「女性が梅毒」を発症するとどんな「症状」が現れる?初期症状も解説!【医師監修】

近年、日本では梅毒の患者さんが急増しており、特に若い女性の感染が大きな問題となっています。一方で梅毒は気付きにくく、ほかの病気との区別が難しい病気です。梅毒は早期に治療を行えば多くの場合後遺症を残さず治癒することが期待できますが、放置すると重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。本記事では、梅毒の基本的な知識や症状、どのような後遺症がおこりうるかなどをわかりやすく解説します。

監修医師:
高橋 孝幸(医師)
目次 -INDEX-
梅毒の概要

梅毒はどのような病気ですか?
梅毒の原因と感染経路を教えてください
具体的には、陰茎や膣(ちつ)、肛門、口などの粘膜どうし、あるいは粘膜と皮膚どうしが直接触れる性交渉(性交、オーラルセックス、アナルセックスなど)でうつります。まれにキスでも相手の口の中に梅毒の病変があれば感染することがあります。
妊婦さんが梅毒に感染すると、胎盤を通じて赤ちゃんにも感染してしまうことがあります(母子感染)。
1年間の女性梅毒感染者数は何人ですか?
女性が梅毒に感染したときに現れる症状

梅毒に感染した際の初期症状を教えてください
梅毒の症状はどのように進みますか?
その後、Ⅱ期を過ぎてから、しばらく症状のない期間が続きます。この期間は数年から数十年とさまざまです。この症状のない時期は潜伏梅毒と呼ばれ、感染力は大幅に低下しますが、感染から1年以内の早期潜伏期では他者や胎児へ感染する可能性が残ります。
梅毒はこのように症状がなくなり、治ったかのように見えながら進行していきます。しかし、治療がなされないまま無症状の期間が過ぎると、静かに病状が進行していた梅毒によってさまざまな合併症が引き起こされます。
女性特有の梅毒の症状はありますか?
梅毒と間違えやすい病気を教えてください
まず代表的なものが単純ヘルペスウイルス感染症です。口の周囲や陰部に小さな水ぶくれや潰瘍が現れます。見た目で区別することは難しいくらい大変似ています。ただし、ヘルペスによる水ぶくれは強い痛みを伴うのが特徴です。一方、梅毒のⅠ期では痛みを伴わないことが多いとされています。
次に挙げられるのが、軟性下疳(なんせいげかん)です。こちらも細菌による性感染症で、陰部に潰瘍がみられます。軟性下疳も強い痛み伴う点が梅毒との違いです。
また、尖圭(せんけい)コンジローマという病気もしばしば梅毒と似た症状を呈します。ヒトパピローマウイルスによる感染症で、陰部や肛門の周囲に小さなイボ状の病変が現れます。梅毒のⅡ期にも扁平コンジローマといわれるイボのような病変をつくり、見た目が似ているのでしばしば混同されます。
梅毒のⅡ期の発疹は、一見して風疹や麻疹などウイルス感染症、アレルギー性の湿疹などの症状と似ていて、診断が難しいことがあります。そのほかにも次のような病気が梅毒との見分けがつきにくいとされています。
- 伝染性単核球症(EBウイルスの感染症)
- 悪性腫瘍(がん)
- 悪性リンパ腫(リンパ節が腫れる血液のがん)
このように梅毒と間違えやすい病気はたくさんあるため、気になる症状があるときは自己判断せずに病院に相談するのがよいでしょう。
女性の身体に梅毒がもたらす影響

初期の梅毒を治療した場合、女性の身体に後遺症は残りますか?
梅毒による将来の妊娠や出産への影響を教えてください
妊娠している方が梅毒に感染していると、胎盤を通じてお腹の赤ちゃんに梅毒トレポネーマが感染します。これは先天梅毒といわれ、早産や死産につながったり、赤ちゃんの神経や骨などに異常を起こしたりする可能性があります。生まれてきたときに異常がなくても、後から症状がでる場合もあります。なお、日本では妊婦健診で梅毒の検査が行われており、妊娠の初期に治療すれば、胎児への感染リスクを大きく下げることができるといわれています。
このように梅毒は初期のうちに治療を行えば、妊娠や出産で大きな問題はないことが多いですが、治療せずに放置すると母子ともに重大な合併症を引き起こすおそれがあります。
進行した梅毒にはどのような後遺症がありますか?
- 大動脈という大きな血管に瘤が生じる(大動脈瘤)
- 記憶力が低下したり、判断力が低下する
- 認知症の症状がみられる
- イライラや錯乱などの精神症状がみられる
- 歩行が不安定になったり、背中と足に刺すような痛みがみられたりする
- 視力が低下し、ときに失明する
このように梅毒は進行すると、心臓や脳など複数の臓器に病変がみられます。しかも、この時期に起こった臓器の障害はもとに戻ることはなく、後遺症として残ってしまいます。命に関わる状態になることもあります。
編集部まとめ

梅毒は近年、若い方で増えている性感染症です。早期に適切な治療ができれば、多くの場合治癒が期待できます。ただし、初期には痛みなどを伴わないため、気付かず放置してしまうケースが多くみられます。梅毒は胎盤を介してお腹の赤ちゃんに感染してしまうため、特に妊娠を希望する女性や妊婦さんは注意が必要です。正しい知識と行動によって、梅毒から自分自身と大切なパートナーを守りましょう。




