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「逆流性食道炎の原因」はご存知ですか?発症しやすい人の特徴も解説!【医師監修】

 公開日:2025/03/28
「逆流性食道炎の原因」はご存知ですか?発症しやすい人の特徴も解説!【医師監修】

「酸っぱいものがこみあげてくる症状に困っている」「胸やけがして辛い」など、逆流性食道炎の症状に悩んでいる方は少なくありません。

逆流性食道炎の症状は、背部痛や咳嗽など胃部以外にも症状が出る可能性があります。日本人の5人に一人が罹患しているといわれている病気です。

本記事では、逆流性食道炎の原因・症状・なりやすい方・治療方法を詳しく解説します。生活習慣の見直しをすることで予防が可能です。

逆流性食道炎に悩む方の参考になれば幸いです。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

逆流性食道炎の原因・症状

食事

逆流性食道炎とはどのような病気ですか?

逆流性食道炎は胃食道逆流症(GERD)の一部で、胃のなかの内容物、特に胃酸が食道に逆流することで食道に炎症を起こす病気です。胃酸の逆流により同じような症状が生じても、逆流性食道炎にまで至らない場合は、非びらん性胃食道逆流症と呼びます。逆流性食道炎は、胃酸の分泌を抑える薬を服用することで、症状が改善することが多いです。欧米に多い逆流性食道炎は、食生活の欧米化により日本人の患者さんが増加傾向にあります。

逆流性食道炎の原因を教えてください。

逆流性食道炎の原因は、以下のとおりです。

  • 肥満
  • 食べすぎ
  • 早食い
  • 加齢
  • 食後の臥床
  • 衣服による締め付け
  • 食事の欧米化
  • 高脂肪食・炭水化物・甘味食などの過剰摂取

上記の原因により、下部食道括約筋が緩みます。食道と胃の間にある下部食道括約筋は正常な場合、食べたり飲んだりするとき以外は、胃酸の逆流を防ぐために胃の入り口を閉める働きをします。逆流性食道炎の症状が生じるのは、下部食道括約筋が本来の働きをしないためです。また、食道裂孔ヘルニアや腰椎圧迫骨折による腹腔臓器の短縮が原因の場合もあります。食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニアとは、胸部と腹部を隔てている横隔膜にある隙間(食道裂孔)から胃が胸部に飛び出した状態です。加齢に伴う下部食道周囲の靭帯・筋肉が緩んだり、前かがみの姿勢・肥満・妊娠などで腹部の圧力が上昇したりすることが原因です。胃が持ち上げられてしまうため、胃液が逆流しやすくなります。

逆流性食道炎になるとどのような症状が出ますか?

逆流性食道炎の症状は以下のとおりです。

  • 胸やけ
  • げっぷ
  • 胃もたれ
  • 腹部膨満感
  • 嘔気

逆流性食道炎の主な症状は胸やけです。みぞおちの辺りから胸にかけて不快感を覚えます。食道裂孔ヘルニアや腰椎圧迫骨折の合併症の場合は、うつむいたりかがんだりすると嘔吐しそうになる可能性もあります。

胃以外の部位に出る症状を教えてください。

胃以外の部位にでる症状は、以下のとおりです。

  • 呑酸(どんさん)
  • 咽頭部不快感
  • 嚥下困難感
  • 胸痛
  • 背部痛
  • 心窩部痛
  • 慢性的な咳嗽
  • 声のかすれ
  • 睡眠障害
  • 耳の違和感
  • 耳鳴り
  • 食欲不振

呑酸(どんさん)とは、逆流した胃の内容物が口腔内や下咽頭部まで逆流する症状です。食道は、胸部を通り胃につながる臓器のため、胃以外の部位にも症状が生じます。声のかすれや不眠、耳の異常など逆流性食道炎によるものだとは考えにくい症状もあります。胸やけや胃もたれのほかに上記のような症状がある場合は、逆流性食道炎による影響の可能性があるため、消化器科を受診しましょう。

逆流性食道炎になりやすい方や年齢層

白髪の女性

逆流性食道炎になりやすい方の特徴を教えてください。

逆流性食道炎になりやすい方の特徴は、以下のとおりです。

  • 暴飲暴食をする方
  • 早食いの方
  • 高脂肪食を好む方
  • アルコールや炭酸飲料の摂取が多い方
  • 食後すぐに寝る習慣の方
  • 不規則な食生活を送る方
  • 妊娠している方
  • 便秘気味の方
  • 喫煙する方
  • 肥満体型の方
  • 衣服で腹部を締め付けることが多い方
  • 前かがみになることが多い方
  • 背骨が曲がり前かがみの体型の方

上記の特徴に当てはまる方は、食事・生活習慣の見直しが必要です。胃に負担をかけることで症状が出現します。食事は3食バランスよく摂る、寝る直前に食事しないことなどを心がけたり、減量したりすることで症状の軽減が可能です。また、農作業や仕事などで前かがみの姿勢を長時間続ける方は、適度な休憩を挟みましょう。

逆流性食道炎になりやすい年齢層を教えてください。

従来は、40~50代の中高年や高齢者が逆流性食道炎になりやすいとされていました。しかし、食生活や生活習慣の変化に伴い、10代の若い世代の方も発症することが増えています。その原因は、以下のとおりです。

  • 不規則な生活を送っている
  • 食後すぐに寝ることが多い
  • デスクワークをすることが多い
  • 肥満体型である
  • カフェイン飲料・炭酸飲料・アルコールなどの飲料を摂取する
  • 脂っこい食べ物を好む
  • 便秘気味である

コロナ禍以降テレワークをすることが増えた影響で、外出が減り1日中デスクワークをする方がいます。デスクワークは前かがみの姿勢が続きやすい仕事です。

逆流性食道炎の有病率はどのくらいですか?

1990年代後半から逆流性食道炎の患者さんが増加しています。逆流性食道炎の有病率は4.0~19.9%で、日本人の15%程度が週1回以上の症状を感じるとされるほど、身近な病気の1つです。女性よりも男性の方が有病率が高く、女性は60歳以上になると頻度と重症度が増加します。いずれにしても、男女ともに年齢が上がるにつれて有病率・重症度が高くなるため、早期治療が重要です。

逆流性食道炎の検査や治療方法

コップ

逆流性食道炎が疑われる場合どのような検査が行われますか?

逆流性食道炎が疑われる場合、内視鏡検査が行われます。内視鏡検査で、重症逆流性食道炎・軽症逆流性食道炎・NERD・他疾患などを鑑別します。ただし症状があっても、必ずしも内視鏡検査を行うわけではありません。まずは患者さんの自覚症状を問診し、内服薬の服用を開始します。内服薬服用で症状が改善する場合は、一過性の症状と診断し、経過観察となる可能性があるでしょう。改善が見られない場合は、内視鏡検査で食道の炎症状況を調べます。その際、食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニアが合併していないかを確認することも重要です。内視鏡は苦しいというイメージを持たれる検査ですが、鼻から細い内視鏡を挿入する経鼻内視鏡で負担軽減が可能です。少しでも負担の少ない経鼻内視鏡検査を希望する場合は、医師に相談しましょう。

治療方法を教えてください。

逆流性食道炎の主な治療は、薬物療法です。胃酸を抑えるために、ヒスタミン受容体拮抗薬あるいはプロトンポンプ阻害薬(PPI)などの胃酸分泌抑制剤が処方されます。逆流性食道炎の治療には、より効果が高いプロトンポンプ阻害薬が使われることが多く、ほとんどの症状は改善します。8週間服用しても症状が改善しない場合は、PPI抵抗性胃食道逆流症が考えられるでしょう。その場合は、PPIの種類や服用するタイミングを変更する対応が必要です。基本的には内服治療が中心ですが、食道裂孔ヘルニアが原因の場合は外科手術が必要になる可能性があります。現在、逆流性食道炎の治療方法の開発や研究が進められています。さまざまな病態に応じた治療薬や管腔内内視鏡治療法など、効果の高い治療方法が開発されれば、逆流性食道炎に苦しむ患者さんのQOL向上につながるでしょう。また逆流性食道炎が重症化して潰瘍ができると、出血や狭窄、発がんなどの合併症の恐れがある重症型逆流性食道炎になります。この場合、積極的な治療と定期的な内視鏡検査が必要です。その他、胃酸の中和や胃酸による刺激を弱める効果のある制酸薬も、胃酸分泌抑制剤と併用して使われます。逆流性食道炎は、食事・生活習慣の見直しで予防が期待できます。暴飲暴食・早食いなどの食生活の見直しや減量、服装などの改善できることを心がけてみましょう。

治療を受けずに放置した場合はどうなりますか?

逆流性食道炎は、自然に治る病気ではありません。逆流性食道炎を疑う症状がある場合は消化器内科を受診しましょう。そのまま放置していると、バレット食道という食道がんの原因になったり食道の狭窄により出血や嚥下障害を引き起こしたりするなど、症状の悪化の恐れがあります。また、高齢者の場合は生活の質(QOL)が低下する可能性があります。逆流性食道炎は、治療により症状の改善が期待できる病気です。日常的にお困りの症状があったら、早めに治療を受けることが重要です。

編集部まとめ

診察

逆流性食道炎は、日本人にとって珍しい病気ではありません。胃酸が増えすぎたり、胃酸の逆流を防ぐ働きが正常に行われなかったりすることが原因です。

主に胸やけや胃もたれの胃部の症状以外にも、咳嗽や声のかすれなど胃部とは関係のない症状が出る場合があります。

逆流性食道炎は主に高齢者がなりやすいとされています。しかし、早食い・喫煙習慣のある方・肥満の方などは逆流性食道炎になりやすいため、注意が必要です。

気になる症状がある方は放置せず、早めに消化器内科を受診しましょう。

この記事の監修医師

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