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「緑内障の目薬」はどんな目的で処方される?副作用となる症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/08/23
「緑内障の目薬」はどんな目的で処方される?副作用となる症状も解説!【医師監修】

緑内障と診断されて不安に感じていませんか?緑内障は40歳以上の約20人に1人がかかるとても身近な病気で、日本では失明原因の第1位です。しかし、早期発見・適切な治療により生涯にわたって視野や視力を保つことが可能な病気です。大切なのは、これから継続して治療を受けていくこと。緑内障はゆっくり進行し、自覚症状が乏しいため戸惑うかもしれません。本記事では、主な治療法である目薬(点眼薬)について、その役割や使い方を解説します。目薬での治療に不安がある方も、そうでない方も目薬のことを深く知ることで、治療の継続につながります。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

緑内障治療が作用するメカニズムと効果

緑内障治療が作用するメカニズムと効果

なぜ緑内障治療で目薬を使うのですか?

緑内障治療の第一目的は眼の中の圧力(眼圧)を下げることです。眼圧を下げることで、視神経への負担を減らし、視野がこれ以上欠けていくのを防ぎます。現在、眼圧を下げる方法には目薬での治療が最も広く使われ、必要に応じてレーザー治療や手術が追加されます。

たとえ眼圧が正常範囲で発症する正常眼圧緑内障の場合でも、さらに眼圧を下げる治療は有効です。そのため、現在の眼圧より数値を下げた方が緑内障の進行を抑制することが期待できます。このように、目薬で眼圧を下げることは緑内障の進行予防にとても重要です。

緑内障の目薬が作用するメカニズムを教えてください

私たちの目の中では房水という透明な液体が絶えず産生され、循環しています。これが一定の圧力(眼圧)を生み出しています。房水は目の中で毛様体という組織から作られ、瞳孔を通って前方に流れ出た後、角膜と虹彩の間の隅角という部分から排出されます。この排出経路には、線維柱帯およびシュレム管を通る主経路と、ぶどう膜および強膜から流れる副経路の2種類があります。房水の産生と排出のバランスで眼圧が維持されています。緑内障では隅角が詰まったり排出路の抵抗が増えたり、あるいは視神経が眼圧に弱かったりするため、眼圧がその方にとって高すぎる状態になることで視神経が傷みます。そこで、目薬は房水の量を減らすか、主経路や副経路の通りをよくすることで眼圧を下げるように作られています。

緑内障治療に使用される目薬の種類

緑内障治療に使用される目薬の種類

緑内障治療の目薬にはどのようなものがありますか?

現在、緑内障の眼圧を下げる目薬にはいくつかの種類がありますそれぞれ作用の仕方や1日の点眼回数、効果の強さや副作用の特徴が異なるため、患者さんの状態に合わせて主治医が適切な薬を選択します。主な点眼薬の種類は次のとおりです。

  • プロスタグランジン関連薬(PG製剤)
  • β遮断薬
  • α2作動薬
  • 炭酸脱水酵素阻害薬
  • Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬)
  • 配合点眼剤:2種類の有効成分を1本にまとめた目薬

このほかにも、ピロカルピンなどの副交感神経作動薬もありますが、瞳孔が極端に小さくなるため見えにくさや頭痛を起こしやすく、現在は特殊な場合を除きほとんど使われません。

それぞれの目薬の特徴と効果を教えてください

上記で挙げた各種類の特徴をまとめると、下記のとおりになります。

プロスタグランジン関連薬 眼内の房水の排出を促進して眼圧を下げる薬で、現在最も広く使われる第一選択薬です。1日1回の点眼で強力に眼圧を下げる効果が期待できます。ただし、まぶたの色素沈着やまつ毛が伸びるなどの作用があり、長期使用でまぶたがくぼむこともあります。

β遮断薬 房水の産生を抑制して眼圧を下げる薬です。PG製剤に次いで頻用されます。1日に1~2回の点眼が必要で、全身に吸収されると心拍数を下げたり喘息を悪化させたりする可能性があります。そのため、重い心臓病や喘息のある方には使用できません

α2作動薬 房水の産生抑制と排出促進の両方の作用を持つ薬です。1日に2~3回の使用が必要です。点眼時に一時的に目がしみる感じがあることがあります。また、長期使用でアレルギー性結膜炎(充血やかゆみ)を起こしやすい点にも注意が必要です。

炭酸脱水酵素阻害薬(CAI) 房水の産生を抑える点眼薬です。1日2~3回の使用が必要です。また、点眼後に薬液が喉に流れると苦味を感じる方もいます。ブリンゾラミドは懸濁液なので点眼後に一時的に見えにくくなることがあります。

Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬) 線維柱帯など主経路からの房水排出を促進する薬です。1日2回使用します。点眼後は充血(目の赤み)が強く出る傾向がありますが、一過性とされています。まれにアレルギー性の目の充血やかゆみが出ることもあります。

緑内障の目薬に副作用はありますか?

はい、どの目薬にも副作用はあります。とはいえ、ほとんどの場合は目の充血しみる感じなど軽度なものです。緑内障点眼薬の有効成分自体による副作用に加え、薬を溶かしている防腐剤などによる刺激症状も起こることがあります。共通してよく見られるのは目の充血ですが、時間とともに慣れてきたり、多少目が赤くなったりしても多くの方は治療を続けられています。

また、上記のように薬ごとに特有の副作用もあります。主治医とよく相談し、副作用がつらいと感じたら、我慢せずに遠慮なく主治医や薬剤師に相談しましょう。無理に治療を中断するより、薬を変更したり対策したりすることで解決できる場合があります。

緑内障の目薬とうまく付き合うために

緑内障の目薬とうまく付き合うために

緑内障の目薬はいつまで使い続けるのですか?

緑内障の目薬は基本的に一生続けていくものと考えてください。緑内障は進行性の病気ですが、点眼を続けて眼圧を適切に管理することで、生涯にわたって視野と視力を守れる可能性が高い病気です。

逆に、点眼をやめてしまえば眼圧が再び上がり、緑内障が進行してしまうおそれがあります。特に、初期から中期の緑内障では自覚症状がないため、なかには通院や目薬をやめてしまう方もいます。これはとても危険です。点眼治療は患者さん自身が行う治療なので、続けなければ効果がありません。

目薬の上手な差し方を教えてください

目薬は正しい方法で使うことで効果が最大限発揮され、副作用も減らせます。以下に一般的な正しい手順を示します。

  • 手を石けんできれいに洗います。
  • 顔を上に向け、下まぶたを指で軽く引き、1回1滴だけを点眼します。
  • 点眼後はまぶたを閉じ、1~5分ほど静かに目をつむります。
  • 可能であれば目頭を軽く押さえます。
  • あふれ出た薬液は清潔なティッシュで優しく拭き取ります。

以上が基本的な手順です。大切なのは1回1滴を守ることです。それ以上さしても結局あふれて無駄になるだけでなく、まぶたの皮膚に付着して色素沈着など副作用が出やすくなります。目薬の底を押すようにさすと、1滴がゆっくりと出てきます。複数の種類の目薬を使っている場合は、5分以上間隔をあけてから次の薬を点眼してください。間隔をあけずに連続でさすと、先に入れた薬が涙と一緒に洗い流されてしまいます。

緑内障の目薬を差し忘れたらどうすればよいですか?

うっかり点眼時間を過ぎてしまった場合、気付いたときに速やかに点眼するようにしましょう。そして、次回は通常どおり点眼するのが基本です。日頃から点眼時間を決めて習慣づけておくと、忘れにくくなります。

それでも忙しい日や旅行中など、誰しもうっかり忘れることはあります。たまに1回忘れた程度で急激に悪化する心配はありませんので落ち着いて対処しましょう。ただし、頻繁に忘れてしまうと十分な眼圧コントロールができず治療効果が下がってしまいます。よく忘れてしまう場合は、主治医に相談してみてください。

緑内障の目薬を忘れないための工夫を教えてください

点眼を毎日欠かさず続けるには、できるだけ生活習慣に組み込んでしまうことが大切です。例えば、朝起きて顔を洗ったらすぐ点眼、夜歯磨きをした後に点眼のように別の習慣とセットで行うと忘れにくくなります。そのほかにも、具体的な工夫としては以下のようなものがあります。

  • スマートフォンのアラームやリマインダーを活用する
  • カレンダーや点眼チェック表を使う
  • 目薬を決まった場所に置く
  • ご家族に協力をあおぐ

このようにさまざまな工夫で、点眼を続けやすい環境作りをすることが大切です。自分なりの工夫で、なんとか継続できる方法を見つけていきましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

緑内障治療の原則は眼圧を下げて視神経を守ることです。そして、点眼薬による治療はその第一選択であり、多くの場合は目薬で病気の進行を抑えることができます。患者さんは正しい方法で毎日点眼を続けることが大切です。途中で中断せず、何か気になることがあればすぐ医師に相談してください。わからないことがあれば遠慮なく医療スタッフに質問し、納得しながら治療を続けましょう。

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