インフルエンザに罹ると学校を出席停止になった記憶がある方もいらっしゃるはずです。インフルエンザは通常の風邪のように体調管理すれば通勤、通学できるものではなく、一定期間自宅で療養しなければなりません。
その通勤・通学してはならない期間が隔離期間です。子どものころインフルエンザに罹り、医師から通学停止の証明書をもらった記憶がある人もいるかもしれません。インフルエンザは新型コロナと同じ5類感染症です。5類感染症にはこのほかにも梅毒・破傷風・後天性免疫不全症候群(エイズ)・クロイツフェルト・ヤコブ病(狂牛病)・麻疹なども該当します。
これらと同等の分類であるインフルエンザは、決してただの風邪ではなく舐めて罹ることはできません。しっかり隔離期間を確保しての了承が必要になります。
今回はインフルエンザの隔離期間がどのくらいなのか解説します。
監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
プロフィールをもっと見る
琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。
インフルエンザの隔離期間
インフルエンザの園児の出席停止はどのくらいですか?
インフルエンザが発症して5日経過かつ熱が下がって3日経過するまでです。幼稚園と保育園は所轄の官庁が異なり、それぞれ園児の出席停止の根拠法令も異なります。文部科学省が管轄する幼稚園の園児については学校保健安全法を出席停止の根拠にしています。厚生労働省が管轄している保育園は、学校保健法の適用はありません。しかし、厚生労働省の定める保健所における感染症対策ガイドラインにより、幼稚園と同じ期間は登園を避けることが望ましいとされ、実質同じ運用がなされています。インフルエンザに罹った園児の出席停止期間、隔離期間はインフルエンザが発症して5日経過かつ熱が下がって3日経過するまでとなっています。12月1日に熱が出てインフルエンザと診断され12月7日に熱が下がった場合、隔離期間は12月10日までです。通園できるのは12月11日からです。幼稚園と保育園が一緒になった認定こども園も同じ対応になります。
インフルエンザの小学生以上の出席停止はどのくらいですか?
小学生から大学生までは学校保健安全法の規定によりインフルエンザが発症して5日経過かつ熱が下がって2日経過するまでます。学校保健安全法の規定を根拠とするのは幼稚園と同じなのですが、隔離期間についてはインフルエンザが発症して5日経過かつ熱が下がって2日経過するまでと、解熱後の隔離期間が1日短くなっています。上の例では、園児は12月11日から通園できますが、小学生以上の場合、12月10日から通学可能です。3日で平熱に戻っても発症から5日経過しないと通学できません。12月1日に発症し熱が出て、12月3日に解熱しても通学できるのは12月6日からになります。それまでは家にいましょう。隔離期間中は出席停止となり、欠席扱いにはなりません。
インフルエンザの社会人の出勤停止はどのくらいですか?
みなさんが勤務する職場次第です。インフルエンザの隔離期間は学校保健安全法やそれに準ずるガイドラインによってのみ定められているので、社会人については出勤停止の根拠法令はありません。つまり、自己判断になります。ただし、会社の就業規則でインフルエンザに罹った場合の対応について定められていることがあるので、その場合はそれにしたがってください。また、インフルエンザは感染症であり、症状が出ているのに無理に出勤すれば同僚にうつしてしまいます。出勤停止の規定や上司の指示がなくても、症状がでている期間は仕事を休むほうがよいでしょう。無理に出社して部署が全滅となれば仕事が回らなくなってしまいます。産業医や会社の人事にあらかじめインフルエンザになったときの出勤停止日数、隔離期間を聞いておいてもよいでしょう。
インフルエンザと新型コロナの隔離期間は違いますか?
インフルエンザと新型コロナの隔離期間は異なります。新型コロナ5類化前は厳格な隔離規定がありましたが、5類後はインフルエンザと似た隔離期間になっています。ただし、インフルエンザと新型コロナでは隔離期間が違うので注意してください。インフルエンザの隔離期間は発症して5日かつ解熱して2日経過ですが、新型コロナは発症して5日かつ症状が軽快して1日経過になっています。似ているようで異なるのでご注意ください。なお、これは学校における対応ですが、職場については就業規則等にしたがって隔離期間を設けてください。職場によっては特別有給など通常の有給消化をせずに休めることもあります。
家族が発症しているときに通学・通勤は可能ですか?
可能ですが避けることをおすすめします。インフルエンザは新型コロナが5類化する前の濃厚接触者のような考えはありません。しかし、インフルエンザに感染していて発症する前である可能性もあります。通学・通勤する場合は、マスクをするなど適宜適切なうつさない対策をとりましょう。職場によっては家族がインフルエンザの場合在宅勤務、など独自の規定を設けている場合があります。その場合はそれにしたがってください。いつもよりも少し周囲へうつさない配慮ができれば、急な用事などを無理に休む必要まではありません。
インフルエンザの隔離期間の必要性
インフルエンザはなぜ隔離期間が必要なのですか?
インフルエンザは5類感染症に位置付けられ、症状が風邪と比較して重く、かつ感染力が風邪と違ってとても強いことが理由です。インフルエンザは感染力が強いため、インフルエンザに罹った方が学校や職場へ行くと、
学校や職場で感染が拡大するリスクがあります。そのため、感染リスクを抑えるために、隔離期間が必要なのです。最初にも述べましたが、インフルエンザは、破傷風・梅毒・後天性免疫不全症候群(HIV)・麻疹などと同じカテゴリの重大さを持つ5類感染症です。
隔離期間中に通学・通勤すると生じる問題はありますか?
学校や職場の方にインフルエンザをうつしてしまう可能性があります。感染力が強いため、原則、通学・通勤はしないでください。インフルエンザに罹って通勤や通学をしても罰則やペナルティはありませんが、多くの方がインフルエンザに罹り、部署や学級が回らなくなる可能性があります。
インフルエンザは潜伏期間でもうつりますか?
インフルエンザで人に感染する期間は、発症の1日前から発症して7日経過するくらいです。発症1日前は潜伏期間なので、その期間も他人へうつる可能性があります。家族がインフルエンザに罹っている場合は、自分が発症していないだけの可能性もあり、他人へうつさないためマスクなどをすることが必要です。
インフルエンザの隔離期間中の対策
インフルエンザ隔離期間中に患者さんができることはありますか?
インフルエンザを治すため、水分をしっかり摂り休養することが第一です。それに加えて家族にうつさないことができれば望ましいです。可能なら不織布マスクをしてうつさないようにするのが望ましいのですが、高熱で息苦しい場合は無理をしないでください。
インフルエンザ隔離期間中に家族ができることはありますか?
室内の換気を徹底させます。1つの部屋で2か所の窓を開ける、換気扇をつけるなどしてインフルエンザウィルスが滞留しない環境を作ってください。加湿器ややかんにお湯を沸かして、室内の湿度を50%以上に上げてください。インフルエンザウィルスは湿気に弱いので、これで防げる部分が増えます。こまめな消毒や手洗いも有効です。これは患者さんも同様です。他人にインフルエンザをうつさず、自宅で完治できれば望ましい結果になります。
編集部まとめ
インフルエンザは軽い病気ではなく、重篤化してしまうリスクもあります。そして感染力は風邪とはけた違いに高く、自分がかからないだけではなく他人に感染させない配慮も必要になります。
厳格な感染対策が必要というわけではありませんが、可能なことをしていただき、しっかり休んでください。しっかり隔離することで、家族や同級生・同僚でインフルエンザをうつすリスクを減らし冬の時期を健康に乗り切れます。
隔離違反には法的な罰則はありませんが、発症後5日間かつ解熱した後2日間経過するまでの隔離期間を守っていただき、公衆衛生の安定にご協力をお願いします。
インフルエンザを軽く見ていると、インフルエンザ脳症など重篤な症状に陥るリスクもぜりではありません。目安となる隔離期間は在宅にて休息をとってください。他人に感染させるリスクがなくなった段階で元の生活に復帰することが望ましく、それがみなさんの健康を守ることにつながります。