「動脈硬化の初期症状」はご存知ですか?進行すると現れる症状も解説!【医師監修】
公開日:2025/09/17

加齢とともに多くの方にみられる動脈硬化は、進行するとさまざまな疾患の原因になります。しかし初期症状がないため気付きにくく、関連疾患で指摘される場合がほとんどです。 動脈硬化の検査は簡単にできますが、自覚症状がないため受けない方も少なくありません。動脈硬化が進行すると脳や心臓の重大な疾患に直結します。 重い病気につながる動脈硬化の症状や、検査方法・関連疾患・治療方法などを解説します。高血圧や肥満が気になる方は、ぜひお読みください。

監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
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福島県立医科大学医学部卒業 / 専門は循環器内科 / 2009/4月~2013/3月 宮城厚生協会坂総合病院 / 2013/4月~2017/3月 東北大学病院循環器内科・同大学院 医員 / 2017/4月~2018/5月 仙台オープン病院 循環器内科医長 / 2018/5月~ おだかクリニック 副院長 / 診療所での外来業務に加え、産業医、学校医としての業務も行っている。
目次 -INDEX-
動脈硬化の初期症状とは
動脈硬化はどのような病気ですか?
動脈硬化は文字どおり動脈壁が分厚く硬くなった状態を指します。もともとの血管はしなやかで弾力がありますが、加齢や高血圧が原因で厚みが増して硬くなった状態です。動脈硬化にはいくつかの種類があります。まず、太い動脈にできるのがアテローム動脈硬化です。動脈の内膜にコレステロールが粥状(プラーク)になって蓄積した粥腫(じゅくしゅ)ができ、血管の内壁を狭めます。一般的に動脈硬化といえば、アテローム動脈硬化を指します。また、腎臓や脳の細い動脈が狭くなったものが細動脈硬化で、主に高血圧が原因でおこる症状です。ほかには動脈の筋層である中膜に、カルシウムが沈着して硬くなった中膜硬化があります。動脈硬化が原因になる主な疾患には心疾患・脳血管疾患がありますが、この2疾患はがんとともに3大死因に数えられます。
動脈硬化の初期症状を教えてください。
動脈硬化は脳・頸部・心臓・下肢に多発しますが、ほかにも身体のどの部位にも起こる症状です。この動脈硬化の初期では、ほとんど症状がありません。検査を受けない限り、自分に動脈硬化がおこっていることに気付かない方が大半です。動脈硬化がおこると血管が狭くなり、通常より血流は少なくなります。そのため初期の動脈硬化の症状では、手足の冷え感やしびれ感があります。また、足の皮膚の色が青白くなる場合もあります。こうした変化はほとんどの方が気付かないままです。症状はなくても、中高年以上で高血圧・高脂血症・糖尿病の方は動脈硬化の可能性が高くなっています。
動脈硬化が進行すると、どのような自覚症状が現れますか?
動脈硬化が進行しても、動脈そのものには特に目立った自覚症状がありません。しかし、動脈硬化が進んだ血管では、血液の流路が狭くなったり詰まったりし始めます。こうなると、自覚症状が出る段階で、硬化を起こした動脈がつながる臓器にさまざまな病気の症状が現れます。例えば心臓に酸素や栄養を供給する冠状動脈が狭くなると現れるのが、胸の痛みや息苦しさが出る狭心症です。さらにプラークが破裂すると血管が詰まり、激しい痛みがある心筋梗塞が起こります。脳の動脈が詰まると脳梗塞が起こり、手足が動かせなくなったり、しゃべりにくくなるといった麻痺症状が出現することがあります。硬化が進んだ動脈は血管壁自体がもろくなり、出血しやすくなります。脳で起これば脳内出血になり、強い頭痛や麻痺症状の後遺症が残る可能性があります。いずれにしても重大な結果になりやすい症状が特徴です。
足が閉塞性動脈硬化症になるとどうなりますか?
動脈硬化の血行障害が手や足の末梢動脈で起こった疾患が閉塞性動脈硬化症で、足に起こったものは下肢閉塞性動脈硬化症(LEAD)とよばれます。進行度は4段階に分けられ、初期は無症状かしびれ・足が冷える程度です。2期に進行すると間欠性跛行とよばれる症状が出ます。一定距離を歩くと足のふくらはぎなどに痛みが出て、休めば回復する状態を繰り返します。3期になると出てくるのが安静時疼痛で、安静にしていても痛む症状です。最終的な4期では血流が極端に少なくなった状態で、小さな傷が潰瘍になり、ただれてなかなか治りません。さらに足先から壊死が始まり、最終的に足の切断に至る場合もあります。この病気の症状は足にとどまりません。全身の動脈が硬化している可能性があり、狭心症や脳梗塞への警戒が必要です。
動脈硬化の検査方法
動脈硬化を調べる検査方法を教えてください。
動脈硬化を調べる検査で、代表的なものはPWV検査とABI検査です。両方合わせて一度に検査でき、5分程で結果がわかります。PWV検査は脈波伝播検査のことで、心臓の拍動が手や足に伝わる速度を測る検査です。振動は媒体が硬い程伝播速度が速いので、速度が速い程動脈硬化が進んでいると判断できます。ABI検査は血管のつまりを測る検査で、上腕と足首の血圧を比較する検査です。通常は足首の方が高い血圧を示しますが、下肢の動脈が詰まっていれば足首の血圧が低く出ます。この結果で血管のつまりが判断できる検査です。また、心電図では心臓の血流障害や、圧負荷などを反映した波形変化の有無を評価することで、心臓の病気の早期発見につなげられる可能性があります。頸動脈のエコー(超音波)検査では血管壁やプラークの厚みが測定でき、動脈硬化の数値的な把握が可能です。
動脈硬化の検査はどのくらいの頻度で受けるとよいですか?
動脈硬化の検査はいろいろありますが、検査を受ける頻度に関しては明確な基準が設けられていません。また初期の動脈硬化は自覚症状がなく、高血圧・高脂血症などの診断がついていない方には検査を受ける動機・機会がありません。そのため40~50代になって動脈硬化が気になる方は、現状把握のためにPWV検査やABI検査頸部エコー検査を受けてみるとよいでしょう。何か指摘事項があれば、CT・MRI・カテーテルなどを使った詳細な検査を受けて診断されます。経過観察なら毎年定期的に検査を受けてください。なお、自治体によっては、毎年の特定健診に頸部エコー検査が任意でセットされている場合もあります。
動脈硬化を放置するとどのような病気になりますか?
動脈硬化は進行性で、元の状態に戻ることはありません。治療しないまま時間が経つと、進行につれて合併症のリスクも増えてきます。動脈硬化に伴っておこる可能性がある疾患には、以下のようなものがあります。
脳の病気
- 脳梗塞
- 脳出血
- クモ膜下出血
- 脳血管性認知症
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 心不全
- 心臓弁膜症
- 不整脈
- 腎硬化症
- 腎不全
- 大動脈瘤
- 下肢閉塞性動脈硬化症
- 大動脈解離
動脈硬化の治療・予防方法
動脈硬化にはどのような治療が行われますか?
動脈硬化そのものをもとに戻す治療法は確立されていません。できることは進行を抑えて病気の発症を防ぐことです。動脈硬化になった原因を突き止めて、根気よく改善する地道な方法になります。動脈硬化の主な原因は、以下のとおりです。
- 高血圧
- 脂質異常
- 脂質異常
- 肥満
- 糖尿病
- タバコ
閉塞性動脈硬化症の手術について教えてください。
閉塞性動脈硬化症は、手足の動脈が狭くなったり詰まったりして血流が停滞する症状です。進行して安静時にも痛みが出たり傷が潰瘍化したりすると、手術が検討されます。ステントで狭窄部を広げる血管内治療もできますが、それが難しい場合は手術となるでしょう。2種類の手術のうち内膜除去術では、狭窄部の動脈を切開して血管の内膜と血栓をはがしとり、後に人工血管や静脈を足して広げます。バイパス手術は、狭窄部分を避けて上流側から下流側に別の血管を造設する手術です。代表的な手術例は太ももの動脈閉塞時に行う、足の付け根から膝までをつなぐ大腿動脈・膝窩動脈バイパスです。さらに動脈硬化が進んで血行の回復が難しくなると、手足の切断手術が行われます。
動脈硬化を防ぐために生活面で気を付けることはありますか?
動脈硬化には生活習慣が影響するため、予防も生活習慣への対策が主体です。対応のポイントは食事と運動と禁煙の3つがあります。食事面では基本的に日本食を意識してください。肉よりも魚を多くして、野菜・きのこ・大豆・海藻などを積極的に摂取します。塩分は1日6gが目標です。また、下記のようなコレステロール・脂肪酸が多い食品の摂取は控えましょう。
- レバーなどの内臓
- 魚卵
- 肉の脂身
- バター
- ラード
- 鶏皮
- マーガリン
編集部まとめ
動脈硬化は老化に伴う症状で、高血圧など生活習慣によって進行・悪化が促されます。初期症状に乏しいため、対応は合併症の症状が出てからになりがちです。 脳出血・心筋梗塞・腎不全など、命の危険がある疾患を引き起こす厄介な動脈硬化ですが、検査は簡単にできます。早期発見・生活習慣の改善で悪化の予防が可能です。 中高年で血圧が高め・肥満や脂質異常が気になる方は、一度動脈硬化の検査をおすすめします。




