プール熱(咽頭結膜熱 -いんとうけつまくねつ - )はアデノウイルス感染によって発症する子どもに多い病気です。主な症状は高熱とのどの痛み、結膜炎(目の充血や目やに)です。プール熱は学校保健安全法で出席停止の対象となる感染症でもあります。本記事では、プール熱の検査に焦点を当て、検査の必要性やタイミング、検査を受けられる場所、費用の目安や方法、痛みの有無について解説します。
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
プール熱における検査の必要性と検査のタイミング
プール熱で検査が必要な理由を教えてください
プール熱は感染力が強く集団発生しやすい ため、正確な診断が重要です。プール熱と確認されれば、学校や保育園では出席停止期間 のルールを守ることで、ほかの子どもへの感染拡大を防ぐことができます。また、プール熱はアデノウイルスによるウイルス感染症であり特効薬がなく自然に回復する病気です。加えて、同じ夏かぜでもインフルエンザや溶連菌感染症などのほかの疾患との鑑別が必要な場合もあり、検査で原因を特定する意義は大きいです。特に、高熱が続く場合や症状が重い場合には、原因ウイルスを突き止めるため検査を行うと適切な治療につながります。
どのような症状が出たらプール熱の検査を検討すべきですか?
プール熱の典型的な症状である発熱・のどの痛み・目の充血 が揃った場合、アデノウイルス感染症の可能性が高く検査を検討 します。こうした症状が出揃っていれば医療機関でアデノウイルス検査を受けることを考えましょう。また、症状がそこまで典型的でなくても、発熱とのどの腫れがありぐったりしている など重症感があるときは、念のため受診して検査の必要がないか相談すると安心です。なお、検査して確定しても治療は対症療法になるため、軽症の場合は必ずしも検査が行われないこともあることは知っておくと安心です。
プール熱の検査を受けられる場所
プール熱の検査キットはドラッグストアで販売されていますか?
一般のドラッグストアでは、プール熱(アデノウイルス)の検査キットは市販されていません。 現在使われているアデノウイルス迅速検査キットは、医療機関向けに供給されている体外診断用医薬品であり 、家庭用には販売されていません。
インターネット上でウイルス検査キットが販売されていることがありますが、それらの多くは新型コロナウイルスやインフルエンザ向けであり、アデノウイルス専用の一般向けキットはありません。正確な診断のためにも、プール熱が疑われる症状がある場合は医療機関で検査を受けましょう。
プール熱の検査を受けられる場所を教えてください
プール熱の検査は病院やクリニック で受けることができます。特に小児科 や一般の内科 で対応していることが多いです。子どもの発熱とのどの痛み、目の充血などからプール熱が疑われる場合は小児科を受診すれば検査を含めた対応が可能です。大人の場合も内科で検査できます。また、目の症状が強く出て心配なケースでは、眼科 でもアデノウイルス検査を行うことができます。
プール熱で検査をしてから結果が出るまでの時間を教えてください
迅速検査の場合、検体を採取してから15分程度 で結果がわかります。この迅速検査は医療機関で行われ、その場で短時間で判定できるのがメリットです。来院当日に検査を受ければ、待合室や診察室で数分~15分程度待機すれば結果を教えてもらえます。一方、迅速キット以外の方法として血液検査 が行われることもありますが、これらは結果が出るまでに数日かかる のが一般的です。ただし通常のプール熱診療では、リアルタイムに結果が必要なため迅速検査キットによる診断が行われることがほとんどです。検査当日に結果がわかるため、受診したその日のうちに今後のケア方針(登校は何日休むか、家族内で気をつけることなど)について医師と相談できます。
プール熱の検査費用と方法、痛みの有無
プール熱の検査にはどの程度の費用がかかりますか?
プール熱の検査費用は、
健康保険が適用される場合は少額 です。医師が診察してアデノウイルスの検査が必要と判断した場合、保険診療で検査でき、例えば未就学児(乳幼児医療助成がない2割負担の場合)では自己負担
約600円 が目安です。大人(3割負担)でも
900円前後 の負担となります。
自治体の子ども医療費助成制度があれば、窓口での支払いがさらに減額または無料になることもあります。一方、
家族の希望で検査だけ受けたい という場合など、医師が必要と認めないケースでは
保険適用外(自費) となります。
その場合の費用は診察料も含めて6,000~8,000円程度 が目安です。
プール熱の検査が行われるまでの流れを教えてください
プール熱が疑われる症状がある場合、まず医療機関を受診 します。受付後、医師による問診と診察が行われ、症状や周囲の流行状況などから検査の必要性を判断 します。医師が検査実施を決めた場合、看護師などが検体採取を行います 。採取の際は短時間で終わり、その後、検体を検査キットにかけて約10~15分待機 します。結果がわかったら再度診察室に呼ばれ、医師から検査結果の説明 と、陽性だった場合は登校停止期間や感染対策について指導を受けます。
プール熱の検査はどのように行われますか?
プール熱の検査には主に迅速抗原検査 が用いられます。これはウイルスの抗原(蛋白)を検出するキットで、のどや結膜のぬぐい液 を試薬で反応させて陽性か陰性かを判定します。検査自体は簡便で、綿棒で喉の粘膜やまぶたの裏を軽くこするだけです。検体をキットに滴下して15分ほどで結果が出る ため、その場で診断が可能です。この待ち時間のあいだ、感染を広げないようにマスク着用や手指消毒をして待合室で過ごすよう指示されるでしょう。また、医療機関によっては血液検査を併用することもあります。血液検査では白血球数の増加や炎症反応を見ることでウイルス感染の傾向を把握し、数日後により詳細な結果が得られます。ただし血液検査は補助的な位置づけで、日常診療では迅速検査キットによる診断が一般的 です。なお、以前はウイルスを培養して同定したりPCR検査を行う方法もありますが、これらは時間とコストがかかるため通常の診療では行われません。
プール熱の検査に痛みはありますか?
プール熱の迅速検査は身体に大きな負担や痛みを伴うものではありません 。検体採取時に、のどの場合は綿棒が当たることで、嘔吐反射が出ることがありますが、すぐに終わるため我慢できる程度です。インフルエンザの鼻の奥の検査に比べれば、喉の検査の方が楽だという方もいます。目から検体を採る場合、従来は下まぶたの裏を綿棒でこする方法が行われ、点眼麻酔をしても痛みを感じることがありました。しかし現在は、新しい検査法としてフィルター紙を数秒あてて涙を染み込ませるだけで検体を採取できるキットが登場し、痛みはほとんど伴わなくなりました。幼児でも泣かずに検査できるほど負担が軽く、結果は数分でわかります。このように、プール熱の検査は基本的に痛みの心配は不要です。せいぜい綿棒による不快感が一時的にある程度なので、リラックスして検査を受けましょう。
編集部まとめ
プール熱は高熱・咽頭炎・結膜炎を特徴とするアデノウイルス感染症で、正確な診断と適切な対応が大切な疾患です。検査は主に小児科や内科で行われ、迅速抗原検査により当日中に結果がわかります。健康保険適用で検査できるため費用の負担も小さく、陽性とわかれば登校・登園の停止期間を確実に守るなど公衆衛生上の対策に役立ちます。検査方法は喉や目の粘膜を綿棒で拭うだけで、痛みもほとんどありません。プール熱に特効薬はなく自然に治る病気ですが、高熱で子どもがぐったりすることもあります。症状が疑わしいときは早めに医療機関を受診し、必要に応じて検査を受けましょう。そして診断された際は医師の指示にしたがい、しっかり休養を取って周囲への感染拡大防止に努めてください。
栗原 大智 医師
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。