「インフルエンザの検査方法」はご存知ですか?検査費用についても解説!【医師監修】
公開日:2025/11/17

インフルエンザの症状が現れたとき、検査を受けるタイミングはとても大切です。発熱やのどの痛み、倦怠感などの症状が出た直後では、ウイルス量が十分でなく、正確な診断が難しいこともあります。
本記事ではインフルエンザの検査について以下の点を中心にご紹介します。- インフルエンザの検査について
- インフルエンザの検査の内容
- インフルエンザの検査にかかる費用や予防法

監修医師:
吉川 博昭(医師)
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医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。
目次 -INDEX-
インフルエンザの検査について
インフルエンザの検査はなぜ受ける必要があるのですか?
インフルエンザは、突然の高熱や全身の痛み、悪寒などを伴う感染症で、症状が風邪よりも重くなることが特徴です。しかし、これらの症状だけではインフルエンザかどうかを正確に判断することは難しく、適切な治療を受けるためには検査を受けることが大切です。
検査を受けるべき理由として、以下の2つが挙げられます。
●インフルエンザかどうかを正しく判断するため
発熱やのどの痛みがあっても、必ずしもインフルエンザとは限りません。正確な診断を受けることで、必要な治療を適切に受けられます。
●症状を軽減できるから
インフルエンザの治療薬は、発症からできるだけ早い段階で服用することで、発熱の期間を短縮し、体への負担を軽減する効果が期待できます。また、鼻やのどから排出されるウイルス量を減らし、感染拡大を抑えることにもつながります。
インフルエンザの検査を受けるベストなタイミングを教えてください
インフルエンザの検査は、適切なタイミングで受けることが大切です。発熱や悪寒などの症状が出た直後では、体内のウイルス量が十分に増えておらず、検査をしても正確な結果が得られない可能性があるようです。
そのため、検査を受けるのにおすすめなタイミングは、発症から12時間以上48時間以内とされています。
早すぎる段階での検査(発症から12時間未満)では、ウイルス量が少ないために「偽陰性」の結果が出る場合があります。実際にウイルスに感染していても検査で陰性と判定されることがあるため、正しい診断ができなくなるリスクが高まります。
インフルエンザの検査を早く受けるメリットは何ですか?
インフルエンザの検査を早く受けることで、インフルエンザによる肺炎や脳症などの合併症のリスクを軽減できます。高齢者や基礎疾患を持つ方は重症化しやすいため、早期診断と治療がより大切になります。
また、抗インフルエンザ薬(タミフル)は、発症後48時間以内に服用するのがおすすめです。検査を早めに受けてインフルエンザと診断されれば、すぐに治療を開始でき、発熱期間を短縮し症状の悪化を防ぐことができます。
インフルエンザの検査の内容
インフルエンザはどのような方法で検査しますか?
インフルエンザの診断にはいくつかの検査方法があり、それぞれの特徴や精度が異なります。医療機関では迅速に結果が得られる方法が採用されることがあるようですが、詳しく調べるためより精度の高さが期待できる検査も存在します。
●迅速診断キットによる検査
細長い綿棒(スワブ)を鼻やのどの奥に挿入し、粘膜を拭い取ることで検体を採取します。採取した検体を専用の溶液に浸し、検査キットに滴下することで、陽性・陰性の判定を行います。
この検査は10〜15分程度で結果がわかるという大きなメリットがありますが、ウイルス量が少ないと検出されにくいため、発症から12〜24時間以上経過していないと正確な結果が得られないことがあります。
発症直後に検査を受けた場合、陰性と診断された後、再検査で陽性になるケースもあります。
●血清抗体検査
採血によってインフルエンザウイルスに対する抗体が作られているかを調べる方法です。通常、発症から1週間以内と、回復後の計2回の採血を行い、抗体の増加を確認します。
ただし、結果がわかるまでに2週間程度かかるため、現在ではほとんど使用されていません。
●ウイルス分離検査
インフルエンザウイルスを直接培養して特定する方法です。鼻やのどの奥から採取した検体からウイルスのみを分離し、種類を特定することができます。
感度が高く、詳細な分析が可能とされていますが、結果が出るまでに1週間程度かかるため、一般の病院ではほとんど行われません。イルス分離検査
●PCR検査
インフルエンザウイルスの遺伝子を検出するPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査もあります。これは、鼻やのどの奥から採取した検体からインフルエンザウイルスの遺伝子を増幅し、ウイルスの有無や種類を正確に特定する方法です。
高精度な検査のため、新型ウイルスの確認にも用いられますが、主に公的機関で実施され、市中病院やクリニックではあまり行われません。
インフルエンザの検査の精度について教えてください
インフルエンザの診断には、迅速診断キットが使用されます。鼻の粘膜から採取した検体を調べて、インフルエンザウイルスの有無を判定します。
しかし、検査の精度には限界があります。以下で詳しく解説します。
【迅速診断キットの精度】
迅速診断キットの感度(ウイルスを正しく検出できる確率)は50%〜70%程度とされています。つまり、実際にインフルエンザに感染していても、約30%〜50%の確率で陰性と判定される可能性があるということです。
これは、検査を行うタイミングによる影響が大きく、発症直後ではウイルス量が十分に増えておらず、検出できない場合があるためです。
【検査結果の信頼性と注意点】
●検査のタイミングが重要
発症直後(6時間以内)の検査ではウイルスの増殖が不十分で、正しく診断できないことがあります。発症から6時間以上経過している方が望ましいとされています。
●偽陰性の可能性がある
検査で陰性となった場合でも、症状が明らかにインフルエンザに似ている場合や、周囲にインフルエンザ患者さんがいる場合には、みなし陽性として診断し治療を開始することもあります。
●迅速診断のメリット
迅速診断キットの主な利点は、検査時間が短いことです。5〜15分程度で結果がわかるため、インフルエンザの可能性がある場合にすぐに診断でき、早期治療につなげることができます。発熱や悪寒などの症状が強い場合、長時間待たずに結果が得られることは大きなメリットといえます。
PCR検査と抗原検査の違いは何ですか?
PCR検査はウイルスの遺伝子を増幅して検出するため、結果が出るまでに時間がかかることがあります。
一方、抗原検査は短時間で結果を得られるものの、検出感度がPCR検査より低いため、陰性結果が必ずしも感染していないことを意味するわけではありません。
どちらの検査を受けるべきかは、検査の目的や状況によって異なります。感染が疑われる場合は、医療機関の指示に従い、適切な検査を受けることが重要です。
インフルエンザの検査にかかる費用や予防法
インフルエンザの検査にはいくらかかりますか?
インフルエンザの検査費用は、受診する医療機関の規模や診療内容によって異なりますが、健康保険が適用されるため、一定の目安があります。医療費は保険点数をもとに計算され、1点あたり10円として換算されます。
【インフルエンザ検査の主な費用内訳(保険適用の場合)】
インフルエンザの検査費用は、保険点数に基づいて計算されます。まず、初診料は288点、インフルエンザウイルス抗原検査(定性)は143点、免疫学的検査判断料は144点、そして鼻腔・咽頭からの検体採取が5点となり、合計で580点となります。
医療費は保険点数1点につき10円として計算されるため、合計金額は5,800円となります。健康保険が適用される場合、自己負担額は負担割合に応じて決まります。
例えば、3割負担の場合は1,740円が目安となります。この金額は、診察のみで処方薬がない場合の費用の目安であり、処方があれば追加費用が発生する可能性があるようです。
インフルエンザの検査には保険が適用されますか?
インフルエンザや新型コロナウイルスが疑われる場合、検査には健康保険が適用されます。
しかし「同居する家族が感染しているため、自身も感染しているか確認したい」といった理由で検査を希望する場合は、保険適用の対象にはなりません。健康保険が適用されるのは、あくまでも症状がある場合に限られるため、注意が必要です。
インフルエンザの予防方法を教えてください
インフルエンザの予防方法には以下のようなことがあります。
●正しい手洗いを心がける
●ワクチン接種を受ける
●十分な休息と栄養バランスの取れた食事
●室内の湿度を適切に保つ
●人混みを避ける
●室内の換気をこまめに行う
上記の予防策を日々の生活に取り入れて、インフルエンザの感染リスクを減らしましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
インフルエンザは早期の検査と適切な治療が大切です。発症からの時間や症状の進行を見極め、ベストなタイミングで検査を受けることで、正確な診断と迅速な対応が可能になるようです。また、検査費用の目安を知っておくことで、安心して受診することができます。
インフルエンザが疑われる場合は、迷わず医療機関を受診し、適切な対応をとりましょう。自身の健康を守るだけでなく、周囲への感染拡大を防ぐためにも、正しい知識を活用してください。健康な日々を過ごすために、予防と早期対応を心がけましょう。
編集部まとめ
ここまでインフルエンザの検査についてお伝えしてきました。インフルエンザの検査の要点をまとめると以下のとおりです。
- インフルエンザの検査は、インフルエンザかどうかを正しく判断したり症状を軽減させるためにも必要である
- インフルエンザの検査を受けるよいタイミングは、発症から12時間以上48時間以内である
- インフルエンザの検査方法には、迅速診断キットやPCR検査などが挙げられる




