「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」はアルコールの摂取とは関係なく発症する?
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)は、近年注目されるようになった肝臓の疾患の一つです。アルコール摂取が原因ではなく、過食、運動不足、肥満、糖尿病などの生活習慣が背景にあることが特徴です。
この病態は、脂肪が肝臓に蓄積することで炎症を引き起こし、その結果、肝細胞が傷つけられるものです。未治療のまま進行すると、肝硬変や肝臓がんのリスクが高まるため、早期の発見と対策が求められます。
本記事ではNASH(非アルコール性脂肪肝炎)について以下の点を中心にご紹介します。
・NASH(非アルコール性脂肪肝炎)について
・NASHはどう診断されるのか
・NASHの治療や予防法
NASHについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)とは
NASHの定義と特徴について教えてください
この病態は、飲酒しない人であれば非アルコール性と明確に判断できますが、多くの脂肪肝は飲酒とその他の要因の両方が関与しています。
NASHは単なる脂肪肝ではなく、肝硬変や肝臓がんに進行するリスクがあるため、治療の重要性が叫ばれています。
NASHとアルコール性肝炎の違いを教えてください
その中でも、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)とアルコール性肝炎は、肝臓に関連する疾患としてよく知られていて名前も似ていますが、その原因や特徴は異なります。
アルコール性肝炎は、その名の通り、過度なアルコール摂取が原因となる肝炎です。
長期間にわたるアルコールの過剰摂取は、肝臓にダメージを与え、炎症を引き起こします。この炎症が進行すると、肝硬変や肝不全のリスクが高まります。
一方、NASHは、アルコール摂取とは関係なく、過食や生活習慣病に関連して発症する肝炎です。特に、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病がリスクとなります。NASHは近年急増している疾患ですが、無症状であることが多いため、治療が遅れる点が問題となっています。
両者とも、初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な健康診断や検査が重要です。早期発見、早期治療により、肝臓の状態を改善しましょう。
NASHの原因について教えてください
飲酒が主な原因である場合、肝酵素のAST/ALT比が1以上となることが多いようです。
しかし、NASHの発症や進行に関する詳細なメカニズムはまだ完全には解明されていません。現在、肥満人口の増加とともに、NASHの患者数も増加すると予想されています。
NASHの症状について教えてください
日本におけるNASH患者は、約100〜200万人と推定されています。
NASHの前段階として非アルコール性肝疾患(NAFLD)が存在します。
肝臓は「沈黙の臓器」とも称され、異常が生じても痛みなどの自覚症状は出にくいのが特徴です。そのため、多くの患者は健康診断での中性脂肪や血糖値、血圧、肝機能の異常値をきっかけにNASHの診断を受けることが多いようです。
NASHは、高血糖、脂質代謝異常、高血圧の方がなりやすいとされています。
特に、空腹時の血糖が110mg/dl以上、中性脂肪が150mg/dl以上、血圧が140/90mm/Hg以上の方は注意が必要です。
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の疫学
日本でNASHの患者さんはどれくらいいますか?
『日本消化器病学会のガイドライン』によると、日本におけるNAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)の有病率は9〜30%と報告されており、全国での患者数は1千万人以上と考えられています。この中で、NASHの有病率は3〜5%と推定されています。
具体的には、全国の肝硬変患者・約3万3千人の原因を調査した結果、NASHが原因であったのは2.1%でした。
このデータから、日本におけるNASHの患者数は増加傾向にあり、特に肥満男性の増加が社会問題として注目されています。
日本の肥満人口は男性で約1,300万人、女性では約1千万人とされ、健康診断受診者の約30%が、腹部超音波検査や腹部CTで検出可能な脂肪肝を伴っているといわれています。
また、健康診断受診者におけるNAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)の有病率は、男性で約40%、女性で約20%とされています。
NAFLDは、アルコールを原因としない脂肪肝の総称であり、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧といったメタボリックシンドロームの肝臓病として知られています。
このNAFLDの中で、脂肪肝から進行する肝臓病を「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」と呼びます。
NASHと生活習慣の関係について教えてください
また、食べ過ぎや運動不足、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病も原因となることが知られています。
さらに、過度なダイエットや閉経によるホルモンバランスの乱れもNASHの原因となる可能性が指摘されています。
NASHの予防や治療には、食事療法や運動療法が推奨されています。適正な体重を維持するための食事の見直しや、有酸素運動の継続が推奨されています。
また、生活習慣の改善だけでは不十分な場合は、薬物療法も検討されることがあります。
NASHは、アルコールやウイルス感染を原因としない肝臓の疾患であり、肝臓の細胞内に脂肪が過剰に蓄積することが特徴です。この病態は、肝硬変や肝がんへの進行のリスクがあるため、注意が必要です。
男女でNASHの頻度に違いはありますか?
以上により、NASHは、生活習慣病としての側面を持ち、適切な生活習慣の改善が治療の鍵であることが分かります。
NASHの診断と検査
NASHの診断について教えてください
NASHの診断は、特定の自覚症状だけで行うことは難しく、詳しい検査が必要です。
具体的には、「肝生検」が診断方法として挙げられます。
肝生検では、針を使って肝臓の一部を採取し、その組織を顕微鏡で観察します。この検査により、肝臓の組織に脂肪性肝炎の所見が確認されれば、NASHと診断されます。
また、NASHが進行すると、肝硬変の症状が現れることもあります。
NASHの診断で必要になる検査について教えてください
まず、血液検査では、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値がチェックされます。これらの数値が異常に高い場合、脂肪肝や他の肝障害の可能性が考えられます。
次に、超音波検査やCTスキャンなどの画像検査が行われることが一般的です。超音波検査では、肝臓の脂肪蓄積の状態や炎症の有無を確認します。
さらに、詳しい診断のために肝生検が行われることもあります。これらの検査を組み合わせることで、NASHの診断が行われます。
正確な診断や治療は、医療機関へご相談ください。
NASHとの鑑別や合併に注意が必要な疾患について教えてください
また、NASH患者は、心血管疾患や2型糖尿病といった他の合併症のリスクも高まるため、これらの疾患の早期発見と管理も重要です。
NASHの治療と予防
NASHの治療法について教えてください
NASHの予防策を教えてください
これらの情報は、NASHの治療と予防に関する一般的なガイドラインを元にまとめられています。具体的な治療や予防方法については、医師との相談が必要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
多くの場合、初期段階では自覚症状が少ないため、気づかずに進行してしまうことがあります。しかし、放置すると肝硬変や肝臓がんのリスクが高まる恐れがあります。
健康診断や定期的な医師の診察を受けることで、早期にNASHの兆候を発見し、適切な治療や生活習慣の改善を始めることが重要です。
また、日常生活においては、バランスの良い食事、適度な運動、アルコールの摂取を控えるなど、基本的な健康管理を心がけることが大切です。
編集部まとめ
ここまでNASH(非アルコール性脂肪肝炎)についてお伝えしてきました。
NASHの要点をまとめると以下の通りです。
・NASH(非アルコール性脂肪肝炎)は、アルコール摂取とは無関係に肝臓に脂肪が蓄積し、炎症や肝細胞の損傷が生じる疾患。進行すると肝硬変や肝癌のリスクが高まる
・NASHの診断は、血液検査での肝機能値の異常や超音波検査での肝臓の脂肪蓄積の確認を基に行われる。確定診断のためには、肝生検を行い、組織を直接調べる必要が出る場合もある
・NASHの治療は、生活習慣の改善が中心となる。体重の管理、健康的な食生活、定期的な運動が推奨され、これらの生活習慣の見直しはNASHの予防にも繋がる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考文献