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「梅毒」を発症すると「手の甲」にどんな症状が現れるかご存知ですか?【医師監修】

 更新日:2025/11/25
「梅毒」を発症すると「手の甲」にどんな症状が現れるかご存知ですか?【医師監修】

梅毒は性感染症として知られていますが、症状は性器に限らず、身体のさまざまな部位に現れることがあります。そのなかでも手の甲に発疹が出ることがあり、ほかの皮膚疾患と見分けがつきにくいため注意が必要です。本記事では、手の甲にできた発疹と梅毒の関係や、見分け方、検査や治療方法などをわかりやすく解説します。

居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

手の甲にできる発疹と梅毒の関係

手の甲にできる発疹と梅毒の関係

梅毒で手の甲に発疹ができますか?

梅毒では手の甲に発疹が出ることがあります。感染初期には、性器や口唇など感染部位に無痛性の潰瘍(硬性下疳)が生じますが、感染から数週間から数ヶ月が経過すると、菌が全身に広がり、発疹などの全身症状が現れるようになります。これが第2期梅毒と呼ばれる段階です。この時期の発疹は、体幹や四肢、特に手のひらや足の裏、そして手の甲にも出現することがあり、梅毒に特徴的な皮膚症状のひとつです。

発疹は赤褐色で平らな小さな斑点状(バラ疹)で、かゆみがほとんど生じないため、湿疹やアレルギー性皮膚炎などと間違われることもあります。こうした皮膚症状は自然に消えることもありますが、病気そのものが治癒したわけではなく、体内では菌が活動を続けているため、早期の受診と適切な治療が重要です。

梅毒で手の甲に発疹ができたときの進行度合いを教えてください

梅毒は感染時期により、早期梅毒(第1期:感染から1週~3ヶ月、第2期:1ヶ月~1年)、あるいは晩期梅毒に分類されます。早期梅毒の時期を無治療で経過した場合、その後皮膚・心血管・脳神経病変による症状を来すことがあり、このような状態を晩期梅毒(第3期)と呼びます。

手の甲に発疹が現れた場合は、第2期に該当することがほとんどです。この段階では梅毒菌が血流に乗って全身に広がっており、皮膚・粘膜・リンパ節・臓器などに影響を及ぼす可能性があります。この時期は大変感染力が高く、他人に感染させる危険性もあります。さらに放置すれば、皮膚症状はいったん自然に消えるものの、体内に菌が残って慢性化し、やがて深刻な第3期に移行する可能性があるため、早期診断と治療が重要です。

梅毒以外に手の甲に発疹ができる病気はありますか?

はい、手の甲の発疹は梅毒以外にもさまざまな原因で起こります。例えば、洗剤や金属などの刺激物に触れることで起こる接触皮膚炎、アレルギーが関与するアトピー性皮膚炎、皮膚の代謝異常による乾癬、水仕事やアルコールなどで悪化する手湿疹などが挙げられます。また、ウイルス感染による手足口病、水痘、風疹なども手の甲に発疹が出ることがあります。そのため、発疹の性状やほかの症状、生活背景を含めて総合的に診断する必要があります。

手の甲に発疹が梅毒かどうかをチェックする方法

手の甲に発疹が梅毒かどうかをチェックする方法

手の甲にできた発疹が梅毒かどうかを自分で確認する方法を教えてください

梅毒かどうかを自分で判断するのは難しいですが、いくつかのポイントをチェックすることで疑いを持つきっかけになります。例えば、手の甲の発疹に加えて、からだのほかの部位にも同様な発疹がある、発疹にかゆみがない、過去3ヶ月以内に感染リスクのある性行為があった、陰部に痛みのないしこりや潰瘍が出現した経験がある(硬性下疳)などの特徴があれば、梅毒の可能性があります。いずれかに該当する場合は、なるべく早めに医療機関での検査を受けることをおすすめします。

梅毒のほかにどのような症状がありますか?

梅毒は進行段階によって症状が変化する病気です。初期には性器や口唇部などに痛みのないしこりや潰瘍(硬性下疳)が生じ、やがて自然に治癒します。第2期では発疹、リンパ節腫脹、発熱、喉の痛み、全身倦怠感、脱毛などがみられます。その後、症状が消えても菌が体内に潜伏し、数年後に心血管系や中枢神経系に障害を及ぼす第3期梅毒へと進行することがあります。進行してしまうと治療が難しくなるため、早期に気付くことが重要です。

梅毒が疑われるときの診療科目を教えてください

梅毒が疑われる場合は、まず内科や皮膚科を受診するのが一般的です。梅毒は皮膚や粘膜に特徴的な症状が現れることが多く、皮膚科ではそれらの所見から診断の手がかりを得やすいためです。加えて、感染経路の特性から、泌尿器科(男性)や婦人科(女性)でも診察・検査を受けることができます。近年では性感染症に特化した外来を設けている医療機関もあり、より専門的な診療や相談を受けたい場合にはそうした窓口を利用するのもよいでしょう。気になる症状があるときは、早めに受診することが大切です。

梅毒の検査結果は何日でわかりますか?

梅毒の検査には、感染の有無を確認する定性検査と、抗体の量を測定して活動性や治療効果を評価する定量検査があります。これらの血液検査は、通常は採血から数日から1週間ほどで結果が出ます。感染の可能性がある行為から数週間が経過していれば、たとえ症状がなくても検査で確認できることがあります。不安を感じたときは、ためらわずに検査を受けることが、早期発見につながります。

梅毒の治療法と注意点

梅毒の治療法と注意点

病院での梅毒の治療方法を教えてください

梅毒の治療には主にペニシリン系抗生物質が使用されます。初期の梅毒であれば、アモキシシリンやベンジルペニシリンベンザチンなどの抗菌薬を数週間服用または注射することで、ほとんどの場合に完治が可能です。治療中は定期的な血液検査で効果を確認し、治癒の証明が得られるまで通院が必要です。また、パートナーの同時治療や、感染経路の把握と予防指導も重要なポイントとなります。

手の甲の発疹が何もせずに消えたら治療は不要ですか?

発疹が自然に消えても、梅毒の治療は必要です。梅毒は一時的に症状が消えても、体内に菌が潜伏し続ける潜伏梅毒になります。このまま放置すると数年後に重篤な合併症を起こす可能性があるため、検査と治療を受けておくことが重要です。症状がなくても、梅毒は進行していく感染症であることを忘れてはなりません。

梅毒に感染していた場合に気を付けることを教えてください

梅毒に感染していたことが判明したら、まずはパートナーにも検査と治療を促すことが大切です。自分だけが治療を受けても、相手が未治療であれば、再感染してしまうおそれがあります。また、治癒の確認が取れるまでは性行為を避けることが不可欠です。再感染を防ぐためには、今後の性行為中コンドームを正しく使用することや、定期的な性感染症の検査を受けることが推奨されます。さらに、HIVやクラミジアなどほかの性感染症との合併もありうるため、あわせて検査することが望ましいです。早期の対応によって、患者さん本人の健康だけでなく、周囲の方を守ることにもつながります。

編集部まとめ

編集部まとめ

手の甲に現れる発疹は、梅毒を含めさまざまな皮膚疾患の可能性があります。特にかゆみがなく赤褐色で斑点状の発疹が、手の甲以外にも手のひらや足の裏に見られる場合は、梅毒の可能性を考える必要があります。自分での判断には限界があるため、少しでも不安を感じたら早めに医療機関を受診することが大切です。梅毒は適切な治療によって完治が可能な病気ですので、自己判断で放置せず、正しい知識と行動で健康を守りましょう。

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