖値を悪化させないことと、血糖の変動を緩やかにすることです。前者のためには、間食やアルコールといった余分なエネルギーや糖質を摂取しないようにすることを、後者のためには、食事をゆっくりよく噛み、野菜を意識してとることからはじめましょう。
血圧が高い場合はどのような食事が推奨されますか?
血圧が高い場合には、何よりも塩分制限が大切です。日本人の平均塩分摂取量は約10gとされていますが、1日の推奨摂取量は6g未満です。調味料を減らす、スープを飲み干さない、漬物や梅干しなどの塩分の多い食べ物を減らす、などちょっとしたことからでも効果が期待できます。
また、地中海食やDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)と呼ばれる、高血圧の予防や改善のために推奨されている食事療法もあります。
動脈硬化の予防に役立つ食事以外の生活習慣を教えてください
動脈硬化の原因は食事や加齢だけではありません。喫煙、肥満、運動不足なども原因とされています。喫煙は動脈硬化のみならず、がんや歯周病などさまざまな病気のリスクとなります。禁煙には健康寿命を延ばす効果もあります。
肥満による内臓脂肪の蓄積が動脈硬化の進行を早めると考えられています。肥満の主な原因は過食や運動不足です。肥満と運動不足を改善するために、まずは現在の生活に10分の運動を追加することから始めて続けるようにしてみましょう。成人の場合には、1日30分以上、週4日以上の有酸素運動が動脈硬化の予防効果があると報告されています。目標とし、徐々に増やしていくとよいでしょう。
動脈硬化をすぐに治療した方がよいケース
健康診断でどのような結果が出たら受診すべきですか?
上述したとおり、生活習慣病は動脈硬化の危険因子です。生活習慣病は自覚症状に乏しく、健康診断で発見されることが多いです。高血圧、糖尿病、脂質異常症のいずれかが指摘された場合には、医療機関を受診し、検査や治療を受けることが推奨されます。そのほかには、健康診断における心臓超音波検査やCT、MRIなどの検査で動脈硬化が疑われる場合も、進行を抑制することが求められますので、受診すべきです。
食事や生活習慣の改善だけでは動脈硬化による疾患の発症を抑えられないケースを教えてください
動脈硬化の予防には、食事や運動、禁煙といった生活習慣の改善が重要ですが、それだけでは十分に抑えられない場合があります。例えば、1型糖尿病は生活習慣ではなく、自己免疫の異常により膵臓のインスリンを分泌する細胞が破壊される病気です。1型糖尿病では、若年時から動脈硬化が進展していると報告されています。治療はインスリン療法が不可欠になるため、食事や生活習慣の改善では動脈硬化の進行を抑制することはできません。
そのほかには、家族性高コレステロール血症のように、遺伝的な要因で悪玉コレステロールが異常に高くなる病気もあります。この病気では、適切な生活習慣も大切ですが、それだけではコントロールすることは困難であり、悪玉コレステロールを下げる薬剤(主にスタチン系薬)が必要になります。
病院では動脈硬化をどのように治療しますか?
病院では、動脈硬化の原因に応じて治療法が選択されます。食事や生活習慣の改善に加え、原因に応じた薬剤の使用が検討されます。また、すでに動脈硬化が進展しており、血管の狭窄が起きている場合には、カテーテルを用いて血管を広げる治療が行われることもあります。
編集部まとめ
動脈硬化は加齢により誰にでも起こる血管の変化ですが、生活習慣病が重なることで進行が早まります。将来の大きな病気を防ぐために、進行する前の予防が肝心になります。食事や運動が基本になりますが、進行している場合には、薬剤やカテーテル治療が行われることもあります。今日から実践できる内容もありますので、ぜひ本記事をきっかけに、生活習慣を見直してみてください。




