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「ジストニア」を医師が監修!自分の意思に関係なく体が動くことはありませんか?

 更新日:2023/07/04
「ジストニア」を医師が監修!自分の意思に関係なく体が動くことはありませんか?

自分の意思に関係なく体が動いてしまう現象を不随意運動と呼びます。

手が震えたり顔の一部がヒクヒクしたりといった軽微なものから、全身が大きく動いてしまうようなものまで様々です。

この記事では不随意運動が起こる原因のひとつと考えられているジストニアについて解説します。

ご自身やご家族などがこういった症状で悩んでいる場合、クリニックを受診する前の予備知識として頂ければ幸いです。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

ジストニアの症状と原因

男性がボディケアやスキンケアをする

ジストニアとはどのような病気ですか?

ジストニアという病名を聞いたことがある方はさほど多くないかもしれません。ジストニアは多岐にわたる不随意運動の一種で、全身のあらゆる筋肉に発症する可能性があります。
筋肉や骨に異常がないにもかかわらず全身あるいは体の一部がねじれたり固まったりふるえたりして思い通りに動かないなどがジストニアの代表的な症状です。
原因が明らかでないものや遺伝による一次性ジストニアと他の疾患や外傷などに関連して発生する二次性ジストニアに分類されます。

パーキンソン病との違いを教えてください。

不随意運動を伴う疾患の代表ともいえるパーキンソン病の原因は、脳の黒質という部分の神経細胞が減少するためだといわれています。黒質は体の動作をスムーズにするドーパミンという物質を作っているのですが、黒質の神経細胞が減少するとドーパミンの産生量も減少しパーキンソン病を発症するのです。
パーキンソン病の主たる症状として不規則に繰り返すような全身運動があげられますが、この運動はジスキネジアと呼ばれ筋肉の緊張を主とするジストニアとは対照的といえるでしょう。
しかしながらパーキンソン病とジストニアは明確に分類されるものではなく、パーキンソン病の症状としてジストニアが発症するといった関係性も持っています。

どのような症状がみられますか?

体の一部に不随意運動が起こるのが局所性ジストニアです。両眼のまぶたが閉じてしまう眼瞼痙攣(がんけんけいれん)をはじめ、首が勝手に傾いてしまう痙性斜頸(けいせいしゃけい)などがあります。
字を書く際に手がこわばる書痙(しょけい)のように、ある特定の活動や作業のときにのみ出現するものもあります。
その一方で体幹部や四肢がねじれたり反り返ったりなど、不随意運動が体の様々な部位で現れる状態が全身性ジストニアです。

発症の原因を教えてください。

ジストニアが発症する原因は一次性ジストニアと二次性ジストニアで異なります。
一次性ジストニアはさらに原因不明の突発性ジストニアと遺伝子の影響によって発症する遺伝性ジストニアに分類され、その多くは全身性ジストニアであるのが特徴です。
二次性ジストニアとしてはパーキンソン病・ウィルソン病・代謝性疾患・神経変性疾患・脳炎・脳卒中・脳性まひなど大脳基底核に関係する疾患の既往患者に発生する続発性ジストニアがあげられます。
また統合失調症・うつ病など精神疾患の治療薬などに関連して起こる遅発性・薬剤性ジストニア、交通事故などでの外傷を原因とした外傷性ジストニアも二次性ジストニアです。

ジストニアになりやすい人の特徴を教えてください。

ジストニアは反復訓練による繊細な動作を必要とする、以下のような職業の人によくみられる疾患です。

  • 音楽家
  • スポーツ選手
  • 美容師
  • 大工
  • 画家
  • 歯医者
  • 時計修理士

これら特定の職業を原因として発症するジストニアを職業性ジストニアとして分類する研究者もいます。なお遺伝性ジストニアはその名の通り原則として遺伝しますが、家族内にジストニアの患者がいることは比較的少ないといわれています。
その理由としては遺伝子を持っていても発症しなかったり、発症していても見かけが異なったりごく軽症のため気づかなかったりといった例が考えられるでしょう。

ジストニアの受診と治療方法

整体院に肩こりの治療にきた患者と整体師

受診するべき初期症状はありますか?

例えば肩こりが1ヶ月以上続く場合、軽度のジストニアである可能性があります。特に頭が右方向にだけ回しにくいなどの左右差がある場合は要注意です。
ドライアイのような症状があって、異常なまぶしさを感じる場合は眼瞼痙攣が疑われます。長い文章を書くと手が疲れるとか、文字は書けないがお箸は問題なく使えるなどの症状には初期の書痙である可能性があります。
その他、本記事で解説したような特徴を持つ不随意運動や姿勢の異常が認められたときは早期に受診するべきです

ジストニアを疑う場合は何科を受診しますか?

ジストニアの症状は筋肉に現れますが、ここまで解説した通り実は脳の疾患です。従ってジストニアの発症が疑われる場合、脳神経外科・脳神経内科などの受診をおすすめします。

どのような検査でジストニアと診断されますか?

まずは問診を行います。診察室で症状が出ないこともあるため、症状が出ているときの様子をスマホなどで動画撮影し医師に見せるとよいでしょう。
若年の方や家族にジストニア患者がいる場合は遺伝性ジストニアが疑われるため遺伝子検査を行います。また二次性ジストニアかどうかを判断するため頭部や頸部の画像診断を行なう場合もあります。
こういった検査で異常が認められない場合にその原因が身体的なものか心理的なものかを鑑別する検査がないなど、ジストニアの診断には困難な点が多いのが実情です。

ジストニアの治療方法を教えてください。

まずはレボドパ製剤や抗コリン剤などを用いた内服治療が検討されます。
次に局所性ジストニアに対してはボツリヌス毒素療法が有効とされています。ボツリヌス毒素療法は神経毒であるボツリヌス毒素を人体に悪影響がない程度に薄め、症状が出ている筋肉に直接注射する方法です。
一般的に2~4ヶ月で効果が切れるため繰り返し注射をしますが、5年ほどで症状が緩和する方もいればボツリヌス毒素に対する抗体が生成され治療効果が弱まって注射量を増やす方もいます。日本では眼瞼痙攣と痙性斜頸に対して保険が適用されますので、治療前に確認しましょう。
内服治療・ボツリヌス毒素療法の効果が出ない患者や全身性ジストニアの患者には定位脳手術を選択することがあります。
定位脳手術とは問題が起きている脳の深部に対し電気的刺激を与える・神経を切断する・熱で凝固させるといった施術です。それぞれの治療法に副作用や合併症などのリスクが伴いますので、治療法の選択に際しては納得いくまで医師と相談してください。

ジストニアの進行と注意点

仕事がうまくいかない男性

ジストニアは完治しますか?

ジストニアに対する根治的治療はまだ確立されていないため、症状に対する治療を行うこととなります。定位脳手術は内服治療などに比べれば格段に有効ですが、症状が完全に消失するわけではありません。
ただし薬剤性ジストニアの患者が原因となる薬剤の服用を中止したところほぼ完治したといった例もあります。

ジストニアは進行するのでしょうか?

ジストニアの多くは進行性であり、放置していると症状は悪化することが多いといえます。いずれの治療法を選択するにしても、症状の改善には早期の受診と治療開始が大変重要です。

日常生活での注意点を教えてください。

まずはストレスを避け、体と心になるべく負担がかからないようにしましょう。本記事で紹介したような職業に就いている方は、極力同じ動作や姿勢を続けないことも重要です。
またニコチンはジストニアを悪化させることで知られているため、症状に悩まされている喫煙者は禁煙をおすすめします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

ジストニアによって知的機能障害や感覚機能異常を起こすことはなく、死に至るようなことは少ないでしょう。しかし例えばスポーツ選手や音楽家などがジストニアを発症した場合は「職業人生」が脅かされるともいえます。
そうでなくても字を書く・箸を持つといった日常生活に不可欠な行動が上手くできないという苦痛は相当なものです。決して軽視せず、「何かおかしいな」と感じたらまず医師に相談しましょう

編集部まとめ

手を取り合う女性達
本記事では不随意運動の一種であるジストニアについて解説しました。

現在は脳の疾患であることが明らかになっているジストニアですが、研究が進むまでは心の病と混同されることもあったようです。

コメディアンが老人を演じる際に震えながら声を出したり、ものまねの際に首を傾げる動作を強調したりといった例からもわかるように不随意運動は他人の目には奇異に映りやすいといえるでしょう。

しかしどのような些細なことであっても、自分の体が思うように動かせないのは本人にとって相当の精神的負担であると考えるべきです。

周囲の人がその気持ちに寄り添い、悔しさを分かち合うことによって本人のストレスも緩和されるのではないでしょうか。

また初期症状の段階では本人が気付きにくい場合もあります。

家族や友人などの些細な変化に気付けるよう、普段からお互いに気を配って参りましょう。

この記事の監修医師