FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「老眼」は何歳から発症するの?放置していたらどうなる?【医師監修】

「老眼」は何歳から発症するの?放置していたらどうなる?【医師監修】

 公開日:2024/10/28
「老眼」は何歳から発症するの?放置していたらどうなる?【医師監修】

近くのものが見えづらくなる、本や新聞の文字が見えづらくなった、そういった症状は老眼の初期症状のサインかもしれません。

遠くのものはよく見えるのに、近くのものが見えづらくなるのが老眼で、近くのものはよく見えるのに遠くのものが見えづらい近視と対比されがちです。

近視は若年層から起こりうるものであり、老眼はその名のとおり加齢とともに誰にでも訪れます。

ここでは、老眼の原因、対策や治療法などを詳しく説明します。

柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

プロフィールをもっと見る
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

老眼は何歳から発症する?その原因とは

ルーペで新聞を読む高齢者の女性

老眼とはどのような症状ですか?

老眼の症状を自覚し始める年齢は40代が少なくないようです。老眼を発症する時期は、生活習慣病など健康面での不安が増大する時期と重なります。ものを見る仕組みは、カメラで例えるとピント合わせに似ています。眼球内にある水晶体付近の筋肉を収縮させてピントを合わせており、それによって見たいものがはっきりと見えるようになっています。老眼は加齢によって、水晶体が徐々に硬くなっていき、調節力が落ちることで起きる病気です。特に近くのものが見えづらくなる特徴がありますが、老眼は健康な方や視力が著しくよい方、近視の方であっても加齢によってほぼ100%の方が発症します。

老眼は何歳から発症するものですか?

老眼の発症年齢には個人差があり、一概にはいえませんがおおむね40代になってから発症するケースが大半です。症状としては、近見困難と眼精疲労が主なものです。特に近くのものが見えづらくなったのであれば眼科を受診するようにしましょう。眼科では、視力検査のほかに屈折検査と、場合によっては調節力検査を行って老眼かどうかを判断します。ただし、眼精疲労はどの年齢層でも起こります。近見困難とは、遠くを見た後に近くへ視線を移したときにぼやけて見える状態です。普段過不足なく読んでいた新聞や本の文字がいつのまにか見えにくくなる、ぼやけて見える場合は、近見困難が疑われます。

老眼の原因を教えてください。

老眼の原因は加齢です。個人差がありますがほぼ100%の方に老眼が発症します。加齢により眼球の中の水晶体の弾性が失われ、硬直してしまうためです。水晶体は、ものを見るために収縮してピントを合わせますが、硬直するとピントを合わせることができなくなります。特に近くのものを見るために必要な収縮が難しくなると、老眼が引き起こされてしまいます。収縮力は10代がピークであり、加齢とともにどんどん弱くなっていきます。そのため、視力がいくらよくても近視であっても、老眼を避けることは難しく誰にでも将来起こりえる病気としての心づもりが必要です。

老眼の治療法

検査

老眼の治療法について教えてください。

老眼に有効な治療法はありません。対処法は遠近両用のメガネあるいはコンタクトレンズを使用することです。見えないあるいは見えづらいことに対する身体的ストレスは相当なもので、肩こりや頭痛などの要因になることもあります。ほかに老眼に対する対処法として以下のものがあります。

  • 目のストレッチ
  • 食材
  • 目薬
  • 睡眠と運動

目のストレッチは、デスクワークなど長時間近くを見て作業をする方に向いています。10分に1回、ピントを遠くに合わせて水晶体の収縮をもとに戻します。ピントを固定させることなく意識的に遠近交互にピントを合わせるようにしましょう。眼精疲労に効果的な食材もあり、アスタキサンチンやルテインを取り込むことで身体の中の活性酸素を取り除き、眼精疲労が緩和されます。アスタキサンチンは鮭・イクラ・エビ・カニの赤い部分、ルテインはほうれん草・ブロッコリー・かぼちゃ・にんじんなどに含まれています。食材での摂取が難しいときはサプリで代用するとよいでしょう。目薬は、ネオスチグミンメチル硫酸塩が含有されている目薬がスマートフォン老眼に効果的とされています。そして、効果があるのが睡眠です。寝不足だと目のピントが合いづらいので、質のよい睡眠を心がけるようにしましょう。質のよい睡眠にするためには、睡眠前の軽い運動が効果的です。

老眼の検査法について教えてください。

老眼の検査法には以下の3つがあります。

  • 視力検査
  • 細隙灯顕微鏡検査
  • 眼底検査

いずれも老眼であることを前提にした検査の意味合いが強く、老眼鏡や遠近両用メガネおよびコンタクトレンズを作る場合の検査でもあります。視力検査は、見えやすさのほかに近視や遠視、乱視などの度合いを調べる検査です。細隙灯顕微鏡検査では、目に細い光を当てることで傷や炎症の有無を調べます。眼底の写真を撮影し、出血などの有無を調べるのは眼底検査です。検査対象が高齢者の場合はこれらの検査のほかに白内障や緑内障などの病気がないかも検査します。

老眼でも手術で視力が回復することはありますか?

現代の医学では、老眼が治ることはないとされています。しかし、手術によって改善するケースもあります。ただし、老眼に対するものではなく、白内障の患者さん向けの手術です。手術は硬直した水晶体を摘出し、代替として多焦点眼内レンズを固定することで遠近ともに見えやすくなります。老眼によって不自由されている50歳以上の方ならば、白内障の有無に関係なく手術を受けることができる場合もあります。手術の優れているところは近視や遠視、乱視にも効果が出やすいことです。

老眼だと思っても受診は必要になりますか?

加齢とともに老眼は自分自身で認知しやすくなります。そのため、ご自身で老眼鏡を購入するケースがありますが、合わない老眼鏡を使ったり、老眼鏡を使わないで我慢したりすることで眼精疲労が蓄積していきます。ストレスや肩こり、頭痛の原因となり、さらには食欲減退などあらゆる体調不良を引き起こすケースがあるので注意しましょう。40歳代以降の体調不良の原因が老眼ということも少なくありません。心当たりがあれば眼科での受診をするようにしましょう。誰にでも起こる老眼であるため軽く見る風潮もありますが、あらゆる病気の原因あるいは遠因になることもあります。眼科で受診して老眼による視力低下としっかりとした診断を受けたうえで、老眼と正しくつきあっていくようにしましょう。

老眼を抑える対策法

スマホを見る人

老眼を抑える対策法はありますか?

老眼は老化現象の一つです。加齢とともに誰にでも現れる症状なので、老眼の発症を防ぐことはできません。一方で、ピント調節を司る眼球の中の毛様体筋という筋肉を鍛えることで老眼の発症を遅らせることはできます。仕事や遊びなどで長時間集中的にピントが合わさった状態を維持しても、筋肉を鍛えることにはなりません。できれば10分に1回程度、近くと遠くで交互にピントを合わせる運動を複数回繰り返すことで毛様体筋を鍛えることができます。ほかには、規則正しい生活習慣を送ることも重要です。特に睡眠時間の確保は大切とされています。

自分でも症状を調べられる方法はありますか?

一般的に遠くはよく見えるのに近くが見づらくなった、新聞や本が読みにくくなったと感じたら老眼の初期症状です。個人差があるにしても老化現象なので誰にでも老眼は起こります。40歳代になって起こることが少なくありません。そのため、老眼であるかどうかを、患者さん自身が自覚症状から判断することが重要です。判断材料としては、新聞や本の文字が30cm以上離さないと見づらいのであれば要注意です。昨今では紙媒体の文字を見る機会が少なくなったとされています。見る機会が多いのはPCやスマートフォンの画面ですが、これらは明るさ調節などで見やすく設定できるので、老化の体感が難しいとされています。あくまでも紙媒体で文字の見やすさを計るようにしましょう。

老眼を放置していたらどうなりますか?

老眼を放置すると、日常生活を送るうえで不便を感じるようになるでしょう。新聞や本が読みにくくなることのほかに、あらゆる面で見づらさを感じるため、わずらわしさが高じて精神的なストレスを感じることもあります。また、眼精疲労が起こりやすくなるため、肩こりや頭痛といった身体的なトラブルも起こりやすくなるでしょう。視力が限定されてしまうので、転倒や衝突のリスクも高まります。いずれにしても老眼の疑いがあるならば放置することなく、医療機関の受診をおすすめします。

編集部まとめ

本を読む人
老眼は老化現象の一つなので誰にでも起こるもので、老眼に対する有効的な治療は現在において存在しません。

そのため、老眼になったからといって悲観することなく、老眼とうまくつきあっていく必要があります。

老眼の初期症状を感じたらできるだけ早く眼科で受診するようにしましょう。

自分の老眼に合った遠近両用メガネやコンタクトレンズを使用することで、見づらさが改善します。

老眼を放置して見づらさを常に感じて生活するよりも、少しでも改善して日々の生活を送るようにしたいものです。

この記事の監修医師