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「高山病」の予防方法や症状・原因・対策法はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/07/28
「高山病」の予防方法や症状・原因・対策法はご存知ですか?医師が監修!

幅広い年代の方に親しまれている登山や、海外の高地へ旅行を計画する際に話題になるのが高山病です。

標高の高い場所を訪れる際には、低地とは違った基準で準備を進めたり計画を立てたりする必要が出てきます。

高地で安全に楽しく過ごすためには、気をつけるべきことが多々あります。その中の一つに含まれるのが高山病です。

高山病がどのような病気か事前に知っておくことで、滞在中に高山病にかからないよう対策を取れるでしょう。

本記事では高山病が発症する原因や症状を解説していくとともに、予防方法についても紹介していきます。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

高山病の原因と症状

山を眺める人

高山病はどのような病気ですか?

高山病は標高の高い山や場所で発症しやすい病気です。一般的に高度が上がるにつれて、気圧は下がっていきます。気圧が下がることで酸素が少なくなり、体の中は低酸素状態を引き起こします。酸素不足の状態に体が対処しきれなくなると、頭痛や吐き気として現れるのが高山病です。
数日で回復する軽度のものもあれば、救急医療が必要とされる「高地肺水腫・脳浮腫」や「急性低酸素症」のような重症を招いてしまうものもあります。高山病は標高2,500m以上になると発症する確率が高くなるでしょう。
しかし、高山病は登山のみで発症するわけではありません。マチュピチュなど海外の観光地でも標高の高い場所はあるので、海外旅行で標高の高い地域へ行く際にも発症するおそれがあります。

原因を教えてください。

高山病は酸素の少ない高地に体が十分適応していない状態で発症しやすい病気です。登山を例に挙げると、高地の環境に適応していないにもかかわらず、一気に頂上まで登ってしまうと発症を招いてしまいます。
また高山病の原因は高地での酸素不足だけでなく、高度が上がるにつれて気温が低下することも挙げられるでしょう。一般的に標高が1,000m上がると、気温は6.5度下がるとされています。
特に高山では気温が平地より低くなるため、そのような環境での行動は体力が奪われ、高山病を発症しやすくなります。

症状を教えてください。

高山病の症状は一見すると、ごくありふれたものと思われがちです。しかし普段と違う環境下で発症するので、体には普段よりも大きなダメージとして影響を受ける可能性があります。

  • 頭痛
  • 吐き気
  • 手足のむくみ
  • めまい
  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • 不眠
  • 意識低下
  • 呼吸困難

急激に高地へ移動した際に頭痛が起こり、頭痛薬を服用しても症状が改善されない場合は高山病の発症とされています。また、頭痛だけでなく上記の症状が併発する可能性も高いです。高地に体を適応させる期間に上記の症状が出る場合がありますが、軽度の場合はこの期間に治っていくことがほとんどです。
しかし、症状が出ているにもかかわらず、無理をすると「高地肺水腫」や「高地脳浮腫」に進行するおそれがあります。高山病の疑いが出始め、数日経っても治らない場合は注意が必要です。

高山病になりやすいのはどのような人ですか?

高山病は誰もが発症するのかどうか、特に登山をされる方は気になるところでしょう。高山病の発症は高地での環境に適応できるかによりますが、この環境への適応は個人の体質や持病の有無で違いが生じてきます。
高地では酸素をいかに体内に取り込めるかが鍵になってくるので、睡眠時無呼吸症候群のような疾患を抱えている方は、高山病になりやすいとされています。また体力が消耗しやすい高地で行動する際には、万全の体調であることも重要です。
特定の疾患を抱えていなくても、睡眠不足や軽い風邪をひいていると高山病になりやすく、場合によっては重症化するケースがあります。

高山病の治療方法

薬 包装シート14

高山病の診断方法を教えてください。

高山病の主な症状は頭痛やめまいといった、ごくありふれた症状ともいえます。標高の高い地域や山の上では発症が疑われても、すぐに医療機関へ行けません。
高山病かどうかの診断方法がわかれば、いざという時に落ち着いて対処ができるでしょう。高山病は、高地に到達してから数時間後から3日くらいの間に、頭痛に加えて、めまい・吐き気・嘔吐・不眠などの症状が現れた場合に診断されることが多いです。
特に高地の環境に適応する期間を設けず一気に標高の高い所へ到達し、このような症状が出た場合は高山病の確率が高いです。また、高地に体を慣らしている間に症状が現れるケースもあります。この場合の診断基準も同様ですが、軽症であれば数日で症状は治ります。

治療方法を教えてください。

高山病の治療方法は症状の程度で対応が異なってきます。まず症状が出た地点で、それ以上高度を上げずに、安静にすると良いでしょう。なお、その場合は体を温めて、水分補給を忘れずに行ってください。
また頭痛薬の服用も頭痛を軽減させるのに役立ちます。一般的に軽度の高山病であれば、半日から数日で症状が回復していきます。軽症の場合は旅程を気にするあまり、安静にしていられないという方がいるかもしれません。
しかし、一番の治療方法は安静にすることです。一方安静にしても症状の改善が見られなかったり、重度な症状が発症したりする場合は、酸素吸入を行いつつ速やかに下山してください。「高地肺水腫」や「高地脳浮腫」の疑いがあるようでしたら、高地では酸素吸入で絶対安静のうえ、直ちに下山し低地での救急治療が必要となります。

高山病で死亡することはありますか?

高山病は軽度の場合、適切な対応を取れば、長くても数日以内で症状は改善していきます。高地で高山病にならないよう体を慣らす期間に症状が出る場合もありますが、こちらも安静にして休息を取ることで一晩程度で回復することが多いです。
しかし症状が出ているにもかかわらず一気に高度を上げてしまうと、重度の高山病だけでなく「高地肺水腫」や「高地脳浮腫」を発症するおそれがあります。
「高地肺水腫」や「高地脳浮腫」のように救急治療が必要な症状が出ている場合にそのまま高地に留まると、さらなる重症化を招き死亡するケースもあるでしょう。

高山病の予防

夏山登山

高山病予防のためにはどのような旅程を組むとよいですか?

高山病の予防に不可欠なのが、体を高地の環境に慣らすことです。そのためには登山や観光にプラスして、高地への適応期間を設けるのをおすすめします。体が高地に適応するのに大体2〜5日かかるとされています。
特に2,500m以上の高地を訪れる場合は可能な限り、高地に到着してからしばらく体を慣らしたうえで、次の旅程に進むと良いでしょう。また高度を上げる際には一気に上げるのではなく、徐々に上がっていくような旅程であれば、高山病予防に繋がります。特に登山の場合は疲労から高山病を招くケースもあるので、無理のない旅程を組むことで高山病に繋がる原因を減らせます。
中には、余裕を持った日数で旅程を組むことが難しい方がいるかもしれません。しかし、少し日程を追加するだけで、高山病のリスクは減らせるのです。

高山病にならないための対策方法を教えてください。

高山病になってしまうと、せっかくの計画が楽しめなくなってしまうだけでなく、症状によっては目的を達成できない場合があるかもしれません。高山病は少しの注意で避けられる病気でもあります。登山でも高地への旅行であっても、次の点は避けるべきです。

  • 睡眠不足
  • 過剰な飲酒
  • 睡眠薬の使用

高地では酸素が少ないため、低地よりも体力が奪われやすいです。上記のような、コンディションを崩しやすくなる原因や高山病を招きやすい要因が加わると、発症の確率が高くなるでしょう。
また、高地では体から水分が奪われやすいので、十分な水分を小まめに摂取するのをおすすめします。さらに、空気の薄い高地では呼吸の仕方も重要になってきます。浅い呼吸にならないよう、深く吐いて吸う腹式呼吸を意識すると良いでしょう。
これらのような予防方法に加えて、高山病予防薬の服用も効果が期待されます。特に2,800m以上の高地に1日で到達するような旅程の際には、事前に服用すると良いでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

高山病は個人の体質やコンディションによって発症の有無が左右され、予測が難しい病気です。しかし事前に高山病の原因や予防方法を知っておくことで、発症を抑えるだけでなく、いざ高山病になってしまっても落ち着いて対処ができるでしょう。
高山病にならないためにも、事前の準備と余裕ある旅程を組むことをおすすめします。また、高山病になりやすい体質かどうか、登山や渡航前に体調チェックも兼ねた登山者検診を受診するのも良いでしょう。検診では高地に適した指導が受けられるので、健康面に不安がある方は一度受診されてみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

達成 登山
ここまで高山病の発症原因・症状・予防方法について解説してきました。

高山病は頭痛といった身近な症状で現れるので、そのまま我慢して過ごしてしまうかもしれません。

しかし高地は低地と違う環境なので、少しの異変を見逃すと重症化に繋がるおそれがあります。

標高の高い地域への旅行や登山前には、本記事で高山病についての知識を確認して、安全で楽しい時間をお過ごしください。

この記事の監修医師

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