「前十字靱帯損傷」の原因や症状はご存知ですか?医師が監修!
前十字靭帯損傷はスポーツや交通事故などで膝に大きな力が加わった際に、靭帯が損傷してしまう大きな怪我です。
スポーツでは、特にバスケットボール・バドミントン・バレーボールなどのジャンプするプレーが多い競技で前十字靭帯損傷が発生しやすいといえます。
前十字靭帯損傷してしまうと、損傷した靭帯の再建手術を要し、競技復帰するまで長期にわたるリハビリが必要です。
本記事では、前十字靭帯損傷の症状や治療法について解説します。前十字靭帯損傷でリハビリを行っている方、前十字靭帯損傷について詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
前十字靭帯損傷とは
前十字靭帯の役割は?
前十字靭帯がより役割を果たす場面として、例えばバスケットボールやバレーボールで前方へジャンプした後の着地をする際に前十字靭帯が支えるため、前方へ倒れるのを防げます。
また、日常生活の中でも立っている状態からしゃがみ込む際に脛骨が前にいきすぎないよう支えています。このように、前十字靭帯は生活を営む上で重要な役割を果たしているといえるでしょう。
前十字靭帯損傷とは?
前十字靭帯が損傷すると支えている大腿骨と脛骨にずれが生じやすく、すねが前に出やすくなり膝の軟骨を痛めたり、さらに悪化すると靭帯が断裂したりする可能性も考えられます。また、前十字靭帯を損傷した際に、同時に半月板や周辺の靭帯も損傷している場合もあります。
前十字靭帯損傷の原因は?
スポーツではジャンプの着地したタイミングであったり、前方へ足を踏み出したりした場合に捻りが生じると前十字靭帯が損傷してしまう可能性があります。また、交通事故も予期しないタイミングで膝に衝撃が加わるケースが多く、前十字靭帯が損傷する原因の一つに挙げられます。
膝には複数の靭帯が存在し、より大きな衝撃が加わると膝にある複数の靭帯が損傷を受ける可能性が高いです。
前十字靭帯損傷の症状
前十字靭帯損傷の症状はどのようなものですか?
その後、次第に痛み・腫れ・可動域の制限は解消されてきますが、膝が不安定に感じられることが多くなるでしょう。そしてその不安定感があるまま経過していくと、損傷した前十字靭帯の機能を膝にある他の組織がカバーするため、半月板損傷や膝軟骨の損傷が2次的に発生しやすくなります。
加えて慢性的な痛みや腫れも伴う可能性があります。
前十字靭帯損傷はどうやって見分けますか?
また、MRI検査は前十字靭帯損傷の診断に有用な検査です。MRI検査は骨だけでなく、膝全体の靭帯や半月板などの状態を鮮明に写しているため、正確に診断しやすいといえます。加えて、どの靭帯が損傷しているのか見分けることが可能です。
損傷している靭帯はどこか・他にも損傷している箇所がないかを確認できると治療も損傷した箇所に応じて行えます。膝の内部の状態についてX線検査では診断が難しいため、前十字靭帯損傷が疑われる場合はMRI検査を行っている医院を受診した方が良いでしょう。
前十字靭帯損傷の治療
前十字靭帯損傷の治療・リハビリはどのようなものですか?
手術療法には靭帯修復術と再建術の2パターンがあり、多くは再建術が採用されています。前十字靭帯損傷の場合は膝にある他の組織の2次的受傷を防ぐため、再建術による手術療法で治療が行われるケースがほとんどです。
再建術は他の靭帯から採取し、大腿骨と脛骨の一部に穴を開けて損傷した前十字靭帯から代用靭帯として使用することで膝の可動域制御を解消できます。
手術にあたっては基本的に膝に小さな穴を開けて、膝関節鏡や手術に使用する道具を入れて行われるため、手術の跡は数cm程度と比較的目立ちにくいです。
どのくらいの期間で治りますか?
アスリートなどで競技復帰を目指すレベルであれば、その後トレーニングにて徐々に負荷を上げていき、術後10ヶ月〜1年ほどで競技復帰できるようになります。
ただし、前十字靭帯の損傷具合や術後の回復状態などによっては完治までの期間が長短するでしょう。そのため、完治の期間は目安であり、膝の状態をみながら治療・リハビリを続けていくことが大切です。
手術は必要ですか?
前十字靭帯損傷による膝の不具合を解消して、膝にある他の組織へ影響を及ぼさないためには再建法による手術が必要です。再建法による手術時間は1.5 〜2時間ほどで、入院期間も1週間程度でその後は通院にてリハビリを行います。
スポーツへの復帰はできますか?
その上でスポーツを行うための筋力やパフォーマンスなどが機能的に回復していると復帰できると判断できます。しかし、再受傷する可能性がないとは言い切れません。
術後6ヶ月以降からスポーツに復帰できるといわれていますが、術後9ヶ月以降にスポーツ復帰を行うと再受傷率が減少できるとの報告もあるため、経過をみながら徐々にスポーツ復帰することをおすすめします。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
前十字靭帯損傷の場合は保存療法では完治が難しいため、再建法による手術が必要です。術後の競技復帰を目指している方にとっては治療やリハビリが長期間にわたるため、焦らずに膝の状態をみながら徐々に復帰を見据えていきましょう。
加えて、スポーツ復帰に対して恐怖心を持ち合わせていると、復帰が遅くなるといわれていますので心理的な不安も解消していけると順調にスポーツ復帰が目指せるでしょう。
編集部まとめ
前十字靭帯損傷の症状や治療法について解説しました。前十字靭帯は膝を支える上で重要な役割を果たしており、損傷すると痛み・腫れ・膝の可動域制限が余儀なくされます。
他の靭帯であれば装具を着用して可動域を制限しながらリハビリを続ける治療が可能です。しかし、前十字靭帯損傷の場合は他の靭帯や軟骨などへの影響もあり、再建法による手術が推奨されています。
手術後はリハビリを経て日常生活に支障がないレベルで完治するには3ヶ月〜6ヶ月程度かかりますが、スポーツ復帰を目指す場合はより長いリハビリ期間を要します。
よって、前十字靭帯損傷は早期に治療後、膝の状態をみながら焦らずに完治やスポーツ復帰を目指すことが大切です。