「腸閉塞」を予防する可能性の高い「食べ物」はご存知ですか?避けた方が良い食べ物も解説!
公開日:2025/09/07

腸閉塞(イレウス)は、大腸や小腸のいずれかで内容物の通過が妨げられ、腸管が詰まってしまう状態です。従来日本では腸管の通過障害が生じる病態を総じて「イレウス」と呼んできました。2015年のガイドラインからは従来の「機能性イレウス(腸管麻痺)」をイレウス、「機械性イレウス」を腸閉塞と定義することとしましたが現場ではさまざまに呼ばれています。 本記事では腸閉塞と食事の関係について、予防に役立つ食事や避けるべき食品、そして術後の食生活で気を付けたいポイントをQ&A形式でわかりやすく解説します。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。
目次 -INDEX-
腸閉塞と食事の関係
腸閉塞とはどのような病気ですか?
腸閉塞とは、一言でいうと腸が詰まってしまった状態です。その名のとおり、腸の内容物の通り道が何らかの原因で塞がれてしまい、食べ物や消化途中の内容が先に進めなくなります。
腸閉塞になると腸の上流側に内容物やガスがたまっていき、お腹が張って激しい腹痛が起こったり、胃の内容物や胆汁を吐いてしまったりします。特に便やおならが丸一日以上出なくなる場合は腸閉塞を疑います。さらに症状が進むと腸の血流まで悪くなり、腸管に炎症や壊死を起こして腸に穴が開き腹膜炎になるリスクもあります。腸閉塞は緊急手術が必要となるケースも多い重篤な病気です。
腸閉塞の原因を教えてください。
腸閉塞を引き起こす原因にはさまざまなものがあります。主な原因として、以下のようなケースが知られています。
- お腹の手術後の腸の癒着
- 腸の腫瘍
- ヘルニア(脱腸)(嵌頓〈かんとん〉ヘルニア)
- 腸のねじれ(腸軸捻転〈ちょうじくねんてん〉)や腸重積
- 重度の便秘
- 腸の動きの麻痺(機能的イレウス)
- 異物の嚥下
- 食事の摂り方の問題
腸閉塞と食事に関係はありますか?
食事の内容や食べ方は腸閉塞の発症や予防に深く関係します。上記で挙げた原因のうち、いくつかは食事と直接または間接に関係しています。
まず、食べ物自体が詰まるケースがあります。特に噛まずに早食いする習慣のある方は注意が必要です。大きな塊のまま飲み込まれた食べ物は消化されにくく、そのまま腸まで届いて腸管を塞ぐリスクがあります。また、食事の偏りや不足も間接的に腸閉塞に影響します。例えば食物繊維や水分が不足した食生活では慢性的な便秘を招き、先述したように硬い便による腸閉塞(糞便性イレウス)のリスクが高まります。
腸閉塞の予防によい食べ物と食事の摂り方
腸閉塞を予防する食べ物はありますか?
特定の食品を食べれば腸閉塞を防げる、という食べ物は残念ながらありません。しかし、腸閉塞を予防しやすい食生活というものはあります。ポイントは便通を良好に保ち、腸に無理な負担をかけない食事を心がけることです。具体的には以下のような食品・栄養素をバランスよく取り入れるとよいでしょう。
食物繊維を適度に含む食品
食物繊維は腸まで達して便のかさを増し、便秘の予防や整腸効果をもたらします。野菜、果物、海藻、きのこ、イモ類、豆類、全粒穀物などに多く含まれます。
発酵食品・乳酸菌を含む食品
ヨーグルト、チーズ、味噌、漬物、納豆などの発酵食品には、乳酸菌や酵母など腸内環境を整える微生物が含まれています。乳酸菌は腸内の善玉菌を増やし、腸内環境の改善に寄与します。腸内環境が良好になると腸の蠕動運動が活発になり、便通も整いやすくなると考えられています。
十分な水分をとる
水分補給も忘れてはいけません。水分が不足すると便が硬くなって腸の中を移動しにくくなります。逆に水分をしっかり摂ることで便に適度な潤いとやわらかさを保ち、排泄をスムーズにする効果があります。便秘予防のためには1日コップ6~8杯(1.5~2リットル程度)の水分を目安に、こまめに水やお茶を飲みましょう。
適度な油脂類の摂取
油ものの食べすぎは下痢を引き起こしたり胃もたれの原因にもなるため注意が必要です。揚げ物などは少量にとどめ、オリーブオイルやごま油など良質な油を料理に大さじ1杯程度使うくらいが適量です。
腸閉塞の予防に効果的な食べ方のポイントを教えてください。
腸閉塞予防には、何を食べるかだけでなくどう食べるかも大切です。以下に日常生活で心がけたい食べ方のポイントをまとめます。
- 腹八分目を守る(食べ過ぎない)
- よく噛んでゆっくり食べる
- お腹のハリを感じたら腸を休ませる
- 規則正しい食習慣をつける
腸閉塞の予防に向いていない食べ物はありますか?
腸閉塞予防の観点で控えた方がよい食品はいくつかあります。特に腸に詰まりやすいと報告されている食品や、消化に時間がかかって腸に負担をかける食品は注意が必要です。以下に代表的な例を挙げます。
柿(渋柿)
渋柿を食べ過ぎると、胃の中で柿の渋成分(シブオール)が固まって胃石(いせき)という塊を作ることがあります。
こんにゃく
特におでんの大きいこんにゃくや、糸こんにゃく・玉こんにゃくなどは噛まなくても丸飲みできてしまうため危険です。
餅
お餅も腸閉塞の原因になることがあります。餅は熱いとやわらかいのに冷めると固くなる性質があり、胃から腸へ送られる途中で固くなって腸管内で詰まりやすいと考えられています。
海藻類(特に昆布)
わかめやひじきなど海藻類は食物繊維が豊富で健康によいイメージがありますが、消化に時間がかかる食品でもあります。昆布は腸内で水分を吸って膨張する性質もあり、一度詰まるとなかなか自然には改善しません。
きのこ類
きのこも海藻と同様に繊維が多く消化されにくい食材です。特にえのき茸はそのままだと繊維が長く残りやすく、束になって腸に滞留すると詰まりの原因になりえます。腸閉塞予防には細かく刻んで火を通して食べることをおすすめします。
根菜類・繊維質の多い野菜
ゴボウ、タケノコ、レンコン、トウモロコシなどの繊維たっぷりの野菜は腸閉塞ハイリスクの食品です。これらは健康な方にとっては食物繊維源としてよいのですが、腸の狭窄がある方にはまさに詰まりやすい素材となります。不溶性食物繊維が豊富で噛み切りにくいものが多いため、繊維を断ち切るように細かく切ってやわらかく調理することが必須です。
豆類・ナッツ類
大豆やインゲン豆などの豆類は皮が固く不溶性繊維が多いものがあり、そのままだと消化に時間がかかります。豆類はタンパク源として大切ですが、腸閉塞が心配な方は豆腐や豆乳など消化のよい形で摂ると安心です。
果物の種や硬い皮
前述の梅干しの種のように、果物の種は飲み込まないよう十分注意しましょう。また柿やみかん、ブドウなど果物の皮・繊維も大量に食べると消化されず塊になります。
腸閉塞の術後によい食べ物と悪い食べ物、食事のポイント
腸閉塞の術後に食べた方がよい食べ物はありますか?
腸閉塞の治療で手術を受けた後の食事は、段階的に普通食へ戻していくことになります。術後すぐは腸を休めるためしばらく絶食し、点滴で栄養補給を行います。その後、医師の許可のもとで水やお茶から開始し、問題なければ流動食(スープや重湯など)、さらにお粥へ、と少しずつ固形物を増やしていくのが一般的な流れです。
術後1~2週間ほどは五分粥~全粥程度のやわらかいお粥や具の崩れたスープなどが中心になります。腸閉塞の原因や手術の内容によって指示は異なりますが、退院する頃(術後1~2週間)には軟らかい普通食に近いものが食べられるようになることが多いです。そして退院後しばらく(1ヶ月程度)は消化のよい食事を続け、徐々に通常の食事に戻していくことになります。
そこで、術後しばらくの間に積極的に食べたい食品は消化がよく栄養もしっかり摂れるものです。
腸閉塞の術後に控えた方がよい食べ物を教えてください。
術後しばらくの間(目安として退院後1~2ヶ月)、避けた方がよい食べ物があります。具体的には以下のような食品・飲食物です。
- 食物繊維が多い食品硬い穀類・パン
- 脂肪分の多い食品
- 漬物・塩辛い食品
- 生野菜・刺激の強い野菜
- 繊維の多い果物・ドライフルーツ
- 香辛料・刺激物
- 冷たい食品・飲料
- アルコール類
腸閉塞の術後の食事の摂り方で気を付けた方がよいことはありますか?
はい、術後の食事では何を食べるかと同じくらいどう食べるかにも気を配る必要があります。
- 食事の量は一度にたくさん摂りすぎない
- 必ずよく噛んでゆっくり食べる
- 腸の様子を見ながら食事を進める
- 食事の内容・形態は段階的にレベルアップする
- 腸閉塞予防の内服薬を活用する
編集部まとめ
腸閉塞は命にも関わる怖い病気ですが、日頃の食生活や食習慣に注意することで予防や再発防止に努めることが可能です。正しい食養生と早め早めの対応で、腸閉塞と上手に付き合っていきましょう。




