FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 妻が「産後うつ」かもしれない。パートナーはどう接するのが良い? プロのサポートも視野に入れて【医師監修】

妻が「産後うつ」かもしれない。パートナーはどう接するのが良い? プロのサポートも視野に入れて【医師監修】

 公開日:2023/10/17
こんな症状があったら産後うつかも!? パートナーの適切な接し方とは

妊娠、出産、育児と、止まることなく続いていく子育て。わが子とはいえ、ストレスや悩みを抱えながら過ごしていくうちに、「産後うつ」になってしまう女性も少なくありません。また、日本は先進国の中で自殺者数が多い国で、妊産婦の死因のトップも自殺です。「気づいたら、パートナーの様子がいつもと違う」「妻の表情が暗くなっている」など気づくことはありませんか?産後うつのケアのためには、最も身近なパートナーや外部のヘルプが必要です。そこで、パートナーが産後うつかもしれない状態になったときにできることやサポートについて「塩釜口こころクリニック」の河合先生に伺いました。

河合 佐和

監修医師
河合 佐和(塩釜口こころクリニック)

プロフィールをもっと見る
藤田医科大学医学部卒業。藤田医科大学病院にて初期研修後、精神科・児童精神科の臨床経験を積む。2021年、愛知県名古屋市に「塩釜口こころクリニック」を開院。「どんなあなたでも大丈夫」をモットーとしている。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。

出産前の「1人の状態」に戻してあげる

出産前の「1人の状態」に戻してあげる

編集部編集部

産後うつになった親のパートナーが注意すべき点はなんでしょうか?

河合 佐和先生河合先生

孤独にさせず、パートナーや同居している家族、行政、場合によっては医療機関を交えながら“支え合って”いくことでしょう。「大丈夫」や「頑張って」という声がけだと、受け取り方によっては「自分でなんとかして」という突き放した印象になりかねないので、安易な励ましは注意が必要ですね。

編集部編集部

本人が落ち込んでいると、つい「原因」を突き詰めようとしてしまいます。

河合 佐和先生河合先生

産後の漠然とした不安には、「原因追及→解決」というプロセスがなじまないかもしれません。私も2児の母ですが、なんで落ち込んでいるのか、自分でもわからないことがあったんですよね。1つ言えるとしたら、産後しばらくは数時間おき、人によっては1時間おきに赤ちゃんのお世話が必要になる場合もありますのでパートナーが毎晩でなくても夜間の子どもの世話を代わって、ご本人に「自分の時間や仮眠の時間をつくってあげる」ことでしょうか。

編集部編集部

そのとき、「何をしてほしい?」などと、具体的なリクエストを聞くのは有効ですか?

河合 佐和先生河合先生

産後うつにもいくつかの段階があるので、その人の状態次第で判断していただくしかないです。産後うつが重症化すると考えがまとまらなくなり、「何をしてほしい」という判断すら難しくなります。ただ、「死にたくなってない?」といった自死願望の有無は、「表情が暗いな」などと感じられた場合には積極的に確認してほしいです。産後うつ対策の目的の1つは「自殺予防」です。

編集部編集部

そうなると、パートナーが主体的に家事や育児を分担することに尽きそうです。

河合 佐和先生河合先生

赤ちゃんが「いる」状況と「いない」状況というのは、想像を絶するほどにお世話をする親の状況が変化します。それまでは自分のペースで過ごせていた日常が一転し、赤ちゃんのペースに合わせて自分の行動をほぼ全て合わせなければいけなくなるのです。もし、パートナーが育児に追い込まれていそうであれば、ぜひ「自分のペースで過ごす時間」を作ってあげてください。もっとも、孤独にさせるという意味ではありません。夫婦関係は依然として保ちつつ、「子育て」から解放してあげるイメージです。なお、パパ側の産後うつも増加傾向にあります。未体験の出来事が次々と生じるでしょうが、夫婦で力を合わせて乗り越えるという体験が、その後の家族の強い絆にもつながると思います。

産後うつのサインがあれば受診を

産後うつのサインがあれば受診を

編集部編集部

家事や育児を手伝うにしても「やり方が違う」と怒られるのが想定できます。

河合 佐和先生河合先生

ご本人からしたら、赤ちゃんに限らずパートナーによっても、「今までとは違うこと」が起きるということですよね。ですから、例えば出産前に「自分はこういうTシャツのたたみ方をするけど」みたいな予行練習をしておくといいかもしれません。母乳だけはママさんにしか出せませんが、それ以外の育児や家事なら夫婦で分担できるはずです。色々な予行練習がありそうですよね。

編集部編集部

事前のコンセンサスが取れていれば、相手の「時間づくり」も容易ですしね。

河合 佐和先生河合先生

そうですね。ご本人も「何をしてほしいかわからない」、パートナーも「どうやっていいかわからない」状態だと、出口が見つかりません。これに対して、「洗濯物を取り込んで畳んでおいてくれたんだ、ありがとう」となれば、気持ちも晴れるし好循環でしょう。普段の悩みも、スッと口に出しやすくなるのではないでしょうか。夫婦の会話時間をつくることも重要です。

編集部編集部

必要により受診を勧めることも、パートナーの役割ですよね?

河合 佐和先生河合先生

はい。受診が必要なサインとしては「寝られない、食べられない、笑顔が消える、悲観的な発言が増える」ですね。また、インターネットなどで簡単に入手できる「エジンバラ産後うつ病質問票」も活用しましょう。9点近くのスコアが出たら、症状が悪化する前に受診すべきだと考えます。受診先は赤ちゃんを産んだ産婦人科でも、最寄りの精神科でも構いません。医療機関の敷居が高ければ、保健所などに相談してもいいと思います。

編集部編集部

あくまで一般にですが、男性が女性をヘルプする図式に見えます。「女性中心」に物事が考えられていないでしょうか?

河合 佐和先生河合先生

女性は男性に比べて、ホルモンバランスの変化が顕著です。男性も大きな環境変化により、うつ状態になることもありますが、女性の産後うつの頻度が高いのは事実です。ですから、「女性中心」かどうかは別として、子育ては夫婦で力を合わせて協力しながらやっていくことが、とにかく大切だと思います。「どちらかがどちらかを助ける」という片方が主体の構図ではなく、「共に新たな生命を育てていく」という夫婦2人が主体となった構図で考えていくことが大切でしょう。

場合によってはパートナーがプロに相談する

場合によってはパートナーがプロに相談する

編集部編集部

しかし、「病院へ行け」というのも、なかなか言いだしにくいですよね?

河合 佐和先生河合先生

「行け」ではなく、「一緒に行こう」が正しいのではないでしょうか。「エジンバラ産後うつ病質問票」などを参考に、うつ傾向が強いときは、ためらわずに受診しましょう。また、パートナーが同行することで、ご本人に対する現在の状態の医学的な把握や対応法などを聞けると思います。ご家庭での接し方など、ヒントになることも多々あるでしょう。場合によっては、入院の間、お子さんを預かってくれる行政サービスもあります。

編集部編集部

家庭訪問してくれる助産師さんも、頼りになる存在だと思うのですが?

河合 佐和先生河合先生

そうですね。国の制度ですから、遠慮する必要はありません。産後の生活は、それまでの生活とは全く異なってしまいます。ぜひ積極的に、悩みごとなどは相談しましょう。そのとき、受診が必要そうなら、助産師さんから勧められることもあると思います。

編集部編集部

仮に治療が必要とみなされた場合、どのような流れになるのでしょう?

河合 佐和先生河合先生

環境調整」「薬物療法」「精神療法」を3本柱で組み合わせることもあります。環境調整は様々にありそうですが、核家族よりも「注意を払ってくれるたくさんの目がある家庭」の方が、うつ病にはなりにくいと思います。なぜならば、孤独化を防ぎ、人に頼れるからです。家族の誰かが何も言わず隣に座っているだけでも、安心できるところはありますよね。 ただ、家族であっても関係性によっては、一緒にいることがストレスとなることもありますので、その辺りは個人個人でストレスが少ない環境となるよう調整していく必要があります。

編集部編集部

パートナーがプロの力を頼ってもいいのでしょうか?

河合 佐和先生河合先生

もちろんです。ただし、産後うつになっていないパートナーにとっては、医療機関などの敷居が高いかもしれません。まずは、「自分の時間を確保してあげること」と「自殺の兆候を確認すること」からはじめて、そのうえでどうしていいかわからなくなったら、行政や医療機関に相談しましょう。「家族相談」を掲げている医療機関、「ファミリーサポート」を実施している行政もあります。出産した産婦人科に相談してもいいでしょう。

編集部まとめ

今回の話は、あくまで一般的な内容です。「一緒に話を聞いてほしい」とする人もいれば、「とにかく、そばにいてくれればいい」という人、逆に「1人になりたい」人もいるはずです。そんなとき、パートナーが迷って何もしないよりは、動きはじめてみませんか。「本人の自由時間の確保」と「自殺防止」に留意しつつ、医療や行政の力も頼りましょう。

医院情報

塩釜口こころクリニック

塩釜口こころクリニック
所在地 〒468-0073 愛知県名古屋市天白区塩釜口1-851 ドミール八事1階
アクセス 地下鉄鶴舞線「塩釜口駅」 徒歩1分
診療科目 心療内科、精神科

この記事の監修医師