「自律神経失調症の治療薬」にはどんな種類がある?副作用となる症状も解説!
公開日:2025/08/16

自律神経失調症は、ストレスや身体の不調、あるいは神経系の病気などを背景に、自律神経のバランスが崩れることで、さまざまな症状が現れる状態です。治療には薬物療法だけでなく、生活習慣の見直しやセルフケアも大きな役割を果たします。本記事では、自律神経失調症に用いられる主な薬の種類やその効果、さらに薬に頼らずにできる具体的な対処法まで、実用的に解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。
自律神経失調症の治療法
自律神経失調症の治療にはどのようなものがありますか?
自律神経失調症の治療は、その根本原因によって異なります。特定の原因(自己抗体や薬剤など)が判明している場合は、病態を改善したり、薬剤の中止によって症状が改善する可能性もあります。原因が特定できない特発性の自律神経失調症の場合、根本的な治療が難しいことも少なくありません。このようなケースでは、症状を緩和し、生活の質を向上させるための対症療法が治療の中心となります。
自律神経失調症の治療での薬の役割を教えてください
自律神経失調症の治療における薬の役割は、個々の症状を緩和し、日常生活への影響を軽減することです。薬物療法は、症状の種類や重症度、根本原因に応じて使い分けられます。
自律神経失調症の治療で使われる薬の種類
自律神経失調症の治療で使用される薬の種類を教えてください
自律神経失調症の治療で使われる薬は、患者さんの具体的な症状に合わせて選択されます。主な薬の種類は以下のとおりです。
循環器に作用する薬
起立性低血圧によるめまいやふらつきを改善するために、ミドドリンやフルドロコルチゾンなどが使われます。頻脈や動悸の症状がある場合には、β遮断薬などが検討されることがあります。
消化器に作用する薬
便秘、下痢、吐き気、食欲不振といった消化器症状に対して、消化管の動きを整える薬や吐き気止めが処方されます。
睡眠導入剤・抗不安薬
睡眠障害や不安感がある場合に、症状を一時的に緩和するために短期的に使用されることがあります。
なぜ自律神経失調症の治療で向精神薬が用いられるのですか?
自律神経失調症の治療において向精神薬(睡眠導入剤や抗不安薬など)が用いられるのは、主に睡眠障害や不安感といった精神的な症状を緩和するためです。これらの症状は自律神経失調症にしばしば併発し、患者さんの生活の質を大きく低下させる要因となるため、短期的な使用により症状の改善が図られます。
自律神経失調症治療薬の効果と副作用
自律神経失調症治療薬はどのような効果がありますか?
自律神経失調症治療薬の主な効果は、患者さんが抱える多様な症状の緩和です。具体的には、以下のような効果が期待できます。これらの薬は、根本的な原因が特定できない場合でも、症状を管理し、患者さんの生活の質を向上させるうえで重要な役割を担います。
循環器症状の改善
起立性低血圧に伴うめまいやふらつきを軽減し、血圧を安定させます。動悸や頻脈を抑える効果もあります。
消化器症状の緩和
便秘や下痢といった消化管の不調を整え、吐き気や食欲不振を改善します。
精神症状の軽減
睡眠障害を改善し、不安感を和らげることで、精神的な安定をもたらします。
自律神経失調症で使用される薬で生じる副作用を教えてください
自律神経失調症の治療に用いられる薬剤は、症状緩和に有効である一方で、個々の薬ごとに副作用の可能性も存在します。以下は代表的な薬剤とその副作用の一例です。
ミドドリン
起立性低血圧の治療に用いられますが、臥位高血圧(寝ている間の血圧上昇)、頭痛、皮膚のピリピリ感、尿閉や頻尿などが報告されています。
ドロキシドパ
同じく起立性低血圧に対して使用されますが、頭痛、めまい、悪心、臥位高血圧などの副作用が見られることがあります。
フルドロコルチゾン
体液保持や血圧維持に使われますが、体重増加、低カリウム血症、浮腫、心不全の悪化、臥位高血圧などのリスクがあるため、長期使用時には血圧や電解質の定期的なモニタリングが推奨されます。
消化管運動改善薬(例:ドンペリドン)
QT延長や不整脈のリスクがあり、特に心疾患のある高齢者では注意が必要です。
便秘治療薬(例:マクロゴール、ルビプロストン)
主な副作用は下痢や腹部膨満感です。
抗コリン薬(例:ソリフェナシン)
過活動膀胱などに使われ、口渇、便秘、認知機能低下、尿閉などが副作用として報告されています。
自律神経失調症の薬に依存性はありますか?
基本的に、自律神経失調症の治療に用いられる標準的な薬剤は、依存性のリスクは極めて低いとされています。これらの薬は中枢神経系に強く作用するわけではなく、薬物依存や乱用リスクは、臨床的にも報告されていません。
ただし、ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤や抗不安薬は短期的に用いられることがあり、これらには依存性の可能性があります。そのため、これらの薬剤を使用する場合には、医師の指導のもとで慎重に期間や量を調整することが重要です。
自宅でできる薬を使用しない自律神経失調症対策
薬を服用する以外にも自律神経失調症を改善する方法はありますか?
はい、薬物療法と並行してセルフケアは重要な役割を果たします。自宅でできる対策は多岐にわたり、以下の取り組みが推奨されます。
規則正しい生活習慣
毎日同じ時間に就寝・起床し、食事を摂ることで、身体の体内リズムを整えることができます。
バランスの取れた食事
栄養バランスの取れた食事を心がけ、カフェインやアルコールの過剰摂取は控えめにすることが望ましいです。特に起立性低血圧がある場合は、十分な水分と塩分を摂取することが推奨されることがあります。
適度な運動
ウォーキングやヨガ、ストレッチなど、無理のない範囲で継続できる運動を取り入れると、ストレス軽減や自律神経の調整に役立つことがあります。ただし、無理な運動は避けるべきです。
ストレス管理
ストレスは自律神経の乱れの大きな原因となるため、リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、アロマセラピーなど)や、趣味の時間を持つなど、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
十分な睡眠
質のよい睡眠を確保することは、自律神経の回復に不可欠です。寝る前にカフェインやアルコールを避け、リラックスできる環境を整えましょう。
身体の冷え対策
特に冷えを感じやすい方は、身体を温める工夫をするとよいでしょう。
自律神経失調症の患者さんが避けた方がよい生活習慣を教えてください
自律神経失調症の症状を悪化させたり、治療効果を妨げたりする可能性のある行動や状況は避けるように注意が必要です。具体的には以下の点が挙げられます。
過度なストレス
ストレスは自律神経の乱れの大きな原因となるため、できる限りストレスを避け、無理な活動や精神的な負担を減らすことが重要です。
睡眠不足
不規則な睡眠や睡眠不足は、自律神経のバランスを崩し、症状を悪化させる可能性があります。
カフェインやアルコールの過剰摂取
これらは自律神経を刺激し、心拍数の増加や睡眠障害を引き起こすことがあるため、控えめにすることが望ましいです。
脱水
特に起立性低血圧の症状がある方は、脱水を避けるために十分な水分を摂ることが大切です。
急な体位変換
立ちくらみやめまいを防ぐために、急に立ち上がったりせず、ゆっくりと動作を行うように心がけましょう。
自律神経失調症の症状が辛いときの対処法を教えてください
自律神経失調症の症状が辛いと感じるときは、上記のセルフケアの実践が重要です。具体的には、以下のような対処法を試みることが推奨されます。
ストレス軽減
深呼吸、瞑想、アロマセラピーなど、自分に合ったリラクゼーション法を取り入れ、ストレスを解消する時間を持つことが大切です。
十分な休息
質のよい睡眠を確保し、疲労を蓄積させないように身体を休ませましょう。
適度な運動
無理のない範囲での運動は自律神経の調整に役立ちますが、症状が辛いときは無理せず、休むことを優先しましょう。
水分と塩分摂取
特に立ちくらみがある場合は、脱水に注意し、十分な水分と適量の塩分を摂ることが推奨されます。
ゆっくりとした動作
急に立ち上がることを避け、ゆっくりと体位を変えることで、めまいやふらつきを防げます。
編集部まとめ
自律神経失調症は、自律神経系の機能不全によって生じる多岐にわたる症状を伴う状態であり、その原因は神経変性、自己免疫、ストレス、感染症などさまざまです。診断と治療においては、神経内科医が重要な役割を担いますが、症状に応じて消化器内科、循環器内科、精神科、心療内科など他科との連携も不可欠です。日々のセルフケアとして、規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動、そして効果的なストレス管理が重要です。自律神経失調症に悩む方は、まずは専門の医療機関を受診し、ご自身の症状と原因に応じた適切な診断と治療を受けることを強くおすすめします。




