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「甲状腺がんの原因」はご存知ですか?種類や治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/01/23
「甲状腺がんの原因」はご存知ですか?種類や治療法も解説!【医師監修】

甲状腺がんとは?その原因は何でしょうか?本記事では甲状腺がんとその原因について以下の点を中心にご紹介します。

  • ・甲状腺がんとは
  • ・甲状腺がんの種類
  • ・甲状腺がんの原因と治療方法

甲状腺がんの原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

久高 将太

監修医師
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)

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琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。

そもそも甲状腺がんとは

甲状腺は、のどぼとけの直下に位置し、気管を前から取り囲むように存在しています。この臓器は、羽を広げた蝶々のような形をしており、重さは約10~20グラムです。
甲状腺は、甲状腺ホルモン(T3:トリヨードサイロニン、T4:サイロキシン)やカルシトニン等のホルモンを分泌します。これらのホルモンは、脳や骨の成長を促進し、脂質や糖の代謝を調整します。また、カルシトニンは血液中のカルシウム濃度を調整します。

甲状腺がん(甲状腺腫瘍)は、甲状腺という小さな臓器に発生する悪性の腫瘍です。甲状腺がんは、特に20~30代の女性に多く見られ、若い女性に比較的多いがんの一つです。甲状腺がんの発見率は、触診によるものでは約0.8~1.9%、超音波検査によるものでは6.9%~31.6%です。悪性の割合は男性で1.9%、女性で3.2%とされています。
初期段階では自覚症状がほとんどないか、甲状腺のしこり以外に症状が現れないことがあります。しかし、病状が進行すると、のどに違和感を感じる、声がかすれる(嗄声)、のどに痛みを感じる、飲み込むのが難しくなる、誤嚥やむせることが多くなる、血の混じった痰(血痰)が出る、呼吸が苦しくなるといった症状が現れることがあります。

また、甲状腺がんは良性と悪性があり、良性の場合は原則として経過観察が可能です。しかし、良性であってもがん(腫瘍)が大きくなり外見上気になる場合や、圧迫症状が強い場合、または悪性の合併が疑われる場合などは、手術を検討します。一方、悪性の甲状腺がんは、治療が必要となります。

甲状腺がんの種類

甲状腺がんは、悪性度の高いものから低いものまでいくつかの種類があり、その治療方法も異なります。以下に甲状腺の種類について解説します。

乳頭がん

乳頭がんは、甲状腺がんの中でも一般的なタイプで、全体の約90%を占めています。このタイプのがんは、リンパ節への転移がよく見られますが、その進行は非常に遅く、治療後の経過も一般的には良好です。

しかし、乳頭がんの中には、再発を繰り返すものや、悪性度の高い未分化がんに突然変化するものも存在します。これらはごく一部のケースであり、乳頭がんの大部分は比較的安定しています。それでも、これらの可能性があるため、乳頭がんの診断を受けた場合は、適切な治療とフォローアップを行うことが重要です。

濾胞がん

濾胞がんは、甲状腺がんの中で二番目に多いタイプのがんで、全体の約5%を占めています。このタイプのがんは、良性の甲状腺腫瘍、特に濾胞腺腫との区別が難しいことがあります。乳頭がんと比較してリンパ節への転移は少ないです。しかし血流に乗って肺や骨など遠くの臓器に転移する傾向があります。これを血行性転移と呼びます。
遠隔転移がない場合、つまりがんが他の臓器に広がっていない場合、濾胞がんの治療後の予後は比較的良好とされています。しかし、遠隔転移がある場合、適切な治療と管理が必要となります。

低分化がん

低分化がんは、甲状腺がんの全体の約1%未満を占める比較的まれなタイプのがんです。この種類のがんは、乳頭がんや濾胞がんといった高分化がんと、未分化がんの間に位置する特性を持っています。
低分化がんは、乳頭がんや濾胞がんに比べて遠隔転移しやすい傾向があります。また、低分化がんは、高分子がんと共存することがあるだけでなく、悪性度の高い未分化がんに進行することもあります。

未分化がん

未分化がんは、甲状腺がんの全体の約1~2%を占める稀なタイプのがんです。この種類のがんは、最も悪性度が高く、進行が速い特性を持っています。
甲状腺の周囲の反回神経(発声に関与する神経)、気管、食道などに浸潤する傾向があります。また、肺や骨などの遠隔の臓器に転移しやすい特性も持っています。これらの特性から、未分化がんの診断を受けた場合は、迅速かつ適切な治療が必要となります。

髄様がん

髄様がんは、甲状腺がんの全体の約1~2%を占める稀なタイプのがんです。この種類のがんは、甲状腺の中に存在する傍濾胞細胞ががん化したもので、乳頭がんや濾胞がんといった高分化がんよりも進行速度が速く、リンパ節や肺などに転移しやすい特性を持っています。
髄様がんは、遺伝性の場合もあり、RET遺伝子という遺伝子に変異があることが知られています。そのため、髄様がんの診断を受けた場合は、治療方針を決定するためにRET遺伝子検査を受けることが推奨されています。ただし、遺伝子検査は自分だけでなく、血縁者の遺伝情報も明らかにする可能性があるため、遺伝子検査を受けるかどうかを決定する前に、遺伝カウンセリングなどで専門家と十分に相談することが重要です。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、甲状腺がんの全体の約1~5%を占める稀なタイプのがんです。甲状腺全体が急激に腫れ上がることや、声のかすれ(嗄声)や呼吸困難を引き起こすことが特徴です。特に橋本病(慢性甲状腺炎)を持つ患者さんの間で多く発生する傾向があります。橋本病は自己免疫疾患で、体の免疫システムが誤って甲状腺を攻撃し、炎症を引き起こします。

甲状腺がんの原因について

甲状腺がんは、まだはっきりとした原因がわかっていませんが、その一因と考えられているリスクファクターを解説します。

放射線被爆

若年期(特に幼少期)に放射線に曝露された経験が、その一因と考えられています。甲状腺がんの具体的な原因はまだ完全には解明されていませんが、他の要因と組み合わさって甲状腺がんが発生する可能性もあります。したがって、放射線被曝があったからといって必ずしも甲状腺がんになるわけではありません。

遺伝

甲状腺がんの発症には遺伝が関与することが考えられています。特に、血縁者に甲状腺がんの患者さんがいる場合、その方が甲状腺がんを発症する可能性は高まるとされています。
また、特定の種類の甲状腺がん、特に髄様がんについては、遺伝的な影響があるとされています。これは、生まれつきの遺伝子変異が原因となる場合があることを意味します。
しかし、遺伝が一因であるとしても、それだけが甲状腺がんの発症を決定するわけではありません。甲状腺がんの発症は、遺伝的要素だけでなく、生活習慣や環境要素など、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。

甲状腺がんの治療法

甲状腺がんの治療法について解説します。

外科手術

甲状腺がんの手術の方法は、がんの位置、大きさ、転移の有無などにより異なります。主な手術方法には、甲状腺全摘術と甲状腺片葉切除術があります。

甲状腺全摘術:これは甲状腺を全て取り除く手術です。この手術を行うと、甲状腺からの再発予防が期待できます。しかし、甲状腺ホルモンが分泌されなくなるため、手術後は生涯にわたって甲状腺ホルモン薬の内服が必要になります。

甲状腺片葉切除術:これはがんがある側の甲状腺を取り除く手術です。甲状腺が一部残るため、体に必要なホルモンを作り出すことが可能です。しかし、残った甲状腺に小さながんが残る可能性があります。

また、手術では必要に応じて周囲のリンパ節を取り除くリンパ節郭清が行われます。これは、明らかな転移がない場合に予防として行われることがあります。

手術による主な合併症としては、甲状腺ホルモンの分泌不足による甲状腺機能の低下、血中カルシウム濃度の低下による副甲状腺機能の低下、反回神経の麻痺などがあります。これらの合併症は、切除範囲が大きいほどリスクが高まります。

治療方針は医師との十分な相談の上で決定されます。また、手術後の生活についても、医師や看護師からの指導を受け、適切なケアを行うことが重要です。

薬物治療

甲状腺がんの治療法は、患者さんの病状や体の状況により異なります。以下に主な薬物治療について説明します。

TSH抑制療法:TSHとは甲状腺刺激ホルモンのことで、甲状腺を刺激してホルモンの分泌を促進する働きがあります。しかし、同時にがん細胞の増加も促進してしまうため、手術後にTSHの分泌を抑えるために、適切な量の甲状腺ホルモン薬を治療薬として内服することがあります。

分子標的薬:再発や転移した分化がんで放射線性ヨウ素内用療法ができない場合、分子標的薬を使った治療をすることがあります。また、遺伝子検査で特定の遺伝子変異が見つかった場合は、その遺伝子を標的とした分子標的薬も使用されます。

細胞障害性抗がん薬(化学療法):未分化がんの術後の補助療法として、使用されることがあります。ただし、分化がんに対しては用いられません。

放射線治療

甲状腺がんの放射線治療には、内照射(放射性ヨウ素内用療法)と、外照射の2つの主な方法があります。

内照射(放射性ヨウ素内用療法):放射性ヨウ素のカプセルを内服し、体の内部から放射線を照射し、その放射線によってがん細胞を破壊します。治療の目的により、アブレーション、補助療法、治療の3種類があり入院が必要になることもあります。また、治療後の数カ月間は、治療の効果を確認するための検査が行われます。

副作用は、急性期のもの(内服日から数日以内に発生)とそれ以降に生じる後期に分けられます。急性期の副作用は口の中が乾燥する、味覚障害(塩味の低下)が起こることがあります。後期の副作用には、唾液腺障害や涙腺障害による口腔内や目の乾燥、不妊などがあります。また、妊娠や授乳に対する注意事項もありますので、治療を受ける際には医師へ相談してください。

外照射:体の外部から放射線を照射し、その放射線によってがん細胞を破壊します。未分化がんの場合、術後の補助療法や手術ができない場合に外照射が選択されることがあります。また、骨転移による痛みなどの症状緩和が目的で行われることもあります。
副作用は、全身に発生するものと、治療部位に起こる局所的なものがあります。治療中や治療後すぐの短期間であらわれるものと、治療終了後に数カ月から数年にわたりあらわれるものがあります。

「甲状腺がんの原因」についてよくある質問

ここまで甲状腺がんの原因状を紹介しました。ここでは「甲状腺がんの原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

甲状腺がんの予防方法にはどのようなものがありますか?

久高 将太医師久高 将太医師

甲状腺がんの予防には、以下のような生活習慣が効果が期待できます。
禁煙:タバコは多くの種類のがんを引き起こす可能性があります。
節度ある飲酒:適度な飲酒は健康に良い影響を与えることがありますが、過度な飲酒はがんのリスクを高めます。
バランスの良い食事:栄養素をバランス良く摂取することで、体の免疫力を高め、がんのリスクを低減することができます。
適度な運動:定期的な運動は体の健康を維持し、がんのリスクを低減することができます。
また、家族に甲状腺がんの患者さんがいる方や、慢性甲状腺炎(橋本病)に罹患している方は、早めに専門の医療機関で検査を受けることが推奨されています。
さらに、甲状腺がんで手術を受けた後に甲状腺機能が低下している場合は、医師の指示に従い、薬の服用を続けることが重要です。食事は普通に取れますが、大量のヨード摂取は避けるようにしましょう。
これらの予防策を実践することで、甲状腺がんのリスクを低減することが可能です。しかし、これらの予防策が全ての甲状腺がんを防ぐわけではないことを理解しておくことが重要です。健康状態については定期的にチェックし、異常があればすぐに医療専門家に相談することが最善の対策です。

甲状腺がんの検診はありますか?

久高 将太医師久高 将太医師

現在、甲状腺がんに対する公式ながん検診のガイドラインは存在しません。しかし、一部の医療機関では「甲状腺がんの検診」を提供しているところもあります。これらの検診では、甲状腺超音波検査と甲状腺ホルモン値の採血検査を組み合わせて診断を行います。
これにより、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)、橋本病(甲状腺機能低下症)、甲状腺がんなどを発見することが可能です。
ただし、これらの検診は、症状がない健康な方を対象に行われるもので、がんの診断や治療が終わった後の検査とは異なります。何か症状がある場合や、特定のリスクがある場合には、早めに医療機関を受診することが推奨されています。

編集部まとめ

ここまで甲状腺がんの原因についてお伝えしてきました。甲状腺がんの原因についての要点をまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

  • ・甲状腺がんとは、甲状腺という小さな臓器に発生する悪性の腫瘍
  • ・甲状腺がんは、悪性度の高いものから低いものまでいくつかの種類に分類され、全体の約90%を占めるのは乳頭がんである
  • ・甲状腺がんのはっきりとした原因はまだわかっていないが、放射線被爆や遺伝がその一因と考えられており、治療方法として外科手術、薬物治療、放射線治療が一般的に選択されている

「甲状腺がん」と関連する病気

「甲状腺がん」と関連する病気は1個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内分泌科の病気

甲状腺がんと同じような症状をおこす病気もこれほどあります。なかなか自己判断は難しいので、症状が続く場合はぜひ一度医療機関を受診してください。

「甲状腺がん」と関連する症状

「甲状腺がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • しこり
  • 声のかすれ
  • 痛み
  • 飲み込みにくい
  • 誤嚥
  • 血痰
  • 呼吸困難

これらの症状が当てはまる場合には、甲状腺がんなどの異常の有無を確認するべく、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師