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「多発性骨髄腫の余命」はご存知ですか?症状・検査・治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2023/12/31
「多発性骨髄腫の余命」はご存知ですか?症状・検査・治療法も解説!【医師監修】

多発性骨髄腫は、高年齢層の患者さんに比較的多くみられるがんです。完治が難しいため、化学療法などの治療を受けつつうまく付き合っていく病気の一種といえます。

患者さんに現れている症状にコミットした治療を行い、緩和しつつ経過を観察していく病気です。

本記事では、多発性骨髄腫の余命や生存率・症状・検査方法・治療方法を解説しています。よくある質問についても紹介しているので、不安解消につなげましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

多発性骨髄腫とは?

多発性骨髄腫とは、血液中にある形質細胞ががん化して骨髄内で増殖する病気です。症状がない場合は早急に治療を開始する必要はありませんが、骨折しやすくなる・貧血などの症状が現れているときは治療を受けて症状の改善を目指します。
治療が難しく、完治が困難である場合が少なくありません。若年層での発症は稀であり、60代以上の年齢を重ねた方が発症しやすいことが特徴です。病状は複数あり、治療方法は薬物療法や幹細胞移植などが挙げられます。

多発性骨髄腫の余命と生存率は?

多発性骨髄腫は、人によって余命にかなりばらつきがあります。染色体異常などがみられない場合は、治療後長く生きることが可能です。
再発する可能性は、もちろんあります。5年生存率は、以下の通りです。

  • 男性:42.9%
  • 女性:43.6%

2009〜2011年の統計結果なので、現在は若干異なっているかもしれません。

多発性骨髄腫の症状

多発性骨髄腫の症状は、初期の状態では無症状のことが多いです。がんが進行するにしたがって、以下の症状が出やすくなります。

  • 骨病変
  • 腎臓機能の低下
  • 貧血
  • 感染症にかかりやすくなる

具体的にどのような症状が出やすいのかを、解説していきます。

骨病変

多発性骨髄腫の患者さんに多くみられるのが、骨病変です。

  • 骨が痛くなる
  • 骨痛が発生しやすくなる
  • レントゲンで撮影すると一部分の骨が黒っぽく映る
  • 圧迫骨折・病的骨折が増える
  • 血中のカルシウムが多くなる

抜き打ち画像とは、レントゲン撮影を行ったとき骨が黒っぽく移ることです。黒っぽく映る場所が、治療対象です。
今まで経験したことのない頻度で骨折を繰り返しているときは、多発性骨髄腫の疑いがあります。これまで違和感を持たなかった動作をしたときの骨の痛みを察知している場合は、病院を受診してみてください。

腎臓の機能低下

多発性骨髄腫になると、以下の理由で腎臓機能が低下しやすくなります。

  • Mタンパクが沈殿する
  • 脱水が起きやすくなる
  • 高カルシウム血症のリスクが上がる
  • 薬物による負荷がかかる

がんが進行することにより、尿毒症を発症することがあります。吐き気・むくみ・息切れといった異変が起きたら、放置すべきではありません。

貧血

多発性骨髄腫を患うと、貧血になりやすいです。その原因は、以下の通りになります。

  • 骨髄腫細胞の命令によって、赤血球が生成されにくくなる
  • 骨髄の中にある正常な血液を作るための細胞そのものが減る

ヘモグロビンの減少により、めまい・息切れ・倦怠感といった異変の発生リスクが上がるため、貧血が気になっている方は注意すべきです。
貧血のみでなく、骨の痛みといった症状が出ているときは、早めに病院を受診してください。

感染症への罹患

先ほども述べたように、多発性骨髄腫を発症すると正常な抗体が生成しにくくなります
その結果、感染症にかかりやすくなってしまうのです。季節ごとに流行する感染症はもちろん、今までかかったことのないものに頻繁にかかってしまう場合は注意しましょう。
乳児や幼児が患うような弱い菌の感染症に感染してしまうことが多い場合は、一度検査を受けることをおすすめします。

多発性骨髄腫の検査方法

多発性骨髄腫が疑われるときは、以下のような検査方法を行います。

  • 尿検査
  • 血液検査
  • 骨髄の検査
  • X線・CT・MRIの画像検査

複数の検査を行い、詳しく状態を分析して慎重に病気の状態を診断する必要があります。それぞれどのような検査を行うのか、確認していきましょう。

尿検査

多発性骨髄腫を疑うときに行う尿検査では、複数の項目を検査します。

  • 腎機能に異常がないか
  • Mタンパクの一種、ベンズジョーンズタンパクが尿の中に排出されていないか

一般的な尿検査とは異なり、1日通して尿の成分を検査するのが特徴です。多発性骨髄腫のみではなく、ほかの病気の有無も同時に調べる検査となります。

血液検査

血液検査を行うことで、以下の項目を調べます。

  • 造血機能に異常がないか:赤血球・ヘモグロビン・白血球・血小板の数値測定
  • 骨髄腫の進み具合:Mタンパク数の異常確認
  • 腎臓機能障害の有無:血清クレアチニン数値の測定
  • 血中のカルシウム量の測定:高カルシウム血症などほか病気の調査

血液検査からわかる情報は、非常に多くあります。多発性骨髄腫以外の病気の発見や治療開始の目安にもなるので、結果が出たら主治医の説明をよく聞き治療方針を決めましょう。

骨髄検査

骨髄検査では、以下のことを調べます。

  • 顕微鏡を用いた骨髄腫細胞の有無・形式の確認
  • 骨髄液表面に出ている腫瘍の種類・熟成度を確認
  • 染色体検査による、悪性度判定

骨髄検査は、骨髄液や組織を採取して行います。骨髄以外の部位に異変を認める場合は、その組織細胞も採取して同時に検査を進めていくことが多いです。

X線・CT・MRIなどによる画像診断検査

多発性骨髄腫は、全身に広がる病気です。そのため、X線・CT・MRIを用いた検査も実施します。

  • X線検査:骨の状態を確認するため、丸型の穴の有無や病気によってできる骨折がないかを調べる
  • CT・MRL検査:小さな骨の異常や多発性骨髄腫を発症していないかを確認する

より細部を調べる場合は、CTやMRIを用いた検査が有効です。
  

多発性骨髄腫の治療方法

多発性骨髄腫の治療方法は、主に3種類あります。

  • 薬物(化学)療法
  • 自家末梢血幹細胞移植療法
  • 放射線治療

それぞれの施術が持つ特徴を知り、主治医と話し合って病状や体への負荷を考慮した治療方法に取り組んでください。

薬物療法

昨今、多発性骨髄腫に使用できる薬剤の種類が豊富になってきました。そのため、患者さんの体調や今後の治療方針を考慮した薬剤を使用可能です。使用されやすい薬剤は、以下の通りのものがあります。

  • レナデックス:骨髄腫のステロイド剤で、内服薬
  • レブラミド:レナデックスと併用する内服薬
  • ベルケイド:レナデックスと併用されやすい、注射製剤

基本的には、ベルケイド(注射)+レナデックス(内服薬)もしくはレブラミド+レナデックス(双方ともに内服薬)での治療が初回に実施されます。効果がなかった・再発した場合は、ほかの新薬を試した治療に取り掛かることが多いです。

自家末梢血幹細胞移植療法

抗がん剤治療を受けると、がんの部分に効果が出る反面通常通りに働く血液にもダメージを加えてしまいます。そのことを考慮し、抗がん剤治療を始める前に自らの血液を生成する造血幹細胞を保存しておきます。
化学治療後に細胞を体内に戻して回復を図る方法が、自家末梢血幹細胞移植療法です。体を良好な状態に保ちやすい反面、合併症を起こして命に関わる危険な状態になることが、全体の1〜2%ほどあります。効果とリスクを把握して、施術を受けるかを見極めましょう。

放射線治療

多発性骨髄腫で実施している放射線治療は、緩和治療が主です。以下のような効果に、期待が持てます。

  • 骨の病変に伴う疼痛や神経痛を改善・緩和する
  • 骨折予防

鎮痛効果は非常に効果が高く、痛みがないまたは少ない生活を送ることによって生活の質を高められます。副作用が非常に軽いのも、特徴の一つです。

多発性骨髄腫についてよくある質問

ここまで、多発性骨髄腫についての概要・余命と生存率・症状・検査・治療方法について解説してきました。
ここでは「多発性骨髄腫の受診科・再発」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

多発性骨髄腫が疑われる場合は何科を受診したらよいですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

多発性骨髄腫は、血液の中の細胞ががんになることで発症します。そのため、血液内科の受診が最適です。血液内科自体数が多いわけではないので、大きな病院で検査を受ける可能性が高いといえます。

多発性骨髄腫は再発しますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

多発性骨髄腫は、再発する可能性が高いがんといえます。いったん進行が止まったとしても、再度悪化することもあるので、定期的な検査が欠かせません。
発熱・骨の痛みといった不調が発生した場合は、再発や病状の進行の可能性があります。病状の悪化を防ぐためにも、できるだけ早く病院を受診してください。

まとめ

多発性骨髄腫は、高齢の方に発症しやすいがんです。年齢を重ねているから、疲れがたまっているからと、体の変調を二の次にすることは避けましょう。

貧血や骨の痛みといった症状が発生しているのであれば、できるだけ早く病院を受診しましょう。放置しているうちに病状が悪化する傾向にあるため、早めの受診を心がけてください。

早期の段階で治療を開始し、症状を改善させて生活の質を高めましょう。

多発性骨髄腫と関連する病気

「多発性骨髄腫」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内科系

腎臓内科または泌尿器科系

  • 腎機能の低下による高カルシウム血症

気になる症状が出ているときは、まずはかかりつけの内科を受診してみてください。血液検査や尿検査で異常があれば、大きな病院への紹介状を出してもらえる可能性が高いです。

多発性骨髄腫と関連する症状

「多発性骨髄腫」と関連する症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

貧血や疲れがたまっているときにみられやすい症状が多くありますが、口の渇きを頻繁に感じているときは病院を受診しましょう。高カルシウム血症を発症しているときに発現しやすい症状なので、見逃さず対処してください。

この記事の監修医師

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