目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「中耳炎の原因」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

「中耳炎の原因」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2025/11/11
「中耳炎の原因」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

中耳炎は、耳のなかで発生する炎症で、特に子どもに多く見られます。風邪やアレルギーが引き金となって発症することがあり、放置すると聴力に影響を与えることもあります。

本記事では中耳炎の原因について以下の点を中心にご紹介します。

  • 急性中耳炎について
  • 滲出性中耳炎について
  • 慢性中耳炎について

中耳炎の原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

プロフィールをもっと見る
名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

急性中耳炎について

急性中耳炎について

急性中耳炎の原因を教えてください

急性中耳炎は、鼻やのどで増殖した病原体(細菌やウイルスなど)が、耳管を通じて中耳へ侵入し、炎症を起こすことで発症します。

なかでも、風邪や副鼻腔炎、咽頭炎が長引くと、ウイルスや細菌が混合して感染しやすくなり、中耳にまで広がることがあります。また、子どもの耳管は大人より太く短く、角度も水平に近いため、病原体が中耳に届きやすい構造です。

そのため、風邪が続いて鼻水が止まらない場合には、中耳炎を併発する可能性があるため注意が必要です。

急性中耳炎の症状にはどのようなものがありますか?

急性中耳炎の主な症状には、耳の痛み、発熱、耳垂れ(耳漏)、聞こえにくさ、耳の詰まり感などがあります。なかでも、耳の痛みは炎症によって強くなり、発熱を伴うこともあります。

また、耳垂れは炎症が進行した場合に見られ、鼓膜が赤く腫れるなどの変化が診察で確認されることもあります。

子どもの場合、夜間や早朝に耳の痛みが強くなる傾向があり、機嫌が悪くなる、耳を触るといった行動で異変に気付くことがあります。すべての症状がそろうわけではなく、耳の閉塞感や軽度の難聴のみが現れることもあります。

放置すると、滲出性中耳炎や慢性中耳炎へ進行する恐れがあります。

急性中耳炎の治療について教えてください

急性中耳炎の治療では、原因となる細菌感染の解消が重要です。軽度の症状であれば、抗菌薬や痛み止めなどの薬物療法で改善が期待できます。

一方、痛みが強い場合や、鼓膜の腫れや高熱が続く重症例では、鼓膜切開によって中耳にたまった膿を排出し、症状の早期改善を図ることがあります。切開後の鼓膜の穴は、1週間程で自然に閉じます。

治療は、急性中耳炎診療ガイドラインを参考にしながら、患者さんの年齢や症状、生活スタイルに応じて個別に行われます。治療期間はおおむね5日〜2週間ですが、炎症の程度によって異なります。

滲出性中耳炎について

滲出性中耳炎について

滲出性中耳炎の原因を教えてください

滲出性中耳炎は、中耳に滲出液(しんしゅつえき)がたまることで起こる病気ですが、いくつかの原因が重なることで発症します。

・未完治の急性中耳炎 急性中耳炎の症状が治まっても治療を途中でやめてしまうと、炎症が中耳に残り、滲出液がたまって滲出性中耳炎へと進行することがあります。なかでも、0〜2歳の子どもは、このような経過をたどりやすいため、最後までしっかり治療を続けることが大切です。

・鼻や喉の病気 鼻炎や副鼻腔炎、咽頭炎などにより耳管の周囲に炎症が起きると、耳管の働きが低下します。さらにアデノイドの肥大によって耳管がふさがれると、中耳に空気が送られにくくなり、滲出性中耳炎を引き起こす要因です。3〜6歳の子どもによく見られます。

・耳管の発育途上や先天的要因 7〜8歳頃までは耳管の機能が未熟なため、滲出性中耳炎を起こしやすい状態です。口蓋裂やダウン症のある子どもでは、耳管に構造的な問題があり、慢性的な中耳炎につながることもあります。

滲出性中耳炎は、年齢や身体の構造、ほかの病気との関連が深い疾患です。症状に気付きにくいこともあるため、子どもの様子に変化があれば、原因を見極めたうえで適切に対処することが重要です。

滲出性中耳炎の症状にはどのようなものがありますか?

滲出性中耳炎の主な症状には、耳の詰まりを感じる耳閉感や、音が聞こえにくくなる難聴があります。子どもの場合、何度も聞き返す、声が大きくなる、テレビの音量を上げる、画面に近づいて視聴するといった行動が見られることもあります。

また、呼びかけに反応しないこともあるため、こうした兆候が見られる場合は滲出性中耳炎の可能性を考え、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。

滲出性中耳炎の治療について教えてください

滲出性中耳炎は、症状の程度や年齢、経過によって治療法が異なります。

・軽度の場合の対応 軽い症状では、抗炎症薬や去痰薬による薬物療法が行われます。併せて、ネブライザーや鼻処置により鼻や上咽頭の炎症を抑えることで、耳管の働きの改善が目指されます。

・改善がみられない場合 3ヶ月以上滲出液が残る場合や再発を繰り返す場合は、耳管通気やマクロライド系抗菌薬の少量長期投与が選択されます。耳管を広げる器具(オトヴェント®)を使用することもあります。

・難聴や長期滲出がある場合 難聴が進行している場合や、滲出液が長く残るときには鼓膜切開を行い、液体を排出します。再発しやすいケースでは、鼓膜チューブを留置して換気を保つ治療も行われます。

滲出性中耳炎の治療は段階的に進められ、状態に応じて方法が選択されます。

慢性中耳炎について

慢性中耳炎について

慢性中耳炎の原因を教えてください

慢性中耳炎は、急性中耳炎や滲出性中耳炎が十分に治療されないまま長引いたり、何度も繰り返すことで発症します。

なかでも、子どもの頃に滲出性中耳炎が適切に治療されなかったり、急性中耳炎を頻繁に繰り返すと、耳の発達に影響を及ぼすことがあります。

その結果、側頭骨の含気化(骨のなかに空気を含む状態)が進まず、鼓膜に開いた穴が自然に閉じずに残り、慢性化する要因となることがあります。

慢性中耳炎の症状にはどのようなものがありますか?

慢性中耳炎の主な症状は、耳だれ(耳漏)と難聴です。炎症が進行すると、発熱を伴うことがあります。 鼓膜に穴が開いている状態が長く続くと、そこから細菌やウイルスが侵入しやすくなり、耳だれを繰り返します。

このような状態が続くことで聴力が低下することも多く、慢性的な難聴につながる恐れがあります。

慢性中耳炎の治療について教えてください

慢性中耳炎は、感染のコントロールと鼓膜・中耳の機能回復を目的として、症状の程度や年齢に応じた段階的な治療が行われます。

・基本の治療:感染の抑制と耳内の洗浄 まず、感染を引き起こしている細菌を排除することが大切です。抗菌薬の内服薬や点耳薬を使用して、炎症や感染の拡大を防ぎます。

また、耳の中を清潔に保つ目的で、鼓室(こしつ)洗浄と呼ばれる処置が行われ、生理食塩水などで中耳内を洗浄し、再感染を予防します。

・重症例への対応:鼓膜切開による膿の排出 高熱が続く場合や、強い耳の痛み・鼓膜の腫れが見られる場合には、鼓膜切開を行って中耳にたまった膿を排出します。

この処置により、急激な症状の改善が期待できます。切開した鼓膜は、1週間程度で自然にふさがります。

・根治を目指す外科的治療:鼓膜形成術など 鼓膜に開いた穴が自然に閉じない場合や、耳漏を繰り返す場合には、手術による治療が検討されます。

なかでも子どもは耳の成長段階を考慮し、急いで手術を行うことは少なく、中学生以降に鼓膜形成術や鼓室形成術が行われます。これらの手術では、患者さん自身の筋膜を使って鼓膜の穴を修復し、聴力の改善を図ります。

慢性中耳炎の治療は、薬物療法から外科的治療まで段階的に進められます。放置すると聴力の低下や再発を繰り返す恐れがあるため、継続的に治療を受けることが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

中耳炎は、適切な治療を受けることで改善が期待できますが、症状が悪化する前に早めに対処することが大切です。耳の痛みや発熱、耳だれなどの兆候がある場合は、放置せずに早めに受診しましょう。

また、風邪やアレルギーの管理を心がけ、日頃から耳の健康に注意を払うことも予防につながります。ご自身やお子さんの耳の健康を守るため、定期的なチェックと早期対応を忘れずに意識してください。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまで中耳炎の原因についてお伝えしてきました。中耳炎の原因についての要点をまとめると以下のとおりです。

  • 急性中耳炎は、鼻やのどから耳管を経由して病原体(ウイルスや細菌)が中耳に感染することによって発症する
  • 滲出性中耳炎の原因は、治っていない急性中耳炎、鼻や喉の病気、耳管の発育途上が挙げられる
  • 慢性中耳炎は、急性中耳炎や滲出性中耳炎が長期間にわたって治療がうまくいかなかったり、繰り返し発症することが原因で発症する

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師