帯状疱疹はウイルスが原因で皮膚にかゆみを生じたり、痛みが出たりすることがあります。
さらに帯状疱疹は一度もウイルスに罹患していない方の場合に対しては感染性もあるため、対応に注意が必要です。
初めて帯状疱疹になったけれど、具体的にどのようなことに気をつけて生活すればよいのかわからないといった方も少なくないでしょう。
本記事では、帯状疱疹になったときにやってはいけないことをわかりやすくまとめています。
原因や治療法、予防方法も解説しているので、帯状疱疹になったときの参考になれば幸いです。
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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科
帯状疱疹のときにしてはいけないこと
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帯状疱疹のときにしてはいけないことを教えてください。
帯状疱疹は皮膚に赤い発疹ができ、水ぶくれとして現れます。その際に水ぶくれをつぶさずに自然に経過を待つことが大切です。水ぶくれをつぶしてしまうと、帯状疱疹のウイルスによる二次感染の恐れもあります。水ぶくれのはじめは数個程度ですが、徐々に数を増やしていきます。さらに水ぶくれは膿が溜まったり、血液を含んで黒ずんだりします。水ぶくれ自体は1週間程度で破れその後はかさぶたになるのが帯状疱疹の特徴です。3〜4週間程度で皮膚症状が落ち着きますが、色素沈着や傷跡が残る場合もあります。
いつまで安静にする必要がありますか?
帯状疱疹は免疫が弱くなった際に発症しやすいため、身体が疲れている状態です。皮膚症状が落ち着きかさぶたになり服などで発症部位を覆うことができれば勤務可能なことから、2週間前後を目安に安静に過ごすことが大切です。帯状疱疹は痛みを伴うことがあります。痛みが強い場合には、医療機関で鎮痛剤の処方をしてもらうことや安静に過ごすことで、後に痛みが続く帯状疱疹後神経痛の予防や軽減になります。さらに帯状疱疹は免疫が低下している際に発症しやすい傾向にあるため、飲酒や激しい運動は控えましょう。
帯状疱疹は人にうつりますか?
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスが原因です。今まで水ぼうそうにかかった方は、自身が保有していたウイルスが免疫力の低下やストレスが原因で再活性したことにより発症します。そのため、今まで水ぼうそうにかかったことのある方への感染はしません。水ぼうそう自体がかさぶたになれば周囲への感染力はなくなります。しかし、抗体を持っていない小さな子どもに感染する可能性があります。水痘・帯状疱疹ウイルスは接触により感染することがあるため、水ぶくれを触った手でほかの場所を触ると感染しやすいです。家庭に小さな子どもがいる場合は触れるものに注意しましょう。
原因・症状・治療法
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帯状疱疹の原因を教えてください。
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスというウイルスが原因です。子どもの頃に水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると、水ぼうそうを発症することがあります。水ぼうそうに罹ると治った後に体内の神経節という部位にウイルスが潜みます。普段の免疫力でウイルスの活動は抑えられていますが、免疫力が弱まるとウイルスが増殖し活動を始めることで発症するのが帯状疱疹です。さらに神経に潜んでいることから、神経に沿ってかゆみや痛みが皮膚症状として現れます。
帯状疱疹の症状について教えてください。
帯状疱疹は神経節に潜んでいることから、初期症状として感じやすいものと、その後に皮膚症状として現れるものがあります。水ぼうそうに罹ると治った後に体内の神経節という部位にウイルスが潜みます。
- 左右どちらかに生じる痛みやかゆみ
- 赤い発疹
- 水ぶくれ(水疱)
初期症状では前駆痛と呼ばれるぴりついた痛みが出てきます。神経にウイルスが潜んでいることもあり、始めの症状として神経症状が出やすくなるからです。感じ方はそれぞれで、チクチクしたりビリビリしたりします。徐々に違和感も大きくなり、眠れないほどの痛みを生じる場合が少なくありません。皮膚も赤く腫れてくる場合も見られます。知覚神経のあるところであればどこでも発生しますが、腕や胸、背中などの上半身に症状が見られる場合がほとんどです。帯状疱疹は左右どちらかに生じることがほとんどですが、まれに両側、神経節を飛び越えて全身に発症する場合があり、これを汎発性帯状疱疹といいます。
帯状疱疹は何科で診てもらえばよいですか?
帯状疱疹は皮膚科や内科を受診しましょう。皮膚状態を診てもらい、痛みや治療薬の相談も可能です。後遺症で痛みが続く場合はペインクリニックを受診し、痛みのコントロールができるように内服薬などで調整していきます。帯状疱疹は早めの段階で治療をスタートしていくのが大切です。水疱や発疹は徐々に治まっていきますが、最後まで治療せず放っておくと、帯状疱疹後神経痛になってしまうこともあります。顔面神経麻痺や失明、難聴などの重い症状を引き起こす場合があるため、症状が見られた際は早めの受診を心がけましょう。
検査はどのようにして行いますか?
帯状疱疹を確定診断するためには血液検査や病理検査・抗原検査を行うことがあります。帯状疱疹と症状の似た単純ヘルペスという病気があるからです。単純ヘルペスは、唇などの粘膜に症状が現れることが多く、ピリピリとした神経所見があります。そのため、単純ヘルペスとの区別をするための検査が必要です。血液検査では水痘・帯状疱疹ウイルスに対する抗体検査をします。ただ、検査結果までに2週間以上かかることがあるため、治療が遅くなってしまうこともあります。対して病理検査や抗原検査では、皮膚や水ぶくれを採取する方法です。検査結果も数十分で出るため、速やかな診断・治療が可能になります。
治療法について教えてください。
帯状疱疹の治療には、抗ウイルス薬や鎮痛剤が使用されます。抗ウイルス薬とは、水痘・帯状疱疹ウイルスが増殖している段階でのウイルスのDNAを妨げ、ウイルスの増殖を抑えてくれるお薬です。内服薬での治療がほとんどですが、症状が重い場合は入院して点滴での治療が必要になります。帯状疱疹の症状でもあったように、痛みを生じる場合は鎮痛薬の使用が効果的です。あくまで痛みを和らげる目的のため、根本的な治療は抗ウイルス薬になります。眠れないほどの痛みが続く場合は、神経ブロックといった局所麻酔薬を投与することで神経の伝達をブロックする治療が可能です。症状が軽い場合には、外用薬で対応が可能な場合もあり、抗ウイルス薬の軟膏や鎮痛作用のある軟膏も使われます。
帯状疱疹の予防方法
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悪化を予防するにはどうしたらよいでしょうか?
子どもの頃に水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したことがある方は、このウイルスに対する抗体を保有しており免疫を持っています。しかし、獲得した免疫は年齢とともに弱まり、特に50歳以上の方の発症率が高くなる傾向があります。そもそも免疫機能の低下によって発症するため、普段の生活から免疫機能を高めることが大切です。バランスの取れた食事や適度な運動、十分な休息や睡眠を確保しましょう。ストレスが原因のこともあるため、ストレスを溜めすぎない、もしくは自分なりのストレス解消法をみつけ実践してみることも大切です。
帯状疱疹のワクチンについて教えてください。
日本での帯状疱疹のワクチンは2種類あり、生ワクチンと不活化ワクチンがあります。生ワクチンはウイルスの病原性を弱めたもので、不活化ワクチンは感染力をなくしたものやウイルスを構成する成分の一部から作られているものです。生ワクチンは、もともと免疫を低下させる薬を内服している方にとっては感染してしまう可能性があります。一方で不活化ワクチンは期間を空けて2回接種が必要になります。今までの既往歴や内服、接種したワクチンなどを医師へ伝え、どちらのワクチンが適しているのかを相談しましょう。帯状疱疹ワクチンは個人の重症化を予防するだけでなく、集団免疫効果があるため社会全体を守る役割を発揮できます。費用や助成に関してはそれぞれの自治体ごとに異なるため、自治体ホームページなどで確認が必要です。帯状疱疹のワクチンは、法律での接種をすすめる定期接種に分類されています。
編集部まとめ
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帯状疱疹の症状や治療法を解説しました。痛みやかゆみが出てきたり、発疹や水ぶくれができたりすることがあります。
症状が現れ始めたら、早めの受診を心がけることや水ぶくれをつぶさずに自然な経過をたどれるようにしましょう。
帯状疱疹を予防するためには普段から免疫機能を高める生活や予防接種を受けることが大切になります。
免疫機能を高めるためにも、生活に取り入れられることを可能な範囲でやってみてはいかがでしょうか。