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「耳垢塞栓」という耳垢が詰まる病気はご存知ですか?耳掃除のポイントなど解説!

 公開日:2023/09/20
「耳垢塞栓」という耳垢が詰まる病気はご存知ですか?耳掃除のポイントなど解説!

耳垢塞栓(じこうそくせん)とは、耳垢が詰まって耳の穴がふさがり音が聞き取りにくくなる症状です。

通常、耳垢は外耳道にある分泌腺から生じた分泌物にほこりや古くなった皮などが交じって生じます。

一般的に、耳垢は自然に外に出るようになっているため、あまり耳掃除は頻繁に行う必要はありません。

しかし、湿った耳垢がたまると耳垢塞栓を引き起こしやすくなるため注意しましょう。

そこで今回は、耳垢塞栓の原因や症状・治療方法などを解説し、耳掃除のポイントを絞って説明します。

耳垢塞栓の予防と発症した際の治療方法を理解して、日々の生活に役立てましょう。

矢富 正徳

監修医師
矢富 正徳(医師)

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東京医科大学病院
保有免許・資格
日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
日本耳鼻咽喉科学会認定指導医
日本睡眠学会認定睡眠専門医
日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
難病指定医
身体障害者福祉法第15条指定医

耳垢塞栓の原因や症状

耳に手を当てる女性

耳垢塞栓とはどのような状態ですか?

耳垢塞栓とは、耳垢が非常に増加し、塊となって外耳道を詰まらせる現象です。耳垢(みみあか)は、専門的には「じこう」と呼ばれています。
耳垢というと耳からの排出物のようなイメージがありますが、耳の保護にも役立っている点が特徴です。耳垢は鼓膜を塵や汚れから守るだけでなく、皮膚を虫や細菌感染から保護する働きをし、外耳道(耳の穴)の表面を防御しています。
耳垢自体は疾患ではなく、通常は耳から自然に外に出ますが、耳垢が大量になると外耳道に詰まることがあります。これが、耳垢塞栓です。

原因を教えてください。

耳垢塞栓の原因は、湿った耳垢が固まるためです。耳垢には乾燥した「乾性耳垢」と湿った状態の「湿性耳垢」があります。耳垢は誰にでも存在しますが、湿性耳垢は耳垢腺の分泌が多く固まりやすい性質を持っており、乾性耳垢よりも耳垢塞栓が起こりやすくなります。耳垢によって外耳道が詰まり、知らず知らずのうちに、聴力が低下する・耳がかゆい・耳が痛い・閉塞感を覚えるなどの様々な症状が出るでしょう。
健康な方では、耳垢塞栓の頻度は30〜40歳では約2%であり、子供は外耳道が狭いため蓄積しやすく約5%です。幼児の外耳道(耳の穴)は成人に比べて狭く、代謝も活発です。そのため、耳垢がたまりやすい傾向があります。また、寝返りを打つ前は、通常は片側の耳を下にして寝ます。したがって、下側の耳は湿度が高く湿性耳垢がたまりやすくなるでしょう。
さらに、外耳炎・湿疹・耳真菌症などの原因にもなると考えられています。一方、60代では約10%、70歳以上では20から30%と年齢を重ねると発症しやすくなる点が特徴です。また、高齢者施設の80歳以上の方では50%を超えるとの報告もあり、高齢者の中ではこの問題が増えています。高齢者はもともと加齢による難聴がある上に、コミュニケーションの障害が生じやすいため、耳垢が聴力に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、近年では高齢者の認知機能にとって聴覚刺激が重要であることが明らかになっており、耳垢塞栓による聴力への悪影響も認知機能の低下に影響するでしょう。

症状を教えてください。

耳垢塞栓の症状は、指で耳をふさいだような聞こえにくさ・耳の内部がふさがって圧迫されているような感覚(耳閉感)・耳がかゆい・耳が痛いなどの症状があります。耳の内部に少しの隙間があれば、通常は症状を自覚できません。
しかし、そのような状態で水泳や洗髪などして耳内に水が入ると、耳垢の固まりが水分を吸収して膨らみます。そのため、完全に耳がふさがり、急に症状が現れることがあるでしょう。まれに、喉の違和感や胃の不快感・吐き気などを感じる人もいます。
なお、耳垢は病気ではないため、耳垢の存在だけで体に影響することはほとんどありません。

耳垢塞栓の受診と治療

カルテ問診

耳垢塞栓で受診する目安を教えてください。

耳垢塞栓で受診する目安は、耳垢の状態によって異なります。乾燥している場合は3〜6か月ごと、湿った耳垢の場合は1〜2か月ごとに受診するのが一般的です。

どのような検査を行うのですか?

耳垢塞栓の検査は、問診・顕微鏡や内視鏡による観察・細菌培養検査などです。問診では、聴力の状態や細菌の健康状態(風邪の症状や耳に異物が入ったかどうか)・ストレスの程度などを確認します。外耳や中耳の様子は顕微鏡や内視鏡を用いて観察します。
ここで異常が見られない場合、内耳の問題が考えられるでしょう。また、中耳炎の疑いがある場合には、鼻の中も確認します。さらに、外耳道の皮膚が細菌感染を起こして外耳炎になっている場合には、細菌培養検査を実施します。

耳鼻咽喉科ではどのような処置を行うのですか?

耳垢塞栓の場合、耳垢を取り除くのが唯一の治療方法です。吸引・鉗子(かんし)・異物鈎(いぶつこう)・耳かきなどを使って取り出します。硬く固まっている場合には、数日間耳に耳垢水を加え、軟化させてから取り出すこともあります。

耳垢塞栓の予防や耳掃除のポイント

赤ちゃん耳かき

耳垢塞栓の予防方法を教えてください。

耳垢塞栓のほとんどの症状では、普段の耳掃除で予防可能です。また、耳垢を溶かす作用のある「耳垢除去剤」を定期的に塗ることで、耳垢貯留を予防できることもわかっています。普段から外耳道の状態に注意し、痛みがあるときは専門の医師に相談しましょう。

耳掃除のポイントを教えてください。

ご自身で耳掃除をする場合は、耳の入り口周辺をそっと綿棒で拭く程度にして、耳の奥部分には触れないように心がけましょう。家族に耳掃除してもらうときは、視界の良い部分のみ掃除してもらいます。
耳の内部には、気持ちの良い刺激を感じる神経があるので、耳掃除は心地よいことがあるでしょう。しかし、過度に行うと外耳道に傷をつけ、外耳炎を引き起こす可能性があります。また、子供の耳掃除を自宅で行う際には、耳垢が見える部分を湿らせた綿棒や耳かきを使用して注意深く取り除いてください。
手探りで綿棒を使用することは、逆に耳垢を奥に押し込んでしまう可能性があるため注意しましょう。自宅での適切なケアが難しい場合や耳垢がたまりやすい方には、2〜3か月ごとに耳鼻咽喉科で耳掃除してもらうことをおすすめします。

子どもの耳掃除の適切な頻度はどのくらいですか?

子どもの耳掃除の適切な頻度は、2週間に1回清潔な綿棒を使用して耳の入り口に出てくる耳垢を軽く取り除く程度で十分です。耳掃除の頻度を高くすると、耳垢が増える可能性があります。また、耳の形状が狭い・曲がっている・耳垢が取りにくい方や、耳垢が粘り気を持ち異常に溜まる方もいるでしょう。
このような場合は、自宅で無理に取り除かず定期的に耳鼻咽喉科で耳垢を除去することをおすすめします。幼い子供は耳の穴も狭いため、耳掃除をすると逆に耳垢が奥に押し込まれるかもしれません。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

耳垢塞栓は、難聴・痛み・かゆみ・違和感をおぼえる症状です。耳垢が固まることが原因で聴力が低下する可能性がありますが、耳垢が出ること自体に問題はありません。治療方法は、症状に応じて耳垢を柔らかくする液体状の薬を使用したり、鉗子・異物鈎などの特殊器具や吸引で治療したりします。耳鼻咽喉科で、定期的に耳掃除をすることで予防が可能です。
普段から外耳道の状態を意識し、耳に違和感を覚えたときは専門の医師に相談しましょう。

編集部まとめ

女性医師
耳垢塞栓は、耳垢が非常に増加し、塊となって外耳道を詰まらせる現象です。

耳垢は耳の保護に役立っており、鼓膜を塵や汚れから守るだけでなく、皮膚を細菌感染からも保護する働きをして外耳道(耳の穴)の表面を防御しています。

食事を摂ったり話をしたりする際に顎を動かすことで、乾燥耳垢は外耳道から自然に外に排出されるため、普段は特別に何かする必要はありません。

しかし、湿った耳垢は固まりやすく外耳道に溜まる可能性があります。

耳垢塞栓の予防には、定期的な耳掃除が必要です。耳の入り口周辺をそっと綿棒で拭く程度にして、耳の奥部分には触れないように心がけましょう。

万が一、耳垢塞栓にかかったときは、聞こえにくさや耳の閉塞感を覚えます。そのようなときは耳鼻咽喉科で治療を受けてください。

普段からこまめに耳掃除をし、耳垢塞栓にならないよう気を付けましょう。

この記事の監修医師