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「自律神経失調症の原因」はご存知ですか?食事のとり方で注意する点も解説!

 公開日:2025/06/15
「自律神経失調症の原因」はご存知ですか?食事のとり方で注意する点も解説!

仕事に追われる日々が続き、私生活でもストレスをうまく解消できないと心と身体にさまざまな不調が現れることがあります。

なんとなく疲れが取れない、眠りが浅い、気分が落ち込むといった症状は、自律神経の乱れが原因かもしれません。

自律神経失調症はストレスによって起こるイメージがありますが、実際にはその他の要因も重なって発症することが多いようです。

誰にでも起こりうる可能性があるので、自律神経失調症について正しく理解し早期に対処しましょう。

井林雄太

監修医師
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)

プロフィールをもっと見る
大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

自律神経失調症の原因や症状

睡眠中に苦しそうな表情をする男性

自律神経失調症の原因を教えてください

自律神経失調症とは、内臓や血管などの働きを調整している自律神経系がうまく機能しないことで、さまざまな症状が現れる状態のことです。自律神経には交感神経と副交感神経があり、この2つのバランスが乱れることで症状が引き起こされます。主な原因は3つに分けられ、一つは自律神経が乱れやすい体質によるもので、もともと過敏な方や刺激に弱い方に起こりやすい傾向があります。二つ目は、ストレスによるものです。仕事や人間関係などの精神的負荷が長期間続くと、自律神経の働きに影響します。三つ目は、うつや不安などの精神症状に関わるものです。自律神経失調症の原因は明確に区別することが難しく、さまざまな原因が重なっていることも少なくありません。そのため、生活全体を見直すことが大切です。

自律神経失調症の症状にはどのようなものがありますか?

自律神経失調症では、身体のさまざまな部位に不調が現れるにも関わらず、検査では明確な異常が見つからないことがあります。これは、不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれ、自律神経のバランスが乱れることによって引き起こされると考えられます。具体的な症状は以下のとおりです。

  • 動悸
  • めまい
  • 頭痛
  • 息切れ
  • 胃痛
  • 吐き気
  • 喉のつかえ
  • 全身のだるさ

症状は一人ひとり異なり、複数の症状が同時に現れる場合もあれば日によって変化することもあります。また、症状の内容によって別の診断名がつけられることがあり、片頭痛、咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)や過敏性腸症候群、過換気症候群などです。咽喉頭異常感症は喉に違和感があるのに検査では異常が見つからない状態で、過敏性腸症候群は腹痛や下痢、便秘を繰り返します。過換気症候群は、呼吸が浅く早くなり息苦しさを感じる症状です。いずれも自律神経の乱れが関係しています。

自律神経失調症によるストレス反応について教えてください。

自律神経は感情や心の動きと深く関わっており、日常の環境変化や人間関係などの刺激が強い負担となると、心身にストレス反応が現れやすくなります。ストレス反応としては、落ち込みや不安感、イライラ、不眠などの症状です。自分の感覚に違和感を抱く解離といった現象や、常に気を張った状態が続く過敏症などもみられます。また、自律神経失調症はうつ病や不安症などの精神的な疾患として現れることもあり、ストレスへの反応としてとらえることが多いようです。

自律神経失調症になりやすい季節はいつですか?

自律神経は自律神経の乱れは一年を通じて起こる可能性がありますが、特に春先は注意が必要です。春は朝晩の寒暖差が大きく、気温の変化に身体が追いつかずに自律神経が過剰に働くことで疲労が溜まりやすくなります。春は新年度の始まりや生活環境の変化、人間関係も精神的なストレスとなり自律神経のバランスを崩しやすくなります。このような時期には、生活習慣やリズムを意識して過ごしましょう。

自律神経失調症の治療法

医療

精神科と心療内科のどちらを受診しても大丈夫ですか?

自律神経失調症は、本人が不調を感じることから始まるため早い段階で身体の異変に気付く方もいます。まずは内科や耳鼻科、婦人科、整形外科などそれぞれの症状に応じた診療科で検査を受けましょう。身体的に異常が確認されなかった場合は、現在の生活習慣や精神的な状態が関係していることも考えられます。症状が軽度であれば生活指導や服薬により経過を観察する方法も可能です。しかし、症状が長引いて日常生活に支障が出ている場合や不眠や気分の落ち込みなどの精神的な不調が続いている場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。自分の症状に応じて相談先を検討する必要があります。

自律神経失調症はどのようにして診断しますか?

自律神経失調症の診断では、まず重大な身体疾患や明らかな精神疾患が隠れていないかを確認します。症状の現れ方はさまざまですが、まずは内科などで血液検査やMRIなどの画像検査を受けて身体に異常がないかを調べます。身体の検査とともに精神面の状態について確認し、うつ病や不安障害などの精神疾患の有無を見極め、身体面や精神面のいずれにも目立った異常がない場合のほとんどは自律神経失調症です。診察では、症状の経過や生活環境、ストレスの有無などさまざまな角度から身体や精神状態を把握し、総合的に判断されます。しかし、診断は1度の診察で確定することが難しい場合もあるため、複数回の受診が必要なケースもあります。

医療機関ではどのような治療を行いますか?

医療機関での自律神経失調症の治療は、患者さんの症状や生活背景に応じて一人ひとりに合った治療を行います。まずは、現在の生活環境やストレスの原因について丁寧に把握して、ストレスの軽減に向けてアプローチします。必要に応じて生活習慣の改善指導を行い、仕事や家庭での負担を見直すためのアドバイスを受けましょう。また、自律神経のバランスを整えることを目的に、自律訓練法や深呼吸、軽い運動などのリラクゼーション法を取り入れることもあります。また、症状の内容に応じて併用されるのが薬物療法です。例えば、消化器症状に対しては胃腸の調子を整える薬を、頭痛や肩こりには鎮痛剤など症状に合わせた処方が行われます。不安感や気分の落ち込みが強い場合は、抗不安薬や抗うつ薬を処方することも可能です。治療を行いながら定期的な診察を繰り返し、ストレスや精神状態との関係について調べます。同時に、自律神経失調症に似た症状を引き起こす別の病気が隠れていないか、必要に応じて再検査を行いながら治療を進めていきます。患者さんが無理なく治療に取り組めるように医師と相談しながら治療方針を一緒に考えることが大切です。

自律神経失調症の予防と注意点

深呼吸する男女

ストレスをためないためにできることはありますか?

自律神経失調症の予防は、日常生活のなかでストレスを上手にコントロールすることが大切です。そもそもストレスは悪いものととらえがちですが、実は適度なストレスは意欲や集中力を高めることもあります。しかし、過度なストレスが続くと心身に悪影響を与えるため、自分にとって負担となるストレスを見極めて必要に応じて対処しましょう。ストレスと上手に付き合うために、作業の合間に深呼吸をしたりストレッチをしたり、身体を動かすことで緊張がほぐれます。また、好きな音楽を聴いたり趣味に没頭したりすることも一つの手です。決まった動作やルーティンを取り入れて、気持ちの切り替えを意識した生活を心がけましょう。次に、問題に直面したときの解決する力を高めることも役立ちます。まずは自分が置かれている状況や精神状態を把握し、周囲に相談してストレスの原因となる物事を断つことが必要です。そのために、身近に信頼できる人を見つけておくといざという場合に一人で抱え込まずに済みます。さらに、自律神経の働きを整える方法として自律訓練法があります。言葉やイメージで身体の緊張を和らげ心を落ち着かせるリラクゼーション法で、以下の準備と手順に沿って行ってみましょう。
準備

  • 静かで落ち着ける場所を選ぶ
  • 事前にトイレを済ませておく
  • 締め付けのない服で座るか仰向けになる

手順

  • 目を閉じて気持ちを落ち着ける
  • 手足が重たいと心のなかで唱え重さを感じる
  • 手足が温かいと心のなかで唱え温かさを感じる
  • 腕を動かし背伸びと深呼吸をして目を開ける

わずか数分で行えるため、日常に可能な範囲で取り入れてみましょう。

食事のとり方で注意する点があれば教えてください。

自律神経の働きを安定させるためには、1日3回規則正しい食事をとることが大切です。食事をすることで副交感神経が活性化し、心身のバランスを保ちやすくなります。特に朝食を抜くと交感神経が優位になり、エネルギーの消耗が進んでしまうため自律神経の乱れにつながる可能性があります。朝忙しくて食事を抜いてしまう方は、手軽に食べられるバナナやヨーグルト、ゆで卵がおすすめです。

処方薬を服用する際の注意点を教えてください。

の2つに分けられます。どちらも、症状が軽いときに自己判断で処方薬の服用を中断しないようにしましょう。対症療法では、そのときの症状に合わせた薬が処方されます。例えば、痛みには鎮痛薬や眠れない場合には睡眠薬などです。処方薬により身体的な不快感が和らぐとストレスも軽減され、治療効果が高まりやすくなります。次に、原因療法としてストレスや不安などの精神面に対して処方されるのが、抗うつ薬や抗不安薬です。必要であれば、自律訓練法などの薬を使用しない治療が併用されることもあります。さらに重要なのは、症状が軽いときや落ち着いているときでも定期的に通院することです。医師が通院のたびに体調や心理状態を把握することで、患者さんの小さな変化にも気付きやすくなります。そうした変化に応じて対応できるため、一人ひとりに合った治療方針の策定にもつながります。

編集部まとめ

目元を抑える女性

自律神経失調症は誰にでも起こりうる病気です。

ただの疲れや気のせいで片付けるのではなく、少しでも身体に違和感を覚えたら自分の生活を見直すきっかけにしましょう。

仕事や家庭でのストレスはつきものです。多忙な生活のなかでも、リラックスする時間をとってストレス解消心と身体のバランスを保つことが自律神経失調症の予防と回復につながります。

辛いときは一人で抱え込まずに信頼できる方や医療機関を頼りましょう。

この記事の監修医師