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「レプトスピラ症」という感染症はご存じですか?感染経路や症状について解説!

 公開日:2023/08/14
「レプトスピラ症」という感染症はご存じですか?感染経路や症状について解説!

レプトスピラ症といわれてもどのような病気か見当がつかない方も多いでしょう。しかしこの病気は実のところ、日本国内でも確認されている症状でもあります。

今回は意外と身近にみられるレプトスピラ症について、感染経路や対処法などをまとめながら紹介していきます。

行楽シーズンや海外旅行で海外に赴く前にはこの記事を一読していただけると、いざという時のための行動がしやすくなるのではないでしょうか。

ぜひ参考にしていただけたら幸いです。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

レプトスピラ症の症状と感染経路

ネズミ

レプトスピラ症の症状を教えてください。

レプトスピラ症にかかると、風邪をひいたかのような軽症型のものから黄疸・出血・腎障害などを引き起こす重症型(ワイル病)まで様々な症状が起こります。初期症状では38℃台の高熱・悪寒・結膜充血などがあり、特に腓腹筋(ヒラメ筋の外側にある筋肉)の痛みが特徴的です。
症状は3〜14日の無症状の潜伏期間経過後に顕在するようになり、発熱・悪寒・各箇所の痛み・結膜の充血が生じ、重症化すると黄疸・出血・腎障害が現れるようになります。これらは4〜6日経つと次第に強く出現するでしょう。
出血箇所については、皮膚の下や鼻血のようなものから肺出血に至るまで広範囲にわたります。重症型については適切な治療がされなかった場合の致死率は2〜3割程度です。軽症で済んだ方の予後は良好ですので、該当する症状があれば医師の適切な治療を受けましょう。
初期のレプトスピラ症は、症状が風邪とよく似ているので初見だと見逃されやすいことが多いです。風邪だからと自己判断で市販の感冒症状に使われる内服薬を使うのではなく、症状が出ている状態であれば受診する必要がありますので、まずは最寄りの保健所に相談しましょう。

感染経路を教えてください。

主な感染経路としては、レプトスピラ菌を保菌しているネズミ・犬・馬・家畜類などの哺乳類の尿が排泄された後、それが流れ着いた下水・河川・土壌に付着し数週間にわたり水や土が汚染されます。そしてその感染している水や土に触れること(経皮感染)でレプトスピラ症に感染するのです。
また稀に汚染された飲食物から経口摂取により感染したり、さらに珍しいことですが尿を介して人から人へ感染したりするケースもみられます。

どの地域で流行していますか?

レプトスピラ症は世界で発生しており推定感染国はブラジル・ニカラグアなどの南米や、インドネシア・タイ・マレーシアなどのアジアまで、広い視野でみると熱帯・亜熱帯地域で多くみられます。
しかし日本でもレプトスピラ菌の感染は、2016年までに30都府県で症例が上がっており、現在でも沖縄で散発的な発生が確認されあまり珍しい感染症とはいえません。このことから病原体は国内にも広く分布しているものと思われます。

レプトスピラ症の発生状況を教えてください。

レプトスピラ症にかかる理由としては、保菌動物の尿に汚染された水と土に触れることと、流行している地域へ旅行したこととされます。そのほかにも農作業でのネズミとの接触により感染したとの報告も多いです。
国内で罹患する場合は、大雨や洪水後の特に汚染水が溜まる環境でネズミに遭う機会が増加し、罹患する傾向にあります。国内でも度々レプトスピラ症が起こる背景にはこのような自然災害によるところがあるといえるでしょう。
もし大雨や洪水を体験するようなことがあれば、よりレプトスピラ症のような感染症に注意すべきです。

レプトスピラ症の診断と治療

専門書を読む医師

レプトスピラ症はどのように診断されますか?

血液・髄液・尿を用いての分離培養を行いますが、こちらの検査を行う前に専用の培地を必要とします。検査は血液・髄液・尿を用いたレプトスピラ遺伝子の検出と顕微鏡下凝集試験法のペア血清を用いた抗体の検出が診断材料の方法です。
手法としては、まずレプトスピラ菌の分離を試みます。分離の培養には抗菌薬投与前の発熱していた時期の血液を使用し、採血後レプトスピラ培養培地に加えて30℃で数日から1ヶ月静置します。レプトスピラ菌は、顕微鏡を使うとひも状らせん型の回転する菌体として確認が可能です。
次に血清診断法を行います。顕微鏡下凝集試験法による、ペア血清(急性期と回復期の2点の血清を測定し抗体値が陽転か有意上昇するかで診断する方法)を用いたレプトスピラ菌の血清型の特異的な抗体の検出が確定診断には重要なポイントです。
ちなみに陽性とされるのはペア血清にて4倍以上の抗体価上昇が確認できた場合となります。またレプトスピラ菌は地域によって流行している血清型に違いがみられ、その数およそ230以上と決して少ないとはいえません。その中で、血清型を見極めるためのスクリーニング方法にはマイクロカプセル凝集法などの方法がとられます。
最後にレプトスピラ遺伝子のPCR検査による検出で、レプトスピラの16SrRNA遺伝子や構成成分の一つのflaB遺伝子などが検出されるとレプトスピラ菌に感染しているとの診断ができるのです。

潜伏期間を教えてください。

通常であれば、疑わしい症状が出るまで平均して5日から2週間程度(まれに〜3週間)かかります。感染していたら角膜充血や腓腹筋の痛みなどの特徴的な症状が出てくると思われますが、そのほかにも発熱等が確認でき、渡航地域も該当するのであれば保健所に直接連絡を入れるようにしましょう。

治療方法を教えてください。

抗菌薬の投与が治療の主体です。一般的にドキシサイクリンの内服、重症だとペニシリン系の静脈注射が行なわれます。しかしペニシリンを用いる際に、抗菌薬を投与したことによってレプトスピラ症菌体が破壊されて起こる発熱・倦怠感・低血圧・熱によるショック症状が確認される場合が出てくるでしょう。
これらはペニシリン投与の後、数時間で反応がみられ通常24時間で軽快します。

レプトスピラ症の対処法

ゴム手袋

レプトスピラ症の対処法を教えてください。

東南アジアなどではレプトスピラ症の流行は多雨期から収穫期(7月から10月)に集中することが確認されています。感染しないために大切なことは、流行地域で不要な水の出入りはしないこと(特に洪水後)と、どうしても浸からないといけない場合はゴムの長靴や手袋を着用することです。
治療薬としてドキシサイクリンと呼ばれる抗菌薬の内服も予防効果が見込めますが、長期間の服用は耐性菌を生成する可能性が出てくるので治療が終わったら内服をやめましょう。

予防ワクチンや抗菌薬はあるのでしょうか?

人に有効なワクチンとしては4つの血清型の不活性化全菌体ワクチンが製造されていました。しかしレプトスピラ症に対する免疫は血清型によるところがあり、それに加えてワクチンに含まれていない血清型の感染に対する予防の効果はわからないため、現在は作られていません。
そのため、ドキシサイクリンのような抗菌薬を投与しての治療が主流です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

レプトスピラ症は適切な治療を施せるうえに回復できる症状でもあるので、必要以上に恐れないことも大切といえるでしょう。現在日本において、レプトスピラ症は日本脳炎やA型肺炎に並ぶ4類感染症とされているので、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届出を出さないといけない決まりとなっています。
またレプトスピラ症に罹患していても無症状の患者さんもまれに見掛けます。症状が顕在していなくとも保菌している可能性はあるので、同じように届出をすることが必要です。周りで海外旅行に行ってレプトスピラ症に感染した人がおり、かつ症状は出ていないけれど気になる方は保健所に相談することも賢明といえるでしょう。

編集部まとめ

女性医師
ここまでレプトスピラ症について紹介してきました。

諸症状も風邪に類似しているため、一見風邪かと勘違いしてしまいそうです。

しかし深刻化すると命に危険が及ぶことも十分にあり得ますので、体調の変化にはくれぐれも注意しましょう。

海外で汚染されている水や土に触れるとかかるものかと思われがちですが、実は日本でも感染が確認されています。

日本では、洪水などの自然災害の後は水にそのまま入らないこと・入るときはゴム手袋などの対策を取ることが予防の条件といえます。

該当地域から帰国した場合で特徴的な症状が現れてきたら、一度保健所や医師の診察を受けましょう。

この記事の監修医師