インフルエンザは感染症の1つで、日本では冬に流行する病気です。ほとんどの場合、1週間程度で症状は治まりますが、個人差があります。
患者さんによっては、インフルエンザと診断された次の日には、解熱して体調が回復しているケースもあります。反対に、症状が続いて仕事に支障をきたす方もいるでしょう。
本記事では、インフルエンザの発症期間や休みが必要な期間などを紹介します。仕事や学校など外出するタイミングに悩んでいる方の参考になれば幸いです。
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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。
インフルエンザの発症・潜伏期間
インフルエンザの発症日はどのように決まりますか?
インフルエンザの発症日は、咳や発熱などの症状が始まった日が0日です。学校や幼稚園の出席停止日数は発症日から数えるため、症状が始まった日をスタートとして計算します。患者さんによっては、病院を受診した日が0日目になるとは限らないため、注意しましょう。
潜伏期間はどのくらいですか?
通常のインフルエンザの潜伏期間は1〜5日程度です。潜伏期間後は、発熱や倦怠感、頭痛や関節痛などの症状が出現します。一般的な風邪と同様に、咳・鼻水・喉の痛みといった症状もありますが、全身に症状が出やすいことが特徴です。また、新型インフルエンザは、型によって潜伏期間が異なる可能性があります。症状や重症度も種類によって差異があるため、通常のインフルエンザと同じとは限らないことを理解しておきましょう。
インフルエンザを周りに感染させる可能性がある期間を教えてください。
インフルエンザは具体的に感染力がなくなる期間が定められていません。明確な日にちは不明ですが、発症後3〜7日はウイルスを排出していると考えられています。そのため、発症した次の日に熱が下がったからといって、外出することは避けた方がよいでしょう。可能であれば、7日間は自宅療養すると、感染リスクが低下します。インフルエンザは飛沫感染と接触感染が主な感染経路です。ウイルスを手から手に移しただけでは感染しませんが、ウイルスが付着した手でお顔まわりの粘膜に触れると感染してしまいます。そのため、定期的な手洗い・うがいを心がけ、インフルエンザにかからないように日頃から心がけましょう。
インフルエンザによる出席停止
インフルエンザの出席停止の日数の数え方を教えてください。
インフルエンザを発症した日から5日が経過し、かつ解熱後2日を経過するまでは出席停止とされています。そのため、最低でも5日間は休まなければなりません。しかし、解熱後も咳や鼻水などの症状がひどい場合や出席しても問題ないか判断が難しい場合は、保険センターや病院で相談しましょう。また、インフルエンザは解熱後も3〜7日間はウイルスを排出します。そのため、出席する際はマスクを着用し、周りに菌を移さないように対策することも重要です。
インフルエンザにおける解熱とはどのような状態ですか?
インフルエンザにおける解熱の状態は、
1日を通して発熱が一度もなかった場合です。そのため、午前中は熱があったが午後から平熱に戻ったという場合は発熱日に該当します。また、発熱の基準値は感染症法により定められています。
- 37.0〜37.9度:微熱
- 37.5度以上:発熱
- 38.0度以上:高熱
上記の基準から、1日を通して37.5度未満であれば解熱した状態です。しかし、解熱と判断する体温は医師や患者さんの平熱によっても異なります。平熱が低い患者さんであれば、37.5度の体温でも負担が大きいでしょう。そのため、実際の基準は医療機関を受診した際に確認しましょう。
インフルエンザによる学校の出席停止は法律で定められていますか?
インフルエンザによる出席停止の義務は、学校保健安全法により定められています。学校保健安全法は児童および職員の健康管理・安全環境の確保が主な目的の法律です。インフルエンザの出席停止日数も、学校保健安全法により定められています。そのため、インフルエンザを発症した場合は、自宅でしっかりと療養しましょう。
子どもが発症した場合に保護者は出勤しても問題ありませんか?
通常のインフルエンザは5類感染症に該当するため、子どもが発症した場合の保護者の出勤可否に関する明確な決まりはありません。そのため、子どもの体調を確認しながら出勤の判断をしましょう。また、企業によっては、家族が感染症にかかった場合の対応を就業規則で定めていることもあります。法律での明確な規定はありませんが、勤務先のルールに従って判断することが大切です。ただし、新型インフルエンザや鳥インフルエンザなど、感染力の強いウイルスが発生した場合には、就業制限が設けられることがあります。インフルエンザの種類によって対応が異なるため、出勤の判断には十分注意しましょう。
インフルエンザによる出勤停止
インフルエンザの出勤停止は法律で定められていますか?
インフルエンザには、
法律による出勤停止の規定はありません。季節性・新型インフルエンザのいずれの場合も、出勤しても罰則などは設けられていないため、対応は企業の判断に委ねられます。しかし、インフルエンザは感染力が強く、出勤によって社内感染のリスクを高める可能性があるため十分な注意が求められます。インフルエンザを発症したり医師から指導があったりした場合は、速やかに会社に相談しましょう。労働安全衛生法第68条では、事業者は伝染性の疾病やその他の疾病について、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者に対し同省令に基づいて就業を禁止しなければならないと規定されています。具体的に、以下のいずれかに該当した場合、出勤してはいけません。
- 病毒伝播のおそれのある伝染性の疾病にかかった場合
- 心臓・腎臓・肺などの疾病にかかり、労働のため病勢が著しく増悪する可能性がある場合
- 厚生労働大臣が定める疾病にかかった場合
今後新たに新型インフルエンザが誕生し、上記に該当した場合は、出勤停止が義務となります。インフルエンザだからといって出勤停止にならないとは限らないため、随時確認しましょう。
症状がおさまっていても周りに感染させる可能性がある期間は休むべきですか?
インフルエンザは発症後、3〜7日間はウイルスが排出されるといわれています。そのため、症状がおさまっていても出勤は控えるべきです。具体的に感染力がなくなる時期は明確ではありませんが、発症から時間が経過する程、感染リスクは低下します。そのため、可能であれば発症日の翌日から7日間は休むことが望ましいでしょう。業務上、長期間休むことが難しい場合でも、咳や熱などの症状がひいてから2日間は外出を自粛する方がよいでしょう。
出勤の際には治癒証明書などは必要ですか?
インフルエンザに感染した場合、出勤時に治癒証明書や検査陰性の証明書を求められることは、法律上の義務ではありません。明確な陰性基準がないため、証明書を取得することは必ずしも適切ではなく、医療機関に余計な負担をかけてしまう可能性があります。また、証明書の取得が診察予約や待ち時間を長引かせ、ほかの患者への医療提供に支障をきたすおそれもあります。企業によっては出勤の判断を任せるケースもありますが、発熱や体調不良の症状が完全に治まっていない状態での出勤は、社内感染のリスクを高めるため避けるべきでしょう。そのため、治癒証明書の有無に関わらず、症状が改善してから出勤することが重要です。
編集部まとめ
本記事では、インフルエンザの発症日や潜伏期間、出席・出勤停止に関する法律などを紹介しました。
インフルエンザは通常1〜5日間を潜伏期間とし、発症後3〜7日間はウイルスを排出していると考えられています。3日程度で症状が落ち着いても、可能であれば外出は控えると周りへの感染リスクを軽減できるでしょう。
学校への出席停止は、学校保健安全法によって定められています。しかし、保護者の出勤停止については、法律上の規定は設けられていません。
家族や自身がインフルエンザを発症した場合の対応は、受診した医療機関で確認しましょう。また、発症を予防するために、こまめな手洗いやうがい、アルコール消毒を徹底することが大切です。