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「本態性振戦」の症状や原因を解説!体が規則的に震えることはありませんか?

 公開日:2023/08/14
「本態性振戦」の症状や原因を解説!体が規則的に震えることはありませんか?

急に体が規則的にふるえ始めるとご自身の体ではないような感じがして、怖くなる方も多いのではないでしょうか。

原因が分からず、決まった姿勢をとったときや文字を書こうとすると手を中心に体がふるえ始めるのであれば、それは本態性振戦かもしれません。

体が規則的にふるえる現象は、病気の中では最もよくみられる症状です。

高齢者に多く見られますが、若年者にも見られることがあります。

本記事では本態性振戦とはどういった病気なのか・発症する原因・症状と見分け方・治療方法・予防対策について紹介していきます。

ぜひ、一読してみてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

本態性振戦の症状と原因

寒い女性

本態性振戦はどのような病気ですか?

原因がわからない本態性といわれる、規則的な体のふるえ(不随意運動)を生じる病気のことです。症状としてはふるえだけが現れることが多いとされています。
そのふるえの度合いは軽度なものから始まり加齢とともに重度になりやすく、主に成人期に発症します。しかし、どの年齢層でも発症が起こり、高齢になるほどふるえの症状は日常生活に支障をきたすことが多いです。
体のふるえがみられる部位は手だけでなく、頭部・顔面・声帯・足など個人差があります。不随意運動である体のふるえは、通常自身の意思で制御できないことが特徴です。そのため、無意識で行う運動を自動運動ともいいます。

本態性振戦の症状を教えてください。

本態性振戦はさまざまな場面でその症状が見られます。

  • 緊張状態にあるとき
  • 姿勢を一定に保つとき
  • 文字を書こうとしたとき
  • 食器を扱おうとしたとき
  • 食事をしようとしたとき
  • 集中するとき

安静にしているときには体がふるえないことも特徴の一つです。何かを行動に移そうとすると、体がふるえてしまうため日常生活に支障をきたしてしまいます。
また片手だけでなく、両手にふるえがくることが多いです。

本態性振戦の原因を教えてください。

本態性振戦を発症する原因は、現在でも不明とされており研究が進められています。また、50〜70代で約2.5〜10%の割合で発症が確認されています。
発症年齢のピークは、20代と60代の約2回とされていて個人差が比較的大きいです。生理的なストレスを感じることで体のふるえは強くなっていくことが分かっています。そのため、ストレスには注意が必要です。

ふるえの種類の見分け方はあるのでしょうか?

体のふるえにはいくつか種類があります。まず安静時振戦はリラックス状態にあるときにみられる体のふるえで、一般的に動作をしているときにふるえは弱まる傾向で、パーキンソン病が代表的な疾患です。
姿勢時振戦はリラックス状態のときは体のふるえはみられませんが、姿勢を一定に保とうとするとふるえが起こります。軽度なものから徐々に本態性振戦を発症するか、急激に発症する疾患としては中毒性や代謝性障害が多いです。
ほかにも運動開始直後から不規則な体のふるえが起きて運動が終わると体のふるえが止まる動作時振戦や、目標に向けて行動すると体のふるえが増して目標への姿勢を崩すまで不規則に体がふるえる企図振戦があります。動作時と企図振戦には小脳失調の可能性が多いです。
また、脳血管障害や測定障害など小脳に関わる病気が多いとされています。

本態性振戦は遺伝しますか?

本態性振戦は家庭内発症が多くみられており、遺伝的な関与も多くあるとされています。
さらに、頭部を画像検査しても異常が見られないことが多く、老化によって顕著に症状がみられますが原因は不明です。そのため、現在も研究が進められています。

本態性振戦の診断と治療方法

診察

本態性振戦の診断方法を教えてください。

体のふるえはさまざまな病気の症状にもみられるため、本態性振戦であるかどうかは神経内科で専門医の診察とカウンセリングを受けたうえで診断されます。
体のふるえが起こる病気として、甲状腺機能亢進症・てんかん・パーキンソン病の可能性もあるため、血液検査・脳波検査・頭部MRIなどの核医学検査を行う場合も多いです。どのような状態のときに体のふるえが起きるのか、どういった状態になると体のふるえが強くなるのかを把握しておきましょう。

本態性振戦の治療方法を教えてください。

まずは、ストレスをなくすための生活改善が非常に大切です。不安や緊張の増加に伴って体のふるえも強くなります。そのため、ストレスを緩和するための生活指導が入る場合も多いです。
文字を書こうとすると体のふるえが起きる場合は、太いペンを使用するなどの工夫をすることで日常生活の支障を軽減することが可能となります。症状が中等度の場合は、薬物療法を検討することが多いです。
薬物療法ではまず、「β遮断薬:ベータ・ブロッカー(アロチノロール)」を使用することが多いです。喘息などで使用できない場合は、抗不安剤・抗てんかん薬が使われます。根本的な治療法はまだ見つかっていないため、症状を減らすことを目的としています。
ただし、薬物療法はその副作用として眠気やふらつきを感じることが多いです。薬を使用する際は、医師の指示をしっかり守ったうえで服用しましょう。

手術の必要はあるのでしょうか?

症状が重度で薬物療法でも改善がみられない場合は、手術療法を行う場合もあります。ほかにもボツリヌス毒素治療・視床電極刺激療法・MRガイド下集束超音波療法といった治療方法が一般的です。
手術療法は治療効果が高いとされていますが、合併症などのリスクもあります。その点、視床電極刺激療法であれば合併症の発症リスクを低減できますが、管理面が複雑なため費用が高いです。
新しい治療方法として期待を集めているのは、MRガイド下集束超音波療法になります。標的領域に超音波を照射することで、50〜60度の熱により体のふるえを起こす原因となる組織を破壊させる方法です。重度の本態性振戦患者にMRガイド下集束超音波療法を行ったところ、大きな副作用もなく十分な治療効果を発揮しています。
ところが、高齢の女性は頭蓋骨の骨密度が高いため超音波が通りにくいことがデメリットです。しかし、十分な治療効果を得られていることからもパーキンソン病にも適用できると期待されています。手術療法以外にもやり方はありますので、担当医と相談して治療方法を決めていきましょう。

本態性振戦の対策

座る人

自分でできる対策方法を教えてください。

「本態性振戦の治療方法を教えてください」でも記述していますが、症状が軽度なのであればまずはストレス対策を行うことが非常に大切です。不安を少なくすることで症状も軽減できます。
また、適度なアルコールの摂取でも症状の改善報告が多いです。反対に、精神的ストレス・過度な運動・カフェインの摂取は体のふるえを増強してしまうため注意しましょう。

本態性振戦を放っておくとどうなりますか?

症状が重症であるにもかかわらず放っておいてしまうと、心不全・心機能障害・認知症などの合併症を引き起こす可能性が高まります。特に高齢者になると本態性振戦の発症率が高くなるだけでなく、症状の進行速度が速いため合併症のリスクも上がることを覚えておいてください。
合併症を引き起こしてしまった場合は、薬物療法や手術療法など慎重に適切な対応が必要となるため注意しましょう。体のふるえで日常生活に支障をきたすのであれば、必ず医師に相談することをおすすめします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

ご自身の体がふるえ出してコントロールできなくなると、不安や憤りを感じる方が多いでしょう。はじめは軽度であっても時間の経過とともに重度へと症状が進行してしまいます。
近年では、MRガイド下集束超音波療法のように副作用も少ない治療方法もありますので、違和感を覚えたら神経内科の専門医に相談してみてください。

編集部まとめ

医療従事者
今回は、体がご自身の意思とは関係なくふるえてしまう本態性振戦について詳しくお伝えしていきました。

本態性振戦の発症リスクは、20代と60代が発症ピークとされていて高齢者ほど症状の進行が速い病気です。

また、体のふるえを放っておくと心不全や心機能障害などを引き起こしてしまいます。

症状が軽症であれば、ストレスの低減や生活改善で症状の緩和へつなげることもできるため早めの対応が大切です。

ご自身の体が意思とは関係なくふるえてしまう方は、すみやかに神経内科へ受診しましょう。

この記事の監修医師