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「痙攣性発声障害」の症状・原因・治療法はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/05/31
「痙攣性発声障害」の症状・原因・治療法はご存知ですか?医師が監修!

痙攣性発声障害とは喉の声帯が痙攣することで発声障害を引き起こす病気です。症状としては声のつまり・途切れなどが確認されており、日常会話に支障をきたします。

日常会話に支障をきたすと仕事・日常生活にも影響を及ぼす重大な病気です。しかしながら国内でも発症頻度が少なく、病気の実態が分かっていません。

この記事ではそのような痙攣性発声障害に関して、症状・原因・治療方法・予後などについて解説します。

気になる症状がある方は一人で抱え込まず、ぜひこの記事を参考にしてください。

渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

痙攣性発声障害の症状と原因

女医

痙攣性発声障害の特徴を教えてください。

痙攣性発声障害は、のど仏に位置する喉頭の中でも「内喉頭筋」と呼ばれる部分が痙攣することで発声障害を引き起こす病気です。内転型・外転型に分かれており、内転型が全体の約95%を占めています。発症頻度は10万人に1人程度と非常に少なく、20〜40代の女性に多いのが特徴です。
発声障害はコミュニケーションに大きく影響するため、患者はともすれば他人との接触を避けるようになり、精神的な病気につながるケースもあります。しかしながらその病態・原因などについては未解明の部分が多いのが現状です。

どのような症状がみられますか?

痙攣性発声障害の中でも多く見られる内転型では、発声時に声門が過度に閉鎖することで声が途切れがちになります。患者は喉の詰まり・震えなどの感覚を訴え、無理に声を絞り出そうとすることで「過緊張性発声障害」を併発する可能性もあります。過緊張性発声障害は喉が過度に緊張することで発症する障害です。
また痙攣性発声障害には、症例数こそ少ないものの外転型と呼ばれる症状もあります。外転型では声帯が大きく開きすぎることで息漏れ・失声などの症状が見られます。
特に「さ行」や「は行」でその症状は顕著です。いずれのタイプも声帯そのものに異常がないことが多く、専門医でも見分けるのは難しいとされています。

発症の原因を教えてください。

痙攣性発声障害の原因は大脳基底核の異常による局所性ジストニアであるとの見方が一般的です。ジストニアとは無意識に筋肉がこわばってしまう病気です。
体の一部に症状が現れるものを局所性ジストニアと呼んでいます。痙攣性発声障害を発症した方の多くは脳波検査で異常が見られたとの報告があります。

痙攣性発声障害と他の病気はどのように見分けられますか?

痙攣性発声障害と似た病気には本態性音声振戦症・心因性発声障害・吃音などがあります。以下、それぞれの特徴や見分け方を紹介します。

  • 本態性音声振戦症:1秒間に約5回もの筋収縮が規則性を伴って起こるのが特徴です。痙攣性発声障害における声のつまりには規則的ではないものも含まれるほか、高い声で話すと症状が和らぐなどの特徴があります。
  • 心因性発声障害:心の状態が要因となって起こる発声障害です。緊張する場面で過度に言葉が詰まるなどの症状が見られます。声が正常に戻るなどの時期がある場合、痙攣性発声障害とは異なる可能性が高いです。
  • 吃音:音の引き伸ばし・繰り返しなどの症状が見られます。特に言葉の始めの部分でその症状は顕著です。言葉の発達段階にある子どもが発症するケースが多く、年齢とともに特徴が変化します。

痙攣性発声障害の診断と治療方法

カルテを持つ女医

痙攣性発声障害を疑う場合、何科を受診しますか?

痙攣性発声障害の症状の疑いがある場合、基本的には耳鼻咽喉科を受診します。ただし先述したように脳の異常が関連している病気でもあるため、一部の神経内科でも診療を行っています。
発症頻度が少ないため専門的な医療機関でなければ痙攣性発声障害かどうか診断できません。また、自然に治る病気でもないので一人で抱え込まず専門医と共に治療方法を検討しましょう。

どのような検査で診断されるのでしょうか?

痙攣性発声障害の診断基準は明確に定められています。痙攣性発声障害は主に問診・内視鏡所見・音声所見などの検査で診断されます。
問診では主に日常生活において症状の出やすい場面・環境などについて詳しく確認します。例えば泣いた時・歌った時の声はどう違うかなどです。内視鏡所見では発声時に声帯の内転・外転が起こっていないかを、内視鏡で観察することで確認します。
また、音声所見では実際に患者の話し声を聞いて症状の有無を確認します。一般的には単なる発声よりもコミュニケーションを目的とした話し声で症状が顕著です。
これらの検査を行った上で以下のすべてを満たすことが痙攣性発声障害の診断基準となります。

  • 声帯などに外見的な異常・運動麻痺が見られない
  • 呼吸や飲み込む動作など、発声以外の動作には異常が見られない
  • 発症以前に明らかな身体的・精神的な要因がない
  • 症状が6ヶ月以上続いている
  • 神経・筋疾患などはない

治療方法を教えてください。

痙攣性発声障害に対する治療方法として現在最も有効であるとされているのはボツリヌス毒素を喉頭に注射する方法です。注射によって痙攣性発声障害の主要症状が改善するとされており、特に内転型においては90%以上の患者が改善するとの報告があります。
ただし治療効果の持続は数ヶ月程度に過ぎず、継続的な治療が必要なため、根本的な治療方法は未だ確立されていません。他にも言語聴覚士による音声治療(発声訓練)や外科的治療(手術)もありますが、長期的な効果は不明です。

なお、ボツリヌス毒素の注射・外科的治療はいずれも専門の資格が必要です。治療を希望する場合は、ボツリヌス毒素の注射・外科的治療のそれぞれに対応可能な耳鼻咽喉科を選択しましょう。

手術は必要でしょうか?

痙攣性発声障害において手術は必ずしも必要ではありません。しかし上記で紹介したボツリヌス毒素の注射や音声治療は、いずれも効果が限定的であり根本的な治療法とはいえません。
そこで喉頭における声門の開閉を外科的治療によって制御する方法も存在します。主な手術は甲状披裂筋切除術・甲状軟骨形成術Ⅱ型の2種類です。
特に甲状軟骨形成術Ⅱ型は甲状軟骨を切開し外側に開いた状態をチタンブリッジで固定する方法であり、過度に正門が閉鎖する内転型の症状に有効であるとされています。

痙攣性発声障害の予後

カウンセリング

痙攣性発声障害は完治しますか?

痙攣性発声障害は完治が難しい病気といえます。先述したように痙攣性発声障害の根本的な治療法は見つかっていないからです。
上記で紹介した治療法の中でもボツリヌス毒素の注射や音声治療などは効果が一時的な場合が多く、いずれも継続的な治療が必要とされています。甲状披裂筋切除術・甲状軟骨形成術Ⅱ型などの外科手術によって大幅な改善が期待できるものの再発するケースも多くあり、根本的な治療法は確立していないといえます。

リハビリは必要でしょうか?

内転型の痙攣性発声障害を発症した場合、リハビリが必要なケースが多いです。一般的に大きな怪我から復帰するための機能回復訓練をリハビリと呼びますが、痙攣性発声障害においては音声治療が一種のリハビリに当たります。
特に内転型においては音声治療が有効であるケースが多く確認されており、治療のために取り入れられています。音声治療は言語聴覚士が担当し、個別の症状に合った適切な発声法を指導する治療法です。
基本的には無意識に筋肉がこわばるジストニアを避けるような発声法を会得するのが目的で、患者の声帯機能が許す範囲で円滑なコミュニケーションを目指します。

痙攣性発声障害は障害者手帳の対象ですか?

痙攣性発声障害は障害者手帳の対象ではありません。身体障害者福祉法において「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害」に関する項目は設けられているものの、対象はいずれも「喪失」あるいは「著しい障害」とされており、ジストニアによる機能障害は認められていません。
痙攣性発声障害の患者における社会的な負担を考慮すると、障害者手帳の対象として法整備がなされていないことは現行の課題といえます。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

痙攣性発声障害の原因はジストニアによる無意識な筋肉のこわばりだと考えられています。しかしその病態・根本的な治療法などについて分かっていないことが多いのが現状です。
また、声をよく使う女性の発症例が比較的多いとのデータはあるものの具体的な予防法については確立されていません。
痙攣性発声障害は放置しても自然に治る病気ではないほか、症状を理由に社会活動を避け、精神的な病に陥る可能性もあります。発声に異常を感じたときは耳鼻咽喉科などの専門医に相談しましょう。

編集部まとめ

OLの女性
この記事では痙攣性発声障害について症状・原因・治療法・予後などについて解説しました。

痙攣性発声障害は発症頻度が少なく、一般の方にとっては身近な病気ではありません。しかし発症するとあらゆる社会活動が困難になる恐ろしい病気です。

また、治療の効果はほとんど一時的なものになるため、発症した場合は長期的な治療を継続しなければなりません。

手術をすれば正常に近い状態まで改善することが可能ですが、長期的な効果やリスクについては未だ不明です。

気になる症状がある方は耳鼻咽喉科に相談し、自分に合った治療を検討しましょう。

この記事の監修医師