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「ノロウイルスの症状のピーク」はどれくらいかご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/02/05
「ノロウイルスの症状のピーク」はどれくらいかご存知ですか?【医師監修】

冬の時期になるとさまざまな感染症の流行が気になる方は少なくないでしょう。流行する感染症のひとつにノロウイルスによる感染性胃腸炎があります。

ノロウイルスは乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で嘔吐や下痢の症状が起こります。感染力が高く、家庭内や学校などで集団感染を引き起こすことがあるので注意が必要です。

ここではノロウイルスの感染経路・症状・治療方法・予防方法を詳しく解説します。

ノロウイルスの感染予防や感染してしまったときの対応の参考になれば幸いです。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の感染経路や流行時期

ウイルスとマスク

ノロウイルスとはどのようなウイルスですか?

ノロウイルスとは、手指や食品を介して感染して人の腸管で増殖するウイルスです。乾燥や熱にも強いうえに自然環境下でも長期間生存が可能で 感染力がとてもに強いので少量のウイルス(10〜100個)でも感染・発症します。乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層に感染して、下痢や嘔吐を引き起こす感染症です。通常は軽症ですみますが、乳幼児や高齢者は脱水や吐物が喉に詰まるリスクが高いため注意が必要です。ノロウイルスは長期免疫が成立しないので、何度でもかかるのが特徴です。

感染経路を教えてください。

ノロウイルスの感染経路は、ほとんどが経口感染です。主な感染経路は以下のとおりです。

  • 感染した人の便や嘔吐物で汚染した手指を介してノロウイルスがお口に入った場合
  • 便や嘔吐物が乾燥して細かい塵となって舞い上がって一緒にウイルスを吸いこんだ場合
  • 感染した人が十分に手を洗わず調理した食品を食べた場合
  • ノロウイルスに汚染されたカキやシジミなどの二枚貝を、生または不十分な加熱処理で食べた場合

このように感染経路は多岐に渡るので、感染拡大しやすく制御が困難になってしまいます。

流行しやすい時期を教えてください。

ノロウイルスは一年を通して発生していて、特に流行する時期は冬季です。11月から増えはじめて12月〜2月にピークを迎える傾向があります。ノロウイルスは低温・乾燥した環境では感染力が高くなり、生存期間も長くなります。また、夏場ほど水分摂取を積極的にしなくなるので、粘膜が乾燥してウイルスが付着しやすくなるでしょう。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の初期症状やピーク時の症状

具合の悪い人

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の初期症状を教えてください。

ノロウイルスに感染してから24〜48時間で発症します。突然の激しい吐き気や嘔吐が特徴ですが、初期には以下の症状が現れる場合があります。

  • 寒気
  • 胃がムカムカする
  • 鼻水やくしゃみ
  • 微熱

このように初期症状があったとしても風邪症状と似ているので、嘔吐や下痢の前にノロウイルスに感染したと気付くのは難しいです。お腹が張ったり胃がムカムカするなどお腹に症状があるときは、感染性胃腸炎を疑って手洗いや消毒などの対策をするとよいでしょう。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎のピーク時の症状を教えてください。

ノロウイルスに感染してから潜伏期間が1〜2日間あります。症状のピークは発症後1〜2日間です。ピークの期間は嘔吐・下痢・腹痛の症状がひどく、発熱がみられる場合もあります。嘔吐や下痢の回数が多いと焦りますが、嘔吐や下痢はウイルスを外に排出するために必要なことなので、落ち着いて安静に過ごしましょう。食欲が低下して食事が摂れないときがあっても、脱水にならないように水分補給をするように気をつけましょう。症状のピーク時は、1日に何回も下痢や嘔吐を繰り返すため、特に乳幼児や高齢者は脱水を起こす可能性が高くなります。尿量の減少やお口や喉の乾きなどの脱水症状に注意が必要です。

症状は何日くらい続きますか?

ノロウイルスによる感染性胃腸炎を発症してから1〜3日で下痢や嘔吐などの症状は治り、食欲が出てくるでしょう。発熱や腹痛などの症状も同じように回復してきます。症状が辛いと薬を飲んで早く治したいと考える方は少なくないでしょう。しかし、下痢止めや抗菌薬を飲むとウイルスを早く体外に出すことができなくなるので、症状が長引いてしまう恐れがあります。薬は自己判断で飲まずに、受診して医師の指示に従うようにしましょう。症状が治っても1〜4週間は便の中にウイルスが含まれていることがあるので、トイレで二次感染の可能性があります。症状が治ってからも手洗いや消毒などの対策が必要です。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の治療方法や予防方法

手洗い

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の自宅でのケア方法を教えてください。

ノロウイルスに感染したら、自宅で安静にして自然に回復するまで待つ必要があります。吐き気が強いと食事や水分補給ができず、脱水が心配されます。また、家族への二次感染も心配です。自宅での過ごし方のポイントは以下のとおりです。

  • 水分補給は常温のスポーツドリンクや経口補水液を少量ずつ飲む
  • 食事は症状が落ち着くまで無理に食べなくてもよい
  • 食事を摂るときは胃腸に負担をかけないように消化のよい物を少量ずつゆっくりと食べる
  • 食器やタオルは家族と共有しない
  • 食器・衣服・環境の消毒は次亜塩素酸ナトリウムを使用するか85度で1分間以上の熱水洗濯をする
  • 吐物や便の処理は使い捨てのマスク・ガウン・手袋を着用してペーパータオルで静かに拭き取ってすぐにビニール袋で密閉する

ノロウイルスは感染力が高いので、家庭内感染をしないように便や吐物の処理方法や消毒方法は正しい方法で行いましょう。感染した方のお世話をしたり、消毒をした後はしっかりと手洗いをすることが大切です。

医療機関での治療が必要なのはどのようなケースですか?

ノロウイルスに有効なワクチンや薬剤はないので、治療は症状に対する対症療法が行われます。一般的に自宅療養で回復しますが、医療機関を受診して治療が必要な場合があります。医療機関での治療が必要なケースは以下のとおりです。

  • 脱水症状がひどい
  • 食事が摂れず水分を摂るとすぐに嘔吐してしまう
  • 乳幼児や高齢者

すでに脱水症状がひどい場合や、経口からの水分補給ができないときは医療機関での治療が必要になる場合があります。乳幼児や高齢者も下痢や嘔吐による脱水のリスクが高いため、ノロウイルスに感染したとわかったら医療機関を受診しましょう。

医療機関での治療方法を教えてください。

ノロウイルスに対する治療は対症療法です。整腸剤が処方されることがありますが、自宅で安静にしていれば自然に回復します。下痢や嘔吐の症状が強く、経口から水分補給ができず脱水症状があるときには、医療機関で点滴を受ける場合があります。点滴をすると水分と栄養分が補われて脱水症状による身体のだるさを改善できます。点滴の中にノロウイルスに有効な薬が入っているわけではないので、点滴をしても感染性胃腸炎からは回復できません。点滴を実施するかは緊急性や身体の状態を診察して医師が判断します。そのため、医療機関を受診したときに点滴を受けられるとは限りません。点滴をするかは受診したときに医師に相談してみましょう。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎の予防方法を教えてください。

ノロウイルスに対するワクチンはありません。普段の生活でできる予防方法は石けんを使って手洗いをすることです。日頃から帰宅時・トイレの後・食事前など、こまめに手洗いをしましょう。手を洗うときは石けんを使うことで、ウイルスを手指から剥がれ落ちやすくなります。手のひらだけでなく、指先から手首まで全体を時間をかけて洗いましょう。また、日頃から次亜塩素酸ナトリウムでドアノブやスイッチなど家族がよく触れる場所を消毒するのも効果的です。

編集部まとめ

看護師
ノロウイルスの感染経路や症状、治療などを詳しく解説しました。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎は特に冬季に流行する感染症です。下痢や嘔吐の症状が強く出ますが、自宅で安静にしていれば自然に回復するでしょう。

乳幼児や高齢者は特に脱水のリスクが高くなるため、注意が必要です。症状が強い場合は医療機関を受診しましょう。日頃から手洗いや消毒をこまめにすると予防ができます。

ノロウイルスは感染力が強いので、家庭内や職場などで集団感染する可能性があります。家族や職場で共有して、ノロウイルスによる感染性胃腸炎を予防して元気に過ごしましょう。

この記事の監修医師