「ワキガ」を発症すると「どんな匂い」がする？セルフチェック法も解説！【医師監修】

ワキガの原因には、アポクリン腺の分泌亢進・遺伝・性ホルモン・脇毛の量・ストレス・スポーツによる発汗などが考えられるでしょう。脇にある汗腺がアポクリン腺で、この汗腺は脂質やたんぱく質も汗と一緒に分泌します。分泌の直後は無臭ですが、汗を除去せずに放置すると皮膚の常在菌が分解して、特有の臭いが発生します。

二次性徴をむかえる10〜15歳頃から発症します。アポクリン腺は、二次性徴の頃に性ホルモンの影響で発達する汗腺です。アポクリン腺からの分泌物が増えることで、ワキガの症状が現れます。脇毛の生え始める時期に発症し、成長するにつれ強くなり、20歳前後でピークになるでしょう。40代頃から徐々にワキガの症状が軽快していきます。

ワキガは、耳垢の湿りを伴う家族での遺伝が少なくありません。高確率で遺伝するため、親子ともにワキガの症状が現れるでしょう。アポクリン腺から出る分泌物の質にABCC11遺伝子が関係しているとされています。また、耳垢が湿っている方の80％はワキガを有しています。

ワキガの臭いの特徴は、ミルクのような臭い・酸っぱい臭い・カレースパイスのような臭いがする点です。この3タイプの臭いが、ワキガ全体の8割程を占めます。なかでもカレースパイスのような臭いは、ほかの臭いと比べても臭いが強いのが特徴です。ワキガの臭いは年齢とともに変わり、10〜20歳代では、酸っぱい臭いとカレースパイスのような臭いの割合が多い傾向にあります。30代では、ミルクっぽい臭いが増加します。

自分では気付かない場合もあります。ワキガの臭いが強い方は、自身の体臭を気にする傾向にあります。反対に、自身の体臭に気付いていない方は1割程存在し、周囲の指摘によって気付くことが少なくありません。

ガーゼテストと呼ばれる方法があります。ガーゼテストはガーゼを脇に5分間挟み、臭いをかいで臭いの程度を確認する方法で、医療機関でも行われる検査です。臭いのレベルは以下のとおりです。

• レベル1：まったく臭わない
• レベル2：ガーゼからわずかに臭う
• レベル3：鼻にガーゼを近づけると臭う
• レベル4：横にいると臭う
• レベル5：電車などで間に人を挟んでも臭う

セルフチェックは、上記を自分で判断します。臭いは主観的な判断のため、一人ひとり感じ方は異なります。自分の臭いには気付かない方もいるため、可能であれば他者に確認してもらうようにしましょう。また、ワキガの患者さんでは耳垢が湿っていることが少なくありません。そのため、自分の耳垢を確認するとよいでしょう。加えて、両親のワキガと耳垢が湿っている点も確認すると、自分がワキガの可能性も高いことがわかります。

自分でできる対処法は以下のとおりです。

• シャワーをこまめに浴びる
• 入浴の際に薬用せっけんを使う
• アルコール綿で拭く
• 制汗剤は皮脂や細菌が少ない状態で使う
• 脇毛を処理する
• 衣類を天然素材にする
• 生活リズムを整える

シャワーをこまめに浴びることで、脇の汗も菌も除去できるため、一時的なワキガの改善が見込めます。日中はシャワーをこまめに浴びるのは難しいため、アルコール綿で脇を拭くようにしましょう。一度拭くと12時間程は効果が持続するとされています。脇毛を処理するとワキガが改善するケースも少なくないため、剃ったり脱毛したりして対策するのもよいでしょう。また、衣類を綿や麻などの天然素材にするのも対処法の1つです。化学繊維は臭いがこもりやすいため、臭いが残りやすくなります。食事やストレスなどもワキガにつながっている可能性があるため、対処が必要です。脂っこい物や赤身肉の摂取を控えることで、ワキガを抑えられる可能性があります。ストレスはアポクリン腺の分泌量を増やすため、普段からストレス発散しておきましょう。まずは、できることから取り入れて習慣化できると、ワキガの軽減につながります。

市販の制汗剤での消臭効果は一時的にはなりますが、対応は可能です。制汗剤は、汗腺の入口を閉じることで、汗自体の分泌を抑える薬剤です。市販の制汗剤は、汗の抑制以外にも臭いに作用する成分を含んでいるものも多いため、ワキガにも対応できるでしょう。ただし、衣服に着くと効果が続かなかったり、汗で流れたりします。そのため、使うタイミングに気をつけて汗を拭いてから使うようにしましょう。

ワキガの治療法は、保存的治療と手術です。保存的治療には、生活習慣の改善・脱毛・制汗剤・ボツリヌス毒素の局所注射・塩化アルミニウム溶液の外用・イオン導入法・マイクロ波などがあります。ワキガの臭いが強い場合には手術を行います。ボツリヌス毒素の局所注射は、ワキガの臭い自体に効果は乏しいです。ただし、身体全体に広がっているエクリン腺の発汗を抑えて脇を乾燥状態にさせるため、ワキガの臭いが軽減します。塩化アルミニウム溶液の外用は、塩化アルミニウムが汗腺の出口を塞ぐことで汗の量を抑える方法です。脇に塗布するだけで侵襲も少ないのが特徴です。イオン導入法は、電気を流して汗腺を閉塞させます。マイクロ波は、マイクロ波で汗腺を焼いて破壊する方法です。手術では、剪除法と呼ばれる脇の下のアポクリン腺がある皮膚の層を切除する方法で行われるでしょう。ほかにも脇の下の皮膚ごと切除する皮膚切除法や両方を組み合わせた方法などで、手術は行われます。手術を受けた9割程の方で臭いは軽減しますが、完全に臭いを除去するのは困難です。アポクリン腺を全部除去するのは難しいため、臭いが残ってしまうケースもあります。術後に痛みが続く・傷口が開く・皮膚の壊死・血腫などが起きる場合があるため、一定期間の安静が必要になります。症状が長引く場合には、医師に相談しましょう。

適用される治療と適用されない治療があります。塩化アルミニウム溶液の外用は保険適用ですが、脱毛・イオン導入法・マイクロ波などは保険適用外のため、慎重に選びましょう。ボツリヌス毒素の局所注射は、脇窩多汗症の方は保険適用が可能です。そのため、脇窩多汗症を合併したワキガの方は保険適用となります。脇窩多汗症は、脇から多量の汗が出てしまう症状です。手術では、剪除法や皮膚切除法は保険適用のため、第一選択となります。治療は、保険適用か適用外かでかかる費用は異なるため、医師と相談して治療法を決めましょう。