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「腸閉塞」はどんな「治療法」を行う?治療の進み方や注意点も解説!【医師監修】

 公開日:2025/11/05
「腸閉塞」はどんな「治療法」を行う?治療の進み方や注意点も解説!【医師監修】
腸閉塞(イレウス)は、大腸や小腸のいずれかで内容物の通過が妨げられ、腸管が詰まってしまう状態です。従来日本では腸管の通過障害が生じる病態を総じてイレウスと呼んできました。2015年のガイドラインからは従来の機能性イレウス(腸管麻痺)をイレウス、機械性イレウスを腸閉塞と定義することとしましたが現場ではさまざまに呼ばれています。

腸閉塞の原因はさまざまで、腹部手術後の腸同士の癒着(ゆちゃく)によるものや、がんやヘルニアによる機械的な閉塞などがあります。症状としては激しい腹痛、吐き気・嘔吐、腹部のハリや膨満感、排便やガスの減少などが現れます。重症化すると腸管の血流が途絶えて壊死や腹膜炎を起こし命に関わることもあるため、早急な診断と治療が必要です。
高宮 新之介

監修医師
高宮 新之介(医師)

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昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院 生理学講座 生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

腸閉塞の治療法

腸閉塞の治療法

腸閉塞の治療法にはどのようなものがありますか?

腸閉塞の治療には大きく分けて保存療法(手術をしない治療)と手術療法の二種類があります。症状の程度や原因によって使い分けられます。保存療法では、絶食や点滴による栄養補給、鎮痛剤投与などで腸管を休ませつつ、鼻から胃や小腸に管を入れて腸内のガスや内容物を吸い出し(減圧療法)、腸管内圧を下げて症状改善を図ります。また、胃腸管から造影剤(ガストログラフィン)を注入して診断・治療に役立てる方法も推奨されています。こうした保存療法で改善しない場合や、腸のしめつけ(絞扼)・腸壊死の疑いがある場合には手術を検討します。

腸閉塞の保存療法について教えてください

保存療法ではまず絶食にして点滴で水分・栄養補給し、腸を休ませます。食事は控え、できるだけ腸管を刺激しないようにします。同時に鼻から胃・腸に管(胃管やイレウス管)を挿入し、腸にたまった液体やガスを吸引して減圧します。症状や検査所見を見ながら1~2日経過観察し、改善がなければさらに1週間程度の治療をめどに保存療法を続け、それでも効果がなければ手術を検討します。保存療法で改善すれば、まず脱水や電解質異常を整え、その後、便通や排ガスの再開を確認しながら少量の水分やお粥から食事を再開していきます。なお、症状が軽い単純性イレウスでは高気圧酸素療法など特殊な治療法が有効な場合も報告されています。

腸閉塞の手術はどのようなときに選択されますか?

手術療法は、腸がねじれていたり血流障害を起こしている(絞扼性)場合や、保存療法で長期間(目安として約1週間)改善しない場合に選択されます。腸閉塞の所見(強い腹痛、壊死兆候、還納できないヘルニアなど)があるときは緊急手術が必要です。手術では腹部を切開して(または腹腔鏡下で)閉塞原因を除去します。具体的には、腸の癒着部位を剥離して腸管を解放し、腸管が損傷していれば壊死部分を切除して正常な腸管同士をつなぎ合わせます。近年は傷が小さく身体への負担が少ない腹腔鏡手術が可能な場合が多く、回復も速いとされています。

腸閉塞治療の進み方

腸閉塞治療の進み方

腸閉塞の保存療法はどのように進みますか?

保存療法ではまず厳格に絶食し、点滴で水分・栄養を補います。同時に胃管やイレウス管を挿入し、腸内のガスや滞留物を吸引して腸管内圧を下げます。痛みが強い場合は鎮痛剤を使います。治療を始めてからは腸の回復を待ち、脱水や電解質異常を補正しながら経過観察します。食事は、排ガス・排便が確認できてから水分摂取を開始し、徐々に固形物を増やしていくのが基本です。例えば最初はスポーツドリンクや重湯から始め、調子を見ておかゆややわらかい食事へ移行します。

腸閉塞の保存療法の治療期間を教えてください

保存療法の目安はおおむね1週間前後です。軽症であれば数日で改善する場合もありますが、1週間以上たっても改善しないときは手術を検討します。ただし、原因がはっきりせず改善も見られない場合は早期に手術へ移行することもあります。個人差はありますが、通常は1~2週間以内に治療方針を決定します。

腸閉塞の手術ではどのようなことを行いますか?

手術では閉塞の原因を除去します。具体的には腹部を開いて(腹腔鏡下で行う場合もあり)癒着部位をはがして腸管を解放し、捻転や圧迫があればもとの位置に戻します。腸管の壊死や深刻なダメージがあれば、その部分を切除して前後の正常な腸管同士を縫い合わせることもあります。腫瘍が原因の場合は腫瘍自体を摘出し、必要なら結腸・直腸を切除します。また、緊急時には一時的に人工肛門を作ることもあります。最近は腹腔鏡手術が多く、傷が小さいため痛みが少なく回復も早いという利点があります。

腸閉塞で手術を行う場合の入院期間と完治までの目安を教えてください

手術を受ける場合、一般に入院期間は1~2週間ほどを見込みます。手術当日は麻酔から覚めるまで観察し、術後2~3日で腸が動き始める方もいますが、完全に通常の食事に戻るまでには数日~1週間かかることが多いです。特に開腹手術の場合は回復に時間がかかるため、入院日数は長くなりがちです。一方、腹腔鏡下手術では回復が早く、術後早期から歩行や水分摂取を再開できるケースもあります。手術後は合併症防止のため、創部のケアや腸の働きが戻るまでの管理を行い、退院後も消化のよい食事から始めて徐々に通常の食事に戻します。

腸閉塞治療中の注意点

腸閉塞治療中の注意点

腸閉塞と診断されたらどのような点に気を付ければよいですか?

腸閉塞と診断されたら、まずは医師の指示に従い絶食と点滴療法を守ります。痛みがあるからといって自己判断で鎮痛薬や下剤を使わないようにし、少しでも症状の変化(痛みの増強、嘔吐の頻度増加、血便や熱)を感じたらすぐに医師に報告しましょう。自宅安静といっても、トイレを急いだり横になる姿勢で長時間いていないように注意し、血流が滞らないよう足を動かす程度の軽い運動(ベッド上での足首まわしなど)を行ってもよい場合があります。症状が悪化しそうなときは緊急時の対処法(救急連絡先)も確認しておくと安心です。原則、腸閉塞の治療中は自己判断で飲食せず、何か不安があれば早めに医療機関に連絡しましょう。

保存療法中の注意点を教えてください

保存療法中は絶食が継続しているため、水分補給は点滴で行います。脱水や電解質異常が起こりやすいので、点滴の種類や量は医師・看護師が管理します。また、挿入したチューブからの排液量が治療効果の目安になるため、ナースコールで異常を報告しやすいようにしてください。痛み止めの使用も必要に応じて行いますが、鎮痛薬は腸管の動きを鈍らせるものもあるため、医師と相談して用量・種類を守りましょう。入院中は寝返りを打ったり腹部に負担がかからない姿勢をとり、排ガスや排便があったか毎日確認します。加えて、便秘薬や下剤は腸閉塞を悪化させる恐れがあるため絶対に使用しないでください。治療中に少しずつ食事を再開するときも、まずはやわらかい消化しやすいものを少量からにし、腹痛や吐き気がぶり返さないかを慎重に観察しながら進めましょう。

腸閉塞の手術を行った後は元どおりの生活を送ることができますか?

一般的に、手術が無事成功すれば元の生活に戻れます。ただし、腹腔鏡手術であっても創部の治癒には数週間かかるため、退院後しばらくは重いものを持たない、激しい運動は控えるなど身体を大事にしてください。食事については、まずはおかゆや軟らかい食品から始め、徐々に普通食に戻します。術後再発を防ぐためにも、食べ過ぎ・暴飲暴食を避け、腹部に急な負担をかけない食習慣が望ましいでしょう。なお、腸閉塞は癒着が原因の場合、手術自体が新たな癒着を作る恐れがあるため、外科医も手術は最終手段ととらえています。術後も定期的に腹部の調子を観察し、異変があれば早めに受診してください。腹腔鏡手術を行った場合は傷が小さく再発率も低いとされますが、いずれの場合も「何かおかしい」と感じたら専門医に相談することが重要です。

編集部まとめ

編集部まとめ

腸閉塞の治療は、軽度であれば保存療法(絶食・点滴・腸管減圧)で改善を待つことが多いですが、1週間程度たっても改善せず、絞扼の疑いがあれば手術へ移行します。手術では原因部分の癒着を剥離し、必要であれば壊死部位の切除・再吻合を行います。保存療法でも手術でも、治療中は医師の指示をよく守り、自己判断の飲食や薬の使用を避けることが大切です。腸閉塞は再発することもある病気ですが、適切な治療と生活上の注意を守れば日常生活へ復帰できます。痛みや腹部異常が続く場合には我慢せず速やかに受診し、担当医とよく相談しながら治療に取り組みましょう。

参考文献

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