「ノロウイルス感染症と胃腸炎の違い」はご存知ですか？症状や感染経路も解説！

ノロウイルスは手指や食品を介して感染するウイルスです。世界中に分布し、乳幼児から高齢者まであらゆる世代に感染します。通年感染する可能性がありますが、秋口から春先にかけて発症者が増え、特に冬季に流行しやすいです。ノロウイルスに感染すると、主に腹痛・下痢・嘔吐などの症状を引き起こします。通常は1〜3日程度で症状が改善し、軽症で済むことが多いですが、乳幼児や高齢者が感染すると脱水のリスクがあります。高齢者の場合、吐瀉物を喉に詰まらせ窒息する恐れや誤嚥性肺炎を引き起こすこともあるため注意が必要です。

ノロウイルス感染症は胃腸炎の一種です。胃腸炎は感染性と非感染性に分かれているのをご存知でしょうか。感染性胃腸炎のなかには、ノロウイルス・ロタウイルスなどのウイルスや、病原性大腸菌・サルモネラなどの細菌による胃腸炎が含まれます。また非感染性胃腸炎は、ストレスなどを原因とする胃腸の炎症を指します。

ノロウイルスの主な感染経路は経口感染です。具体的には以下のような場合が考えられます。

• ノロウイルスが含まれた糞便・吐瀉物の処理を行う際に感染した場合
• 家庭や共同生活を行う施設などで、ヒトからヒトへ直接飛沫感染した場合
• 飲食店の調理者や食品製造者が感染しており、感染者を介して汚染した食品を摂取して感染した場合
• ノロウイルスに汚染された二枚貝（カキ・ハマグリなど）を生のまま、あるいは十分に加熱せず摂取して感染した場合
• ノロウイルスに汚染された井戸水や水道水を消毒せずに口にした場合

このように、ノロウイルスの感染経路は多岐に渡り、感染制御が困難な要因となっています。

ノロウイルス感染症の検査として挙げられるのがノロウイルス抗原検査です。一般的には行われず、3歳未満の乳幼児や65歳以上の高齢者を対象に、医師が医学的に必要と判断した場合にのみ行われます。この検査は結果が迅速に出るという利点がありますが、ノロウイルスに感染していても陽性とならないことがあるため、必ずしも信頼できる結果が得られるわけではありません。また、電子顕微鏡法・RT-PCR法・リアルタイムPCR法などの遺伝子を検出する手法は、ウイルスの有無を調べる方法です。これらの検査は一般の医療機関では実施されず、食中毒や集団感染の原因を明らかにするために行政機関や研究機関で行われています。一般的にはこれらの検査は行わず、症状や周囲の感染状況などから総合的にノロウイルスを原因と推定して診療されることが多いです。

ノロウイルス感染症の症状は以下のとおりです。

• 腹痛
• 下痢
• 悪心
• 嘔吐
• 倦怠感
• 発熱
• 咽頭痛
• 筋肉痛

特に腹痛・下痢・嘔吐はよく見られる症状です。また、吐き気により十分な水分摂取ができなかったり下痢や嘔吐を繰り返したりすることで、脱水状態に陥る恐れがあります。特に乳幼児や高齢者の場合、脱水のリスクが高いため、水分・食事摂取状況や症状に注意する必要があります。

ノロウイルスは12時間から2日間の潜伏期間の後、通常であれば症状が1〜3日程度続きます。脱水を引き起こした場合は、さらに症状が長引くことが考えられます。

ノロウイルスに対する抗ウイルス薬はなく、対症療法のみです。基本的に特別な治療は行わず、自然に回復することが多いです。下痢に対しては整腸剤を処方されることがあります。また、水分や食事が十分に摂れておらず、脱水のリスクが高い場合には輸液を行うこともあります。

ノロウイルスに感染した場合、悪心・嘔吐が落ち着いているタイミングでこまめに水分を摂取し、休息を十分に取りましょう。回復してきたら、消化しやすい食事を中心に摂取することが望ましいです。ただし悪心・嘔吐・下痢が数日経っても改善せず、水分や食事を摂取できていない状態が続いている場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。

ノロウイルスに対するワクチンはありません。ノロウイルスの感染予防策として重要なのは日頃から手洗いの習慣化です。日頃から帰宅時や食事前に、しっかりとハンドソープで手を洗うことが感染予防につながります。手洗いは以下の手順で行いましょう。

• 流水で両手をすすぐ
• 手に石けんをつけ、手のひらをこする
• 指の間をこする
• 手の甲をこする
• 指先をこする
• 親指の付け根をこする
• 流水で泡をしっかりと落とす

洗い残しやすい部位は手の甲や指先、指の間や親指の付け根です。これらの部位を意識して洗うようにしましょう。また手荒れ部分にも汚れが残りやすいため、手の保湿をこまめに行うことが大切です。手洗いをすると、しない場合に比べて手指に残存するウイルスを大幅に減らすことができます。手洗いをしない場合に約1,000,000個だった残存ウイルスは、流水だけでも約10,000個まで減ります。ハンドソープを使用し60秒もみ洗いした後、流水で15秒すすいだ場合、残存するウイルスは約10個です。さらに、ハンドソープで10秒もみ洗いをした後、流水で15秒すすぐことを2回繰り返した場合は残存するウイルスを数個まで減らすことが可能です。この結果から、ハンドソープでもみ洗いした後、流水ですすぐ動作を2回繰り返すことが効果的なことがわかります。日常生活のなかで入念に手を洗うべきタイミングとしては、吐瀉物に接触した後や乳幼児の下痢や嘔吐に対応した後、公衆トイレを使用した後などが挙げられます。

帰宅後やトイレ後、食事前の手洗いを入念に行いましょう。感染している家族がいる場合は、毎回ハンドソープを使用し、普段より丁寧に手を洗うことが重要です。上述したように、ハンドソープで10秒もみ洗いした後に、流水で15秒すすぐことを2回繰り返すと効果的です。手洗い後は、ペーパータオルで手を拭くか、タオルを分けて使用することが望ましいでしょう。また、ノロウイルスは次亜塩素酸ナトリウムで消毒をするか、85度で1分以上の加熱をすると不活化します。家族がノロウイルスに感染した場合は、トイレの便器やドアノブを次亜塩素酸ナトリウムで消毒するといいでしょう。感染者が使用した直後の消毒が重要です。またトイレだけでなく、水道の蛇口や冷蔵庫の取っ手部分などにウイルスが付着していることが多いとの指摘があります。このような箇所をはじめ、家族がよく触る場所を次亜塩素酸ナトリウムでのこまめな消毒が重要です。症状が消失した後も、約1ヶ月はノロウイルスが感染者の糞便に含まれるといわれています。家族が快方に向かったとしても、しばらくは感染対策を継続しましょう。