「糖尿病の初期症状」はご存知ですか?初期症状を放置するとどうなるかも解説!
公開日:2025/07/31

糖尿病は、血糖値が慢性的に高くなる病気で、日本では患者さんが年々増えています。初期には自覚しにくく、疲れや加齢と勘違いされやすいため、気付かないうちに進行することがあります。 早期に気付き、適切に対処すれば、進行や合併症を防ぐことができます。そのためには、初期症状や身体の小さな変化に注意し、生活習慣を見直すことが大切です。 この記事では、糖尿病の初期症状や前兆、受診の目安、診断や治療の流れについてわかりやすく解説します。ご自身や大切な方の健康管理にぜひお役立てください。

監修医師:
林 良典(医師)
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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
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脳神経内科
眼科(角膜外来)
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糖尿病の前兆や初期症状について
糖尿病には前兆がありますか?
糖尿病の前兆は、生活のなかで少しおかしいと感じる程度の変化としてあらわれることが多いです。例えば、のどが渇いて水を飲んでもすぐにまた渇いた感じがする、トイレの回数が増えて夜中に何度も目が覚めてしまう、疲れやすくていつまでもだるさが抜けないといったことが挙げられます。これらはすべて、血糖値が高いことによって身体の水分バランスやエネルギー代謝が乱れているサインと考えられます。特に気温が高い時期などは、こうした症状を単なる脱水や夏バテと勘違いしてしまうこともあります。
糖尿病の初期症状を教えてください
初期の糖尿病では、のどの渇きや頻尿、倦怠感に加えて、体重の急激な減少や食欲の異常(過食または食欲不振)なども起こることがあります。また、視界がかすんだり、足先がピリピリするような感覚が出たりすることもあります。これは、血糖値が高い状態が続くことで神経や血管に負担がかかるためです。さらに、風邪を引きやすくなったり、ちょっとした傷の治りが遅くなったりなど、免疫力や治癒力の低下がみられることもあります。こうした症状は一つ一つでは深刻に感じないかもしれませんが、複数が同時に続くようであれば、糖尿病の可能性を疑う必要があります。
糖尿病の初期症状と間違えやすいほかの病気の症状はありますか?
糖尿病の初期症状は、ほかの病気と似ている部分があるため、見分けが難しいことがあります。例えば、更年期障害ではのぼせや発汗、疲労感が目立ちますが、糖尿病でも似たような症状が見られることがあります。また、甲状腺機能亢進症でも体重が減ったり動悸や倦怠感を伴ったりすることがあり、症状だけでは判別がつきにくいことがあります。さらに、夏場の脱水症やストレスによる自律神経の乱れでも頻尿や口渇が出ることがあるため、体調不良が続く場合には、自己判断せず医療機関で血液検査を受けることが大切です。
糖尿病の初期症状が現れたときの対処法
糖尿病の初期症状が疑われるときはすぐに病院を受診すべきですか?
糖尿病の疑いがある症状に気付いたときは、できる限り早めに医療機関を受診することが大切です。例えば、急に体重が減少した、のどの渇きが強くなった、トイレが近くなった、疲れが抜けにくくなったなど、これまでにない身体の変化があれば、迷わず受診することをおすすめします。糖尿病は発症初期であっても血糖値が高い状態がすでに続いており、そのまま放置しておくと血管が傷つき始め、数年後には目や腎臓、神経といった重要な部位に合併症が出ることがあります。症状が軽いうちに受診することで、進行を防ぐことができ、生活習慣の改善によって治療が済む場合もあります。
糖尿病の初期症状がみられたときの診療科目を教えてください
糖尿病が疑われる場合には、まずは内科を受診するのが一般的です。かかりつけのクリニックがある場合は、まず相談して必要に応じて専門医への紹介を受けるとよいでしょう。また、職場や地域の健康診断で高血糖を指摘された方も、放置せず速やかに再検査を受けることがすすめられます。
糖尿病の初期症状は生活習慣の改善でもとに戻りますか?
初期の糖尿病、いわゆる境界型や予備群と呼ばれる段階では、生活習慣の改善によって血糖値のコントロールが十分に可能なこともあります。食事の内容を見直して糖質や脂質の摂りすぎに注意し、規則正しい食生活を心がけること、また運動習慣を取り入れて筋肉を動かすことで、インスリンの働きが高まり血糖値が下がりやすくなります。さらに、十分な睡眠やストレスの軽減も血糖値の安定に役立ちます。
糖尿病の初期症状を放置するとどうなりますか?
糖尿病の初期段階であっても、適切な対処を行わなければ、病気は着実に進行していきます。血糖値が高い状態が続くことで、血管が少しずつ損傷を受け、やがて細い血管が多く存在する目や腎臓、神経系に深刻な合併症が起こりやすくなります。網膜症により視力が低下したり、腎機能が悪化して人工透析が必要になったり、神経障害によって足先のしびれや感覚異常が出たりすることもあります。また、大血管への影響によって心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる疾患のリスクも高まります。
糖尿病の初期症状で受診した際の検査と診断、治療法
糖尿病の初期症状で病院を受診したらどのような検査が行われますか?
受診時には、まず血液検査と尿検査を通じて、血糖値の状態や身体の代謝バランスについて調べられます。血液検査では、空腹時血糖値やHbA1c(ヘモグロビンA1c)が確認されます。HbA1cは、過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖値を反映する指標であり、糖尿病の有無を判断するうえで重要な項目です。
加えて、食後の血糖値や、必要に応じてブドウ糖を服用してから血糖の変化をみる経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)が実施される場合もあります。尿検査では、尿糖の有無や、腎機能に関わるタンパク質の有無が確認されます。
糖尿病の診断基準を教えてください
診断基準には主に、①空腹時血糖値が126mg/dL以上、②随時血糖値が200mg/dL以上、③75g経口ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が200mg/dL以上、④HbA1cが6.5%以上であることなどが含まれます。①~③のいずれか+④が確認された場合、糖尿病と診断されます。また、すでに症状が出ている場合や糖尿病網膜症の所見がある場合には、①~③のみでも診断となります。
初期の糖尿病ではどのような治療が行われますか?
初期段階の糖尿病では、生活習慣の見直しが治療の中心となります。まずは食事療法が重要で、糖質や脂質、カロリーのバランスを整えた食事を、1日3食規則正しく摂ることが勧められます。過食や間食を避け、血糖値の急上昇を防ぐ工夫が必要です。また、毎日の食事内容を記録することで、自分の傾向を把握しやすくなります。
次に運動療法ですが、無理のない範囲で継続的に身体を動かすことが血糖値の安定につながります。ウォーキングや軽い筋力トレーニングなどが取り入れやすく、体重管理にも役立ちます。特にインスリンの働きを助ける効果があるため、週に数回の運動を継続することが推奨されます。
こうした生活習慣の改善でも十分な効果が得られない場合や、検査値が高く合併症のリスクが高いと判断される場合には、薬物療法が検討されます。血糖値を下げる内服薬が選択され、必要に応じてインスリン治療が導入されることもあります。
編集部まとめ
糖尿病は、初期のうちは自覚しにくく、のどの渇きや頻尿、体重減少、だるさなどが出ても見過ごされやすい病気です。しかし、こうした身体の変化は糖尿病のサインであることもあり、放置すれば合併症につながるおそれがあります。
早期に気付き、生活習慣を見直すことで血糖値の改善が期待できる場合もあります。食事や運動の工夫、定期的な受診を通じて、病気の進行を防ぐことが大切です。 健康診断で血糖値の異常を指摘された方や、気になる症状がある方は、早めの受診を心がけましょう。小さな変化を見逃さず、日常の体調管理に役立てていただければと思います。




