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「解離性障害」の症状や原因はご存じですか?周囲の人の接し方についても解説!

 公開日:2023/07/27
「解離性障害」の症状や原因はご存じですか?周囲の人の接し方についても解説!

解離性障害は、意識や記憶などに関して感覚をまとめる能力が一時的または持続的に損なわれることで、個人の意識・アイデンティティ・記憶・感情・知覚・身体感覚などが分離されてしまう精神障害のひとつです。

解離性障害では、特定の場面の記憶が抜け落ちてしまったり、感情の起伏が激しいときに過去の感情がよみがってきたりといった症状がおきます。これらは、普段の生活に影響を与えますので、早めに正しい対処をしたいと考える人も多いことでしょう。

ここでは、解離性障害はどのような症状で、どのように診断を行うかについて説明します。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

解離性障害(かいりせいしょうがい)の原因や症状

悩み事を抱える女性

解離性障害とはどのような病気ですか?

解離性障害は、解離が原因でおこる精神障害で、発症すると社会的・職業的・人間関係構築に大きな影響を与えます。
人は自分の存在を繋がったひとまとまりのものとして認識し記憶しています。これによって、自分自身をどのような人間なのかのイメージを作り上げるのです。しかし、解離性障害の原因である解離によってこれらのイメージが分断され、これまでの体験がひとつのイメージとしてまとまらなくなります。解離とは、意識・記憶・思考・感情・知覚・行動・身体イメージなどが分断されて体験される状態です。
解離によって、特定の場面や時間の記憶が抜け落ちたり、これまで経験した記憶や感情が現実であるかのようによみがえってきたりといった症状が出ます。また、体外離脱体験をすることもあります。これは、自分自身が少し離れた場所から自分を俯瞰して見ているかのように感じる症状です。
このような症状が深刻化してくると、日常の生活に支障をきたすことになり解離性障害と診断されます。

解離性障害の原因は?

解離性障害の原因である解離の病態メカニズムは十分に解明されていません。しかし、ストレスや心的外傷が関係していると考えられています。
心的外傷は、過去におきた身体的外傷・性的虐待・暴力・災害・重大な事故などのトラウマです。これらから自分自身を守るために防衛反応をおこし、解離症状の発症につながった可能性があります。
また、精神的な要因としては、不安定な環境・家族内の虐待・無理な期待・拒否や無視といったこともトラウマといえるでしょう。
解離性障害の原因が解明されていない理由のひとつには、発症の原因に個人の特定の特性や感受性が関わっていることが挙げられます。個人の遺伝的な素因・人格特性、現実感の喪失などです。

解離性障害の症状について教えてください。

解離性障害は精神障害ですので、一様に同様の症状があらわれるわけではありませんが、主に4つのタイプに分けることができます。
1つめは、解離性健忘です。ある心的ストレスをきっかけとして、その時の記憶をなくしてしまいます。多くの場合は数日のうちに記憶が戻りますが、長期にわたって健忘が持続する場合もあります。
2つめは、学校や職場で過度のストレスにさらされたことで、アイデンティティや記憶を失ってしまう解離性遁走(とんそう)です。自分の中にいくつもの人格をつくってしまう解離性同一性障害も症状の1つです。ある人格が現れているときには、他の人格についての記憶をなくすことで、自分自身を守ろうとします。
最後に、離人症です。自分が自分であるという感覚が阻害されることで、自分を外から眺めているように感じる状態になります。このような幾つかのタイプはあるものの実際には個人によって大きく症状の差があるのも解離性障害の特徴です。

何歳ごろから症状が出ることが多いですか?

解離性障害の症状が初めて現れる年齢については統計資料はありませんが、原因から考えると、子供から若年成人にかけて注目されています。
幼児期には解離性障害の症状が出ることはほとんどありません。しかし、心的外傷や虐待を経験した場合に、幼児期の記憶として残るとそれらが原因で発症がみられます。
小学生として生活する子供期においては、虐待や家庭内の問題から精神的なストレスがおこり解離性障害の初期症状がみられることがあります。
思春期においては、解離性障害の症状が顕著に現れるケースが多いです。思春期特有の個人的な変化に加え社会的な圧力が増加することから、解離症状へと変化するのです。
成人期になると新たな精神的なストレスについては対処がしやすくなりますが、過去のトラウマや心的外傷がある場合は注意が必要です。新たなトラウマやストレスの増加がきっかけになり、解離の症状が出ることがあります。

解離性障害(かいりせいしょうがい)の診断や治療

カウンセリング

解離性障害はどのように診断されますか?

解離性障害においては、自分が解離症状があるということに気づかない方が多く、他の心身症状を抱えていることも少なくありません。そのため、解離性障害を確定診断することが難しい場合も多いです。
また、心的外傷後のストレス障害・うつ病・境界性パーソナリティ障害・摂食障害・アルコールや薬物依存症などの精神疾患を合併していることもあり、判断は極めて難しいといえます。そのため、診断を行う時には、詳細な精神医学的な面接を行い、他の精神疾患の可能性をひとつずつ消していくことが重要です。
解離性障害の診断で重要なのは、精神科医による丁寧な面接です。場合によっては、複数回繰り返して面接を行い、時間をかけて診断します。

解離性障害と間違えやすい病気はありますか?

解離性障害は、発症していることに気づいていない方が少なくありません。また、他の精神疾患と合併している場合も多く、診断は単純にはいきません。
例えば、幻聴などの症状がある場合、それがどのような要因でひきおこされているかを理解することから始めることになります。幻聴などの症状がある場合は統合失調症の可能性もあり診断が難しいです。
また、解離の原因になる心的外傷は、その後のストレス障害・不安障害・うつ病・境界性パーソナリティ障害・摂食障害などを引きおこしている場合が多く、これらの症状がはっきりしている場合は、解離性障害の判断には時間がかかります。

治療方法を教えてください。

解離性障害で推奨されているのは心理療法になります。これは解離性障害が精神的外傷との関連が強いとされているからです。
まず、治療に先立ち行われるのは発症した方の環境を整えることです。ストレスやトラウマになることから離すことで環境を整えます。心理療法では短期に治療ができるわけではありませんので、まず必要なのは専門医との良好な関係づくりです。その上で、トラウマとなった体験の記憶の対処方法を一緒に考えていきます。
解離性障害の治療である心理療法は時間をかけて行っていく治療法です。そのため、経済的・時間的な負担がかかります。心理療法のみに頼るのではなく、自分自身がストレスを発散させる工夫をしたり、リラックスできる空間をつくったりと普段の生活で工夫をすることも大切です。

解離性障害(かいりせいしょうがい)の経過や接し方

相談に乗る人々

解離性障害は治るのですか?

子どもが発症する解離性障害の場合は、そのまま自然治癒で治ることはほとんどありません。子どもたちが自分自身をストレスやトラウマから守るために解離を利用しているからです。
そのため初期の治療では、精神療法に加えて薬物療法を併用するなどして、安心感を持ってもらうための下地づくりを行います。治療が進むにつれてカウンセリングを行ったり入院治療を選択したりして、徐々に治療の内容を深めていきます。
解離性障害の治療においては、専門医との信頼関係を築くことが大切です。しかし、これらは簡単にできるものではなく、根気よく気長に治療を進めることで症状を改善させます。

周囲の人はどのように接すればよいでしょうか?

解離性障害であることをわかっている方と自覚をしていない方がいます。自分でわかっていない場合は、突然知らない人から声をかけられたり、買った覚えがないものを持っていたりと、自分自身がわからなくなり不安を抱えます。その不安が解離性障害の進行を早めてしまう原因のひとつです。
まずは、周りの人たちが、解離性障害の症状がでている人に対して安全で安心感を与える環境を提供するようにします。そのためには解離性障害についての理解を深め、症状や周りとの付き合い方で注意すべき点を把握することが大切です。
解離性障害であることから、周りとの距離をおいてしまいコミュニケーションが取れなくなり、次第に孤立してしまうことがよくあります。常に相手を尊重しプライバシーを考えながらサポートすることも大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

解離性障害は、初期の段階では自分が行ったことが記憶されずに自分自身を見失ってしまいます。症状を理解していたとしても、社会に馴染めず孤立してしまいます。
まずは、周りのサポートを充実させることが大切です。また、専門医による知識も大切ですから、少しでも心配なことがあれば専門医に相談しましょう。

編集部まとめ

電話を持つ女性
自分自身に自覚がなく記憶もないという時間が長くなると、自分に自信が持てないだけでなく、自分が別の人間に見えてきて不安だけが膨らんでしまいます。

自分が今どのような状況にあるのかを身近で信頼できる人へ相談してみましょう。専門医に直接聞いてみることも有効です。

また、周りに解離性障害の症状がある方がいるのでしたら、信頼関係を築き、その方と社会とのつながりをサポートするようにしましょう。

この記事の監修医師