「シェーングレン症候群」を発症すると「寿命」にどれくらい影響がある?症状・原因も解説!

目や口腔内の乾きが続き、「もしかしてシェーグレン症候群かも…」と不安を感じていませんか?この病気は自己免疫疾患の一つで、慢性的な症状が日常生活に影響を与えることもあります。どのように日常生活を送ればよいのか、寿命への影響はあるのか、不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
本記事ではシェーグレン症候群の寿命への影響について以下の点を中心にご紹介します。
- シェーグレン症候群とは
- シェーグレン症候群の症状
- シェーグレン症候群の検査・治療・注意点
シェーグレン症候群の寿命への影響について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
シェーグレン症候群とは
シェーグレン症候群はどのような病気ですか?
主な症状はドライマウスやドライアイですが、人によっては皮膚、肺、腎臓などの臓器にも影響を及ぼすことがあります。この病気は、関節リウマチなどほかの膠原病を併発する”二次性シェーグレン症候群”と、それらを伴わない”一次性シェーグレン症候群”に分けられます。
進行の速さには個人差があり、症状が安定している方もいれば、長期的に全身症状が進行する方もいます。稀に悪性リンパ腫などの合併症を引き起こす場合もあるため、早期発見と継続的な経過観察が大切です。
シェーグレン症候群の患者さんはどのくらいいますか?
1993年の調査では年間の受療患者数は約1万7,000人で、2002年には約7万8,000人に増加しました。
しかし診断されていない潜在的な患者さんも少なくなく、専門家の間では日本国内の患者さんは30万人以上にのぼる可能性があると推測されています。関節リウマチの患者さんの約20%に二次性シェーグレン症候群が見られることや、原発性の患者さんの方がさらに多いとされています。
発症率はおよそ2,000人に1人で、特に40代から60代に多く、男女比は1:14と女性に多い傾向があります。症状に気付いた際には早期に医療機関を受診することが大切です。
シェーグレン症候群の発症は寿命に影響しますか?
ただし、間質性肺炎や腎障害、リンパ腫などの合併症を伴う場合には、健康な方と比べて寿命が短くなる可能性があります。
また、ほかの膠原病に続いて発症する二次性シェーグレン症候群でも、予後に影響を及ぼすことがあります。そのため、症状の変化や臓器障害の兆候を見逃さず、定期的に診察を受けることが重要です。
予後はおおむね良好とされているため、医師と連携しながら体調管理を行うことで、長期的な生活を見据えた対応が可能になるとされています。
シェーグレン症候群の症状
シェーグレン症候群を発症するとどのような症状が現れますか?
・目の症状(ドライアイ)
目の乾きやゴロゴロ感、かすみ目、まぶしさなどが生じ、視力の低下や目やにが気になることもあります。
・口腔内の症状(ドライマウス)
唾液の分泌が減り、口腔内の乾燥や会話のしにくさ、味覚の変化、むし歯の増加といった問題が起こります。
・皮膚や鼻の症状
皮膚の乾燥や発疹、レイノー現象、鼻の中のかさぶたや出血などがみられることがあります。
・関節や筋肉の症状
関節の痛みや腫れ、筋力低下、筋肉痛などが生じることがあります。
・全身症状
疲労感や頭痛、集中力の低下、気分の落ち込み、めまいなど、多彩な症状が全身に及ぶこともあります。
このように、乾燥症状を中心にしながらも、シェーグレン症候群では全身に幅広い不調が見られる点が特徴です。
シェーグレン症候群と症状が似ている病気はありますか?
ドライアイやドライマウスといった乾燥症状は、加齢や薬の副作用、季節による乾燥でも起こるため、シェーグレン症候群特有の症状ではありません。
また、免疫の異常が関与するIgG4関連疾患のなかには、シェーグレン症候群と区別が難しいものもあります。
特にミクリッツ病は、涙腺や唾液腺に炎症を引き起こす点で共通しており、血液中のIgG4という抗体が高値になります。
近年はIgG4の血液検査が導入されたことにより、以前はシェーグレン症候群と診断されていた患者さんのなかに、ミクリッツ病の可能性があると考えられるケースも見られています。こうした病気との鑑別のためには、専門的な検査と慎重な診断が必要です。
シェーグレン症候群はどのような方がなりやすいですか?
発症年齢のピークは50歳代とされており、男女比では女性が圧倒的に多く、男性1人に対して女性が17人程度とされています。
ただし、まれに子どもや高齢者、男性でも発症することがあり、年齢や性別を問わず注意が必要です。
また、関節リウマチなどの膠原病を持つ患者さんでは、シェーグレン症候群を合併するケースが見られます。原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的素因やウイルス感染などの環境要因、ホルモンの影響が関与すると考えられています。免疫の異常により、自身の身体が唾液腺や涙腺などを攻撃してしまうことで症状が現れます。
このような特徴から、免疫バランスの変化が関与する人ほど注意が必要とされています。
シェーグレン症候群の検査・治療・注意点
シェーグレン症候群ではどのような検査が行われますか?
・血液検査
抗SS-A抗体や抗SS-B抗体などの自己抗体の有無を確認し、免疫異常の可能性を調べます。必要に応じて甲状腺機能や腎機能も評価します。
・涙の分泌量検査(シルマー検査)
目尻に専用のろ紙を挟み、5分間でどれだけ濡れるかを測定します。涙の量が少ないとドライアイの診断につながります。
・唾液の分泌量検査(サクソンテスト)
ガーゼを2分間噛み、吸収された唾液の量を測定します。2g以下であれば唾液分泌低下と判断されます。
・生検(唾液腺や涙腺の組織検査)
唾液腺などから小さな組織を採取し、リンパ球の浸潤があるかを顕微鏡で調べます。
・画像検査・その他の検査
必要に応じて、レントゲンやCT、尿検査、心電図などを行い、ほかの膠原病や臓器の合併症の有無を確認します。
シェーグレン症候群の治療について詳しく教えてください
・ドライアイへの対応
人工涙液やヒアルロン酸の点眼薬で乾燥を緩和します。涙の分泌を促す点眼薬の使用や、涙の排出を抑える涙点プラグの挿入も検討されます。
・ドライマウスへの対応
ガムや酸味のある食品で唾液分泌を促し、人工唾液を使って乾燥を補います。漢方薬が用いられることもあります。また、服用中の薬剤の見直しも重要です。
・全身症状への対応
関節痛や皮疹には非ステロイド性抗炎症薬やステロイド薬が使用され、臓器に炎症が及んでいる場合には免疫抑制薬、生物学的製剤、血漿交換療法が行われることもあります。
患者さん一人ひとりの状態に応じて、適切な治療法が選ばれます。
シェーグレン症候群の患者さんが日常生活を送るうえでの注意点はありますか?
ドライアイやドライマウスへの対策として、加湿器の使用やマスクの着用、こまめなうがいや人工唾液の活用がすすめられます。口腔内の衛生を保つためには、食後の歯磨きやうがいを徹底し、甘いものや刺激物を控えることも重要です。
また、レイノー現象がある方は指先の保温と保湿を心がけ、冷水の使用を避けるとよいでしょう。加えて、規則正しい生活、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を日々継続することが、免疫バランスを保つうえでも有効とされています。
ストレスを避け、体調の変化に気付けるよう、定期的に医療機関での診察や検査を受けることも欠かせません。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
乾燥症状や全身の体調変化に気を配りながら、定期的な通院や検査を続けることが、ご自身の健康を守るうえで大切です。不安を抱えすぎず、医師と相談しながらご自身のペースで向き合っていきましょう。
編集部まとめ
ここまでシェーグレン症候群の寿命への影響についてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。
- シェーグレン症候群は免疫異常により唾液腺や涙腺が炎症を起こし、口腔内や目の乾燥などさまざまな症状を引き起こす自己免疫疾患である
- シェーグレン症候群はドライアイやドライマウスをはじめ、関節痛や皮膚症状、全身の倦怠感などの症状が現れる自己免疫疾患である
- シェーグレン症候群は乾燥症状の検査と対症療法が中心で、生活管理や定期的な診察が安定した日常を支える鍵となる
シェーグレン症候群と診断されると、不安を感じる方も多いかもしれません。
しかし、適切な治療とセルフケアを続けることで、日常生活を大きく損なうことなく過ごすことができるとされています。
大切なのは、症状を我慢せず、医師と相談しながらご自身に合ったケアを続けていくことです。
この記事が、少しでも前向きな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。