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「高血圧の主な5つの原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も解説!

 公開日:2025/12/25
「高血圧の主な5つの原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も解説!

血圧が高いといわれたことはありませんか?
高血圧は自覚症状が出にくいため、病院や健康診断などで指摘されても、そのままにしてしまう方も少なくありません。しかし、高血圧を放置すると、心筋梗塞や脳卒中など重大な合併症を引き起こす恐れがあり、早い段階から適切に対処することが大切です。
本記事では、高血圧の概要、原因、予防についてわかりやすく解説します。

上田 莉子

監修医師
上田 莉子(医師)

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関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

高血圧の概要

高血圧の概要

高血圧は病気ですか?

高血圧は病気として位置づけられており、日本で患者さんの数が最も多い疾患です。血圧が持続的に高い状態を、高血圧と診断します。日本高血圧学会の基準では、診察室での収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の場合に高血圧と定義されます。収縮期血圧とはいわゆる上の血圧のことで、心臓が収縮し血液を送り出す際の、最も強い圧力がかかっているときの値です。拡張期血圧いわゆる下の血圧のことで、収縮した心臓が拡張したときの血管の圧力の値です。

なお、診断基準としては診察室の値だけではなく、家庭での血圧の値も定められています。家庭で測定する血圧を家庭血圧とよび、これは収縮期血圧が135mmHg以上、拡張期血圧が85mmHg以上を高血圧と定義しています。特にガイドラインでも、診察室での血圧を指標とした治療と比べて、家庭血圧を指標として治療することがすすめられており、病院で血圧を測るだけでなく、自宅で血圧を測定し、それをもとに治療方針を立てることが望まれます。

高血圧の種類を教えてください

高血圧には大きく本態性高血圧二次性高血圧があります。

本態性(ほんたいせい)高血圧は原因となる病気を明確に特定できないもので、さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。日本人の多くは本態性高血圧だといわれています。

一方、二次性高血圧ある病気を原因として、高血圧が引き起こされている状態を指します。二次性高血圧は従来考えられていたよりも、もっと高い頻度で存在する可能性が指摘されています。二次性高血圧は、原因となる病気を適切に診断し治療することで、血圧がうまくコントロールでき、場合によっては治癒も期待できます。本態性血圧とはその病態も、治療の方法も大きく異なるため、区別することが大切です。高血圧の患者さんでたくさんの薬を内服していても十分に血圧がコントロールできていない方の場合は、原因を調べた方がよい可能性があります。また、本態性高血圧と比べて若い方に多いのも特徴です。

高血圧の原因

高血圧の原因

本態性高血圧の原因にはどのようなものがありますか?

本態性高血因圧の原因には、生活習慣や遺伝的な要因などがあります。具体的には、以下のとおりです。

  • 食塩を過剰に摂取すること
  • 肥満
  • 運動不足
  • ストレス
  • 遺伝的素因(体質)

本態性高血圧になりやすい人の特徴を教えてください

本態性高血圧は両親が高血圧の場合は起こりやすく、中年以降の方に見られることが多いといわれています。ほかにも、運動不足偏った食事塩分脂肪分が多い食事)を長年続けている方、喫煙習慣のある方、アルコールをたくさん摂取する習慣がある方も高血圧になりやすいと考えられています。日本人では、特に塩分摂取量が多いことが問題となります。

生活習慣や食生活などの原因と血圧の関係がわかる統計はありますか?

これまで多くの研究で、食生活や生活習慣が血圧に大きく影響することが明らかになってきました。なかでも、塩分摂取量と血圧の関係については、1988年に発表されたINTERSALT研究によって世界的に注目されるようになりました。この研究では世界52地域、1万人以上の調査から、ナトリウム摂取量と血圧の関係が示され、減塩の重要性が科学的に裏付けられました。

さらに、DASH-Sodium試験では、野菜や果物、低脂肪乳製品を多く取り入れたDASH食と塩分制限を組み合わせることで、血圧を低下させる効果があると報告されています。

二次性高血圧の原因を教えてください。

二次性高血圧の原因となる病気は、主に以下のようなものがあります。

  • 腎実質性高血圧
  • 腎血管性高血圧
  • 内分泌腺の病気による高血圧
  • 薬による高血圧

腎実質性(じんじっしつせい)高血圧は腎臓の働きが悪くなることで、塩分や水分が排出されにくくなり起こる高血圧です。

腎血管性高血圧は腎臓の動脈が細くなったり詰まったりすることで起こる高血圧です。

内分泌腺の病気による高血圧は、さまざまな種類のホルモンの分泌が異常となり引き起こされる高血圧です。代表的なものに原発性アルドステロン症があり、これはアルドステロンというホルモンが過剰に分泌される病気です。アルドステロンは高血圧を引き起こすホルモンです。そのほかには甲状腺機能の異常も高血圧の原因となることがあります。

なかには、薬によって引き起こされる高血圧もあります。非ステロイド性抗炎症薬(痛み止めの一種)や甘草(かんぞう)という成分が入ったお薬などで、高血圧を誘発する可能性があります。
これら以外にも、睡眠時無呼吸症候群などで高血圧をきたすことがあります。

高血圧の予防法

高血圧の予防法

本態性高血圧を予防するために推奨される生活習慣はありますか?

生活習慣の改善は高血圧を予防するための基本となります。塩分制限など食生活の見直しを行いましょう。次に、適正体重を維持しましょう。BMI(体重を身長の2乗で割って算出)の正常範囲は18~25であり、肥満がある方はBMI 25未満を目指して減量をします。肥満を改善(BMIを25未満に)し、週に数回の適度な運動(例えば1日30分程度の有酸素運動)を行うことが推奨されます。

アルコールは継続して、一定の量以上を飲み続けると高血圧の原因になります。過剰な飲酒は高血圧以外にも脳卒中なども引き起こすとされており、節酒を心がけましょう。アルコールの適量としては、男性で1日のアルコール量20~30ミリリットル以下、女性で10~20ミリリットル以下です。

運動も重要な予防法の一つです。有酸素運動やレジスタンス運動(筋力を維持するための運動)などが推奨されています。時間は毎日30分以上、週180分以上が目安となっていますが、まずは短い時間できつくない程度の運動から始め、徐々に上げていきましょう。

禁煙も大切な対策の一つです。これらの健康的な生活習慣を身に着けることが、高血圧の予防につながります。

本態性高血圧の予防に効果がある食生活を教えてください

本態性高血圧の予防に効果がある食生活として、まず食塩の摂取を減らす(減塩)が特に重要です。減塩は高血圧の予防に効果があるだけはなく、心臓の病気や脳卒中、腎臓病へもよい効果があるとされています。日本人は世界的にみても塩分の摂取量が多く、減塩の効果は大きいとされています。高血圧のある方は1日6g未満を目標とします。また、子どもの頃から食塩の摂取をなるべく少なくすることで、高血圧になる危険性を低くすることができるといわれています。塩分摂取量を減らすポイントとしては以下のとおりです。

  • 香辛料、香味野菜や果物の酸味を味付けに利用する
  • 低塩の調味料を使う
  • 外食や加工食品を減らす、控える
  • 麺類の汁は残す

減塩とともに、野菜、果物を積極的に食べるようにしましょう。これは野菜や果物に含まれるカリウムが血圧を下げるように働くためです。ただし、腎臓病がある方は身体からのカリウム排泄の能力が落ちているため、野菜や果物を取り過ぎない方がよい場合があります。必ず主治医に確認して取り組むようにしましょう。

本態性高血圧はストレスを軽減することで予防できますか?

ストレスと血圧の関係について、最近の研究で、心理的・社会的ストレスによって高血圧の発症が高まることが報告されています。また、ストレス下高血圧という状態もあります。これは診察室での血圧や家庭血圧が正常であっても、職場や家庭のストレスにさらされている昼間の時間帯の血圧が135/85mmHg以上となる状態のことです。

このように、慢性的な強いストレスは血圧上昇に影響すると考えられており、ストレスを軽減すること本態性高血圧の予防につながります。十分な睡眠の確保やリラクゼーションを取り入れ、可能な限りストレスを和らげるとよいでしょう。ただし、ストレスを軽減するだけで高血圧の予防になるわけではなく、減塩や運動などほかの生活習慣改善と組み合わせて取り組むことが大切です。

編集部まとめ

編集部まとめ

 
高血圧は脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こすリスクが高い重要な病気です。本態性高血圧は遺伝的な要因に加え、塩分の摂取量が多いことや肥満、飲酒、運動不足、ストレスなどさまざまな要因が組み合わさって起こります。普段の生活習慣を見直すことが予防や改善につながります。一方、二次性高血圧は原因となる病気を見つけ、治療することが必要です。いずれの場合も、血圧に異常があれば早めに対応することが大切です。血圧が高いといわれたら、すぐに医療機関を受診しましょう。

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