目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「コーヒーは高血圧」のリスクを減らせる?高血圧の方が飲んではいけない飲み方も解説!

「コーヒーは高血圧」のリスクを減らせる?高血圧の方が飲んではいけない飲み方も解説!

 更新日:2025/08/21

コーヒーを習慣的に飲む人は高血圧になる、こういった話を聞いたことがある方もいると思います。コーヒーと血圧の関係は今も研究が続いており、これまでの研究結果もさまざまです。この記事では、現在考えられているコーヒーと血圧の関係を詳しく解説します。

上田 莉子

監修医師
上田 莉子(医師)

プロフィールをもっと見る
関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

コーヒーと高血圧の関係

コーヒーと高血圧の関係

コーヒーを飲むことは血圧にどのような影響を与えますか?

コーヒーには成分としてカフェインが含まれています。カフェインは、アデノシンと呼ばれる血管を広げる作用を持つ物質の働きを阻害し、これによって血管が収縮し血圧が上昇すると考えられています。

そのほかには、カフェインは交感神経を活性化させる作用があり、心拍数血圧を上昇させる働きもあります。これらの作用以外にも、カフェインには、副腎髄質ノルアドレナリンの放出促進などの作用もあり、血圧を上昇させるといわれています。 健康診断の前にコーヒーを飲まないように指示された経験がある方もいると思いますが、これもカフェインの作用により正確な血圧が測定できなくなるためです。しかし、この血圧上昇に関しては一時的(約3時間程度)なものであり、摂取後時間とともに元の血圧へと戻ります。

高血圧症の人は、コーヒーを飲むことによる一時的な血圧上昇はリスクと考えられ避けるべきといわれることもありますが、一方で、高血圧症の方が1日2~4杯のコーヒーを摂取する方は、摂取しない方と比べて、血管機能によい影響をもたらす研究結果もあります。 これは、コーヒーに含まれるポリフェノールの効果と考えられています。ポリフェノール中にはクロロゲン酸と呼ばれる物質が含まれており、このクロロゲン酸には抗酸化作用があり、高血圧の原因である活性酸素を除去すると考えられているためです。

コーヒーを飲む人は高血圧になりやすいといわれてきた理由を教えてください

過去の研究により、喫煙者と非喫煙者を比較したときに、喫煙者の方が割合が高いという報告があります。また、そのほかにもコーヒーを飲む人には、慢性的な不眠やストレスといった、高血圧のリスク因子を持つ方が多いと考えられていることも、コーヒーと高血圧が密接な関係にあるといわれてきた一因です。

コーヒーを飲むと慢性的な高血圧になりますか?

上述したとおり、コーヒーを飲む習慣が慢性的な高血圧をもたらすという確定的な報告はありません。コーヒーにはカフェイン以外にも生理活性を示す成分が複数含まれるため、血圧との関係は複雑だと考えられています。 また、コーヒー摂取後の一時的な血圧の上昇は約3時間程度で通常の血圧に戻る傾向にあります。ただし、個人差があることには注意が必要です。カフェインの代謝速度は個々人によって大きく異なり、代謝が遅い人では血圧への影響が長く続く可能性があります。また、すでに高血圧がある人や、カフェインに敏感な体質の人では、より慎重な摂取が必要です。

コーヒーと高血圧症のリスク

コーヒーと高血圧症のリスク

コーヒーを飲むと高血圧症のリスクを減らせますか?

上述したとおり、コーヒーと血圧の関係は現在も研究されており、さまざまな研究結果が報告されています。過去の研究のなかには、1日4杯以上のコーヒーを飲む方では、高血圧のリスクが約10%低下したという報告もあります。そのほかにも、大規模な疫学研究で、1日3〜4杯程度の適量のコーヒー摂取は、高血圧のリスクを増加させないか、わずかに減少させる可能性があることが示されています。現在のところは、適量(1日2〜4杯)のコーヒーの摂取は身体によいという考えの方が優勢のようです。

コーヒーが血圧にもたらすよい影響を教えてください

コーヒーで注目されている成分がクロロゲン酸をはじめとするポリフェノール類です。これらの成分は強力な抗酸化作用を持ち、血管の老化を防ぎ、血管内皮機能を改善します。また、コーヒーに含まれるカリウムには血圧を下げる作用があります。カリウムは体内のナトリウムの排出を促進し、血圧を下げます。ただし、カリウムは腎機能が低下している方では、体内の血中濃度が上昇し、不整脈などのリスクになるため注意が必要です。 また、多くのコーヒーを習慣的に飲む方が実感していることだと思われますが、コーヒーブレイクがもたらすリラックス効果も見逃せません。ストレスは血圧上昇の大きな要因ですが、コーヒーを飲む時間を意識的にリラックスタイムとすることで、ストレス軽減効果も期待できます。

高血圧症の患者さんがコーヒーと上手に付き合う方法

高血圧症の患者さんがコーヒーと上手に付き合う方法

高血圧症の場合、コーヒーを飲むときに気を付けることはありますか?

高血圧症の方がコーヒーを飲む際は、いくつかの点に注意が必要です。まずは、自分の身体の反応を観察することです。コーヒーを飲んだ後に動悸がする頭痛がする、血圧が一時的に上昇するなどの症状がある場合は、摂取量を減らすか、カフェインレスコーヒーへの切り替えを検討しましょう。カフェインを常習的に摂取している人は耐性ができ、これらの症状を感じにくくなっている傾向にあります。 また、カフェインの摂取後に一時的な血圧上昇が起こるため、エスプレッソなどカフェイン濃度の高いものより、ドリップコーヒーの方が血圧への影響は穏やかになりますので、飲むコーヒーの種類を意識することも重要です。

おすすめできないコーヒーの飲み方を教えてください

まず、多量のコーヒー摂取は控えるべきです。上述したとおり、これまでの研究において、適量と判断されるコーヒーの量は1日2〜4杯程度と考えられますので、1日5杯以上のコーヒーは、たとえ健康な人でも身体に悪影響を与える可能性があります。適量を守ることが大切です。 また、コーヒーを飲む際に砂糖ミルクを入れる方は、ついつい糖分や脂肪分を過剰に摂取している可能性があります。これらは、肥満糖尿病のリスクになりますので、注意すべきです。

高血圧症の患者さんは1日何杯までコーヒーを飲んでよいですか?

高血圧症の患者さんの適切なコーヒー摂取量は、個人の状態により異なりますが、一般的には1日4杯程度までが目安とされています。これは、カフェイン摂取量にすると200〜300mg程度に相当します(コーヒー1杯あたり約80〜100mgのカフェイン含有)。 また、コーヒーはいくつかの薬との相互作用に注意が必要です。代表的なものは、キサンチン系薬剤・MAO阻害薬・シメチジンなどがあげられます。そのほかにも相互作用に注意が必要な薬剤がありますので、一度主治医に相談してみるといいでしょう。

コーヒーを飲まない方がよいケースを教えてください

以下のような状況では、コーヒーの摂取が身体によくないケースがあります。

  • 胃腸が弱い
  • 逆流性食道炎がある
  • 頭痛持ち(頭痛の種類による)
  • 貧血
  • 妊娠、授乳中

上記の理由をそれぞれ説明します。 コーヒーに含まれるクロロゲン酸は胃酸分泌を促進するため、胃腸が弱い場合、胃痛を誘発する可能性があります。似た理由で、逆流性食道炎が悪化する可能性があります。 頭痛に関しては、カフェインによる血管収縮の作用が片頭痛を一時的に改善する効果も報告されていますが、過量な摂取やカフェインの作用の反動で頭痛が悪化するケースもあります。貧血に関しては、コーヒーに含まれるカフェインタンニンが鉄の吸収を阻害するため、貧血が悪化する可能性があります。妊娠・授乳中の場合は、カフェインや代謝物質が母乳や胎盤を通過し子どもへと移行します。過量な摂取は、血管収縮作用による悪影響や胎児においては、代謝能が成人より低いため、体内にカフェインが残存しやすくなりますので、注意が必要です。

編集部まとめ

編集部まとめ

コーヒーと血圧の関係は、長年研究されているテーマです。コーヒーが高血圧によいか悪いかは、一概にはいえません。適量のコーヒーの摂取は精神的なリラックス効果や、血管へのよい影響があるといわれてます。一方で、過量な摂取は身体へのリスクとなります。嗜好品の一つであり、自分にとって適切なコーヒーとの付き合い方を見つけていくといいでしょう。

この記事の監修医師