「トラウマとPTSDの違い」はご存知ですか?それぞれの症状や原因も解説!
公開日:2024/12/03
過去の衝撃的な出来事で負った心の傷は、トラウマやPTSDなどと呼ばれる場合があります。
自分自身の状況と向き合い改善を図ったり身近な人の心のサポートをしたりするためには、両者の特徴とそれぞれの違いを明確にしておくことが大切です。
この記事では、トラウマとPTSDの原因や症状の特徴を解説します。違いや関連も取り上げているので、理解を深めるために参考にしてみてください。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
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目次 -INDEX-
トラウマについて
トラウマとはどのようなものですか?
トラウマとは心的外傷のことで、個人の対処能力を超えた外的な出来事を体験したときに被るストレスと定義されています。
一般的なストレスは、時間の経過や状況によって軽減したり、なくしたりできる場合があるでしょう。一方、トラウマは一度負うと心をもとの状態には戻せない非可逆性が伴うとされています。
そのため、一過性ではあるものの長い期間その出来事に囚われてしまい、日常生活にも支障をきたしてしまいます。心の傷は目に見えないことによりダメージが判別しにくく、他人から理解されにくいです。
一般的なストレスは、時間の経過や状況によって軽減したり、なくしたりできる場合があるでしょう。一方、トラウマは一度負うと心をもとの状態には戻せない非可逆性が伴うとされています。
そのため、一過性ではあるものの長い期間その出来事に囚われてしまい、日常生活にも支障をきたしてしまいます。心の傷は目に見えないことによりダメージが判別しにくく、他人から理解されにくいです。
トラウマになる原因は?
トラウマの原因は人によってさまざまです。例えば戦争・自然災害・交通事故とそれに関連した身体的外傷が原因になる場合があります。また、虐待や性的被害は被害者にとって衝撃が強く、長年つらい記憶に悩まされる方が少なくありません。
通り魔や誘拐のような暴力・犯罪被害を経験した方も、トラウマになりやすいです。実際に自分が暴力を振るわれたわけではなくても、その状況を目撃したことがトラウマの引き金になる恐れもあります。
さらに、家族や友人など身近な人の死を直接的に体験し、大きな喪失感を味わったことがトラウマにつながるケースもあるでしょう。これら以外にも、極度のストレス状態に晒される状況すべてがトラウマの原因となりえます。
通り魔や誘拐のような暴力・犯罪被害を経験した方も、トラウマになりやすいです。実際に自分が暴力を振るわれたわけではなくても、その状況を目撃したことがトラウマの引き金になる恐れもあります。
さらに、家族や友人など身近な人の死を直接的に体験し、大きな喪失感を味わったことがトラウマにつながるケースもあるでしょう。これら以外にも、極度のストレス状態に晒される状況すべてがトラウマの原因となりえます。
トラウマ反応の主な症状は?
トラウマがあると、強い不安や恐怖心を感じます。家や愛着のある人から離れると不安が大きくなる分離不安がみられたり、暗闇やトラウマに関連した状況を極度に怖がったりするでしょう。
また不当で理不尽なトラウマを経験すると、正当な理由が見つからないため自責感を覚え、自尊感情が低下するケースも少なくありません。怒りや抑うつ状態が生じるケースもあります。
また不当で理不尽なトラウマを経験すると、正当な理由が見つからないため自責感を覚え、自尊感情が低下するケースも少なくありません。怒りや抑うつ状態が生じるケースもあります。
PTSDについて
PTSDとはどのようなものですか?
PTSDは心的外傷後ストレス障害と呼ばれ、生死に関わる恐ろしく強烈な体験をした人にみられることの多い行動的または感情的な反応のことです。対象となる出来事からすでに離れているにも関わらず、いつまでもその環境下にいるかのように感じてしまいます。
外傷後3ヵ月以内に発症するのが一般的ですが、長い期間が経過してから症状が現れる方もいます。患者数は日本の総人口の約1.3%といわれ、世界的にみてもそれ程珍しくない疾患です。
ある研究によると3ヵ月以内に半数以上の患者さんが自然回復するものの、一定数の方が1年以上経過しても自然回復しないとの結果が出ています。
外傷後3ヵ月以内に発症するのが一般的ですが、長い期間が経過してから症状が現れる方もいます。患者数は日本の総人口の約1.3%といわれ、世界的にみてもそれ程珍しくない疾患です。
ある研究によると3ヵ月以内に半数以上の患者さんが自然回復するものの、一定数の方が1年以上経過しても自然回復しないとの結果が出ています。
PTSDの原因は何ですか?
PTSDの原因は強制的な出来事から生じるストレスです。そのきっかけは戦争・自然災害・交通事故のような大きな出来事から、虐待・性的被害のような個人的な被害まで多種多様です。
簡単にいえば、自分ではどうしようもできないと思える状況を経験した場合に引き起こされやすいと考えられています。しかし、同じ状況下にあってもすべての人が発症するわけではありません。その人の年齢や性別、当時感じていたストレスなどの個人的な要素が関係するため、個体差があります。
ただし、状況が悲惨で深刻である程個体差が少なくなる傾向が強いです。また症状が重篤な患者さんは、ホスホジエステラーゼ4Bの発現が低下していることも判明しました。
これによりcAMP情報伝達経路が過活性化してしまい、恐怖体験がより強固になることがPTSDを発症する原因になりえるとも考えられています。
簡単にいえば、自分ではどうしようもできないと思える状況を経験した場合に引き起こされやすいと考えられています。しかし、同じ状況下にあってもすべての人が発症するわけではありません。その人の年齢や性別、当時感じていたストレスなどの個人的な要素が関係するため、個体差があります。
ただし、状況が悲惨で深刻である程個体差が少なくなる傾向が強いです。また症状が重篤な患者さんは、ホスホジエステラーゼ4Bの発現が低下していることも判明しました。
これによりcAMP情報伝達経路が過活性化してしまい、恐怖体験がより強固になることがPTSDを発症する原因になりえるとも考えられています。
PTSDの主な症状は?
PTSDの強い恐怖を伴う記憶は、鮮明かつ断片的な外傷性の記憶になります。その記憶が、本人の意思とは関係なく悪夢やフラッシュバックとなって再現される症状が顕著です。これによりトラウマを再体験している状態になり、被害が続いているかのような感覚に陥り苦痛や動悸・過呼吸などの身体の生理反応が引き起こされます。音や場所など特定のトリガーにより、原因となった出来事が突然蘇ることがあるでしょう。
また断片的な記憶を日常生活と関連付けてしまい、関係のないことに対しても恐怖心を覚えてびくびくし感情が制御できない方もいます。さらに、恐ろしい状況から自分の身を守ろうとして回避行動を取るのも特徴です。
感情が麻痺して表情が乏しくなる方や、意欲や関心を示さなくなる方がいます。トラウマ経験によって引き起こされる感情が大きすぎると解離症状もみられ、恐怖や痛みを感じなかったり記憶を失ったりするでしょう。
これらの症状が1ヶ月以上続くと、PTSDと診断されます。
また断片的な記憶を日常生活と関連付けてしまい、関係のないことに対しても恐怖心を覚えてびくびくし感情が制御できない方もいます。さらに、恐ろしい状況から自分の身を守ろうとして回避行動を取るのも特徴です。
感情が麻痺して表情が乏しくなる方や、意欲や関心を示さなくなる方がいます。トラウマ経験によって引き起こされる感情が大きすぎると解離症状もみられ、恐怖や痛みを感じなかったり記憶を失ったりするでしょう。
これらの症状が1ヶ月以上続くと、PTSDと診断されます。
複雑性PTSDとは何ですか?
複雑性PTSDは、国際疾病分類第11回改訂版(ICD–11)にて新たに分類されたストレス関連疾患です。PTSDよりも複雑で、複数の慢性的なストレスを受けることによって生じ、原因が限定できません。特に逃げることが困難か、不可能な持続的あるいは反復的な出来事がきっかけになりやすいといわれています。
例えば親からの虐待や父親から母親への日常的なDVを目の当たりにしていたことなどが原因となり、心の傷が折り重なった結果生じると定義できます。また、PTSDの症状では再体験症状・回避症状・脅威の感覚の高まりが顕著です。
複雑性PTSDではそれに加え、感情調整の困難と否定的な自己概念が起こり、対人関係も困難になります。これらの症状すべてが機能障害を伴って続く場合に、複雑性PTSDと診断されます。
例えば親からの虐待や父親から母親への日常的なDVを目の当たりにしていたことなどが原因となり、心の傷が折り重なった結果生じると定義できます。また、PTSDの症状では再体験症状・回避症状・脅威の感覚の高まりが顕著です。
複雑性PTSDではそれに加え、感情調整の困難と否定的な自己概念が起こり、対人関係も困難になります。これらの症状すべてが機能障害を伴って続く場合に、複雑性PTSDと診断されます。
トラウマとPTSDの違い
トラウマとPTSDは何が違うのですか?
トラウマとPTSDは混同されやすいものの、実際は異なった概念です。トラウマは衝撃的な体験に起因する心の傷とそれに対する反応そのものを指します。反対にPTSDは強烈すぎる恐怖体験からの回復が困難で、日常生活への影響が長期間継続される精神疾患のことです。
PTSDの方が症状の持続時間と影響の深さが圧倒的に優位となるのが大きな違いです。また発症率も異なり、PTSDはトラウマを経験した患者さんのなかでも一部の方のみが発症します。
その他の例では自然に回復するか、適応障害・うつ病のようなほかの精神疾患の症状が現れます。さらに、PTSDは悪夢やフラッシュバックによる再体験が多くみられるのに対し、トラウマは再体験がなくても強い感情的反応を引き起こす恐れがあるでしょう。
PTSDの方が症状の持続時間と影響の深さが圧倒的に優位となるのが大きな違いです。また発症率も異なり、PTSDはトラウマを経験した患者さんのなかでも一部の方のみが発症します。
その他の例では自然に回復するか、適応障害・うつ病のようなほかの精神疾患の症状が現れます。さらに、PTSDは悪夢やフラッシュバックによる再体験が多くみられるのに対し、トラウマは再体験がなくても強い感情的反応を引き起こす恐れがあるでしょう。
トラウマはPTSDの原因になりますか?
基本的にPTSDを発症した患者さんは、共通して強烈な記憶を持っています。トラウマがなければPTSDになる要因も生まれないため、トラウマはPTSDを引き起こす原因になるでしょう。
また、トラウマは周囲からの理解が得にくいことにより、他人の言動を受けて二次的ストレスを起こしやすいです。二次ストレスの方がダメージが大きくなることもあり、トラウマからの回復を阻害してPTSDに発展する可能性も否定できません。
また、トラウマは周囲からの理解が得にくいことにより、他人の言動を受けて二次的ストレスを起こしやすいです。二次ストレスの方がダメージが大きくなることもあり、トラウマからの回復を阻害してPTSDに発展する可能性も否定できません。
トラウマとPTSDは後遺障害に認定されますか?
後遺障害とは交通事故により受傷した精神的・肉体的傷害が、それ以上治療を受けても残っている状態のことです。状態や程度に応じて1〜14の等級に分類されます。認定されるには、医師による診断および因果関係と障害の程度の証明が必要です。
トラウマの段階では診断が難しいものの、PTSDと診断された患者さんは状態によっては後遺障害に認定される可能性があるでしょう。しかし、肉体的傷害とは異なりレントゲンのような目に見える画像データがないため、事故との因果関係が立証しにくいのが難点です。
後遺障害の認定を受けるには、心の異変を感じた際に早めに医療機関を受診して症状を明確にし、トラウマ体験との因果関係を明確にする点が重要です。
トラウマの段階では診断が難しいものの、PTSDと診断された患者さんは状態によっては後遺障害に認定される可能性があるでしょう。しかし、肉体的傷害とは異なりレントゲンのような目に見える画像データがないため、事故との因果関係が立証しにくいのが難点です。
後遺障害の認定を受けるには、心の異変を感じた際に早めに医療機関を受診して症状を明確にし、トラウマ体験との因果関係を明確にする点が重要です。
編集部まとめ
この記事では、トラウマとPTSDの特徴と違いを中心に解説しました。心の傷は本人すら目に見えないからこそ、慎重に判断する必要があります。
トラウマは多くの方が持っている一般的な反応です。しかし時間が解決してくれると考えて放置していると、PTSDを発症してしまいかねません。
トラウマ体験自体を避けるのは難しいですが、PTSDを発症する前にトラウマを解決できる可能性があります。
普段の生活に影響する程つらいなら、我慢せずに専門の医療機関を受診してみてください。適切な治療を行い、日常生活を少しでもよいものにしていきましょう。