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「NET/NEN(神経内分泌腫瘍)」の症状はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/06/19
「NET/NEN(神経内分泌腫瘍)」の症状はご存知ですか?医師が監修!

NET/NEN(神経内分泌腫瘍)は無症状で進行し、内視鏡でたまたま見つかったり、血便が出たりして気づきます。

また、ホルモンの過剰分泌による皮膚紅潮・下痢・手の震え・低血糖などの症状でも発見されることが多い病気です。

腫瘍の悪性度が低く、比較的手術が行いやすい発生部位の場合は、完全に摘出され予後も良好な場合が多いです。

しかし、腫瘍の悪性度・発生部位・大きさ・手術の困難さなどによって、予後不良となってしまう場合もあります。

今回の記事では、NET/NEN(神経内分泌腫瘍)について・原因・症状・検査・手術方法について詳しく解説します。

こちらの記事を参考にして、病気への不安がある場合や、気になる症状のある場合はお近くの内科や内視鏡クリニック等にご相談ください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

NET/NEN(神経内分泌腫瘍)の原因や症状

診察する医師と頭痛の患者

どのような病気ですか?

NET/NEN(神経内分泌腫瘍)とは、神経内分泌細胞から発生する腫瘍の総称です。一般的には、腸管系に多く発生しますが、肺や膵臓、卵巣などの内分泌細胞からも発生することがあります。がんと似た性質があり、転移や周囲組織への浸潤を起こすことが特徴です。
そして、NET/NENの腫瘍が大きくなると、出血や滞留などの症状を引き起こします。治療には、手術・内視鏡治療・抗腫瘍薬・分子標的治療薬・細胞障害性抗がん剤を用いる場合があります。

原因はなんですか?

NET/NENの原因は不明な場合が多いです。しかし、NET/NENは遺伝的な要因や本人の病歴と関連があるとされています。
また、胃の内部にできるNET/NENの場合は、萎縮性胃炎が原因になることがあるのです。しかし、今のところ原因不明の症例が多数だといわれています。

症状を教えてください。

NET/NENの症状は、腫瘍の大きさ・部位・分泌物によって異なりますが、以下のような症状が現れます。

  • 腹痛や下痢
  • ホルモン分泌症候群
  • 気胸や咳
  • 食欲不振や体重減少
  • 消化管にできるNET/NENでは、腸管内分泌物質の分泌や腫瘍の拡大が原因で、腹痛や下痢を引き起こします。また、NET/NENの腫瘍がホルモンを過剰に分泌することで、さまざまな症状が現れるのです。
    例えばセロトニンというホルモンが過剰分泌された場合は、皮膚の紅潮・下痢などの症状を呈します。また、インスリンの過剰分泌だと、低血糖によって手の震え・冷や汗・意識障害などの症状が起こる場合もあるため注意が必要です。
    肺にNET/NENができた場合、気胸や咳が発生する場合があります。他にも、NET/NENが消化管にできた場合は、食欲不振や体重減少を呈します。

どの部位にできやすいのですか?

NET/NENは、通常は消化管や肺に発生することが多いといわれていますが、全身のどこにでも発生する可能性があります。
消化管にできたNET/NENは、特に小腸と盲腸付近で発生しやすいとされています。比較的まれな病気であり、発生する部位についても個人差があるため、定まった傾向はありません。NET/NENを疑った場合は、適切な検査を受けることが重要です。

NET/NEN(神経内分泌腫瘍)の手術方法

医師 薬剤師 歯科医 白衣を着た男性

どのような検査が行われますか?

NET/NENの検査方法には、以下のようなものがあります。

  • 内視鏡検査
  • 超音波検査
  • CT
  • MRI
  • 血液検査
  • FGD-PET検査
  • 病理組織学的検査(Ki-67 、SSTR)

消化管にできたNET/NENの場合、内視鏡検査によって直接観察できます。内視鏡では確認できない部位には、超音波検査を行うことにより、NET/NENの場所や大きさを確認できるのです。他にも、CTやMRI検査でNET/NENの場所や大きさに加えて、周囲の組織の状態を詳しく調べられます。
また、血液検査では、NET/NENから分泌されるホルモンや腫瘍マーカーを調べます。これらの検査を行って、NET/NENの大きさや場所の特定・適切な治療方法の選択がなされているのです。

NET/NENの治療方法は?

NET/NENの治療方法には、以下のようなものがあります。

  • 摘出手術
  • 放射線療法
  • 薬物療法
  • ホルモン療法

摘出手術によって症状の原因となっているNET/NENを切除します。次に放射線療法・薬物療法は、NET/NENが手術で取り除けない場合や再発した場合に行われる場合があります。ホルモン療法は、NET/NENがホルモンを分泌している場合に、そのホルモンの分泌を抑えるために行われる治療です。
NET/NENの治療方法は、腫瘍の大きさ・場所・転移の有無・患者の年齢・体力などによって異なります。また、治療のポイントとして原発巣・Ki-67 の値によるグレード(悪性度)・tumor burdenが重要です。このような治療計画は医師と相談しながら決定することが必要になります。

手術方法について教えてください。

NET/NENの手術の方法は、NET/NENの腫瘍を取り除いたり周囲組織を修復したりすることを目的に行われます。大きなNET/NENの腫瘍である場合や周囲の組織に浸潤している場合は、開腹手術が必要です。
手術による切除ができない場合は、放射線治療や化学療法が検討されます。しかし、現在のところ有効な化学療法は見つかっていません。NET/NENの治療で手術を選択するかは、病気の進行度や患者の状態を総合的に判断した上で、医師が決定します。

どのような薬剤が使用されますか?

NET/NENの治療には、以下のような薬剤が使用されることがあります。

  • ソマトスタチンアナログ
  • 化学療法薬
  • 分子標的治療薬
  • 細胞障害性抗がん剤

ソマトスタチンは、NET/NENの症状を改善するために用いられます。ソマトスタチンの働きとして、胃腸管からホルモンを分泌する細胞を抑制する働きがあるのです。また、化学療法薬はNET/NENが転移している場合に使用される場合があります。
薬剤では、ソマトスタチンアナログ(SSA)の他に分子標的治療薬や細胞障害性抗がん剤などの選択枝もあるのです。どのような治療を行うかは、NET/NENの種類・進行度・患者の年齢・健康状態などを総合的に判断して、医師が決定します。

NET/NEN(神経内分泌腫瘍)の予後や注意点

問診票を持つ男性医療従事者 診察する

NET/NENの予後について教えてください。

NET/NENの予後は、病気の進行度・大きさ・浸潤度・腫瘍の場所によって異なります。 一般的に、小さくて進行度の低いNET/NENの場合、手術によって完全に切除でき、予後は比較的良好となることが多いです。
一方、転移がある場合や進行度が高い場合は、予後は悪くなる場合があります。また、NET/NENが特定のホルモンを産生している場合は、そのホルモンによって激しくされる症状の重篤度も予後に影響を与える場合があるのです。
NET/NENの予後を判断するためには、病理組織学的な評価や血液検査などが行われます。治療計画を立てる際には、患者の年齢や一般的な健康状態、症状の程度なども考慮されるのです。

手術後の生活で注意したほうがよいことはありますか?

NET/NENの手術後の生活で気をつけるべきことは、個人の状態によって異なります。多くの場合は、以下の点に注意する必要があります。

  • 医師による定期的な経過観察
  • 消化の良い食事
  • 薬の服用などといった症状の管理
  • 体力づくり

手術後も再発や治療による副作用が出る場合があるため、順に経過観察していただくことが必要です。定期的に検査を受けて、再発や転移の有無を確認しましょう。また、手術後の食事には注意が必要です。NET/NENが消化管内にあった場合、手術後の食事によって腸が刺激される場合があります。
そのような刺激によって腸に炎症や出血が生じます。消化管を刺激しないためには、軟らかく少量の食事を複数回に分けて摂取しましょう。そしてNET/NENは、腫瘍が産生するホルモンによって様々な症状が現れてしまいます。手術後は、症状が再発しないように、医師から処方された薬剤を定期的に摂取することが必要です。
また、手術後は運動やリハビリなどを通じて、体力を回復することが重要です。手術や入院によって筋力が低下するため、適度な運動を行って、筋力の回復に努めましょう。以上のように、手術後の生活には様々な注意点があります。適切な生活習慣を守り、定期的に医師の指導を受けながら再発や転移を防ぐようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

NET/NENは神経内分泌細胞から発生する腫瘍の総称で初期には症状がないことがほとんどです。大きい腫瘍になると血便やホルモンの過剰分泌による症状が現れます。
一般的にNET/NENは、腸管系に多く発生しますが、肺や膵臓、卵巣などの内分泌細胞からも発生することがあります。また、治療後も再発したり症状が安定しなかったりする場合もあり、定期的に検査を受けて、再発や転移の有無を確認することが必要です。
病気の進行度によって予後も大きく変わってくるので、症状がなかったとしても定期的な検診をおすすめします。また、気になる症状のある場合は、内科または内視鏡クリニックなどにご相談ください。

編集部まとめ

考える女性
ここまで、NET/NENについて・原因・症状・検査・手術方法・予後について解説しました。

NET/NENは無症状で進行し、内視鏡でたまたま見つかったり、血便によって発見されたりすることがあります。

他にも病気の進行によるホルモンの過剰分泌で、皮膚紅潮・下痢・手の震え・低血糖などの症状に違和感を覚え、受診し見つかることも多い病気です。

NET/NEN腫瘍の悪性度が低く、比較的手術が行いやすい発生部位の場合は、完全に摘出され予後も良好な場合が多いです。

しかし、腫瘍の悪性度・発生部位・大きさ・手術の困難さなどによって、予後不良となってしまう場合もあります。

このようにならないためには、たとえ症状がなかったとしても、定期的な検診を受けることが最も重要になります。

そして、気になる症状のある場合もお近くの内科や内視鏡クリニックなどにご相談ください。

この記事の監修医師