肌がかゆくなり、ボロボロになったりよくなったりを繰り返すアトピー性皮膚炎に悩みが尽きない方は少なくありません。適切な治療と日常生活でのケアが、症状のコントロールに必要不可欠です。
しかし、主な治療方法は薬物療法のため、ドラッグストアで手軽に購入できる市販薬も存在します。市販薬でアトピー性皮膚炎を抑えることはできるのでしょうか?
本記事では、アトピー性皮膚炎に用いられる治療薬の種類や市販薬の選び方、そして症状を悪化させないための日常生活での注意点について詳しく解説します。アトピー性皮膚炎に悩んでいる方に、少しでも役立つ情報をお届けできれば幸いです。
プロフィールをもっと見る
名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
アトピー性皮膚炎の治療薬
アトピー性皮膚炎に使われる治療薬にはどのようなものがありますか?
アトピー性皮膚炎に使われる治療薬は、炎症を抑えるステロイド外用薬と非ステロイド性抗炎症外用薬です。ステロイド外用薬は、炎症を抑える効果があるため、アトピー性皮膚炎の治療に広く使用されています。ただし、効果の強さはステロイドのランクによって分かれており、症状の進行具合や発症部位によって使い分けられています。非ステロイド性抗炎症外用薬は、ステロイド外用薬よりも効果は控えめですが、長期的な使用による副作用が少ないとされている薬です。近年では、免疫の働きを調整する新しいタイプの外用薬であるJAK阻害薬や、炎症に関わる特定の物質を抑える外用薬も出てきています。
アトピー性皮膚炎の治療薬に副作用はありますか?
アトピー性皮膚炎の治療薬には、種類によってさまざまな副作用が生じる可能性があります。ステロイド外用薬の場合は、長期にわたって同じ部位に強いランクの薬剤を使用することで皮膚が薄くなったり、毛細血管が拡張したりニキビのような皮疹が出ることもあるため注意が必要です。しかし、医師の指示にしたがって適切な強さの薬剤を適切な期間で使用すれば、副作用のリスクを抑えることができます。非ステロイド性抗炎症外用薬は、ステロイド外用薬に比べると副作用は少ないとされています。しかし、かぶれや皮膚炎を引き起こすこともあるため、注意が必要です。ほかにも内服薬のステロイド薬では、短期的な使用であっても血糖値の上昇やむくみ、気分の変化などが起こることもあります。さらに抗ヒスタミン薬は、眠気やお口の渇きといった副作用が一般的です。生物学的製剤では、注射部位に反応や、まれに重篤なアレルギー反応や感染症のリスクがあることも報告されています。
治療薬を使うときの注意点を教えてください。
アトピー性皮膚炎の治療薬を使うことに限った話ではありませんが、まずは医師の指示をしっかり守り、用法や用量を間違えないようにすることが重要です。自己判断で薬の種類や塗る回数を変えたり、使用を中止したりしないようにしましょう。特に、外用薬の場合には塗る範囲や薬の厚さ、塗るタイミングなどが症状の改善に大きく影響します。外用薬を塗る場合は、入浴やシャワー後などの手や患部が清潔な状態で、優しく丁寧に塗り広げることが重要です。そうすることで薬の吸収力を上げ、感染症を予防できます。複数の外用薬を塗る場合には、薬の順番や塗る時間の間隔など、医師や薬剤師の指示にしたがって使用しましょう。ほとんどの場合、刺激の少ない保湿剤を先に塗り、その後に治療薬を塗ることが推奨されています。薬との相性もあるため、外用薬の使用はきちんと説明を聞くことが大切です。
外用薬の正しい塗り方を教えてください。
アトピー性皮膚炎の外用薬は正しく塗ることで治療効果を高められます。まず、
手と患部を清潔にしましょう。患部を洗うときは、汚れを優しく洗い流して刺激にならないよう、やさしく水分を拭き取ることが大切です。薬の種類によって塗り方や時間の間隔は異なりますが、一般的な外用薬の正しい塗り方は以下のとおりです。
- 手と患部を清潔にする
- 保湿剤を患部に優しく塗る
- 5分ほど置いてから治療薬を塗る
- 成人の人差し指の先端から第一関節まで出した量を塗る
- 塗布するときは患部全体に薄く優しく塗り広げる
- 塗り終わったらしばらく薬を乾燥させる
症状の進行具合や薬の種類によっては、手順や外用薬の量、置く時間の間隔が異なります。あくまでも一般的な例ですが、成人の人差し指の先端から第一関節まで出した量は約0.5gで、手のひら2枚分の面積に塗るのに適量とされています。また、毛の流れに逆らうように塗ると、より均一に塗布できるためおすすめです。外用薬を塗った後はすぐに衣服を着用すると、薬が取れてしまいます。5分ほど薬を乾燥させることで、皮膚に薬がしっかりと吸収されやすくなります。患部によって必要な量や塗布回数が異なるため、医師の指示にしたがうことが大切です。
アトピー性皮膚炎の市販薬の効果と選び方
アトピー性皮膚炎の市販薬は効果がありますか?
アトピー性皮膚炎の市販薬は、軽度の症状を一時的に緩和する効果が期待できる場合があります。市販薬には、ステロイド外用薬や非ステロイド性抗炎症外用薬のほかに、保湿剤が販売されています。市販薬にも医療用ステロイド外用薬と同様の成分が含まれることがありますが、一般的に配合されているステロイドのクラスは医療用医薬品と比べると弱いものがほとんどです。そのため、アトピー性皮膚炎を発症している範囲が広い場合や炎症が強く出ている場合には、十分な効果が得られない可能性があります。また、非ステロイド性抗炎症外用薬もかゆみや炎症を抑える効果はありますが、即効性はありません。保湿剤は皮膚の乾燥を防いで、バリア機能を補強する効果を目的としたものです。そのため、炎症そのものを抑える効果はありません。
アトピー性皮膚炎の市販薬の選び方を教えてください。
アトピー性皮膚炎の市販薬を選ぶ場合は、まずご自身の症状の程度をよく把握することが大切です。軽度のかゆみや乾燥が気になる程度であれば、保湿効果の高いクリームやローションを選ぶとよいでしょう。炎症を引き起こしている場合にはステロイド外用薬または非ステロイド性抗炎症外用薬を検討することになります。市販のステロイド外用薬を選ぶ場合には、薬剤の強さを確認することが大切です。一般的に市販のステロイド外用薬はランクの弱いものが販売されていますが、症状に合わせて適切な強さのものを選ぶことで一定の効果を得られる場合もあります。初めて市販薬を使用する場合には、薬剤師に相談することをおすすめします。非ステロイド性抗炎症外用薬を選ぶ場合は、過去に肌トラブルを引き起こしたことがある成分が含まれていないかを確認しましょう。市販薬にはクリームや軟膏、ローションなどの種類があります。かさかさした部位にはクリームを使用し、乾燥が強い部位には軟膏を使用したり広範囲にはローションを使用したりと皮膚の状態に合わせて使い分けることが推奨されています。ただし用法や用量を守って使用していても、症状が改善しなかったり悪化してしまったりする場合には、すぐに市販薬の使用を中止して皮膚科を受診しましょう。
処方された薬と市販薬にはどのような違いがありますか?
処方された薬と市販薬は、得られる効果に大きな差があります。処方薬は医師が患者さんの症状や皮膚の状態だけでなく、年齢や既往歴などを総合的に判断して適切と考えられる薬を選択したものです。一方、市販薬は治療に使用するというよりも症状を一時的に緩和させることを目的としています。一般の方が自己判断で購入できることを前提としているため、安全性を考慮した成分や種類、ステロイドのクラスで配合されています。治療を目的とする処方薬と一時的な症状緩和を目的とする市販薬では、大きな違いがあるといえるでしょう。
アトピー性皮膚炎の治療法と悪化を防ぐための注意点
アトピー性皮膚炎には現在どのような治療法が取られていますか?
アトピー性皮膚炎の治療法は、薬物療法とスキンケア、そして悪化原因の除去と回避の3つがあります。薬物療法では
炎症を抑えることを目的としています。
- 外用薬(ステロイド薬や非ステロイド性抗炎症薬、JAK阻害薬など)
- 内服薬(ステロイド薬や免疫抑制剤、抗ヒスタミン薬など)
- 注射薬(生物学的製剤)
スキンケアは皮膚のバリア機能を保ち、乾燥を防ぐための方法です。悪化原因の除去と回避は、患者さんごとに異なるアレルゲンや刺激物を特定して、できる限り接触を避けるようにします。またストレスや睡眠不足、不規則な生活なども症状を悪化させるため、生活習慣の改善も重要です。
日常生活で悪化を防ぐために注意すべきことを教えてください。
アトピー性皮膚炎の悪化を防ぐには、適切な肌のスキンケアを毎日欠かさず行うことが大切です。入浴後や乾燥を感じたら、こまめに保湿剤を塗りましょう。ほかにも、肌に刺激の少ない弱酸性のものを選び、優しく洗うことも大切です。
症状が改善しない場合でも治療薬を使い続けた方がよいでしょうか?
症状が改善しない場合は自己判断せず、医師に相談しましょう。医師は症状や治療経過をあらためて評価し、薬の種類や量、塗り方やほかの治療法を再検討する可能性があります。また、薬の効果不足以外にもストレスやアレルゲン、不適切なスキンケアがないかを見直して改善していくことも重要です。
編集部まとめ
今回は、アトピー性皮膚炎に用いられる治療薬の種類や市販薬の選び方、そして症状を悪化させないための日常生活での注意点について詳しく解説しました。
アトピー性皮膚炎は繰り返し症状が引き起こる慢性的な病気です。そのため、日常的なスキンケアと、必要に応じた薬物療法の継続が欠かせませんです。
医師とのコミュニケーションを大切にして、アトピー性皮膚炎の症状をコントロールできるようにしましょう。