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「胃腸炎の検査方法」はご存知ですか?受診の目安となる症状も解説!【医師解説】

 公開日:2025/11/04
「胃腸炎の検査方法」はご存知ですか?受診の目安となる症状も解説!【医師解説】

一年を通してかかる可能性のある胃腸炎ですが、検査方法まで詳しく知らない方も少なくないのではないでしょうか。 本記事では胃腸炎についての原因や症状、予防や治療法だけでなく、検査方法についても詳しく解説します。 お腹が痛い、または気分が悪いときに、どのような検査があるのか知っておくと心の準備ができるでしょう。 胃腸炎について、検査方法をはじめ、幅広く知りたい方の参考になれば幸いです。

居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

感染性胃腸炎の原因と症状

腹痛でトイレに行く人

胃腸炎はどのような病気ですか?

胃腸炎とは、何らかの原因によって胃や腸に炎症が起きることです。胃や腸の粘膜に炎症が発生し、水分や分泌物が増えて便の水分が吸収されず、腹痛や下痢が生じます。感染性胃腸炎の場合にはそれらに加え、胃や腸へ細菌やウイルスが侵入したことに対する免疫反応で発熱したり、病原体による過度な刺激で脳の嘔吐中枢が刺激されて嘔吐症状が出現したりします。

胃腸炎の原因を教えてください。

胃腸炎の原因にはストレスや薬のほか、感染性胃腸炎の場合では寄生虫や細菌、ウイルスが挙げられます。感染性胃腸炎の原因にはO-157やカンピロバクターサルモネラ、ウェルシュ菌などの細菌、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルスがあります。細菌にとっては高温多湿な夏、ウイルスにとっては秋から冬が気温が低く乾燥して生活しやすいため、感染性胃腸炎が増加する季節です。

感染性胃腸炎の感染経路を教えてください。

感染性胃腸炎の場合、以下の4点の感染経路が挙げられます。

  • 経口感染
  • 接触感染
  • 飛沫・飛沫核、粉塵感染
  • 糞口感染

経口感染はウイルスに汚染された貝類などを十分に加熱調理せずに食べる、十分に消毒されていない井戸水を飲むなど、ウイルスに汚染されたものがお口に入ることによる感染です。接触感染は、手などを介して病原体が体内に入ることです。嘔吐物が飛び散ることによる飛沫感染や、乾燥した便・嘔吐物を吸い込んでしまうことによる粉塵感染、糞口感染にも注意しましょう。

胃腸炎の症状にはどのようなものがありますか?

胃腸炎の症状は以下の4つです。

  • 嘔吐(吐き気)
  • 下痢
  • 発熱
  • 腹痛

基本的に、原因となる病原体によって、出現しやすい症状は異なります。細菌性胃腸炎の場合は腹痛、下痢が出現しやすいとされています。ウイルス性胃腸炎のなかでもノロウイルスの場合は嘔吐や吐き気、下痢や発熱、腹痛が主な症状です。またロタウイルスによる胃腸炎では、嘔吐や下痢(白色便)、発熱が主な症状です。小児では嘔吐、成人では下痢の症状が発生しやすいほか、乳児では、感染後高熱に伴う熱性けいれんを生じることがあります。しかしながら、感染しても発症しない場合(不顕性感染)や、ごく軽度の症状にとどまる場合もあります。また、潜伏期間は、体内での増殖速度に違いがあるため病原体によって異なります。細菌の場合は種類によって半日~7日程度と幅があり、ウイルスの場合は1~3日程度とされています。有症期間も病原体によって異なり、細菌では多くの場合は7日程度です。しかしO-157の場合は2週間以上症状が続くことがあります。ノロウイルスの場合は平均1〜2日、ロタウイルスでは平均5〜6日です。また、潜伏期間や有症期間は病原体の種類のほか、感染した方の健康状態によっても異なるため普段からの体調管理にも気を配りましょう。

胃腸炎の検査方法と治療法

治療に使うもの

胃腸炎が疑われる場合の受診の目安を教えてください。

感染が疑われる場合、乳幼児や高齢者などは早めに医療機関を受診しましょう。抵抗力が弱い方は体内での免疫が十分に機能せず、重症化する可能性があるからです。成人では受診の必要がないこともあります。しかし嘔吐物や排泄物の色が平時と異なっていたり、症状が1週間以上長引いていたりする場合は、内科や消化器内科などの医療機関で医師に相談しましょう。

胃腸炎の疑いがある場合はどのような検査をしますか?

細菌性胃腸炎が疑われる場合は便を培養する検査が、ウイルス性胃腸炎が疑われる場合は便の抗原を調べる迅速診断検査(イムノクロマト法)が行われます。便培養検査では菌を染色し顕微鏡で観察して病原体を見つけますが、菌を培養するため2~3日程度を要するため、結果が出るまでに時間がかかります。迅速診断検査では、便または嘔吐物に含まれる病原体の抗体などに反応をみる検査です。名前のとおり、15~20分程度で検査結果がわかります。しかし検査が行われるのは、医師が診療に必要と判断した場合のみです。そのため、検査を行わずに症状や周囲の感染状況から胃腸炎と診断されることも少なくありません。また、感染していても初期の場合や症状のない場合、検査した項目とは別のウイルスに感染している場合は陰性となります。ロタウイルス抗原検査は医師の判断のもとで広く保険適用されますが、ノロウイルス抗原検査は3歳未満、65歳以上、免疫低下状態などのハイリスク群に限って保険適用されます。

胃腸炎の治療法を教えてください。

胃腸炎は自然治癒傾向が強いため、投薬治療ではなく、症状に応じた対症療法が一般的です。感染性胃腸炎のなかでも特にノロウイルスやロタウイルスなどには抗ウイルス薬がないことも理由の一つです。しかしながら、胃腸炎では下痢や嘔吐によって電解質のバランスの大きな乱れなど、脱水が懸念されます。症状や血液検査から脱水症状と判断された場合は点滴などで輸液を行うことがあります。感染性胃腸炎では病原体を速やかに排出することが重要であり、止瀉薬(下痢止め薬)の使用は避けるべきです。

胃腸炎のときはどのような食事をとればよいですか?

嘔吐や下痢症状がある際は、無理に食事をとる必要はありません。脱水を予防するために少しずつ経口補水液などの水分を補給し、安静にすることが大切です。なぜなら胃腸の機能が著しく弱まっているため、とった食事の消化や、栄養が十分に吸収できない状態だからです。嘔吐症状が治まったら、消化しやすい食事をとるよう心がけましょう。お粥やうどん、卵などの食物繊維や脂肪が少ない食品をやわらかく調理した食事が適しています。また、食事量は少量ずつ、もし食欲があれば回数を分けて食べることで胃腸の消化・吸収機能にあわせることが大切です。

胃腸炎の予防法

手洗いをする

胃腸炎の予防法はありますか?

感染予防には手洗いが基本です。食事や調理の前やトイレの後には石けんと流水で十分に手を洗いましょう。感染経路には手を介したものが少なくないからです。手を洗った後のタオルは共用ではなく個人用、もしくはペーパータオルの使用も感染を予防する一つの策です。加えて、食事の十分な加熱は菌やウイルスを減らせます。また、ロタウイルスにはワクチンがあり、乳児に対して定期予防接種が行われています。乳幼児において重症化の予防に有効です。

感染性胃腸炎を家族へうつさないための注意点を教えてください。

家族や周りの方への二次感染の予防には以下の5つに注意しましょう。

  • 手洗いをする
  • 環境消毒をする
  • 嘔吐物や便を適切に処理する
  • 症状のある方が食事を作らない
  • 症状のある方の入浴はシャワーのみか最後に浴槽に入る

手洗いは二次感染予防においても重要です。特に調理や食事の前、トイレや嘔吐物や便の処理をした後は、石けんと流水を使用して手を洗いましょう。環境消毒については、次亜塩素酸ナトリウムを使用して手が触れる場所を中心に拭き掃除を行うことが重要です。次亜塩素酸ナトリウムを使用するのはアルコールでも殺菌されない細菌やウイルスが存在するためです。また、症状のある方が使用したリネン類も同様に、次亜塩素酸ナトリウムで消毒した後に高温で洗濯するとよいでしょう。嘔吐物や便を処理するときは、使い捨ての手袋・マスク・エプロン・ペーパータオル・次亜塩素酸ナトリウムを使用して適切な手順で処理しましょう。嘔吐物や便が乾燥し、空気中に舞いあがる前の処理が大切です。次亜塩素酸ナトリウムは、金属に使用する場合は腐食、また布製品に使用する場合は脱色の可能性があるため注意が必要です。加えて、症状のない方が食事を作る、先に風呂に入ることも二次感染予防策に挙げられます。

編集部まとめ

笑顔の家族

胃腸炎の検査方法をはじめ、原因や症状、治療や予防方法について解説しました。 乳幼児や高齢者はもちろん、成人の場合も症状にあわせて医療機関を受診し、必要とされれば検査を受けることが大切です。 予防をはじめ、感染した場合も適切な対処方法により症状がより早く治まるほか、二次感染を防ぐことができます。 胃腸炎にかかったときや、かかる前に正しい知識を持つことで、不安を減らすことができれば幸いです。

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