「低髄液圧症候群」を発症すると現れる症状・治療法はご存知ですか?医師が監修!
低髄液圧症候群という病気をご存知でしょうか?
体内の硬膜という脳と脊髄を覆う3層の髄膜の一番外側にある膜の中にある髄液が硬膜外に漏れ出すことでなる病気です。
髄液が漏れ出す原因は交通事故での鞭打ち症・転倒などさまざまあります。また脊椎の手術を受けたことある方も発症することがあるようです。
この病気は主に起立性の頭痛を引き起こします。また起立性の頭痛以外にも多様な症状があり、低髄液圧症候群の可能性があっても、そう診断されない場合もあるようです。
患者数があまり多くなく、珍しい病気になります。そのため未だに解明されていないことが多いのも現実です。
低髄液圧症候群についての正しい知識を持つことで、予防につながりますのでぜひご参考にしてみてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
低髄液圧症候群の原因や症状
髄液とはどのようなものですか?
100〜150ミリリットルあり全体の半分が脳、残り半分が脊髄の中にあります。硬膜という袋の中を満たしていて、脳や脊髄などの大切な中枢神経を保持・保護するのが主な役割です。
硬膜とは大脳・小脳・脊髄を覆う複雑な形をしたもので、硬膜内を満たす髄液が外に漏れ出すと、全体の量が少なくなり硬膜内の圧が低下し、頭痛などを引き起こします。
低髄液圧症候群とはどのような病気ですか?
外傷直後に発症するわけではなく、通常30分後など時間を空けてから頭痛などの症状が現れます。手術等で硬膜外に麻酔薬を注射したり検査目的で髄液を採取したりした際に、穿刺部位から髄液が漏れ出すこともあるようです。
原因について教えてください。
髄液圧が低くなる原因として、交通事故による鞭打ち症と深い関わりがあります。交通事故の鞭打ち症以外にも、スポーツの外傷・転倒・転落なども低髄液圧症候群の原因となることが多いようです。
また稀に腰椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症を患った人・あるいは脊椎の手術を受けた人も注意が必要です。過去の外傷や穿刺部分から髄液が漏れ出している場合もあります。これらのものは外傷性低髄液圧症候群と呼ばれていますが、誘因するものがない場合もあり特発性低髄液圧症候群と呼ばれています。
症状について教えてください。
他にも吐き気や嘔吐・目のぼやけ・四肢の筋力低下及び痺れなど身体の至るところに痛みや違和感を覚える症状があるようです。脳や脊髄を保護しているものですので、ひどい場合ですと顔面神経麻痺・顔面のけいれん・嗅覚・味覚障害など日常生活が困難になってしまうこともあります。
女性の方にたまに見られる症状で、生理不順・無月経などが認められることもあるようです。これらの症状の他にも、精神的・心理的症状を伴うこともあるようです。人によって多様な症状があるので、一概にこれらの症状だけとは断言できません。
低髄液圧症候群の検査内容や治療方法
低髄液圧症候群の検査内容を教えてください。
RI検査は放射性医薬品を体内に投与して、病気の診断を行う検査です。放射性医薬品を投与し硬膜内の漏出箇所を探るために行われます。
髄液の漏出が見られる場合・投与してから早期に膀胱に貯留が認められる場合は髄液が漏出していると判断して、低髄液圧症候群と診断されます。他にもCTミエログラフィーやMRミエログラフィーが用いられることもあるようです。
低髄液圧症候群の治療方法は?
安静にするだけではなく、普段の生活で筋力トレーニングをしない・重いものは持たない・強く鼻をかまないなどのことにも注意が必要になります。硬膜外腔生理食塩水持続注入は、保存的治療で改善が見られなかった場合に行われる治療法です。
硬膜外腔にチューブを挿入し生理食塩水を持続的に注入し、髄液の漏出を抑える方法です。生理食塩水を注入するので、自己血よりも安全とされています。
手術が行われることもあるのですか?
これは漏出が認められている部位の近傍で経皮的に硬膜の外側に入れた穿刺針から患者様ご自身の血液を注入し、血液によって髄液の漏出を防ぐ方法です。初回の手術で効果が認められない場合、複数回にわたって行い改善を促します。
比較的安全な手術ではありますが、人によっては副作用が起きる場合があります。急激な頭蓋内圧の上昇による頭痛・背部痛・腰痛などがありますが、大抵の場合は一過性の症状です。
低髄液圧症候群の保険適用と医療機関
低髄液圧症候群の治療は保険が適用されますか?
低髄液圧症候群の治療を行っている医療機関の探し方は?
そのためまずはかかりつけ医に相談してみましょう。ご自身の体調を一番よくわかっている医師に尋ねてみることで適切な医療機関を紹介してくれます。
相談する場合は、明確にご自身の症状を伝えてください。例えば転倒した後に頭痛がするようになったなどと伝えると、的確な処置をしてくれます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
治療方法に関しても、一度で完治する方もいれば二回三回と治療を行わないと完治しない患者様もいらっしゃいます。またごく稀に硬膜下血腫などが発症することがあるようです。
日常生活で気をつけることとすれば、交通事故による鞭打ち症やスポーツ外傷のような怪我をしないことが第一ですが、事故はいつでも起こり得るものです。また加齢によって筋力が衰えている方は、転倒にも注意しましょう。
編集部まとめ
低髄液圧症候群について解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか?
低髄液圧症候群はまだ未解明な部分が多く、症状も人によって多岐にわたります。たとえ転倒しないように気をつけていたとしても、交通事故などは予見できません。
また主な症状が頭痛のみなので、他人には理解されにくい病気でもあります。
もし長期的に治らない頭痛や起き上がった際に頭痛が起きる場合は、低髄液圧症候群かもしれません。無理をすると別の病気を併発したり、症状が悪化したりする可能性があるので医療機関に速やかに受診してください。