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「腹膜癌の原因」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2023/12/21
「腹膜癌の原因」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

みなさんは「腹膜癌」という病名を聞いたことがあるでしょうか。この病気は、お腹の中にある臓器全体を覆っている腹膜という組織にできるがんです。

胃がん・大腸がんなどに比べると知名度が低いため、腹膜癌と診断されたら「どんながんなのだろう」と不安に感じる方もいるかもしれません。

実際に、腹膜癌の年間発症者数は少なく「希少がん」の1つとされています。今回の記事では、そんな「腹膜癌」について原因・症状・治療方法などを解説していきます。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

腹膜癌とは?

消化器・女性器などの内臓は、大きな袋に包まれるように腹膜と呼ばれる組織に覆われています。多くの癌は胃がん・大腸がんのように臓器の内側にできるため、腹膜まで広がるのは病気が進行して臓器の内側から外側へ浸潤した場合です。
しかし、腹膜癌は腹膜自体が発生源となっているがんをいいます。がん細胞にもいろいろなタイプがありますが、子の病気は卵巣がんに多くみられる漿液性腺がんに分類されます。腹膜癌は年間に診断される患者さんが10万人あたり6人未満と少なく、厚生労働省が定める「希少がん」です。

腹膜癌の原因とは?

腹膜癌の直接的な原因は、はっきりと分かっていません。しかし、親・兄弟など血縁者に腹膜癌の発症者がいる方は、発症リスクが高いとされています。また、下記はがん全般のリスクを高めるとされる項目です。

  • 喫煙
  • 過度のアルコール摂取
  • 食生活の乱れ
  • 身体活動の不足
  • 肥満
  • 感染

これらはこのがんに特有のリスク要因ではありませんが、避けることで腹膜癌のリスクを下げられると考えられます。

腹膜癌の症状

がんの中には特徴的な症状が現れるものもありますが、腹膜癌ではどのような症状がみられるのでしょうか。症状の理由についても併せて解説していきます。

初期は無症状

このがんに限らず、腹腔内で起こる病気は臓器の病気と比較して症状が現れにくいといわれています。腹膜癌も初期は無症状のことが多く、これが早期の発見・治療が難しい理由です。

腹部膨満感

腹腔内には、腸がうまく活動するための腹水という液体があります。腹水は腹膜で生産・吸収され、健康な方の場合は50ml前後に保たれています。しかし、腹膜に炎症・病気などが起こると調整機能が低下して腹腔内の腹水が増え、お腹の張り・ふくらみを感じる場合があると報告されてきました。腹水貯留による腹部膨満感は腹膜癌のほか、肝機能障害・心不全・腹膜炎などさまざまな病気でみられる症状です。

腹痛

腹膜癌による腹痛には、下記のような原因が考えられます。

  • がんを原因とする「がん性腹膜炎」
  • 腹水貯留による内臓の圧迫

腹膜癌のほか、内臓のがんが腹膜まで広がった「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」という状態になった場合に、がんによる腹膜炎を起こすことがあります。腹膜にも痛覚があるため、腹膜炎では強い痛みを感じる方が多いでしょう。また、腹水が溜まるとお腹が張るだけでなく内臓が圧迫されます。腹水の量が増えてくると、痛み・消化器の不調・吐き気・食欲不振などの症状が現れます。

腰痛

腹膜癌が女性器や骨盤壁(骨盤の内側)に広がることで、腰痛や下腹部痛を感じることがあります。臓器への転移が起こると、腰痛のほかに各臓器ががんになった場合特有の症状も現れるため注意が必要です。

不正出血

不正出血とは、月経ではない子宮からの出血のことです。子宮体がん・卵巣機能不全・子宮内膜ポリープなど幅広い女性器疾患にみられる症状ですが、がんが女性器に広がることで不正出血が起こることがあります。

腹膜癌の治療

さまざまな症状が現れる腹膜癌ですが、腹膜癌と診断された場合には、どのような治療法があるのでしょうか。

腫瘍減量術

腫瘍減量術は、がんが発生していると考えられる部位を手術により切除する治療法です。一部の臓器内のみに発生したがんと異なり、手術が広範囲に及びます。がんの進行度などにもよりますが、腫瘍減量術では主に下記の部位を切除・郭清する可能性があります。

  • 女性器(子宮・卵巣・卵管)
  • 骨盤リンパ節
  • 傍大動脈リンパ節
  • 大網
  • 腹腔内の腫瘍

手術の際は、最初に腹腔鏡または開腹して腹腔内を観察してから切除を始めます。骨盤リンパ節・傍大動脈リンパ節とは、腎臓付近から女性器のある骨盤内まで通っているリンパ節です。リンパ節の一部を取って生検を行い、転移の可能性が高い場合のみ郭清する場合もあります。4番目に挙げた「大網」とは、胃から腸にかけて臓器を覆っている脂肪組織です。
タイプが同じ卵巣がんは大網に転移しやすいとされるため、腹膜癌も卵巣がんの治療法に準じて転移のリスクが高い大網を切除する場合が多いでしょう。

抗がん剤治療

抗がん剤治療は、細胞への攻撃性がある薬剤を投与してがん細胞を減少させる治療法です。抗がん剤は点滴として投与すると血液によって全身に広がります。
そのため、肉眼では発見できない大きさのがん・血中にただよい転移の原因となり得るがん細胞にも効果が期待できます。ただし、抗がん剤はがん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまうため強い副作用が現れることもあるでしょう。腹膜癌の進行度により、抗がん剤でがんを縮小させてから手術をしたり、術後に補助的に抗がん剤を使用したりと使用のタイミングを検討していきます。

腹膜癌の検査方法

腹膜癌の最終的な診断は、手術中の観察・生検などにより行われます。
しかし、手術などの治療方針を決めるためには、事前に腹膜癌である可能性を確認しなければなりません。では、腹膜癌が疑われる場合はどのような検査を行っているのでしょうか。

画像検査

CT・MRIにより腹部の状態を確認します。画像検査で確認する内容は、腹水の有無・各臓器に腫瘍がみられるかなどです。別の臓器ががんのもとになっていると考えられる場合は腹膜癌の可能性が低くなるため、各臓器の状況は診断に大きく影響します。

血液検査

体内に腫瘍があると、血液中に特定の物質が増えます。この物質の数値により腫瘍がある可能性を知る検査が血液による腫瘍マーカー検査です。この病気が疑われる場合は、女性器の腫瘍に関係するCA125という項目を確認します。

腹腔鏡検査

腹腔鏡検査は、腹部に2cm前後の穴を複数開けて細い棒状の内視鏡で腹腔内を観察する検査です。この検査で腹腔内に腫瘍がみつかった場合は、腹膜癌もしくは臓器から発生したがんが腹膜へ広がっていることが強く疑われます。

経皮的検査

皮膚から針を刺して、腹腔内に溜まった腹水を採取する検査です。腹水の中にがん細胞がみられると、腹膜癌の可能性が高まります。

腹膜癌についてよくある質問

ここまで腹膜癌の原因・治療法などを紹介しました。ここでは「腹膜癌」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

腹膜癌は手術が必要ですか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

腹膜癌が疑われる場合、手術が可能な進行度であれば積極的に腫瘍減量術を行い、がんを切除して減らします。これは、体内に残存するがんを可能な限り減らしたほうが術後の化学療法で効果が出やすいとされているためです。また、腹膜癌の最終的な診断には手術による生検・観察も必要となります。病気の進行度によって化学療法を先行することがありますが、この化学療法の目的は腫瘍を縮小させて手術ができる状態にすることです。

腹膜播種とはどのような状態ですか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

腹膜播種(ふくまくはしゅ)とは、臓器にできたがんが腹腔内にまで広がった状態です。腹膜にがんができるという点では腹膜癌と同じですが、腹膜癌は腹膜ががんの発生源であるのに対して、腹膜播種は別の場所にできたがんが腹膜に転移した状態です。がん細胞が腹腔内にばら撒かれ、種を播くように腹膜に定着・増殖することから腹膜播種と呼ばれます。

編集部まとめ

腹膜癌の患者数は少なく、他のがんと比較するとインターネットや書籍で得られる情報も少ない可能性があります。

そのため、医療機関で「腹膜癌の可能性がある」といわれると戸惑う方もいるかもしれません。

そんなときは、同じタイプのがんとされる卵巣がんの診断方法・治療方法の情報も参考に情報を集めてみましょう。

また、腹膜癌は発症初期にはほとんど症状が現れないため、早期発見が難しいとされる病気です。

しかし、病気が進むと腹水など病気のサインが現れ始めるので、気になる症状は放置せず早期に受診することをおすすめします。

腹膜癌と関連する病気

「腹膜癌」と関連する病気は3つあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

腹膜癌は、卵巣がんと同じタイプの組織型を持ったがんといわれています。また、腹膜癌が進行することで子宮体がんと同様の症状がみられることがあるでしょう。腹膜播種は腹膜癌とは異なる病気ですが、腹膜にがんが発生するという点では症状などに共通点があります。

腹膜癌と関連する症状

「腹膜癌」と関連する症状は3つあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

腹膜癌になると、腹膜の機能低下により腹水が溜まりやすくなります。腹水が増えることで腹部膨満感をおぼえる患者さんもいるでしょう。また、腹膜癌が女性器に広がることで、不正出血がみられることがあります。

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