「熱中症で下痢」になる原因はご存知ですか?下痢が何日程度続くかも解説!

真夏の厳しい暑さのなか、屋外での活動や蒸し暑い室内で過ごしているときに、突然の下痢に襲われた経験はありませんか。多くの方は冷たいものを飲みすぎたかなと軽く考えがちですが、それは単なる体調不良ではなく、身体が発している危険なサイン、すなわち熱中症の症状の一つかもしれません。
この記事では、医療専門家の監修のもと、熱中症で下痢になったときの特有の症状から、その背景にある複雑な身体のメカニズム、危険なサインを見分けるための受診の目安、そして家庭でできる具体的かつ効果的な対処法まで、医学的知見に基づいてわかりやすく解説します。ご自身や大切な家族を守るため、正しい知識を身につけ万が一の事態に備えましょう。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
目次 -INDEX-
熱中症による下痢の特徴と原因

熱中症による下痢の特徴を教えてください
まず、便の状態としては、泥状の軟便から、完全に水のような便(水様便)が1日に数回から、多いときには十数回続くことが典型的です。下痢だけでなく、強い吐き気や嘔吐を伴うことも少なくありません。
しかし特に注意すべきは下痢と同時に現れる全身症状です。38度を超えるような体温の上昇、立ちくらみやめまい、立っていられないほどの強い全身のけん怠感が同時に現れるのが、熱中症による下痢の大きな特徴です。これらの症状は、消化器系の問題だけでなく、身体全体の恒常性が破綻し始めていることを示す危険なサインです
熱中症による下痢は何日程度続きますか?
適切な対処、すなわち、速やかに涼しい場所へ避難して身体を冷やし、後述する経口補水液などで失われた水分と電解質を正しく補給すれば、ほとんどの場合は1~3日以内に症状は軽快に向かいます。身体の熱ストレスが取り除かれ、体液バランスが正常化すれば、消化管の機能も徐々に回復していきます。
熱中症で下痢になる原因を教えてください
以下のような変化が影響していると考えられています。
- 発汗による脱水で腸管血流が減少し、蠕動運動が乱れる
- 深部体温の上昇で腸粘膜が傷つき、透過性が高まる
- 低ナトリウム血症や低カリウム血症が腸の働きを弱める
- 冷たい水を一気に飲むと急激な腸蠕動が刺激される
熱中症で下痢になったときの受診サインと病院での治療法

熱中症の下痢がどの程度続いたら受診すべきですか?
- 意識がおかしい
- けいれん
- 血便や黒色便が出る
- 嘔吐が止まらず、水分がまったく摂れない
- 尿が半日以上出ていない、または色が濃い
- 38.5度以上の高熱が続き、身体を冷やしても下がらない
熱中症による下痢の病院での治療法を教えてください
病院を受診しても熱中症の下痢が治らないときはどうすればよいですか?
第一に、熱中症と細菌性腸炎(食中毒)の合併です。高温多湿の環境は、カンピロバクターやサルモネラ、O-157といった食中毒菌の増殖にも最適な条件です。熱中症の症状だと思っていたものが、実は食中毒であったり、両者が偶然合併していたりすることも少なくありません。この場合、医師は便の培養検査を行い、原因菌を特定したうえで適切な抗菌薬(抗生物質)による治療を開始します。
第二に、電解質異常の遷延です。点滴治療を行っても、低ナトリウム血症や低カリウム血症がなかなか補正されないことがあります。特に腎機能が低下している場合や、もともと利尿薬を服用している方などでは、電解質の管理が複雑になることがあります。この場合は、点滴の内容や投与速度を再評価し、より精密な調整が行われます。
第三に、熱中症が引き金となった新たな消化管機能不全の可能性です。重度の腸虚血を起こした場合、そのダメージから回復する過程で腸の機能が完全にもとに戻らず、後遺症が残ることがあります。代表的なものに、特定の食品(特に乳製品に含まれる乳糖)を消化できなくなる二次性乳糖不耐症や、腸が過敏な状態が続き、腹痛や下痢・便秘を繰り返す感染後過敏性腸症候群(IBS)があります。これらの状態が疑われる場合は、消化器内科の専門医による食事指導や内服治療といった、継続的なフォローアップが必要になることがあります。
熱中症で下痢になったときの自宅での過ごし方

熱中症で下痢になったときは何を飲めばよいですか?
そのための最適解が経口補水液(ORS)です。経口補水液は、水分、電解質(ナトリウム、カリウム)、そしてブドウ糖が、腸で最も効率よく吸収されるように医学的に計算された、飲む点滴ともいえる飲料です。
私たちの腸の壁には、ブドウ糖とナトリウムがセットでなければ開かないSGLT1という特別な入口があります。ORSを飲むと、ブドウ糖がこの入口の鍵となり、ナトリウムを引き連れて細胞内に入ります。そして、水分はナトリウムに引き寄せられる性質があるため、まるでスポンジが水を吸い込むように、スムーズに体内へ吸収されるのです。この仕組みにより、ただの水を飲むよりもはるかに速く、効果的に身体を潤すことができます。
熱中症により下痢になったときの食べ物を教えてください
- 急性期(~24時間):白がゆ、軟らかいうどん、食パン
- 回復期:バナナ、すりおろしりんご、具なしみそ汁
- 体力回復期(下痢改善後):湯豆腐、鶏むね肉、白身魚
- 避ける食品:乳製品、揚げ物、香辛料、生野菜の大量摂取
熱中症で下痢を治すために市販薬を飲んでもよいですか?
- 38度以上の発熱がない
- 便に血が混じっていない(血便ではない)
- 細菌性の食中毒(食あたり)が強く疑われない
なぜこれほど慎重になる必要があるかというと、発熱や血便を伴う下痢は、O-157などの危険な細菌を体外に排出しようとする身体の重要な防御反応だからです。ここで無理に下痢を止めると、菌や毒素が腸内に滞留し、かえって症状を悪化させ、重症化させる危険性が大変高いのです。
整腸薬(ビオフェルミンなど)は、乳酸菌やビフィズス菌を含み、荒れた腸内環境を整える助けになります。下痢を悪化させるリスクは低く、経口補水液と併用しても問題ありません。
そして、解熱鎮痛薬は頭痛や発熱があるからといって、イブプロフェンやロキソプロフェンといった非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を自己判断で服用するのは避けた方がいいです。
熱中症による脱水状態では、腎臓への血流がすでに著しく減少しており、腎臓は大きな負担を強いられています。そこにNSAIDsを服用すると、腎臓の血管をさらに収縮させ、急性腎障害(急性腎不全)を引き起こすリスクが極めて高まります。これは命に関わる副作用です。どうしても解熱鎮痛薬が必要な場合は、腎臓への影響が少ないアセトアミノフェンがよいですが、まずは医師や薬剤師に相談することが基本です。
編集部まとめ

熱中症による下痢は、単なるお腹の不調ではなく、体内で起きている深刻な機能不全のサインです。軽視することなく、迅速かつ適切な対応が重症化を防ぎ、命を守る鍵となります。無理をせず涼しい環境で過ごすことを心がけ、厳しい夏を健康に乗り切りましょう。




