「糖尿病の合併症」はご存知ですか?合併症による症状も解説!【医師監修】

糖尿病は、初期には自覚症状が少ないものの、放置するとさまざまな合併症を引き起こします。 昏睡に至る急性の合併症や、失明や腎臓病につながる慢性の合併症など、その影響は全身におよびます。合併症の重症化を防ぐには、予防と日常的な管理が欠かせません。この記事では、糖尿病による主な合併症、その予防法や治療法をわかりやすく解説します。

監修医師:
江口 瑠衣子(医師)
目次 -INDEX-
糖尿病の合併症について

糖尿病にはどのような合併症がありますか?
急性合併症は、短期間で生命に関わる状態となる合併症で、代表的なものに糖尿病性昏睡があります。糖尿病性昏睡には、糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群があり、いずれも緊急での治療が必要です。一方、慢性合併症は高血糖が長期間続くことにより徐々に進行する合併症です。主に血管の障害により引き起こされます。
糖尿病により合併症が生じる理由を教えてください
急性の合併症は、このインスリンが不足したり、相対的に不足したりした場合に起こります。具体的には以下のようなものがあります。
- インスリン注射を使用している方がインスリンを減らしたり中止したりする
- ソフトドリンクなどたくさんの糖質を摂取する(相対的不足)
- 手術や感染症などにより高血糖になる(相対的不足)
一方、慢性の合併症は、血糖値が高い状態が長く続いたことにより、血管が傷ついたり、詰まったりするために引き起こされます。
糖尿病合併症|糖尿病性昏睡の症状と予防法、治療法

糖尿病性昏睡とはどのような状態ですか?
インスリンが不足すると、細胞がブドウ糖をエネルギー源として利用できなくなり、代わりに脂肪の分解が増えます。そうすると次のようなことが起こります。
- 脂肪が分解されると、最終的にケトン体という物質ができる
- ケトン体が著しく増加すると、血液が酸性に傾いてしまう
血液が何らかの原因によって酸性に傾くことをアシドーシスといい、このうちケトン体の増加で引き起こされるものをケトアシドーシスと呼びます。これが糖尿病性ケトアシドーシスの病態であり、症状は以下のとおりです。
- のどが渇く
- たくさん尿が出る
- たくさん水分をとる
- 全身のだるさを認める
- 腹痛や吐き気がみられる
一方、高浸透圧高血糖状態は、血糖値が著しく高くなることと、脱水によって血液が極端に濃くなってしまうことで引き起こされます。脱水があるため、のどが渇く、たくさん水を飲みたくさん尿が出る、など糖尿病性ケトアシドーシスと似たような症状がみられることがあります。
糖尿病性昏睡の予防法を教えてください
糖尿病性昏睡はどのように治療しますか?
糖尿病による慢性合併症の症状と予防法、治療法

糖尿病の慢性合併症にはどのような種類がありますか?
大血管症では、動脈硬化の進行によって脳梗塞、心筋梗塞、足の動脈の狭窄や閉塞(末梢動脈疾患)などが引き起こされます。これは糖尿病だけに起こるわけではありませんが、糖尿病があるとより進行しやすいといわれています。
また、これら以外の糖尿病による慢性合併症には、感染症、足の病変、認知症などが知られています。
糖尿病による慢性合併症の種類別に症状や身体への影響を教えてください
糖尿病性網膜症は、目の一番内側にある網膜と呼ばれる部分に異常をきたす合併症です。視力低下などの症状が現れ、最終的には失明に至る可能性のある重大な合併症です。
糖尿病性腎症は、腎臓の機能が低下してしまう病気です。腎臓の機能が低下すると身体に過剰な水分がたまり、むくみや胸水として現れる場合があります。血圧が上昇したり、貧血を認めたりすることもあります。また、病状が進行してくると尿中に排泄されるはずであった老廃物がたまり、頭痛や吐き気、意識障害などを引き起こします。
大血管合併症では、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈疾患(足の血管が細くなったり詰まったりする病気)などが引き起こされます。これらは重大な後遺症を残したり、命に関わる状態になったりすることがあります。
糖尿病の慢性合併症は予防することができますか?
最も重要な予防策は血糖のコントロールです。血糖値を適切な値に管理し、糖尿病の治療を決して中断しないようにしましょう。血圧や脂質の管理、定期的な検査による早期発見も重要な予防策です。
また、生活習慣の改善も合併症予防に効果的です。
- 食事療法
- 運動療法
- 適切な体重管理
- 禁煙
一つずつできるところから取り組んでみましょう。
糖尿病による慢性合併症の治療法を教えてください
糖尿病性神経障害の治療では、それぞれの症状に対して症状を和らげる目的で薬物治療が行われることがあります。糖尿病性網膜症の治療では、病状に応じてレーザー光凝固術などが行われます。また、血糖値、血圧、脂質のコントロールは網膜症の進行抑制に有効な可能性があるとされており、併せて行っていくことが大切です。糖尿病性腎症の治療では、ARBと呼ばれる血圧を下げる薬や、SGLT2阻害薬という糖尿病の薬の腎保護効果も確認されており、必要に応じて使用されることがあります。糖尿病性腎症が進行してしまうと透析治療が必要になる可能性があります。
大血管合併症の治療でも、血糖値、血圧、脂質のコントロールが基本となります。ただし心筋梗塞や脳梗塞などが発症した場合は、それらに対する専門的な治療や薬物療法などが必要です。治療が終わった後は、引き続きその後の再発を予防するために血糖値などのコントロールを厳格に行います。多くは再発予防のための薬物療法も併せて行われます。
編集部まとめ

糖尿病の合併症には、糖尿病性昏睡などの急性合併症と、血管が障害される慢性合併症があります。どちらもそれぞれ命に関わる可能性があり、予防と適切な対処が重要です。治療をきちんと継続し血糖値を適正にコントロールすること、血圧や脂質の管理、食事や運動などの生活習慣の改善、そして定期的な受診が、合併症の発症や進行を防ぐために大切です。症状が出る前から予防の意識をもち、しっかりと取り組んでいきましょう。




